年金で7.8兆円の運用損がチャイナショック等で発生、通期での黒字化が試金石に

 チャイナショックのあった7~9月、年金の運用損が7.8兆円発生!四半期での赤字はこれまでもありましたが、2009年度以降4兆円を超す損失が発生したのは初。今後は通期で年金は黒字化するのかが今後の試金石に。
 政府の政策で、「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)が年金のポートフォリオを見直した結果、ボラティリティが激しくなるのは分かっていましたが、それでもチャイナショックで8兆円近い損失の計上とは驚き。
 アベノミクス相場を支えた一角の、年金資金での株式投資。今後のパフォーマンスの改善を期待したいですが、果たして?

スポンサードリンク

「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)の7~9月の運用損失は7.9兆円

 7~9月はチャイナショックの影響等で、いずこの運用会社も運用益(パフォーマンス)を出すのに苦労をしています。プロだから何とかしろ、と言いたいのは人情ですが、限られた制約条件下で運用しようとすれば、おのずと似たような結果となります。

 そんな訳で公的年金の積立金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)も結構な損を出しているだろうなぁ、と思っていましたし、雑誌にも予想記事が掲載されていました。雑誌等を見ると、GPIFの7~9月の損失額は約3兆円と書かれており、そりゃ大変だ、と思いつつも、過去のデータを見ると3兆円を超す損を出した四半期も存在しているので、まぁもう少し長い目で見てあげても・・・、と思っていました、正直な所。

 ところがどっこい、GPIFの7~9月の運用損を見て驚きました。何と7.9兆円の赤字!!!国内株式で4.3兆円の損、海外株式で3.6兆円の損。

 GPIFは、見事にチャイナショックでやられてしまったようです。

 尚、THE HUFFINGTON POSTは事前に7.9兆円の損を予想されてました。お見事!

「年金7兆9000億円、運用損で消えていた 証券アナリストが試算」

2009年度以降の四半期毎の運用損益

 年金の損が3兆円とか7兆円とか言われても、正直庶民にはピンときませんが、それでも過去からの流れを見れば分かるものがあるので、まずは2009年度(2010/3期)からの四半期毎の年金の運用損益をグラフにしてみました。

15.11.30GPIF-Q別損益-改-min

 年金の運用資産は株や債券。表現は悪いのですが、年金で相場をはっているのは間違いありません。当然、相場なので利益が出る時もあれば損する時もあります。だから今回の損もタマにあることさ・・・、と言えればよいのですが、問題なのはその額。

 過去2011/1Qや2012/2Qに3兆円オーバーの損失を計上したことはありますが、7兆円オーバーという損を計上したことは、少なくとも2009年度以降はありませんでした。

 今回のGPIFの損失自体は、ある程度予想されてはいましたが、その額の巨大さは驚きです。

年金運用の損の原因は株でやられたから

 何で過去に例を見ない位、年金の運用で損が出たかと言えば、もうこれは上記で分かるように、株でやられてしまったから。過去GPIFが運用資産をどんな割合で、どの資産で運用してきたかの推移をみると、その経緯も明らかになります。

15.11.30GPIFのポートフォリオ-min

 上記が2009年度(平成21年度、2010/3末)以降の、GPIFの運用資産の割合推移となります。

 これを見れば一目瞭然で、年々株への投資を増やしてきたのね、ということが分かります。特に2014/3末→2015/3末は日本株式、外国株式ともに5%以上の比率を増やしており、今回の運用損は株の比率を増やしたのが裏目に出た、という結果になっています。

 しかし、2010/3末と比べると現在は日本株、外国株ともに約2倍の資金を投じている訳で、損する時はこれまでの約2倍損するよなぁ、ということが分かります。

 ちなみに運用でも事業でも、予定通りに利益は上がらなくても予定通りに損が出ることが多い、というのは不思議なものです、ホント。

今年度は通期で黒字化するのかが最大の問題

 7~9月は見事にやられてしまった訳ですが、これを取り返すことができれば、問題無し。ただし、直近の2015/4Q(2015年1~3月)、2016/1Q(2015年4~6月)と比較的相場状況が好調の時でも利益は3兆円無かった訳で、仮に残りの10~12月と1~3月と3兆円ずつ、計6兆円の利益が計上できたとして、これまで▲52,809億円なので、漸く黒字化。

 郵政上場を控えていた10~12月は3兆円程度利益が出ている可能性はありますが、12月にアメリカの金利引き上げが待っており、来年の相場は今の所読めないので、年金の運用通期で黒字となるかどうか、結構ギリギリの攻防ではないかと。

 また中国等で〇〇ショックが発生して、金融市場が混乱したらアウトですね、これは。

スポンサードリンク

株式の比率を高めたのは政府の政策

 恐らく1四半期で運用担当者を責めるのは少々酷ですが、そもそも上記で指摘の年金運用で株の比率を増やすように指導したのは政府なので、今後何かあれば批判の矛先は政府に向かうことになります。

 アベノミクスの株価上昇は、クジラと言われる公的資金で株式市場の株を買い上げていました、という一端が今回のGPIFの損失の一端で陽の目を見ることになってしまった訳です。
 しかしチャイナショック程度でこれだけの損が出るとすると、今後日本の株式市場が下落トレンドに入った時、どれだけ損が出るのか、正直背中が寒くなる思いがします。

15.11.30クジラ-min
日本の株式市場にはクジラがいましたとさ

最大の問題はGPIFが株を売るに売れないこと

 今回は四半期で7兆円オーバーの損が出ました、という発表ですが、実はこの問題もっと先に更なる問題があります。それはどういうことかと言うと、今後株価の下落局面でGPIF=年金は株を売るに売れない、ということ。

 なにせ、2015年9月末時点で135兆円の運用資産を有しているGPIF、日本株だけで約27兆円を持っています。
 そして、この持っている株は売りたい時に売れません。何故ならば1日の東京証券取引所の売買代金が約2兆円しかないので。1日約2兆円しかない株の売買代金、GPIFの約27兆円簡単にはさばききれません。公的資金がクジラと言われる理由です。

 イザという事態が来たら、GPIFはもう身動き取れなくなっているんです。仮に株価が大暴落した時、GPIFが株を売ったりすれば、その図体のデカサ故、売りが売りを読んで、自ら首を絞めることとなります。となるともう指をくわえて見ていることしかできません。それでも年金の収入がプラスであれば、新規資金でナンピンも出来ますが、既に年金は支払い超過になっており、となると今後の株価の下落局面でGIPFが取れる手は非常に限られてきます。

 当然日本株集中のリスクも考えて、外国株への投資も増やしてきたのでしょうが、この7~9月は日本株の損が4.3兆円・外国株の損が3.6兆円。せめて外国株の分だけ国内債券で持っていれば・・・、という結果となっています。

 尚、GPIFの問題点については別途記事を作成したので、そちらも合わせてご覧ください。

15.6.24証券取引所-min
株を売るに売れない状態が来ると危険

まとめ

 上記でも記しましたが、7~9月の年金=GPIFの運用は損が出るのは見えていましたが、それでも額が7兆円オーバー、8兆円に近い損が出るとは驚きです。確かに今後、日本の株価上昇が続けば取り返す可能性はありますが、既にクジラの資金も枯渇したとも言われており、今後が少々心配。

 来年は参議院選があるから、とか、消費税のアップまでは株価は崩れない、という話もありますが、アベノミクス相場の特に後半戦はクジラが株を買っていた面が大きいので、じゃあ次は誰が日本株を買うのか?という需給を考えると、うーむ、となってしまいます。

 いずれにしても、どうやら年金はハイリスク・ハイリターンの世界にドップリ浸かっている、ということが明らかになった訳で、GPIFによる運用のパフォーマンスは国民の関心事になるでしょう、恐らく。

 日本の株式市場という池の中のクジラ状態のGPIF、今後のパフォーマンスの向上を期待しています。けど身動きが取れないのは、大変そ。その意味では401Kの個人年金は身動きが軽いから楽だよね・・・、まぁ管理人は既に全額MRFにしてしまっていますが。

 ともあれ年金の運用、今年度を締めた時に黒字化しているかどうか、注目です。

PS 残念ながら2015年度のGPIFの損失は9兆円オーバーのようです

<関連記事>
GPIFの問題点は損失額よりも株を売りたい時に売れない所

FivoCat
「株価プレス」のFacebookアカウントをフォローすると、更新情報をタイムラインにお届けします!

 

スポンサードリンク
スポンサードリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です