人民元がIMFのSDR採用、イギリスが一番得をした?

 中国の人民元がIMF(国際通貨基金)のSDR(特別引き出し権)に採用されることが決定。元の国際化を悲願としていた中国としては、まさに願い通りの展開。
 人民元のSDR採用に際し、最も協力してきたのはイギリス。世界最大の為替市場のロンドンを抱えるイギリス、通貨に対するこだわりは並大抵のものではありません。
 ただしそこはイギリス、元のIMFのSDR採用、当然そろばん勘定が合って動いているようです。つまはじき状態のIMFを利用して中国に恩を売った形のイギリス、今後人民元がヨーロッパで取引の際は、ロンドンが中心ということになりそうです。

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人民元がIMFのSDRに採用

 予想されていたとはいえ、遂に中国の人民元が国際通貨への第一歩を踏み出すことに。IMF(国際通貨基金)のSDR(特別引き出し権)に採用されることが決定されました。

「IMF(国際通貨基金)のSDR(特別引き出し権)に採用されることが決定」(ロイター2015/12/1)

 個人的には原則海外に持ち出し禁止の人民元の国際化って、何をどう考えても辻褄が合わないのですが、今や世界第2位の経済大国となった中国、さすがにその経済力をほうってはおけない、ということでしょう。

 米ドルに代わって人民元の国際基軸通貨化を狙っている中国としては、人民元がIMFのSDR採用は最初の第一歩を踏み出した、と言うことになりそうです。

15.12.2人民元-min
IMFのSDR採用は人民元の国際化の第一歩

そもそもIMFとは?そしてSDRとは?

 IMFというのは国際通貨基金(International Monetary Fund)のこと。国際金融及び為替相場の安定を目的として設立された、国際連合の専門期間で188国が加盟。世界銀行とともに、国際金融秩序安定のための役割を果たしています。

 主に加盟国の経済情勢悪化等で資金繰りが苦しくなった時に、国家に融資を行っています。直近ではギリシャ危機の際にEUとともにギリシャとの交渉のテーブルについていたので、記憶されている方も多いのでは?アジア危機で韓国経済が破綻の際も、IMFが融資を行っていました。ちなみにIMFの融資を受けると、厳しい規制改革等が要求されるため、融資を受ける側からは評判のよい機関ではありません。現に韓国ではIMFに対するデモも発生しています。

 そんな加盟国に融資するIMFですが、国家ではありませんので当然通貨は発行していません。しかし経済危機が発生した国に融資する必要がありますが、その際に登場するのがSDR(特別引き出し権)。SDRは仮想通貨のようなもので、主要通貨との交換券としての機能があります。よってIMFが絡む国家間のお金のやり取りはSDRを通じて行われることになります。

 そのSDRこれまでは下記のような比率で合成されていました。

・米ドル41.9%
・ユーロ37.4%
・日本円9.4%
・英ポンド11.3%

 そして今回のIMFの決定により、2016年10月よりSDRの構成比率は下記のように変更となります。

・米ドル41.9%
・ユーロ30.93%
・人民元10.92%
・日本円8.33%
・英ポンド8.09%

 IMFはSDRの構成比率を5年に1度各国の経済力等を参考に見直しを行っており、世界第2位の経済大国となった中国が、かねてより人民元のSDR採用を主張していましたが、今回メデタクその願いがかなえられました。

 実際に人民元がIMFのSDRに採用されたからといって、経済的に直ちに何かが変わる訳ではありませんが、既に円を超える地位を築きつつある人民元、その国際通貨としての信用力にお墨付きを得た形となっています。

15.12.2ドル紙幣-min
ドルの比率のみ維持されています、さすが

国際金融体制は世界銀行・IMF・アジア開発銀行の3極体制

 メデタク人民元がIMFのSDRに採用されることが決まり、中国は国際金融体制の一角に食い込むことになりますが、実は世界の国際金融体制は世界銀行・IMF・アジア開発銀行の3つで地域毎にある程度役割分担を行っています。

 それは各組織の代表者の出身国を見ると一目瞭然。

・世界銀行→ジム・ヨン・キム総裁(韓国系アメリカ人)
・IMF→クリスティーヌ・ラガルド専務理事(フランス)
・アジア開発銀行→中尾武彦総裁(日本、尚前任は現日銀総裁の黒田東彦氏)

 各機関の役割は違う面も当然ありますが、世界銀行はアメリカが主導で南北アメリカ大陸を面倒見て、IMFはEU主導でヨーロッパ+アフリカの面倒を見て、アジア開発銀行は日本主導でアジアの面倒を見る、という住み分けがある程度なされています。

 そんな中で経済発展を遂げた中国、当然我が国も主導権を取らせてほしい、ということで最初にアジア開発銀行に要求を行った訳ですが、日米連合(アジア開発銀行は日本とアメリカの出資比率は同率の15.7%)に阻まれ、結果的にAIIB(アジアインフラ投資銀行)の設立に走った、というのがAIIB設立に至る1つの経緯として存在しています。
 
 AIIBは、要は日本が主導しているアジア開発銀行のライバルになる訳で、何もライバル会社の支援する必要はないのでは?そんな記事を以前書いています。

 そして、次に中国が目を付けたのが欧州が主導しているIMF、と言うことになります。

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IMFのSDR採用、最大の協力国はイギリス

 今回の人民元のIMFのSDR採用に最も積極的だった、と言われているのがイギリス。イギリスと言えばAIIBの参加もヨーロッパで一番最初に表明し、ヨーロッパ各国のAIIB参加の流れを作っています。
 先日の習近平国家主席のイギリス訪問時、エリザベス女王以下国を挙げての歓待は記憶に新しい所です。

 じゃあ、何故イギリスはそこまで中国に協力をするのか?その答えを解くカギは「為替」
です。

 イギリスのロンドンは世界最大の為替取引市場となっており、世界の為替取引の40%はロンドンで行われている、と言われています。FXのチャート見ていると分かりますが、為替市場が動くのはいわゆるロンドン時間から。確かにアメリカ時間も動きますが、一日の為替取引のトレンドを作るのはロンドン市場となっています。
 そんなロンドンを抱えるイギリスにとって、台頭しつつある人民元の取り込みはロンドン市場の活況を維持するためには必須となります。

イギリスのEU離脱の保険的意味合いも

 そんなイギリスですが2016年にはEU離脱を問う国民投票が予定されています。当サイトでも以前記事にしています。

 
 これまではEU残留派が多数を占めていましたが、実はフランスのテロ事件以降、EU離脱派が世論調査では多数を占める事態になっています。更に随分前から、大手金融機関はイギリスがEUから離脱した場合はロンドンの拠点を閉鎖する、と軒並み表明しています。当然、ロンドン支店は残るのでしょうが、イギリスのEU離脱が確定すると、イギリスはヨーロッパの金融の中心としての地位を失うのは確実な情勢。世界の為替取引の中心地としての地位も危ぶまれます。

 そこで効果を発揮するのが、今回の人民元の取り込み。イギリスがEUを離脱した場合でも、人民元の取引だけはロンドンが拠点になる可能性があり、その意味では、イギリスは今回中国に恩を売ることで、EU離脱が決定し為替取引の中心地の地位を失った場合の保険を掛けた形となっています。

 さすがは「007」の国イギリス、転んではタダでは起きない、ということでしょうか。いずれにしてもイギリスの立場から人民元のIMFのSDR採用を見ると、これでとは随分違う風景が見えてくるようになります。

15.7.15イギリス国旗
IMFによる人民元のSDR採用、イギリスに一番メリットがある?

実は立場が微妙なIMF

 IMFと言うと、一般的には国に融資する立派な機関、というイメージがありますが、実はIMF、今トッテモ立場が微妙な状態。元々、融資の際の条件が厳し過ぎる等の評価はありましたが、立場を決定的に悪くしたのはギリシャ危機。

 ギリシャ危機に際してはEUとIMFが共同歩調をとりギリシャと交渉していましたが、時系列で流れを追っていくとIMF、EUから見ると何じゃあいつらは、という対応を取っています。これ以上交渉しても無理、と途中でサッサと席を立ったり(これが結構多かった)、最後の最後まで結論を渋ったり等、EUとIMFは一枚岩じゃないのね、ということがよーく分かるギリシャ危機でした。

 そんな訳で、EU側はもうIMFと一緒にやるのはコリゴリという雰囲気の様子。そりゃ、ギリシャ危機の際に散々振り回されればそうなります。ちなみに、EUは足元でポルトガルの危機が再発しかねない状態になっており、仮にポルトガルで危機が再発した場合に、EUとIMFがどんなスタンスをとるかが、注目点ではあります。

 そして、アメリカは以前からIMFに対しどうぞご勝手に、というモードですし、日本はやはり遠い国。まぁ個人的には、タマに日本は消費税を将来的に大増税しないと財政が持たないという、余計なオセッカイをIMFはしてくれるのが気に入りませんが。
 
 各国から嫌われモードになりつつあるIMFが仲間を欲しがるのは当然で、そのIMFに中国との仲介をしたのはイギリス。イギリスにとっては、お互いラブコールをしている相手同士で、とっても楽な仲介であり、それで自国の為替市場の強化が図れるのであれば、非常に美味しいディールと言わざるを得ません。さすが大英帝国の歴史は伊達ではない、と言った所でしょうか。

ギリシャ危機を契機に立場が微妙なIMF(動画はラガルド総裁)

まとめ

 今回の人民元のIMFのSDR採用、人民元の国際化の進展という意味では、間違いなく第一歩となります。

 中国とイギリスでの共同歩調で今回に至った訳ですが、イギリスは周りから白眼視されつつあるIMFに中国を紹介することで、中国に大きな恩を売った形となっています。それで、ロンドンが人民元の国際取引の中心地となれば、正直イギリスにとって何も損することはありません。更には、ロンドンに人民元を呼び込むことでEU離脱の際の保険を掛けることにもなり、イギリスにとっては一石二鳥となっています。

 と、こんな流れで見ていくと、実はIMFによる人民元のSDR採用、最大の勝者はイギリスに見えてなりません。確かに中国は名を取った形になっていますが、最大の実を得たのはイギリスと思えますので。

 AIIB参加表明から、習近金平主席の英国訪問、そしてIMFのSDRへの人民元採用という一連の流れをエスコートしたイギリス政府、さすが、と言えるのではないかなぁ、と思います。

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