よく耳にするIPOとか、IPO投資という言葉。そもそもIPOとは何?
IPO投資について語る前にIPOとは、とか、IPO投資とは、という基本的な部分を解説いたします。
IPO投資を始めようと思っても、IPOの仕組み自体を知らないとスタートできません。IPOの仕組みを知った上で、IPO投資に取り組みましょー。
概要
IPOの意味、株式上場を指す
IPOというのは、Initial Public Offeringの頭文字を取ったものです。
未上場会社の株式を株式市場に上場し売買可能にすることを指しており、主に株式上場と表現されますが、新規上場や新規公開と言われることもあります。
株式上場を行うことで未上場会社は、一般投資家が株主となる公器としての存在が強くなります。それまではオーナー=創業者が何でも決めていた会社が、外部株主の視線も意識しながらの経営となっていきます。とは言え、オーナーが株主シェアの半数以上を保有し、上場後も経営の主導権を握るケースが殆どです。
実はIPOにまで至る会社は日本でも世界中でもほんのわずかな数しかありません。いわゆる日本に企業と言うものが数十万社あると言われている中で、上場している会社の数は3,713社(2018年1月9日時点)。色々な会社はありますが、日本全体の会社という観点で言えば、上場している会社は日本の企業の1%あるかないかです。
IPOしている、新規IPOする会社は日本の会社の中でも選ばれし会社、と言うことができます。
東京証券取引所に上場の際は上場会社の社長以下で上場の鐘を鳴らすのが恒例行事
公募と売出の2種類が存在
企業はなぜIPO=株式上場を行うかと言えば、色々な理由はありますが、株式市場からの資金調達を行う、という会社が殆どです。IPOに際し、企業が株式市場が資金調達を行うことを、公募増資=公募、と言います。
一方、中には新たに資金調達は必要としないにも関わらず、知名度アップや株主の事情から上場を行う会社もあり、その場合、既存の株主の株を株式市場に売り出してIPOを行う会社(売出)も存在しています。
いずれにしても株式が株式市場に公開される、という点に変わりはありませんが、公募で調達した資金は会社(以後、発行会社)に入りますが、売出で調達した資金は株を売った元の株主に入るので、発行会社の手元には一銭も入りません。
殆どのケースで、公募+売出のセットでIPOは行われますが、タマに公募のみとか、売出のみというケースもあります。
株主の事情でIPOするケースも
多くの企業がIPOの際に公募で資金調達を行い、自己資金を手にして成長のための投資に充てる、とのストーリーでIPOしますが、中には企業側の事情と言うよりも、株主の事情でIPOを行うケースもあります。
ファンドが大株主の場合と、オーナーが高齢で相続対策でIPOするケースが、株主の事情でIPOする二大例。
ファンドが大株主の場合は、ファンド自体は期間がある場合が殆どであり、期間到来までにファンドの保有する株式を現金化する必要があります。よってファンドが大株主の企業の場合は、ファンドの期間到来までにIPOを行い、株式市場でファンドの保有株を現金化する必要に迫られます。ファンドの保有株式は、一気に売却が可能な売出が行われるケースが多いのですが、あまりに保有数が多い場合は上場後に別途売却が行われます(ex.西武HD)。
また相続対策としてもIPOは利用されることがあります。オーナーが高齢の未上場会社の場合、相続税の算出時に株価を算出すると、非常に割高な株価となるケースが中には存在します(優良会社になればなるほど)。また未上場株の場合、相続税対策で取れる手段は限られます。一方で上場株式の場合、株価の評価は市場で付いている株価となり、合理的な相続税の算出が可能となります。また上場株であれば、相続税対策として打てる手も多くなります。地方の老舗企業がIPOして、そんなに公募もしない場合、なぜこのタイミングでIPO?、と思ったらオーナーが高齢で、なーんだ相続対策か、との例は今でも散見されます。(以前はジャスダック銘柄中心に多くありました)
両者いずれのケースも、IPOを行う企業自体にIPOのメリットは少ないため、株価も伸び悩む傾向にあります。近年増えているファンドが大株主の企業のIPOは、公募割れするケースが多くなっています。
IPOのメリットとデメリット
発行会社にとってIPOというのは一世一代の記念行事となります。これまで外部株主いない中小企業から、外部株主を招いて資金調達を行い、立派な上場企業の仲間入りとなりますので。世間的にも、上場会社、と言うだけでイメージや採用面等、多くのプラスの影響があります。
そんなIPOの最大のメリットは、自己資金の充実=手金を増やして大きいビジネスができるようになること。
それまで銀行借り入れしか、基本的に資金調達の道がなかった企業が、IPOによる公募増資を行うことで返済の必要のない、まとまった自己資金=手金を手に入れることができます。例えば、それまで銀行借り入れで出店していた外食チェーン店が、上場を契機に一気に自己資金で出店を加速、というのが代表的なケース。
それまでドングリの背比べだった業界内の競争が、上場会社が出ることで、その会社が上場時の調達資金を利用して一気に他社を抜き去って行った、というケースも過去に結構ありました。
一方でデメリットも。
その最たるものは、外部株主対応や四半期開示等で管理部門の増強を迫られる、という点。
それまで営業や開発のみ考えていればよかった会社も、上場会社となると、しっかりした管理部門がなければ、そもそも上場自体ができません。そして上場後はその体制を維持する必要があります。
社内で言えば、営業なのに資料作成が多くなった等々の愚痴が多くなるのも上場企業。
それと、オーナー経営者と言えども、上場後は外部株主の眼を気にしながら経営をする必要があり、会社を好き勝手に経営することは許されません。非上場の際は、社長がああ言うのだから仕方ない・・・、というのが許されても、上場企業でそれをすると、役員一同仲良くで株主代表訴訟の対象となることもあります。
その意味では、上場することで社員も経営者も一定の負担を強いられることになります。
だからIPOしない、という会社も多くありますし、多少の負担はあっても手金を得てビジネスを大きく飛躍させたい、という会社もそれ以上に多く存在しています。
いずれにしても、IPOというのは会社にとって一世一代の大イベント、ということは間違いありません。
中には竹中工務店やサントリーのように、IPOせずとも立派にやっている大企業も存在しています。未上場のまま大企業となり、自己資本も充実し資金的に問題ないようなら、正直IPOは企業(特にオーナーにとって)メリットはあまりない、と言われることもあります。
IPO投資とは
では、企業とは逆に投資家の立場でIPO、そしてIPO投資を見てみます。
IPO投資というのは、極々簡単に言えば、企業の上場時に株を買うこと。特に公募や売出の、上場前の時点で証券会社に応募をして新規上場する会社の株を買うことを意味します。
通常の株式投資であれば、株式市場から直接株を買いますが、IPO投資の場合は証券会社から株を買う(特に公募の場合)形となります。
そしてこの公開前の価格(公募価格や売出価格)と初値の価格差で儲けるのがIPO投資の醍醐味。100円の公募株の初値が500円となれば、何もせずとも5倍のリターンを得ることができます。IPO投資の醍醐味はココにあります。
ただし公募・売出価格>初値、というケースもタマにあるので、IPO投資と言えどもノーリスクの投資とは言えないので、ご注意を。
IPO投資はこの、公募・売出価格と初値の値差で儲けるという、非常に労力少なく投資収益を得られる可能性がある投資方法と言えます。
IPO投資のメリットとデメリット
では次にIPO投資のメリットとデメリットをピックアップしてみます。
IPO投資のメリット
・近年は儲かるケースが非常に多い
・手間が殆どかからないし精神的負担が少ない
・儲からない年もあるがトータルで見れば儲かっている
IPO投資、アベノミクス相場以降は、非常にパフォーマンスが良好です。また新規上場株を手に入れて、その株を初値で売るだけなので、投資の手間が殆どかかりませんし、精神的負担も少ないです。極論すれば、上場後初値が付いたら株価を見ずに成行で売却すれば出来上がり、です。
ただし過去あまり利益の出ない年もありましたが、トータルで言えばIPO投資は利益が上がっています。
公募株を手にしたら初値で売る。これがIPO投資の基本テクニックとなります。精神的なストレスなく、システムトレード的に投資ができ、尚且つ成功率が高い部分もIPO投資のメリットと言うことができますが、本件についての詳細は後述します。
IPO投資のデメリット
・証券会社の大口顧客でないと公募株は手に入らない
・大きなロットで投資できない
IPO投資の一番のハードルは、新規上場株が手に入らない、という部分。
かつてのNTT民営化や2015年の郵政3社上場のように、国民的IPOであれば新規上場株も手に入れやすいですが、それを除くと、新規上場株は証券会社の大口のお客さん中心に配られるため、庶民には殆ど縁の無い存在と言えます。
ただし近年はネット証券を中心に、公募や売出の新規公開株の一部もしくは全部を完全抽選方式で分配する会社も出現しています。コレは以前は考えられなかった事態ですが、新規公開株の完全抽選方式の分配によって、個人投資家にとってIPO投資は以前に比べるとグッと身近なものになりつつあります。
更にIPO投資は大きなロットで投資できない、という欠点も。1株50万円前後の公募価格が設定されることが多い新規上場株、公募で手に入る株は1株です。仮に50万円の株が2倍の初値になっても、100万円で50万円の利益。これが2株とか3株なら・・・、と誰しも思う所ですが、残念ながらIPO投資は絶対額としては億万長者になれるような投資方法ではありません。
IPO投資で守るべき点
IPO投資で守るべき点、それはただ1つ。相場を張らずに初値で売ること!
確かに初値の後でグイーンと株価が伸びる銘柄もあります。ただし全体的に見れば初値天井、もしくは上場後数日が株価のピークになる銘柄が多いです。銘柄分析が出来て、上場後に株価がグイーンと伸びる銘柄が分かればいいのですが、正直当てるのは至難の技。
よって大前提で、余程腕に自信がある方以外は上場後の相場を張らずに、損でも得でも初値がついたら売却すべき。既に書きましたが、上場して初値が付いたら、株価は見ずに成行で売却の注文を出してしまいましょー。
ただし新規上場会社が提出する目論見書を読み込んで、この会社は上場後更に値上がりするかどうかを分析するのは、IPO投資のマニア的楽しみ方としては”あり”です。いや本来、目論見書を読み込んで投資対象を研究する・・・、というのが”あるべき姿”です。だから、本当にIPO投資にドップリ浸かるのであれば、徹底的に目論見書を読みこんで、IPOする会社の分析を行うというのは正しい姿。ただし、なかなかそこまでするのは、時間も手間もかかります・・・。
1つ言えるのは、IPO投資に限らず、投資の途中で時間軸を変えると(短期売買のつもりが気が付けば長期売買に等)殆どの場合うまく行かないですし、仮に一度うまく行くとその後で手痛いしっぺ返しを食らうことが多いので(一度助かってしまうと、安心して次に倍返しでやられるケースがあります)、一旦決めた投資方針は変えずに初志貫徹するのがオススメです。
初値で売ると決めたら初値で売る、上場後もしばらく持つと決めたら(当然損切ラインは決めるべきですが)我慢する。早目の利食いはいいとして、初志貫徹せずにダラダラと損を持ち越すのは投資で失敗する典型的パターンとなります。
セカンダリー投資について
正直、公募株はなかなか当たりません。そんな中で、IPOした銘柄をIPOの過熱感がなくなり株価が下がった頃に上場市場で購入するセカンダリー投資、と言う手法も存在しています。一見IPO投資に似ているセカンダリー投資ですが、内容はIPO投資と全く異なります。
セカンダリー投資は通常の株式投資と何ら変わりがありません。要は株が上昇するかどうか、を充てる必要があります。
通常の株式投資に慣れており、銘柄分析もできまた損切もできるようならセカンダリー投資は投資の打ち手の1つとして利用できる投資方法となります。しかしながら、大前提で通常の株式投資に慣れていない場合は、そのまま購入の株価がジリジリと値下がりして塩漬け株となる可能性が高くなります。
IPOしたばかりの株は、上場直後が最も取引がなされます。その後、徐々に取引量が少なくなり、それに伴い株価も下落する、と言うのが1つのパターンです。多くの投資家が注目をするのは、IPO直後。その後、投資家の興味の対象が別の銘柄に移り、それとともに人気がなくなる=株価が下落する、というパターンで理解できるかと。
その後、再度投資家の注目を浴びて株価上昇、とのパターンもありますが、正直それはやってみないと分からない、通常の上場株投資の世界と同じです。
よってIPO投資に似ているから、と安直にセカンダリー投資に取り組むと思わぬ火傷をする可能性があります。公募株が当たらないから、と安直にセカンダリー投資は行わないように注意しましょー。セカンダリー投資は、通常の上場株投資と同じ目線で考える必要がありますよ。
まとめ
ネット証券中心に抽選方式で公募や売出のIPO株の分配を行う証券会社が出現し、過去に比べるとIPO投資も随分と身近なものになりつつあります。
ただし儲けやすいIPO投資と言っても”投資”には変わりないので、損するリスクがあるのはお忘れなく。特に初値が公募価格を割れる銘柄を、初値で売らずそのまま持ち続けると、ズルズルと株価が値下がりして、塩漬けになってしまうケースがあります。IPO投資は通常の株式投資とは違う、と割り切る部分が大切となりますので、ご注意ください。
近年、特にアベノミクス相場以降は儲かるケースの多いIPO投資ですが、マイナスになってしまった銘柄も存在しているのは事実。正しい知識を持って、IPO投資に臨めば、できる投資家に一歩近づくことが出来るのではないでしょうか。
IPOの基礎知識については合わせて下記もご覧ください
・IPO投資の基本と儲け方