消費者金融事業を営むアイフル<8515>が、5月下旬以降に低格付けの公募社債を発行するようです。格付けの低い社債、いわゆるジャンク債は日本では殆ど発行されていませんが、今後日本でジャンク債が広がる契機となるのでしょうか?
ただしアイフルの類似の商品は既にFundsで募集の実績があります。
個人投資家が、利回りの高い低格付け債に投資できる環境が生まれつつあります。
概要
アイフルが5月下旬以降に日本初の低格付け債の公募を予定
格付けが低く「投機的等級」に分類される公募社債が初めて日本で発行される。消費者金融大手のアイフルが5月下旬以降に発行する。低格付け債の市場が生まれれば、信用力の低い企業の資金調達手段が広がる。比較的高い利回りを得られるため機関投資家の期待も高い。ただ、極めて緩和的な金融環境が生んだ側面でもある(日本経済新聞2019/4/20)
アメリカでは既に大きな市場となっている低格付けのジャンク債市場ですが、日本では殆ど存在していません。日本で公募社債といえば東証1部に上場しているような大企業が発行するもの、と相場が決まっています。機関投資家向けの社債が多く、また個人向け社債が発行されても、低金利の日本では1%にも満たない金利の社債が殆どです。
ソフトバンクの公募社債が一人独特の存在感を放つ日本の個人向け社債市場ですが、ソフトバンクは世界で事業展開をする大企業。
財務内容的にソフトバンク債はジャンク債かも、という議論もできますが、ともあれ日本でジャンク債市場は存在しないに等しい存在です。
そんな日本でアイフルがジャンク債の発行を5月下旬以降に予定している様子。日本で個人向けジャンク債市場が立ち上がるのか、注目されます。
利回り商品が好きなのに日本にはジャンク債市場がない不思議
日本人はホッタラかしで資金が増えるような投資商品が大好きです。最近ではトルコリラのスワップ投資が密かな人気になっていますが、昨年8月のトルコリラショックの記憶はまだ生々しく残っています。
またソーシャルレンディングも昨年様々な不祥事が発生しましたが、利回りの高い案件はアッという間に投資枠が埋まる状態が続いていました。
ホッタラかしで高い利回りが得られる金融商品があれば、それは理想的です。しかし低金利下の現代日本でホッタラカシ可能な高金利商品は、オールorナッシングになる可能性の高い、リスク高めで場合によっては少々あやしさのある商品への投資となってしまいます。
アメリカのようにジャンク債市場がれば日本人投資家に好かれるだろうなぁ、と個人的に思っていました。そして令和の時代になりようやく日本でも、個人向けジャンク債市場立ち上がりが具体化する可能性があります。
既にFundsで実質的にはアイフル社債への投資は可能
リーマンショックや過払い金問題はありましたが、ギリギリ倒産に至らず踏みとどまったアイフルは、現在資金調達の多様化を目指しています。その一環が5月下旬以降に予定する、低格付け社債の公募となります。
しかし既にアイフル債に相当する商品を、個人投資家が購入する手段が存在します。クラウドポート社が提供する投資サービスFundsにおいて、アイフルの関連会社は資金調達を行っています。
Fundsのアイフル向け案件の利回りは1.8%であり、ソーシャルレンディング案件の観点からは利回りはそれほど高くありませんが人気化しました。Fundsは厳密な意味ではソーシャルレンディングではありませんが、ホッタラカシ投資ができるソーシャルレンディング的な投資案件は人気があります。クラウドポートはVCが出資している会社であり、事業者リスクも少ない状態であり、昨年問題が噴出したソーシャルレンディング業界においては、信頼性が高い事業者と考えられます。
関連記事:怪しくないFunds(ファンズ)に期待、ソーシャルレンディング業界に新顔登場
社債は償還時に一気にやられるリスクのある投資
アイフルのジャンク債発行は、公募の対象が個人にも広がれば個人投資家の投資の打ち手が確実に1つ増えることに繋がります。これまで個人投資家が利回りのある社債で投資できる案件はソフトバンク債しかなかった訳で、個人投資家には殆ど選択肢がない状態でした。
しかし過去社債を発行していた企業で、社債の償還ができずに危機的状況に陥いるケースが過去あったのも事実。社債は一気に多額の資金調達ができる反面、償還時に資金手当てを行う必要があり、赤字が続くなどして償還資金が確保できないと、下手すると償還日に即死です。。。
日本の場合、数多くの銀行が存在しており、社債発行ではなく通常の銀行融資で定期的な返済を行い社債償還時の資金ショートのリスクなく企業は借り入れを行っていました。しかし社債はそうはいきません。
低格付けのジャンク債はリスク高めの社債であり、社債償還日に償還できないリスク→そのまま資金ショートして企業が倒れてしまい返済されないリスクがあります。
投資家の側としては、社債投資は一気にやられるリスクのある投資、という点を理解した上で投資判断が求められます。
まとめ
消費者金融を始めとするノンバンクは、お金を仕入れて仕入れたお金をまた貸しするビジネスモデルであり、いかに資金調達をするか、という点がビジネスの大きなポイントです。消費者金融業界はリーマンショックと過払い金訴訟を受け、その殆どがメガバンクの系列会社となり現在に至っています。アイフルは倒産寸前まで追い込まれましたが、メガバンクの傘下入りせずに生き延び、独立系の消費者金融として生き残りに成功した稀有な例です。
事業拡大のためには多額の資金調達を必要とする消費者金融において、独立系のアイフルが、資金調達の多様化を目的として低格付け債の公募を行うのは、流れとしては自然といえます。
これまで国内ではジャンク債は殆ど馴染みがありません。低格付けのジャンク債が個人投資家にまで浸透するのか、まずはアイフルの状況に注目したいと思います。
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