BREXITを決定した国民投票もあり、イギリスの総選挙荒れるのでは?、と思ったら案の定余裕勝ちと思われた保守党が過半数割れで敗北。メイ首相が政治センスの無さを見せつける結果となりました。そしてココ一番の強さを見せたのはコービン・労働党党首。見事、労働党は議席増を果たしました。
そしてBREXITの時ほどではありませんでしたが、ポンド市場はGBP/USD(ポンド/ドル)を中心に大きく動きました。
2017年のイギリス総選挙の結果とその時の為替の値動きをまとめました。
概要
2017年イギリス総選挙の結果:議席数
2017年6月8日に行われたイギリスの総選挙、選挙前の各党の議席数は下記でした。
そして選挙の結果の議席数は下記。
・保守党318(増減▲13)
・労働党261(同+30)
・スコットランド国民党35(同▲21)
・自由民主党12(同+4)
・民主統一党10(同+2)
・その他13
保守党は12議席減、そして労働党は30議席増。保守党は第一党の座は維持したものの、選挙前に持っていた過半数の議席維持に失敗し、実質的には敗北しました。選挙前は過半数(326議席)を上回る330議席を有していたものの、選挙の結果は過半数割れの318議席。
保守党は過半数割れとなったものの、北アイルランド系の保守政党・民主統一党(10議席)との連立政権の樹立で、過半数確保の目処は立てたものの、メイ首相の政権基盤は強化どころか逆に弱体化するという結果となりました。
やらんでもいい選挙を行った結果、敗北したメイ首相
今回の総選挙、別にイギリスとしてはやる必要のあった選挙ではありません。現在のイギリスは首相に解散権はないため、通常であれば何もなければ2020年5月に予定の選挙を予定でした。
ところがEU離脱を行うために、政権の主導権確保を狙ったメイ首相は解散に打って出ます。野党第一党の労働党がNOと言えば、そもそも解散はできないのですが、戦う男・コービン氏が率いる労働党は解散を受けて立ちます。
労働党はゴリゴリ左派のコービン党首についていけない議員続出で党内分裂が深刻で、余裕の勝利を読んでいたメイ首相ですが、完全に足元をすくわれた形となりました。
求めて敵を作って敗北するという、戦略的には一番マズイパターンです。労働党を舐めきって痛い目にあうことになりました。けど客観的に見れば、確かにメイ首相の判断は当初は悪くなかったハズ。保守党やメイ首相の選挙運動のマズサもありましたが、それでもまさか労働党=コービン氏がここまで踏ん張るとは、誰しも当初は予想していませんでした。
ただしトレード的に言えば、別にやらんでもいいトレードをして大損してますね。待てないトレーダーはまず勝てませんが、待てない政治家もダメということかと。メイ首相、EU離脱を巡る党内のイザコザに我慢できなかったんだろうなぁ。
そのあたりの詳しい背景は、選挙前に書いた記事に詳しいので、そちらをご覧ください。
関連記事:2017年イギリス総選挙、労働党が大健闘
戦うオッサン、労働党ジェレミー・コービン党首の勝利
今回のイギリス総選挙、勝ったのは誰かと言えば、戦うオッサン・労働党のジェレミー・コービン党首ではないかと。
解散が決まった時点で、よく受けて立つなぁ、と思ったのですが、まさか労働党は議席増という結果に。ゴリゴリ左派で主要産業の国有化を主張のコービン党首に、付き合ってられん・・・、という議員がブレア元首相始め続出していたのですが、選挙の結果はまさかの議席増。
恐らくブレア派としては、選挙で議席減ってその結果の詰め腹をコービン氏に切らせる予定だったんでしょうが、見事に目論見が外れた格好。
しかし筋金入りの運動家、気が付けば労働党の党首にまで上り詰めたコービン氏、さすがの逆境力でしょう。まぁ、労働党が躍進の理由は、保守党やメイ首相が労働党を舐めすぎた+負けない選挙とタカをくくり過ぎた、というオウンゴールの面も大きい訳ですが、コービン氏が敵失を見逃さずに勝利を導いた面も間違いなくあるので、その辺りは筋金入りの運動家としての能力は伊達ではない、と言う事でしょう。
労働党ブレア派の面々は今回の選挙結果に苦虫を噛み潰しているのは間違いなく、あのオッサンはやはり只者ではない、と再認識しているかと。けど労働党が先祖返りするとは、管理人も思ってもいませんでした。長期低迷を経てブレア氏が若さを武器に労働党を立て直し(ブレア氏が41歳の若さで労働党の党首になって首相にまで上り詰めた時は、さすがイギリスは元祖民主主義の国だわ、と思ったものです)たのですが、約20年の時を経て、昔ながらの大きな政府の労働党に逆戻りするとは。ま、それだけイギリスは景気がよかったとは行っても、階級問題に加え、格差問題もそれ程解決がなされなかった、ということかと。
イギリス政治は混乱の時代がスタート
本来やらなくてもいい選挙をやった結果、敗北して政権基盤が弱体化したメイ首相。今後はイギリス政治は混乱の時代がスタートでしょう。
今後は連立政権でメイ首相は政権運営を当たる訳ですが、その相手は保守色の強い民主統一党。彼らの同意無しには政権運営が出来ないので、メイ首相の行動はこれまで以上に自由度がきかなくなります。これまでは保守党という身内にだけ気を遣えばよかったのが、今後は他人に気を遣わないと、物事が進められません。
イギリスはEUからの離脱という大仕事を控えていますが、今後その離脱交渉が更に難航するのは確実。そもそも保守党が離脱一色ではなく、更に今回勝利した労働党だって、看板はEU残留だった訳です。コービン党首はイヤイヤ残留に賛成していたようですが。
保守党が少数与党になってしまったので、次に選挙が行われるまで、当面イギリス政治は混乱の時代が続くことになりそうです。ひょっとすると、また何かのタイミングで臨時選挙があるかもしれませんが。尚、現状のままであれば次の総選挙は2022年5月の予定。ただし途中で今回のように選挙がある可能性もありますし、メイ首相は現在の首相に解散権の無い制度の変更を主張しており、今後法改正の可能性もあります。
しかしやらんでもいい選挙を行って、メイ首相は世界に大メイ惑をかけた格好になっています・・・。
関連記事:2017年イギリス総選挙、保守党が過半数割れでメイ首相に世界が大メイ惑?
スコットランド独立の気運は一歩後退?
EU離脱を決定しているイギリス、個人的にスコットランドが今後独立してしまうんじゃないか、と思ってますが、今回の選挙結果を見ると独立の気運は一歩後退した様子。
スコットランドの地域政党、スコットランド独立党は54議席→35議席に議席を21も減らしています。今回の選挙は、労働党がスコットランド独立党から議席を取り戻した形にもなっています。
国民投票でEU残留の意見が多かったスコットランドですが、何のことはない、残留しても思ったよりメリットが少ないかも、という意見が浸透しつつある様子。特に漁業では漁獲枠の割り当てのある中、自国では魚が取れないのにスコットランドの海域で他のEU加盟国は漁獲枠の範囲内で魚が取れてしまうので、EUから脱退したほうが自由に漁業ができていいんじゃね、との意見が台頭しているようです。イギリスと言えば、フィッシュ&チップス!(現地で食べる、脂ギトギトのフィッシュ&チップスはうまいですよ、日本のは上品過ぎる!)、漁業の存在は忘れちゃいけません。
イギリス政府に対し独立の可否を問う国民投票を再度要求する、とブチ上げていたスコットランド国民党ですが、保守党敗北の影で、議席数を大きく減らしているため、スコットランド独立の動きは若干後退することになりそうです。
総選挙結果判明時のポンド(GBP)の値動き
BREXITの時は世界の金融市場を大きく揺れ動かしましたが、今回のイギリス総選挙、大きく動いたのはポンド市場。特にポンド/ドル市場が大きく下落しました。
1.2960から1.2700まで1時間で約260pips下落しており、殺人通貨のポンド(GBP)の面目躍如たるものがあります。ただし中にはポンドをショートしていた方もおられたようで、読みが当たった方は大儲けできていたようです。管理人は完全スルーでしたが。
まとめ
政治は一寸先が闇、と言われますが、今回のイギリスの総選挙を見ていると、ホントそれを痛感します。
余裕の勝利と考えていた保守党がまさか負けるとは。。。メイ首相、政治センスないですね。しかしBREXITも以外でしたが、イギリス国民は意外な選挙結果がお好きなようです。為替のポジション持っていると、心臓に悪いです、ホント。
今回の総選挙でも世界を若干アッと言わせたイギリス国民。今後メイ政権はEU離脱という、非常にハードルの高い仕事を、政権基盤が弱体化した中で、無事に進めることができるのでしょうか?
今後もイギリスがマーケットやニュースをにぎやかにする機会が出てきそうす。今後のイギリスの状況にも注目していこうと思います。
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