ギリシャの次はイギリスのEU脱退問題が浮上の予定

 ギリシャ問題が小康状態の中、実はギリシャの次にイギリスのEU脱退の問題が既に控えています。
 通貨としてのユーロの信認、正直これでは前途多難と言わざるを得ません。イギリスがEU脱退を言い始めた理由や背景、そしてEU離脱の際のメリットやデメリット等をイギリスがEU加盟に至った歴史もたどりながら探ってみました。(2016年6月21日更新)

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イギリスのEU離脱問題とは

 とりあえずは何とか小康状態を保っているギリシャ。これでEUとしてはヤレヤレと思いきや、お次はイギリスがのEU脱退問題が待っています。

 EUには加盟しているものの、通貨としてのユーロは利用しておらず、ギリシャ騒動は高みの見物となっていたイギリス。そんなイギリスは5月に行われた選挙で、2017年までにEUからの離脱を国民投票で問う、ということが決定しています。
 
 イギリスの総選挙、日本でも多少報じられていましたし、まだ5月の出来事なので、そー言えば、と言う方もおられるのでは?そして、そのEU脱退を問う国民投票は2016年に実行される方向になりつつあります。

イギリスがEU脱退を言い始めた理由、EUの移民政策への不満がスタートだがイギリス側の事情も

 昨今、イギリスは世界で最も労働ビザの降りにくい国として有名です。マンチェスターユナイテッドに移籍の噂もあったサッカーの武藤選手(最終的にドイツのマインツへの移籍)、仮にマンチェスターに移籍しても、労働ビザの関係で1年は他の国でのプレーを余儀なくされる、という話がありましたが、それが代表例。

 イギリス政府、イギリス国民共に、EUの移民政策に不満で、労働ビザの厳格化で対処療法している状態です。特に海外移民に職を奪われていると感じているブルーカラー層に不満が充満しており、その不満が、EU離脱問題を国民投票で問う、と言う方向で結実しつつあります。

 そして、イギリスのEU離脱を問う国民投票は2017年末までに実施予定、となっています。

 ただし、移民問題はきっかりの部分が大きいです。元々世界の海を支配した大英帝国の歴史があるイギリス。EU加盟後、様々な規制がEU基準となり、イギリスはEUに様々な指図を受けるように。元々企業活動に対し寛容で、それがゆえにロンドンに企業が集まってきたという経緯もありますが、EUの規制によりイギリス単独で自由な規制緩和もできない状態に。

 まぁ、簡単に言えば、自分たちの好きなようにやらせてくれない、という不満がズーットイギリスには充満していた訳です。そこに中東からの移民問題が発生して、その不満に火が付いた、という状態。

イギリスのEU加盟のメリット

 イギリスは金融の都市・ロンドンを抱え、特に対EUの金融面の入口的存在としてメリットを享受してきました。金融面のメリットを生かし、EU圏以外の国が対EUでビジネスをしようとすると、まずはロンドンに拠点を構えよう、ということになり、ロンドンそしてイギリスは金融面を中心に多くのメリットを享受してきました。(実際日本企業もEUに進出する際、イギリスを足掛かりにするケースが非常に多いです。ちなみに在英日本企業のほとんどはイギリスのEU離脱に反対)

 イギリスは独自通貨ポンドを維持したままEUに加盟しており、通貨ユーロは採用していません。その意味では通貨ユーロを維持するための負担をイギリスは免れています。通貨ユーロ維持のための負担が少なく、EU加盟の金融面のメリットを享受している、いいとこ取り、との批判が当然EU内では存在しています。
(あと金も出さないのに、EU政策に文句ばかり言う等)

 イギリスのEU離脱派が、EU加盟の数々の負担を訴えていますが、こと金融面ではイギリスはEU諸国からタダ乗り批判がある、というのもまた一面の真実となっています。

 ただ欧州を代表する金融都市ロンドンを抱えるイギリスにとって、EU加盟維持はヨーロッパのお金の流れの中心地に位置するためには、必要不可欠と言えます。

イギリスのEU加盟のデメリット

 イギリスのEU加盟のデメリットは前述の通り、イギリス政府が独自に規制強化や規制緩和が出来ない、という点。移民問題はイギリスは他国に比べると、EU側から一定の配慮がなされていますが、国民にとってはそんなのは関係ありません。

 移民に職が奪われたというブルーカラー層の不満の存在、EUに指図されるのは嫌だという大英帝国からのプライド等から、EU加盟のデメリットを感じている方もイギリスには多数おられる訳で、だからこそEU脱退を問う国民投票が予定されています。

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イギリスはEUに別れを切り出してしまうのか?

イギリスがEUに対し行った4つの要求

 2015年11月10日イギリスのキャメロン首相はEUに対して4つの要求を行った、と発表しています。

①移民に対する福祉の制限
②より競争力のあるEUの構築
③EUの単一市場の推進と非ユーロ加盟国の権利保護
④「より密接な」統合に向けたプロセスからのイギリスの解放

 目玉は①の移民政策と③④でのイギリスの権利の保護

 中東やアフリカからの移民が、ドーバー海峡を渡ってイギリスにも押し寄せています。EUの規定で移民に対し手厚い福祉政策をとっているイギリスですが、国民の中で移民政策に対する不満が充満しつつあります。そしてそれがEU離脱を国民投票で問う、という流れになっている訳で、今回EUに対しイギリスは移民に対する福祉の制限を求めています。

 ③④はかねてからイギリスが主張していたことではありますが、改めてここでも主張を展開。イギリスはEUには加盟してるけどユーロには加盟してないから、ある程度は好きにやらせてください、ということ。
 元々EUには後から加盟したイギリス。EUを創設したドイツやフランス程、EUに対して固執はしていません。ただし経済関係考えると既にEUとは離れられない関係となっているのは間違いなく、ここは交渉のカードといったところでしょうか。

 いずれにしてもイギリス国内でEUの移民政策に不満が鬱積しており、このまま手をこまねいていると大変なことになる(実際、イギリスの野党労働党の党首に急進派の方が就任)、ということで先にEUと交渉してその成果でもって、イギリス国内を何とかしよう、という考えが背景にあります。

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イギリスはEUに対して4つの要求を行っています

イギリスが強気の背景は経済の好調

 イギリス経済状況について、遠く日本では聞く機会が殆どありませんが、結構調子がいいんです。下記はIMFの出している2015年のGDP成長率予想。

「IMF世界経済見通しGDP予想(成長率)」
・中国6.8%
・アメリカ2.6%
・イギリス2.5%
・ドイツ1.5%
・ユーロ圏全体1.5%
・日本0.6%
・ロシア▲3.8%
・ブラジル▲3.0%

 先進国で成長率トップなのは経済が好調なアメリカ。
 イギリスはアメリカの2.6%に次いで2.5%と堂々の第2位、経済が好調に推移しています。

 同じEU加盟国で経済が好調と言われているドイツが1.5%であり、ヨーロッパにおいてイギリスの経済の好調さが一目で分かります。若年人口が今も増加しているアメリカとほぼ同等の成長率というのは、考えてみればスゴイことです。

 絶好調とも言える経済状況を背景に、イギリスはEUに対してもう少しわがまま言わせて欲しい、という交渉を行います。これが経済状況が悪かったら、そうはなりません。

 イギリス=英国病、というイメージがありますが、足元のイギリス経済は日本とは比べ物にならない位に絶好調です。

EU離脱問題、イギリス政府の本音は裁量権の拡大

 ただ、もはや経済自体はEUと深く結びついているイギリス。本音のところではEU離脱を本気で考えている訳ではなく、少なくともイギリス政府としてはイギリス国内での不満=国民投票を背景に、移民政策等でイギリス政府の裁量権拡大を狙う、と言うのが本音の様子。

  交渉によってそれなりの果実を得られれば、イギリス国内に対して、EUと交渉してこれだけの成果を勝ち取った、ということができるので、国民投票があったとしても交渉成果を元にEUに加盟存続となり、矛を収める気配が濃厚。歴史的に見れば、イギリス得意の外交作戦、と言った所でしょうか。

 ただしこれはあくまでも、EUがイギリスの主張をそれなりに聞いた場合。EU側から勝手にすれば?、と突き放されてしまうと、イギリスは引っ込みがつかなくなって、そのまま国民投票突入となります。

 ついでに言えば、イギリス国内でEUに対する不満が相当溜っているのは間違いありません、実際、9月に行われたイギリスの野党労働党の党首選で圧倒的勝利を収めたのはジェレミー・コービン氏。ゴリゴリの左派の方です、どれだけゴリゴリかと言えば原子力はおろか王室制度にも反対しているくらい・・・。元労働党の党首で首相のトニー・ブレア氏が「コービン氏が党首になれば労働党は破滅する」と訴えたくらい。

 日本の野党と違って、イギリスは政権交代が普通に発生する国。その国の野党の党首が、ゴリゴリの左派の方というのは、それだけイギリス国民に各種不満が鬱積している証拠。今の所コービン氏はEU離脱までは打ち出していませんが、当然EUに対し懐疑的な姿勢を取っています。

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経済界のみならずスコットランドもEU離脱に反対

 イギリスと言えばヨーロッパの金融の中心地ですが、当然のことながら経済界=金融界はイギリスのEU離脱に反対。これは考えてみれば当たり前ですが、実はイギリス政府として一番の懸念点は、スコットランドがEU離脱に反対している点。

 なだめすかして、何とかスコットランドの独立を阻止したイギリス政府。しかしながら、前回の総選挙でスコットランド地方は、独自の地方政党が大躍進し、独立の気運は一向に衰えていません。そんなスコットランドはEUへの加盟存続賛成派が多数。もし仮にスコットランドが独立した場合、EUの傘の下に入るという判断は、至極当然ではあります。

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イギリスのEU離脱、実はスコットランド独立に飛び火しかねない状況

 そんな状態の中、イギリスでEU離脱の国民投票を行った結果、仮に賛成多数となってしまうと、スコットランドに対してはイギリス政府は完全に股裂状態。一度は阻止した スコットランドの独立問題、再度火がつくのは明白。EU離脱問題が、下手をするとイギリスという国の解体につながりかねないので(スコットランドが独立すれば、北アイルランドにも飛び火しかねません)、イギリス政府としてEU離脱問題、対応を誤ると国家の分裂というトンデモナイ事態を引き起こしかねないんです。

 尚、イギリスは人民元をロンドンに取り込むことで、ユーロ離脱の際の保険を掛けています。詳しくは下記でどうぞ。

2016年に国民投票ができるかどうかがポイント

 実はイギリスにEU離脱されて困るのは、大陸側、特にドイツとフランスも同様。イギリスがそこまで言うなら話は聞きますか・・・、というスタンスのため、イギリス側としてはそこでどこまで譲歩が得られるかがポイント。

 ただしイギリスがドイツとフランスから言われているのは、話聞けるの2016年までだから、ということ。

 何故って2017年になると春にフランス大統領選挙、夏から秋にドイツの総選挙が待っており、両国ともに選挙対策で他所の国のわがままに付き合っていられる状態ではない=わがままを聞いていたら我が身が危ないから。

 特にフランスは右派の躍進著しく、下手するとゴリゴリの右派のルペン女史の大統領当選の可能性まであり、オランド大統領としては、2017年に対イギリスの交渉で譲歩の余地はありません。

 イギリスから見れば2016年内に国民投票に持って行くべくEUと交渉を行っている段階ですが、ここで発生したのがフランスでのテロ事件。フランス及びEUが対テロモード一色となっており、EU自体がイギリスの要望に構っていられない状態になっています。
 この状況が長期化すれば、イギリスのEU離脱の国民投票は2017年に伸びる可能性は充分ありますし、2017年にイギリスは対EU(フランス・ドイツ)から交渉の果実を得られないと、交渉の道具だったハズのイギリスのEU離脱が現実のものになりかねません。

イギリスがユーロを採用していない理由

 ここで若干知識の整理。イギリスが通貨ユーロを採用せず、何故独自のポンドを理由しているのか、改めて振り返ってみます。

 元々EU(旧EC)はフランスと西ドイツ主導で設立された機関。大陸欧州独自の機関ということで、イギリスは関係ないとばかり、対抗する形で独自にEFTA(エフタ-欧州自由貿易連合:European Free Trade Association)をオーストリア、スウェーデン、スイス、デンマーク、ノルウェー、ポルトガルの7か国で1960年5月3日結成。

 しかしながらEFTAはうまくゆくことなくイギリスは1973年にEFTAを脱退しECに加盟。ちなみに今もEFTAはアイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタインの4ヵ国が加盟し存続しています。

 そして当初はイギリスも将来的な通貨統合に備え、域内通貨間の為替レートを事実上固定する欧州通貨相場メカニズム(ERM)に参加。しかしながら、ポンド危機の結果、ポンド切り下げを余儀なくされ、1992年にERMから脱退。そして通貨ユーロを導入することなく、現在に至るまで独自通貨のポンドを利用しています。

 このERM離脱の契機となったポンド危機が、ジョージ・ソロス氏が通貨戦争でイギリス政府に勝利した、という有名なお話。しかしポンド危機の背景としては、ERMでの通貨の取引レート固定は早晩行き詰る、と考えた投資家がジョージ・ソロス氏を始め多くいて一斉にポンドを売り浴びせたというのが真相で、ジョージ・ソロス氏はあくまでもきっかけを作ったに過ぎない、と言われています。

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イギリスの通貨は今も昔と変わらずポンドのまま

通貨としてのユーロの信認はまだ遠い?

 何とかギリシャ問題の破裂は避けた形の今回。ただし結局の所、問題の先送りに近い決着となっており、再度ギリシャ問題がクローズアップされる可能性は高いです。ギリシャ政府の借金の棒引き、それが出来なければ借金自体を、それこそ昔の薩摩藩の財政再建のように100年返済にする等しないと、根本的な解決にはならないでしょう。

 そして次に控えるのが、イギリスのEU離脱問題。確かにイギリスは通貨としてのユーロは利用していませんが、ユーロという経済圏からすれば、イギリスの存在のありor無しは、通貨の裏付けとなる経済的背景に大きな差が生じます。

 通貨としてのユーロの信認、ギリシャ問題で一息つく間はあまりなく、次の試練を迎えそうです。ユーロという通貨の人類の壮大な実験、やはり一筋縄ではいきません。

 イギリスのEU離脱問題がクローズアップされると、再びユーロが売られる事態も予想されます。ただし、そんな誰でも把握できるファンダメンタル情報で勝てるほどFX市場は甘くないので、その点はご注意を。

 ちなみにポンドは暴れ馬通貨として有名な通貨。FXトレードする場合にも、ポンドの取り扱いは要注意とされています。

まとめ

 ユーロの問題、どうにかギリシャはひと段落しましたが、近くイギリスのEU離脱が浮上してくるのは間違いありません。通貨ユーロには直接関係ありませんが、EU内の経済大国イギリス、仮にEUを離脱となれば、その影響は計り知れないですし、EUやユーロの終わりの始まりとなる可能性も。

 ギリシャの騒動が取り敢えずは着地しても、まだまだEUそしてユーロはゴタゴタしそうです。ヨーロッパの統合という歴史的実験、当面紆余曲折が続きそうです。そして通貨としてのユーロが信任される日も、まだ時間がかかりそう。

 いずれにしても2016年のEU及びユーロは、イギリスがEUを離脱するかどうかという問題が大きくクローズアップされることになりそうですね。

PS 2016年6月24日、EUにとってお荷物のギリシャがEUに留まり、残留してほしいイギリスがEUを離脱することになりました・・・

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