東海地区の国立大学とNVCCがベンチャーファンド設立、課題をピックアップ

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東海(中部)地区の国立大学、名古屋大学・名古屋工業大学・豊橋科学技術大学・岐阜大学・三重大学の5校と、ベンチャーキャピタル(VC)の日本ベンチャーキャピタル(NVCC)が中部地区の大学発ベンチャーへの投資の為のベンチャーファンドを20億円で設立すると発表。

 モノ作りの会社は多くても、ベンチャーという言葉がなかなかイメージしにくい東海地方。今回のベンチャーファンド設立が同地区でのベンチャー活性化の起爆剤となることを期待しつつも、山あり谷ありという道のりを進むことになりそうです。同ファンド設立に向けた課題を3つ取り上げてみました。

 

東海地区でベンチャーファンド設立って珍しいよね

 「中部の国立5大学、VBファンドでタッグ 名古屋大や三重大(日本経済新聞)」

 東京や関西でベンチャーファンドの設立が相次いでおり、当サイトでもこれまで何件か記事として取り上げています。東京はさすが日本の首都なので、投資案件も多そうですが、関西って投資案件の割にベンチャーファンドの数が多いのでは?、というのが管理人の率直な感想。

関連記事:関西にベンチャーファンドが多すぎて驚いた話

 そして今回は、日本のモノ作りのメッカとも言うべき東海地区でのベンチャーファンドの設立となります。ファンド設立を主導しているのは、老舗独立系VC
とも言える日本ベンチャーキャピタル(NVCC)。そして東海地区の5つの国立大学と提携ということで、昨今話題の国立大学が絡むベンチャーファンドとなります。

 東海地区は、モノ作りの土地柄、そして保守的な風土から、ベンチャーと言ってもなかなかピンとこない地域の感もありますが、今回のファンドが同地域でのベンチャーのカルチャーを変えるきっかけとなることを期待。
 しかしながら、平坦な道のりではなさそうです。以下に今回のファンドが超えなければならないハードルをピックアップしてみます。

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東海地区の大学発ベンチャーファンド、見事光輝くことはできるのか?

①東海地区に投資案件あるの?

 ベンチャー企業ってそもそも事業を起こす人がいないと、そもそも何も始まりません。いわゆる社長です。

 東海地区の開業率まで調べた訳ではありませんが、全国的に廃業率が開業率を上回っている中、東海地区だけがその例外、という訳はないと考えられます。東海地区で最近上場したベンチャー企業って・・・、ジャパンティッシュエンジニアリング(J-TEC:ジャスダック7774)とかジャパンベストレスキューシステム(JBR:東証1部2453)とかラクオリア創薬(ジャスダック4579)とか。うーむ、無い訳ではありませんが、やはり数は東京>>>>>関西>>>東海、という状況。

 日本の首都東京は何と言っても人が集まって来るので、事業のタネであったり、事業化が自然と集まったりする結果、自然とベンチャー企業が生まれますが、東京以外の地域はファンドの投資対象の絶対数が少なくなってしまいます。

 だからファンド規模20億円と少な目なんですよ、ということかもしれませんし、当事者はそんなことは既にご承知とも思われますが、投資先のネタ探しするのに苦労するだろうなぁ、と思われます。

②誰がファンドを主導するのか?NVCCの本気度は?

 この記事だけ見ると、今回のファンドは大阪大学のように大学が音頭を取って、という状況ではなさそうです。また今回の内容、大学は情報の提供はしますが、お金の負担は一切生じていません。と言うことで大学側はノーリスク。ノーリスクと言えば聞こえはいいですが、何もしない可能性もあります。今回のスキーム、ちゃんと機能して頂きたい所ではありますが、大学側は看板だけ貸しました、と言うことに今後なっても誰も文句は言えない状態。

 冷静に今回の記事を見ると、要はNVCCが主導して作ろうとしている通常型の大学発ベンチャーの投資ファンド、と言うことになります。東京が地盤のNVCCですが、関西でも京都大学とファンド作ったりと大学との共同ファンドの設立に積極的で、今回のその流れでのファンド設立ではないかと。
 
 ただねNVCCは名古屋に支店がありません。今回のファンド設立を契機に名古屋に支店を作るのかどうか。ここでNVCCの本気度が試されるのでは?
 ちなみに一番やってはいけないのは、名古屋を関西(大阪)の支店から面倒見ること。東京から名古屋行くより、確かに大阪から名古屋行く方が距離は近いのですが、経済規模では大阪に敵わないと思っている名古屋の方々、けど大阪と一緒にされたくないとも思っている名古屋人。大阪から名古屋を見るの、一番嫌われるパターンです。大阪から名古屋を見る位なら、東京本社から見た方が話は早くなります、ホント。
 けど名古屋に支店がないと、いつまでたってもお客さん扱いと思いますが。

③お金集めできるのかが最初の試金石

 20億円で東海地区の大学発ベンチャーに投資するファンド作ります、と発表したのが今回の段階。今後の問題は数多くありますが、本当に20億円という金額を揃えてファンドを設立できるのか、がスタート段階での最大の試金石。

 最近の流れで言えば、ファンドの資金の半分を中小企業基盤整備機構が出して・・・、となりそうなので、ともあれ10億円は自前で資金を集める必要があります。一番簡単なのは、三菱東京UFJ銀行を口説いてしまうこと。そう、旧東海銀行を口説いてしまえば、10億円なんて楽勝です、ホント。
 あとはトヨタ自動車。この2社を口説くことができれば、10億円集めるなんて訳なさそうですが、そこはもうNVCCの腕の見せ所。幸いにして三菱東京UFJ銀行はNVCCの株主だったりもします。

 ただね本気で同地でお金集めするなら、NVCCは名古屋支店設立のカード切らないと本気で相手してくれないような気もします。NVCCが名古屋支店を作ってまで今回のファンドにコミットするかどうかで、NVCCの本気度及びファンドの成否が見えてくるのではないかと。

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ベンチャーファンドより事業承継ファンドのほうがニーズありそう

 各地でベンチャーファンドの設立がなされていますが、こと東海地方に限って言えば、ベンチャーファンドより事業承継のためのファンドのほうがニーズはありそうな。まぁ地方ではおしなべて、そうかもしれませんが。

 モノ作りの集積地の東海地区、そのモノ作りを支えている中堅・中小企業の社長は団塊の世代とその上の世代の方が多いんです。当然、もう60代も半ばに入っているその世代が社長の会社は、次の社長はどうするのよ?、という問題が間違いなく近い将来に発生します。2代目がおられる会社はいいのですが、そーでもない会社も多い訳で、だからこそ最近は中小企業が売り手となるM&Aが多いんです。
 日経新聞やビジネス誌を見れば中小企業向けのM&Aセミナーの広告が多いし、その道では老舗の日本M&Aセンター(東証1部2127)はとっても儲かっています。

 事業承継ファンドの設立も各地で相次いでいますが、モノ作り系の中堅・中小企業の多い東海地区、ベンチャーファンドより事業承継ファンドのほうが収益を得る機会が多いのでは?

 そこを敢えて大学発ベンチャーに賭けるNVCCの姿勢は、アッパレではあると思いますが。

15.10.7中小企業-min
少子高齢化で中小企業の後継者をどうするかも、実は大きな問題

まとめ

 東海地区の5大学とNVCCで20億円のベンチャーファンドを設立するという発表、まずはNVCCの同地域での本気度が試されそうです。本当に20億円を集めることができるかどうか、当然そのあてはあるでしょうが、関西地区から東海地区の面倒を見ますというのでは、なかなか厳しいのではないかなぁ、と管理人は思います。仮に東京本部から名古屋見ます、と言っても、結局おみゃーさんはお客さんだがね・・・、ということになりそうですし。

 ベンチャーファンドの運営は以前下記の記事にもしましたが、そんなに簡単ではありません。

関連記事:ベンチャーファンドは儲からない?非常に難しい方程式

 お金余りの日本の金融業界、確かにベンチャーファンドは作りやすい環境となってはいますが、それが有効に機能して+パフォーマンスを上げられるか(儲けられるか)は別問題。

 モノ作りの地域ではありますがベンチャーという言葉とは若干縁が遠い東海地区。今回のベンチャーファンド設立で何らかの変化が生ずることを期待しつつ、今後のファンドの行方を見守りたいと思います。

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