再上場の条件は主幹事や環境次第か、ワールドの非上場化後13年の苦労

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13年前に非上場化した際の利益水準から見れば、50~100億円の減益で再上場。ワールドの再上場、もろ手を挙げて歓迎、と言える再上場案件ではありません。

足元で増益を続けるワールドの姿はさすがの底力ですが、ワールドの姿を見ると非上場そして再上場の難しさを感じます。

アパレル大手のワールドが約13年ぶりに再上場

神戸に本社を置くアパレル大手のワールド<3612>が9月28日に約13年ぶりに再上場します。再上場かー、メデタイですなー、と第一印象では思います。

ワールドと言えば株式非公開化の先駆けとして2005年11月にMBOを実施して、非上場化を遂げています。当時、中央三井信託銀行のファンドがワールドのMBOを手掛けて、珍しいこともあるもんだ、と思った記憶がありますが、あれから13年ですかぁ。

13年と言うともう一昔前で、当時自分は何していたんだろ・・・、とフト振り返ったりもしますが、それはさておくとします。

そして折角だからと見たワールドの目論見書。正直うーむ、と思ってしまった。非上場化で成功するのって、やはり難しい・・・。確かに再上場までこぎつけたのはヨカッタのでしょうけど、いったい何のために非上場化したのやら・・・。当時MBOを主導した中央三井信託銀行のファンドの名前は既になく、三井住友銀行と日本政策投資銀行の共同ファンドが筆頭株主(UDSコーポレート・メザシン2号投資事業有限責任組合)。ま、これはファンドの期間が間に合わなかったということで。

そして業績は非上場化した時は営業利益で200億円近くあったのに、今期は国際会計基準の営業利益が142億円の見込み。収益力結構落ちてますね・・・。

考えてみれば日本経済を取り巻く環境も13年前とは様変わりしており、やむを得ない部分があるとはいえ、素直に喜べる再上場案件ではないなぁ、と思ってしまったのでした。

MBOによる非上場化から再上場までの利益推移

非上場化って、本来収益力をアップして上場するのがあるべき姿です。ではワールドが非上場化してから、どんな利益推移をたどったかと言えば下記の状況。(目論見書から抜き出し)

2006/3期 国内会計基準の営業利益200億円
2007/3期 同255億円
2008/3期 同245億円
2009/3期 同220億円
2010/3期 同154億円
2011/3期 同131億円
2012/3期 同159億円
2013/3期 同113億円
2014/3期 国際会計基準の営業利益93億円
2015/3期 同53億円
2016/3期 同117億円
2017/3期 同145億円
2018/3期 同159億円

2014/3期から国際会計基準を採用しているので、そのままの比較はできませんが、それでも非上場化した際に200億円、その翌年に250億円の規模があった営業利益は、2018/3期は159億円と50~100億円近く減少しています。

リーマンショックの影響のある2010/3期以降の業績低迷はやむを得ないとしても、2015/3期は53億円まで営業利益は減少しています。2015/3期以降の増益は立派で、それがなければ恐らく再上場自体が出来ない可能性が高かったと考えられますが、それでも非上場化した時の利益水準には50億円近く足りません。そもそも国際会計基準はのれん代の償却がないので、投資事業を新たに始めている同社としては現行の国際会計基準は決算上有利に働いています。

非上場化してから現在に至るまでの営業利益の推移を見ていると、やはり非上場化は一筋縄ではいかないな、と再認識することができます。

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再上場は主幹事の裁量と環境次第?

ワールドの再上場の主幹事証券は野村証券です。さすが野村は大きい会社を着実に持っていくなー、と思います。

ただね再上場案件として考えれば、結局非上場化した時に比べると営業利益で約100億円減った上での再上場なので、正直な所ピカピカな案件という訳ではありません。

2015/3期以降の業績の急拡大を評価しての再上場と考えられますが、それでも以前のワールドの数字を知っていると、何のために非上場化したのやら・・・、と言われてしまう案件。

ただしそうは言ってもワールドは神戸を代表する企業であり、足元で増益を続けているという事もあって、再上場の運びになっています。神戸の大手企業と言うと、神戸製鋼に川崎重工という重厚長大型の企業が多い中で、ワールドはアパレルの大手企業という珍しい存在。神戸の大手企業は、神戸製鋼は不祥事起こしてますし、川崎重工も業績がパッとしないので、ワールドに頑張ってもらわないと・・・、という地元期待の企業だったりします。(神戸でワールドのステータスは相当高いです)

と、これだけ再上場を後押しする条件が整うと、もう再上場は主幹事としては認めざるを得ない訳で、諸々の条件考えて再上場案件としてはパッとしないけれど、上場できない案件じゃないから上場させますか、的な案件のような・・・。

仮に野村が突っぱねたとしても、条件が揃っているのでメインバンクの三井住友銀行系のSMBC日興証券が主幹事を持って行ったと考えられます。

ワールドの数字を見ると、確かに上場できる水準ではあるのですが、非上場化した後の再上場案件として見れば、当時鳴り物入りだったことも考えあわせると、若干寂しい再上場、という印象を正直管理人は持ってしまいます。

まとめ

ワールドの再上場、神戸の企業が神戸製鋼はじめイマヒトツ元気がないので、神戸としては期待の再上場案件となります。

ただし過去の非上場化の頃のニュースを読んでいた経験からすると、数字を見る限りでは若干寂しい再上場という印象です。それでも中には非上場化したものの、再上場に至らず途中で身売りしてしまう(されてしまう?)企業もある中で、どうにか再上場にまではこぎつけたワールドは流石の底力を見せています。

ワールドは再上場後、新たな成長を遂げる事ができるのでしょうか?若干寂しい形となっている再上場であり、上場後の成長に期待したい所です。

・大手証券会社ながらIPO株の一部を抽選で分配しているSMBC日興証券。敷居が高く感じられる証券会社ですが、そんなことはありません、IPO投資を行うならSMBC日興証券にも口座開設をしておきたい所です。ワールドにも副幹事として参入しています。
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