楽天とぐるなびが資本業務提携を発表。楽天はぐるなびとの提携により、これまで足がかりを持たなかった外食店に楽天ポイントを広げるきっかけをつかむことになりました。
派手さはない地味な提携ですが、今後化ける可能性があり注目の提携と言えるのではないでしょうか。
概要
ぐるなびが楽天と資本業務提携を実施
国内のネット系企業が困った時に頼る先となっている楽天ですが、今回はぐるなびが楽天との資本業務提携を発表。
提携内容としては、
①ぐるなび滝会長(筆頭株主)保有株の楽天への譲渡(持ち株比率9.99%)
②ぐるなびポイントの楽天スーパーポイントの段階的統合
上記2点が注目点。ぐるなびは楽天からの出資受け入れにより、楽天グループ入り。子会社でも、持ち分法適応会社でもありませんが、楽天は外食産業に向けての重要な橋頭堡を手にしたことになります。
急速に業績悪化に見舞われるぐるなび
楽天の株価がパッとしない事は有名ですが、ぐるなびは業績の急降下がよろしくない状態。特に当期(2019年3月期)の予想決算は、投資家を驚かせるに至っています。業績推移は下記
2016/3期 売上高34,617百万円、経常利益6,492百万円、当期純利益4,367百万円
2017/3期 売上高36,979百万円、経常利益6,813百万円、当期純利益4,799百万円
2018/3期 売上高36,226百万円、経常利益4,809百万円、当期純利益3,192百万円
2019/3期(予想)売上高33,000百万円、経常利益1,300百万円、当期純利益900百万円
よろしくない、と言っても赤字に陥る程ではありませんが、長らく外食店向けに一大勢力を誇っており、屈指の高収益体質を誇っていたぐるなびですが、18/3期→19/3期の利益の落ち込みは(経常利益48→13億円)、たとえ計画ベースであっても驚くべきものです。
外食産業を巡る環境変化が背景
これまで広告宣伝費を投資して、集客していた外食産業ですが、ここ1~2年で急速に環境が変化しています。
現状では外食店舗の最大の課題は、店舗人員の確保、です。お客さんは、景気がそれなりによいこともあり、来客数はある中で、店舗スタッフが圧倒的に不足している状況。数年前までは考えられない状況ですが、現実としてはスタッフがいないから、店が回らない状況です。そーいえば先日飲みに行ったら、板前が休みだから本日は休業します、という張り紙が出ている居酒屋がありました・・・・。
ぐるなびは、集客ツールとしてここまの成長を果たした訳ですが、足元で外食店舗が求めているのは集客ツールではなく、スタッフ集めのツール。完全に市場がぐるなびとは関係ない方向にニーズが行ってしまった状態です。実際に、外食店専門の求人情報の上場会社も出ています。(クックビズ6558:2017年11月上場)
上場している外食店の決算を何社か見てみると、多くの会社が増収の反面人件費増で減益となっていますが、国内の多くの外食店は来客者数より、人手不足に圧倒的に悩んでいる状況となっています。
全面禁煙店は自動的に増えるのでは?
ちなみに外食店での禁煙問題が話題となることが多くなっていますが、店舗スタッフの確保(特に女性)という観点では、全面禁煙店というのは、既に重要な優位性を持っています。
あと外国人は禁煙店を選んで入店する傾向にあり、インバウンドの観点でも、禁煙店に優位性があります。実際に大阪の難波の外食店、禁煙店が意外に多い、昔の難波界隈知っていると驚きですが。。。
時代は変わるもんだな、と思いますが、外食店の人手不足は解消される気配はないので、今後禁煙店は自然と増えるのではないでしょうか。
国内ネット系企業の駆け込み寺、楽天
楽天は国内ネット系企業の駆け込み寺的存在と言えます。今回ぐるなびはまだ利益も体力も残っていますが、提携したのは楽天。楽天は楽天トラベルの前身から始まって、苦しくなったネット系企業をグループに取り込んで、楽天グループとして成長させるビジネスを得意としています。ケンコーコムも楽天に駆け込んだ1社です(楽天がTOBで非上場化)。
MVNOのフリーテルを買収して楽天モバイルを、テコ入れしているのが最新例。楽天本体が携帯電話事業にキャリアとして参入しようとしていますが、それとは別ですね。その昔、楽天はフュージョンコミュニケーションズという通信会社を東京電力から買収しているので、通信会社の買収は知見があったりします。
今回のぐるなびと楽天の提携は、まず最初の一歩とも言うべき段階です。よって楽天がぐるなびをグループ会社化してどうこう、という段階ではありません。ただし楽天ポイントを軸に楽天経済圏を広めようとしている楽天にとって、国内の大半の外食店とコンタクトのあるぐるなびと提携し、楽天ポイントのサービス拡大に繋げることができればそれで充分とも言えます。
ぐるなびの時価総額は約450億円。約1割出資なので出資金額45億円、45億円で国内の多くの外食店で楽天ポイント利用の足がかりをつかむことができれば、決して高い買い物ではありません。
楽天が携帯電話事業を自ら始める、と聞いても、大丈夫か?、と思ってしまいますが、ぐるなびと提携して楽天ポイントの普及を目指す、と聞けば、うまくやるんじゃないかな、と思ってしまうのは、やはりネット系企業の駆け込み寺として機能してきた楽天の実績が背景にあります。
地味な一手だが注目できる楽天とぐるなびの提携
ぐるなびとしては、企業の立て直しは当面自前で行うことになります。立て直しといっても、足元黒字なので余裕はありますが、外食店のニーズがこれまでとは180度異なってしまっており、お手並み拝見といった所です。
一方楽天はぐるなびとの提携について、携帯電話会社設立!、といった派手さはない地味な内容です。しかし地味で即効性はないでしょうが、ぐるなびポイントが楽天ポイントに置き換わる効果は、ジワジワと現れる可能性があります。
1,000円を下回った後、なかなか1,000円を回復しない楽天の株価ですが、地味ながらぐるなびとの提携、楽天が外食店に殆ど足場が無かっただけに、案外化ける可能性があります。楽天とぐるなびの提携の行方、派手さはありませんが、注目に値するのではないでしょうか。
・楽天の株価(日足チャート)
・画像出典:マネックス証券/日本株取引ツール トレードステーション
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