2016年3月に控える北海道新幹線の開業。しかし喜んでばかりはいられません。北海道新幹線開業で新たに年間40~50億円の赤字が発生するJR北海道。北海道新幹線開業前から厳しい経営が続いているJR北海道にとっては、北海道新幹線の開業による赤字でギリギリの経営状態に突入することになります。
北海道新幹線の黒字化は札幌延伸まで待つ必要のあるJR北海道。2030年の北海道新幹線の札幌延伸まで何とかしのいでいくのか、それとも何らかの大胆な手を打つのか、北海道新幹線開業後のJR北海道の行方に注目です。
概要
赤字発生によりJR北海道は手放しで喜べない北海道新幹線の開業
2016年3月26日、遂に北海道新幹線が開業。北海道にとっては悲願だった新幹線の上陸、ここにようやくその実現をみます。新幹線の開業、そりゃヨカッタヨカッタ、で本来は終わる所。実際、九州新幹線が開業したJR九州、北陸新幹線が開業したJR東日本はヨカッタヨカッタ、という状態でした。
しかしながら北海道新幹線は若干様子が異なります。北海道新幹線の開業によって、JR北海道は年間40~50億円の赤字を新たに抱え込むことに。
「北海道新幹線、52億円赤字 2016年度収支試算」(産経新聞2105/10/16)
JR北海道の説明によると、
開業に合わせて赤字が続く並行在来線の江差線の経営が第三セクターに移るほか、在来線の利用客増加も見込まれるため、JR北海道は「鉄道事業全体でみれば、赤字幅は小さくなる(産経新聞2105/10/16)
ということのようで、安心してくださいそのまま赤字は乗っかりませんよ、と説明されています。
それじゃ、そもそもJR北海道の経営状態がこれまでどうなっているのか、JR北海道の財務諸表、主に損益計算書(P/L)を見てみました。
遂に新幹線が北海道上陸!
JR北海道の損益計算書(P/L)の推移
JR北海道は未上場会社ですが、決算を開示しています。
上記から3期分の損益計算書(P/L)を拾ってきて、若干手を加えたものが下記となります。
最終的な税引後当期利益は14/3期60億円、15/3期81億円ですが、国からの設備投資助成金が特別利益で計上されており、実質的なJR北海道の利益は40億円前後、となっています。
では次に、その詳細を見て行きます。
JR北海道の鉄道部門は年間約400億円の大赤字が継続中
JR北海道、鉄道部門は年間約400億円の大赤字が継続中。
寒さが厳しくて、冬には雪が大量に降り積もる北海道、鉄道事業に他のJR各社と比べて条件が厳しいのですが、それでも年間約400億円の赤字というのは少々驚き。毎年400億円の赤字垂れ流しって、普通の会社なら潰れています。
ただし国鉄が民営化の際に、旧国鉄もそんなのは百も承知していた訳で、本業が赤字でも会社を維持するために編み出されたのが、経営安定基金。
簡単に言えば、国が運用のお金出してあげるから運用益で本業の赤字を穴埋めしなさいよ、ということ。
この国がJR北海道に出したお金、まぁファンドとも言うべき存在の、経営安定基金が貸借対照表を見ると約8,000億円存在しています。
JR北海道は資金運用で年間300~400億円を稼ぐ運用会社
過去3期分のP/Lを見ると、JR北海道は年間300~400億円の運用益を計上しています。
JR北海道が保有する経営安定基金は約8,000億円。このお金を使った資金運用で利益を上げて、JR北海道としてはどうにか帳尻を合わせている状態。
本業の赤字が300~400億円、関連事業の黒字が約20~30億円、運用益が300~400億円ということで、本業の赤字が運用益で埋められて、不動産等の関連事業の黒字+本業と運用益の差分が手元に残る、というのがザックリとしたJR北海道の年間のお金の出入り。(特別損益は除く)
JR北海道クラスの会社で黒字約40億円というのは、正直心もとないなぁ、と思います。B/Sを見ると固定資産2,900億円抱えている訳で、減損を行ったら一気に赤字になります。まぁ資本金に相当する部分が約1,700億円あるので、ちょっとやそっとではビクともしない状態ではありますが、それにしてもJR北海道、そんなに楽ではないな、ということが数字から分かります。
北海道新幹線の赤字をJR北海道にそのまま乗せると赤字体質に
経営安定基金の運用益と合わせると年間約40億円の利益体質のJR北海道。ここに年間40~50億円の赤字が発生、と言われる北海道新幹線が加わるとどうなるか?
答えは簡単で、JR北海道は赤字体質の会社になってしまいかねない、です。
JR北海道の説明のように、北海道新幹線の開業により年間300~400億円の赤字を計上している鉄道事業全体の収支が大幅に改善される、というのであれば、全く問題ありません。
でも北海道新幹線開業によって第3セクターに移される江差線は、年間3億円の赤字の様子。
「江差線一部廃止問題(4) 地元自治体廃止受け入れへ」(いかさまトラベラー)
諸々込で赤字5~10億円と考えても、北海道新幹線の赤字40~50億円を埋めるには全く足りません。となると集客力アップ=売上の増加に期待、となります。
しかしながら、コストは予定通り発生しても売上は予定通り上がらない、という事業計画のセオリー通りの展開となると(最終的な事業の成否はさておき、多くの事業は計画との対比で目先ではこうなります)、JR北海道にとっては当面非常に厳しい展開が待つことになります。
北陸新幹線開業で金沢は観光客が大幅に増加してJR東日本はヨカッタヨカッタ、という状態になっていますが、同じような展開がJR北海道にもやってこればよいのですが。
JR九州と比べるとJR北海道の苦しさがよく分かる
当サイト、以前JR九州の分析もしています。
2016年秋にもIPOが噂されているJR九州ですが、実は鉄道事業は赤字。しかしながら不動産事業を始めとする関連事業が頑張って+経営安定基金の運用益で、シッカリ黒字化を果たしています。2015年3月期は経常利益255億円を計上しています。
JR北海道は鉄道以外の事業で20~30億円程の利益計上ですが、JR九州は鉄道以外の事業で約250億円の利益を上げており、JR九州とJR北海道の利益体質の違いは、鉄道以外の事業で大きく利益を上げているかどうか、という部分にあります。
そして九州新幹線の開業で本業の鉄道事業の収支改善もなされたJR九州に対して、北海道新幹線の開業で赤字が拡大しかねない状況のJR北海道。冬の雪対策の費用負担も考えると、JR北海道の苦しさがよく分かります。(尚、JR九州は2015年3月期の鉄道事業は132億円の赤字)
上場の実現が迫りつつあるJR九州に対して、新幹線は開業すれど収支改善に一向に目処が立たないJR北海道、北海道新幹線の開業に浮かれている余裕は全くありません。
ちなみにJR九州は経営安定基金を持ったまま上場に突入するようです。JR東日本・東海・西日本と違い、コレは特例措置。まぁ郵政民営化案件と同じく、JR九州の上場も政策案件、という位置付けになっています。
JR九州は2016年のIPOを目指してまっしぐら
まとめ
北海道としては悲願の新幹線の北海道上陸。しかしながらJR北海道は新たに40~50億円の赤字を北海道新幹線で抱えることになり、九州新幹線や北陸新幹線の開業の時とは違って、ヨカッタヨカッタ、というだけではすまされません。
ただでさえ本業の鉄道事業で300~400億円の赤字を抱えているJR北海道、仮にそのまま北海道新幹線の赤字が乗っかることになれば、ホントP/L的には収支ギリギリの状態となります。
確かに自己資本は厚く、経営安定基金もあるので、すわ倒産か?、という状況では無いものの、このままじゃマズイよね・・・、という状況ではあります。
北海道新幹線の黒字化は札幌延伸の2030年と14年後。それまでJR北海道はギリギリの状態でしのいでいくのか、それとも何らかの打開策を打って来るのか?
JR北海道の今後の行方は、ある意味では北海道新幹線の開業以上に注目です。
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