EU離脱!、という予想外の結論となったイギリスの国民投票。出ていくならどうぞ御勝手に、というモードになりつつあるEUですが、当サイトとしてはまずは備忘録的に、国民投票の結果を地域別等、好き勝手にまとめてみました。
事前の予想通りですが、ロンドンを除くイングランドは離脱が多数で、スコットランドと北アイルランドは残留が多数。そんな中、スコットランドは再び独立を目指す動きが始まっています。
イギリスのEU離脱決定で金融市場が過剰反応しすぎの感がありますが、イギリスのEU離脱と言う選択、ヨーロッパ史の転換点と成り得る可能性は非常に高いと言わざるを得ません。
概要
イギリスのEU離脱を問う国民投票の結果
事前予想では僅差で残留、と予想されていたイギリスの国民投票でしたが、結果は下記のようになりました。
離脱 1741万0742票-51.9%
残留 1614万1241票-48.1%
離脱をが51.9%・残留が48.1%、僅差というには若干差があるように感じるのは管理人だけでしょうか。確かに、四捨五入すると残留・離脱ともに50%となる数字ですが、3%以上離脱が残留を上回る結果となったため、選挙結果としては文句なく離脱派の勝ち、でしょう。
EU残留派から再投票を求める動きもあるようですが、3%以上の票差がついた選挙結果であり、余程状況の変化がない限り再投票はまずないでしょう。
地域別の投票結果
既に地域別の投票結果も出ています。こちらは予想通りの結果となっています。
青が離脱多数地域で、緑色が残留多数地域。
イングランドは殆どの地域が離脱、そしてウェールズも離脱多数。
一方、スコットランドは残留、北アイルランドも残留。面白いのはロンドン。イングランドにあるロンドンですが、ロンドンは残留。
イギリスの各地域別にEU残留と離脱の得票率を分けると下記となります。
・イングランド 残留46.8%-離脱53.2%
・スコットランド 残留62%-離脱38%
・ウェールズ 残留48.3%-離脱51.7%
・北アイルランド 残留55.7%-離脱44.3%
尚、「テレグラフ」のサイトにはイングランドの中の更に地域別の得票率も掲載されています。
イギリスは正式名称が「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)という名前で、形の上では連合国家となっています。
そして今回の国民投票、スコットランドと北アイルランドでは残留多数、ということで地域毎に見事に結果が分かれています。世界の金融都市シティーを抱えるロンドンは、イングランドの中でもさすがに残留多数でしたが。
そんな中でEU残留を希望して、国民投票の結果もその通りとなったスコットランドは、早速独立を目指して再度の国民投票の道を模索する、と表明しています。(6/29にスコットランドはまず、EU残留を決断した、と発表しています)
2014年に一回ポッキリという約束でイギリスからの独立を問う国民投票を行ったスコットランド、最終的にイギリス残留という国民投票の結果となりましたが、イギリスがEU離脱となると、あの時とは全く話が違う、ということになります。
そしてこのスコットランド独立の動きが、北アイルランドに飛び火するとイギリスとしては、非常に厄介なことになります。現状、北アイルランド独立(要はアイルランドとの統合)について、動きは報じられていませんが、過去北アイルランド独立を目指すIRAとのテロとの戦いを強いられてきたイギリス政府、正直北アイルランド独立問題となるとIRAとの過去もあり、スコットランドと違い、平和裏に進む保証はありません。独立の動きが北アイルランドにまで飛び火するかどうか、今後注意深く見守る必要があります。
EUは初期メンバーで結束を確認
イギリスのEU離脱決定を受け、EUは早速6カ国外相会談を実施。6カ国というのは、ドイツ・フランス・ベルギー・オランダ・イタリア・ルクセンブルグの6カ国。要は、EU設立の初期メンバーです。
どうやら、イギリスがEUを出ていくならさっさと出て行ってもらう、という方針になったようです。
早く出て行ってくれモードのEU
イギリスのEU離脱派は、EUを去るにあたって条件交渉してゆっくり離脱すればいい、との考えのようですが、EUはそんな呑気な態度は取らない様子。
ま、当たり前ですね。会社辞めます宣言した人に対して、引き継ぎ業務は速やかに行ってくださいねと極めて事務的に言うの、普通ですから。辞めます宣言した人(組織)を大事にしないのは、洋の東西は問わないでしょうから。
イギリスが正式にEU離脱をするのには、2年〜数年かかると報じられていますが、形式的な要件はさておき、実質的には、じゃあバイバイ、とばかりにスグに実質的な離脱、ということは、EU側の結束を図るため+新たな離脱国を出さないために、可能性としては十分あり得るのではないかと。
残されるEU主要国にとっては、出ていくイギリスより残っている国を守るほうが先決ですので。
選挙を控えるEU諸国
EUの主要構成メンバー、イギリスに甘い顔出来ない事情も控えています。それは軒並み、自国の選挙が待っているから。今後のヨーロッパの選挙は下記の日程が予定されています。
2016年
6月26日 スペイン総選挙
10月頃 イタリア国民投票
→憲法改正が争点(上院の権限縮小)
2017年
3月予定 オランダ総選挙
4〜5月 フランス大統領選挙
→EU懐疑派の国民戦線ルペン氏の決戦投票進出が確実視
6月フランス下院選
→ルペン氏の国民戦線が躍進の見込み
8〜10月 ドイツ総選挙
→難民への対応を巡りメルケル首相の支持率低下
EUの財政緊縮策に不満渦巻くイタリアは、憲法改正の国民投票が10月に予定。争点は上院の権限縮小ですが、下手をすると、この選挙の争点が”EU離脱か残留か”、となりかねない危険性をはらんでいます。
そして山場は2017年。オランダ、フランス、ドイツとEU主要構成3国で総選挙が実施。EU懐疑派が台頭しつつあるEU各国、ここでEU懐疑派が議席を伸ばすようだと、そもそもEUとは???、という存在意義に疑問が生じる事態になりかねません。
特に注目したいのはフランスの大統領選挙。EU懐疑派で極右政党の国民戦線のルペン氏が大統領選挙で決選投票進出が確実視されています。現職オランド大統領は不人気なので、オランド大統領の再任はないとして、既存政党からの候補者がルペン氏に大統領選で敗れるようなことになれば、ドイツとともにEUを支えるフランス、その衝撃はイギリス脱退以上のものとなります。
イギリスのキャメロン首相が2016年のこのタイミングで国民投票に打って出たのも、この2017年のEU各国の選挙日程にあった訳で、2017年になるとEU側は構成国の選挙事情で、簡単に譲歩できない、という背景があったのですが、その2017年のタイミングを外してもイギリスはEU離脱を選んだ、という事実は相当重いと考えられます。
イングランドの大多数の庶民はEU離脱を支持
土日に今回のイギリスの国民投票絡みの新聞やTV等、随分見ましたが、印象に残っていたのは、某TVの特番。
”イギリスの漁業関係者の90%以上がEU離脱に賛成”と報じていました。
明確な根拠はありませんが、想像するに、ロンドンを中心とする金融や大企業の社員=残留支持派、の声は確かに大きかったけど、漁業関係者関係他の大多数の声なき声は大多数がEU離脱を支持していた、ということではないかと。
この辺りは、庶民の意見を見誤ったキャメロン首相の決定的なミスでしょう。日本と比べると圧倒的な階級社会のイギリス、キャメロン首相を中心とする保守党、そしてシティーで働く金融関係者、いずれもイギリスでは上流階級に該当するので、下々の者の気持ちを見誤ったと言わざるをえません。
一番損している労働党
イギリスの野党・労働党。その名の通り、労働者のための労働党ですが、今回の国民投票は全く存在感なし。実は労働党もEU残留支持だったんですが、ゴリゴリの運動家出身のコービン党首は全くやる気なし。であれば離脱支持にすればよかったものを・・・、と思わないでもないですが、本人の事情というよりお家の事情があったのでしょう。
そんな訳で、全く存在感を発揮できず、残留派にも離脱派=労働者にも愛想を尽かされてしまった感のある労働党。今回の選挙で、ある意味一番の敗北者と言えます。
そんな労働党、早速御家騒動が勃発。コービン党首、キャメロン首相と揃って退任の可能性が出てきました。本人、元々EU離脱賛成だったんでしょうが、お家の事情でEU残留に嫌々賛成して、その結果自分が辞めることになったとしたら、勘弁してくれよ・・・、と思っているでしょう。
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まとめ
6月24日に行われたイギリスのEU離脱を問う国民投票、離脱、という結果を受け、土日に見たり聞いたりした内容をまとめてみました。
金融市場の混乱はありましたが、少なくともイギリスから遠く離れた日本では、実体経済への影響は限られます。そもそも内需がGDPの6割の日本の場合、円高になると個人消費にはプラスになる、という側面を忘れてはなりません。(円高=悪い、というイメージが強すぎます)
今後のイギリスはどこに向かっていくのか?またEUはどうなって行くのか?非常に興味深いところで今後も追いかけて行く予定ですが、6月からスタートしたイギリスの国民投票シリーズ、本記事が取り敢えずの締めとなります。
ただし今後も徐々にデータ等書き足す予定なので、イギリスのEU離脱のニュースが出た際等に、そー言えば、といった形で当サイトの記事を振り返って頂ければ幸いです。
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