日本ではカジノ解禁の議論が着々と進んでいますが、ジャスダック上場のユニバーサルエンターテインメント<旧アルゼ:6425>は一足先に、フィリピンでカジノ施設Okada Manilaを3月にグランドオープン。
日系企業初の本格カジノ施設として注目を浴びていましたが、そんな中でユニバーサルエンターテインメントにおいて内紛が発生。重大なガバナンス違反で、取締役会長にして創業者の岡田和生氏の権限の停止を発表。
映画みたいな展開となっているユニバーサルエンターテインメント、カジノってやはりダーティーなイメージあるよなぁ、と思いつつも、冷静にその経緯や背景を探ってみました。
概要
パチスロ大手ユニバーサルエンターテインメントで創業者の岡田会長が取締役から外される
ユニバーサルエンターテインメントと言われてもピンとこない方も多いかもしれませんが、アルゼ、と聞けば、あーあの会社か、と気付く方も多いハズ。旧アルゼ、現ユニバーサルエンターテインメントで内紛が発生。
創業者の岡田会長が次の株主総会で取締役から外される事態が勃発しています。ユニバーサルエンターテインメントに限らず、パチスロメーカーと言えば創業者のワンマンパワーで事業規模拡大してきた、というのがお決まりの構図ですが、今回岡田会長は完全に梯子を外された格好。足元では下記の経緯をたどっています。
5月31日 ユニバーサルエンターテインメントの株主総会の取締役選任議案で創業者の岡田会長が無いことが判明
6月8日 特別調査委員会設置のお知らせ→岡田会長と管理部門の取締役がガバナンス上、不正な行為を働いた疑いがあると発表
・2年前に適正な社内決済無しに第三者に約20億円を貸付、5月23日の臨時取締役会で岡田会長と該当取締役の権限の停止を決定)
6月19日 特別調査委員会で新たに2件の不正が見つかり調査を拡大と発表
6月29日 定時株主総会(予定)
2年前に適正な社内手続きを経ずに行われた、第三者への20億円の貸し付けが見つかったことが発端。特別調査委員会で調査するも、まだまだ疑惑が出てきました・・・、といった状況。
そしてこのまま行くと、定時株主総会で創業会長の取締役退任が淡々と進むことになります。ワンマン系の会社でこんなことがあるんだな、とチョット驚き。
5月31日の「役員の移動に関するお知らせ」というリリースで、”当社はの議決権67.90%を保有するOkada Holding Limitedより、第44期定時株主総会においては上記の取締役人事に賛成する予定である旨の通知を得ております”、とあります。よってこのまま何事も無く、岡田会長は取締役を退任し再任されることなく、会社の表舞台から消えることになります。
筆頭株主のオカダHDで長男と長女が反旗を翻した模様
ここから先は、IRで発表されていないので毎日新聞の記事を参考。
関係者によると、岡田会長の長男、長女が、会長に反旗を翻した、というのだ。長男、長女が保有するオカダ・ホールディングスの株式は、合計すると半数を超える。これまで、オカダ・ホールディングスの取締役は岡田会長1人だったが、5月12日に長男、長女がこの職を解き、新たに取締役2人を選任したという。
そのうえで、オカダ・ホールディングスは、ユニバーサルエンターテインメントの取締役選任議案に賛同したというのだ。長男、長女と富士本社長ら現経営陣との間で何らかの協議が行われ、岡田会長を取締役名簿から外したのである。(2017/6/27毎日新聞)
上場会社のワンマン社長といえども、株式の過半数を持っていればこそ絶対的な権力を行使できる訳ですが、ユニバーサルエンターテインメント株式の67.9%を保有して岡田会長自身がコントロールしているハズだった資産管理会社のオカダHDで合わせると株式の過半数を超える長男と長女が父親に反旗を翻した結果、オカダHDの主導権が長男・長女に移り、岡田会長のユニバーサルエンターテインメントに対する影響力もなくなり、取締役選任から名前が無くなる、と言った経緯のようです。
相続の問題はあるにしても、やはり株は本人で持っておくのが一番、という事例ではあります。まさか息子と娘に反旗を翻される事態は、上場会社のオーナーが資産管理会社を設立する際に思ってもいない事態でしょうけど。
フィリピンにカジノをオープンさせたユニバーサルエンターテインメント
ユニバーサルエンターテインメントと言うとパチスロメーカーとして知られていますが、実は3月にはフィリピンでは最大規模となるカジノ施設Okada Manilaがグランドオープンしています。日系企業が運営するカジノ施設として、その筋では知られています。
尚、今回の騒動を受けOkada Manilaは6月16日に岡田会長をボード議長から更迭しています。岡田会長と言えば、ラスベガスのカジノ進出で世界を騒がしたことでも知られる有名人でもあります。
岡田会長は自らの名字を付けたカジノ施設の本格オープン後、約3ヶ月で自ら創業のユニバーサルエンターテインメントから追われる事態となっています。
やはりカジノ運営はダーティーなイメージが離れないなー、と思いつつも、実際に何が発生したのかは現段階ではプレスリリースはなされていないので、まずは事実関係のおさらいのみ。けどやはり創業者でフィリピンにカジノまで作ってしまった会長をクビにしてしまったのは、余程のことがあったんだろうなぁ、とは容易に想像できます。
17/3期に約1500億円の借入金を増やしているユニバーサルエンターテインメント
岡田会長のクビと直接的な関係があるかどうかは分かりませんが、ユニバーサルエンターテインメントは17/3期に急速に借入金を増やしています。17/3期のB/Sは下記。
17/3期に同社は社債700億円、長期借入金887億円が増加。その増加額は約1500億円。そしてB/Sの借り方を見ると、約600億円は現預金が増加していますが、建設仮勘定が約+1200億円。
建設仮勘定って、建設中の建物等の施設が該当するので、同社の状況から考えるとフィリピンのカジノ施設の建設に投じられたのではないかな、と推察されます。
16/3期までは純資産>負債合計という状態で、非常に健全な財務基盤を有していた同社ですが、17/3期は純資産<負債合計となっています。それでもまだ自己資本比率45%であり、会社がスグにどうこうなってしまう状態ではありませんが、17/3期に同社は思い切った勝負にでているのはB/S上では明らかです。
キャッシュフロー計算書からは16/3期から投資が続く
キャッシュフロー計算書を見ると、ユニバーサルエンターテインメントは16/3期から投資超過の状態。
投資C/Fは16/3期669億円、17/3期1205億円。16/3期の投資C/Fは700億円の社債発行により賄っており、16/3期・17/3期と投資=フィリピンのカジノオープンに邁進してきた同社の姿が如実に表れます。
2年で合わせて1800億円以上の投資C/Fとなっています。全部が全部フィリピンのカジノ向けではないにしても、「有形固定資産の取得による支出」がその殆どを占めており、大半がフィリピンのカジノの投資に充当されているんだろうなぁ、と推察されます。スンゴイ金額ですね、こんな金額出せるのもスゴイですが。
そんな訳で、同社の財務数字を見ると社運を掛けてフィリピンのカジノ事業に邁進していたのですが、その推進者の岡田会長は6月の株主総会をもって会社の表舞台から姿を消すこととなります。
ガバナンスの問題は当然あるでしょうが、ここまで投資してきたフィリピンのカジノ事業、岡田会長抜きで本当にやっていけるのか?、というのは誰しも思う率直な疑問ではないかと。
ま、それは覚悟の上で岡田会長外しに走ったんでしょうけど。けどカジノの運営って、サラリーマン組織にできるんだろうか、と思ってしまうのは、管理人は映画の見過ぎでしょうか?何せ一番好きな映画は「ゴッドファーザ」ですから、DVD-BOXまで持っていて数えきれないくらい見てます、笑。
ユニバーサルエンターテインメント株価は3,500円前後で安定
内紛状態のユニバーサルエンターテインメントですが、株価は3,500円前後で安定しています。パチスロとかカジノ関連では有名な会社ですが、とは言ってもジャスダック銘柄なので、そんなに注目はされていないのかも?
「画像出典:マネックス証券/日本株取引ツール トレードステーション」
しかし今後どうなるんでしょ。コップの嵐でしょ、的に案外放置プレイになったりして。ジャスダック銘柄はそれがあるからなー。
まとめ
タカタが株主総会の前に経営破綻したり、東芝が決算書もないまま株主総会を迎えたりと、今年の株主総会は話題の株主総会が何件かありますが、実はユニバーサルエンターテインメントの株主総会も見逃せない株主総会となります。淡々と総会は進んで行きそうですが、創業者でワンマンの岡田会長無しでフィリピンのカジノを抱えながらユニバーサルエンターテインメントの経営はこれまで通りやっていけるのでしょうか?
カジノ解禁の議論が日本でも進んでいる中、今後のユニバーサルエンターテインメントの行方は注目に値します。さてどうなっていくのでしょうか?
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