ベンチャーファンドは儲からない?非常に難しい方程式

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一般的には大儲けできそうなイメージのあるベンチャーファンド。けど、大儲けするには非常に難しい方程式を解く必要があるようです。

 未上場会社に投資するベンチャーキャピタル(VC)やベンチャーファンド。IPO市場を見ているとお馴染みの存在です。そんなVCやベンチャーファンド、一般的には大儲けできそうなイメージがあります。けど客観的に見てみると、そうは簡単に大儲けできないような。儲けるためには非常に難しい方程式を解く必要があるようです。

 前回、大阪市がベンチャーファンドに5億円出資する、という内容で記事を書いたので、ベンチャーファンドは本当に大儲けできるのか、考えてみます。

関連記事:大阪市がベンチャーファンドに5億円出資、新しい試みに期待

そもそもベンチャーファンドとは?

 そもそもベンチャーファンドとは?

ベンチャーキャピタル(venture capital、略称:VC)とは、ハイリターンを狙ったアグレッシブな投資を行う投資会社(投資ファンド)のこと。主に高い成長率を有する未上場企業に対して投資を行い、資金を投下するのと同時に経営コンサルティングを行い、投資先企業の価値向上を図る。(ウィキペディア)

 上記がウィキペディアによるVCの説明。

 そしてベンチャーファンドとはVCが運営する投資ファンドのこと。VCだけでなく、事業会社が新規事業開発等を目的として保有することもあります(多くの会社では、子会社でVCを設立することが多いですが)。

 ファンドの期間はファンド毎に違いますが、7~10年と言った所。そして出資者は基本的に途中換金できません(上場しているベンチャーファンドもありますが、例外的存在)。年間手数料は2~3%といった所でしょうか。
 ハイリスク・ハイリターンという点、途中換金できないという商品設計、ファンド設立には多額の資金を必要とするという点等から、基本的には億円単位以上の出資となるので、対象となる出資者は機関投資家。(たまに上場会社のオーナー等のお金持ちも個人で出資するケースもあるようです)

 一般的にベンチャーファンドは個人には馴染みの無い存在ですね。個人投資家が大儲けできる機会損失が発生している?イエイエ、ベンチャーファンドで儲けるの実は結構ハードルが高いんです。 

100億円の投資、年間手数料2.5%なら、10年で投資できるのは75億円

 上場株を扱う投資信託と比べると投資先発掘や投資先の売却に手間のかかるベンチャーファンド、その手間を考えて年間の手数料を2.5%として考えてみます。計算を簡単にするため、出資時の最初の手数料は無し。で、尚且つ未上場株に投資する=簡単に換金できない、ということで、途中抜け無しで、期間10年としてベンチャーファンドがどうなって行くのかを考えてみます。

 仮に最初に100億円を出資で、年間手数料2.5%を差っ引くと、1年後は97.5億円→2年後は95億円→・・・・→10年後には75億円となります。100億円を出資しても、最終的に投資できるの75億円。

 少ない?けど投資信託だって、基本的な構造は一緒ですよ。違いは手数料が高いか安いかと、長く持たざるを得ないか、途中抜けできるか、という所。
 分割払込等で知恵をしぼるファンドもありますが、1つの例ということで。

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ベンチャーファンドの方程式を解いてみる

 上記の計算から算出された投資金額75億円で、1社1億円ずつ出資するとします。そしてこの出資先が全部、2倍になって帰ってきた時の合計はいくら?

 答えは150億円。当初出資した金額の1.5倍。

 当サイトで上場株の株価分析をしてきましたが、2倍になる銘柄、あるにはありますが、全部当てるのは無理。全体で2倍って、上場株では至難の技。VCファンドであれば、それを期待したいのですが、ハイリスクハイリターンのVCファンド、成功の裏には失敗もあります。そして失敗=倒産した会社は基本的にゼロです。ここが上場株との一番の違い。

 10社投資したら1社は倒産すると言われているVC投資の世界。投資したからと言って、全部が成功する訳ではありません。そして生き残った会社でも、IPO(株式上場)やM&Aでうまく回収できるの、よくて3〜4割では?前向きに考えて成功するのが4割とします。そして

 投資金額は75億円で、1割失敗、4割成功、5割は通常の回収とすると、下記のような数字となります。
・7.5億円(倒産等の失敗) →0円
・37.5億円(通常の回収、50%)  →18億円
・30億円(成功で2倍の回収)→60億円

 成功した30億円は2倍としました。 確かに中には10倍以上の銘柄もあるでしょうけど、全部が全部10倍はあり得ないので、合計すると2倍になりました、という計算。

 難しいのは、成功もしなかったし失敗もしなかった、通常の回収となる37.5億円分をどう考えるか。未上場会社で100%回収は正直難しそうなので、ザックリ半額とします。すると18.75億円、簡単に18億円とします。

 上記を合計すると、78億円!ありゃま、元本を割ってます・・・。

 
 さすがにこれだと夢も希望もないので、

 成功した30億円分を3倍の回収として90億円とします、すると合計108億円。見事に元本回収!

 ただし10年で+8億円だったら、利回りいくら?1%もありません・・・。

 じゃぁ成功したのを5倍にすると・・・、168億円。これならまぁまぁ、けど10年という期間を考えると大儲けには程遠いですね。

 仮に成功分が10倍とすると、318億円で漸く儲かるなぁ、という事になりますが、10倍になる投資案件、そうそうはありません。1銘柄が1,000倍になりました、と言うのがあれば話は別ですが・・・。

ベンチャーファンドの運営は結構大変

 上記のように簡単な方程式を作って、ベンチャーファンドの仕組みを紐解いてみました。こう考えると、VCの仕事もなかなか大変です。

 一般的にはトッテモ儲かるイメージのあるベンチャーファンド。1つの例ではありますが、上記のように方程式作って客観的に考えると、実は非常に難しい舵取りが必要とされる、大変な仕事のようです。

 ハイリスクハイリターンですが、夢を見ることができるベンチャーファンド。ベンチャー企業の育成という社会的使命もありますが、いい夢を見るのは、そう簡単ではないようですね。

 一般的な大儲けと言うイメージとは違い、VCやベンチャーファンドの仕事というのは、結構大変そう、というお話でした。こんな視点を持ちつつ、IPO市場を見ると、また新しい見方が得られるかもしれませんね。

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