東芝が歴代3社長を提訴へ、恐怖の株主代表訴訟

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 東芝の不適切会計問題、東芝は歴代3社長を提訴する方向のようです。既に個人株主から、歴代歴代役員28人に対し計10億円の損害賠償請求訴訟を起こすよう求められていた東芝、会社自ら提訴することで株主代表訴訟を避けることに。

 現経営陣に踏み絵を迫ると言う、恐怖の株主代表訴訟の制度、ここで東芝の例をもとに株主代表訴訟の仕組みを取り上げてみようと思います。

株主代表訴訟とは?

 株主代表訴訟とは、会社法第847条に規定がある、取締役等に対する責任追及の訴訟のことを指します。取締役等の行為によって、会社と言う法人に損害が発生した場合、本来法人が取締役等を訴えるべきですが、身内で固まった取締役が仲間意識から責任追及を行わない場合を想定して、株主代表訴訟という制度が設計されています。

 会社法上は、単に責任とだけ規定されていて、特にその範囲については制限が設けられていない為、過去の判例から、取締役等が会社に対して負担するいっさいの債務が責任追及の訴えの対象となる、という取締役等にとっては相当重い制度となっています。

 そして、株主は仮に株主代表訴訟に勝訴しても、一銭も金銭的対価は得られません。
被害をこうむったのは会社、会社に対して賠償してください、というのが裁判の内容となるので。

 よって会社が訴訟を提起せず、自ら訴訟を提起することになっても、仮に裁判で負けてしまうと、何も得る者がないどころか、弁護士費用が持ち出しとなるので(勝訴の場合の弁護士費用等は会社持ちとなります)、株主代表訴訟は株主にとって金銭目当てでできるものではありません。

15.10.27法律-min
株主代表訴訟は会社法に規定されています

会社法上、会社が訴えるかor株主が訴えるかの、究極の選択を迫られる

 株主代表訴訟は2段階の制度となっていて、第1段階は会社が取締役等(以下、取締役に統一します)を訴えるかどうかを判断します。そして会社が提訴しない、と判断した場合、株主が訴訟を提起する、という流れとなります。

 会社が提訴を行わない場合は、当然何故提訴しないかの理由を通知する必要があり、前の取締役に悪いから等、子供の言い訳は通じません。そして、会社の提訴のタイムリミットは60日と定められています(会社法847条3項)。だから、ノラリクラリの引き伸ばし戦法も使えません。

 と、法律的に言えばいくらでも細かく説明ができますが、要は、元の仲間を会社が自分で訴えるか、さもなくば、外部の株主に訴えさせるか、二者択一を迫られます。

 株主代表訴訟を提起した株主は当然訴える気でいるので、会社が訴訟を提起しない、と判断すれば、当然株主は訴訟を提起します。
 
 そして株主が訴訟を提起すれば、もう会社側はコントロール不能。東芝のケースを例に取れば、現在の室町社長は責任無しということで経営再建に当られている訳ですが、当の室町社長まで責任を追及されかねません。となると、もう東芝の再建の大前提が崩れてしまいます。(あくまでも例えばの話です)

 そう考えると、今回東芝自信が歴代3社長を提訴する方向、というのは、各方面の予定調和で進んでいる東芝の不適切会計への対応、コントロール不能な事態を避ける、という観点では合理的な判断と言えます。

15.10.27困る経営者-min
株主代表訴訟の提起があると、先輩と株主の間で板挟みになる経営者も

サラリーマン社長には非常に残酷な株主代表訴訟

 日本の上場会社、基本的に取締役→代表取締役、と出世の階段を登る訳で、そして現在の社長は前の社長に引き上げられた、という方が大半。株主代表訴訟が株主から提起されると、現在の社長が自らの手で前の経営者を追い込むか、その追い込みを他人の手=株主に委ねるかという、究極の選択を迫られます。

 ダメなものはダメとして、けど心情的には・・・、というのは一切通じません。この辺り、会社は株主のモノ、という資本主義の冷徹な現実となります。

 あと、上場会社のコメントで株主に説明できない、というコメントがよくありますが、これは要は株主代表訴訟を踏まえてのことで、そんなことしたら株主に訴えられて現社長以下の役員の身ぐるみはがされてしまう、とのニュアンスがあります。

 幸いにして日本では余程のことがなければ、株主代表訴訟の提起はありませんが、東芝の場合、何をどう見ても余程のことに該当します・・・。

会社を守るためには東芝は自ら提訴せざるを得ないのでは?

 各方面の予定調和で物事が進んでいる東芝の不適切会計問題、この予定調和を守るためには、東芝は株主代表訴訟に対して自ら提訴する、という選択肢しかなかったのでは?
 「東芝、旧経営陣を提訴へ 株主代表訴訟提起期限迫り…」(産経ニュース)

 粉飾決算を行っていた旧経営陣を株主が訴えた、となれば、筋論で言えば訴えられた旧経営陣は勝てません。。。
 株主代表訴訟になってコントロール不能な事態になるよりは、自ら提訴して事態をコントロールしようとする、というのは妥当な判断。今回の問題、歴代3社長の問題、ということにしてしまっているので、ここまでの展開も織り込み済みのような・・・。 

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社外取締役に対する責任追及について

 今回、東芝は自らの手で提訴ということで、歴代3社長に絞っての責任追及と言うことになりそうです。

 ここで若干閑話休題。仮に株主代表訴訟となった時、社外取締役が既に存在している東芝のような会社の、社外取締役に対する責任追及について。
 社外取締役って、そもそもお目付け役的に外部から取締役になっていただいている訳です、その社外取締役が不正を見逃した、ということになると充分責任追及の対象となります。社外取締役には責任限定の契約はありますが、社外取締役も株主代表訴訟の対象となります。

 上場会社で社外取締役が増えている昨今、本当にこの人は経営とか会社の仕組みのこと分かっているのか?、という方が社外取締役に就任されるケースが散見されます。株主代表訴訟で社外取締役が訴えられて責任が認められた、となると現在の流れの中で一大事件となりそうです。

 社外取締役とはいえ取締役。何かがあれば当然責任を追及されます。取締役は仲良しクラブじゃないですよ。どーもその辺りを勘違いしているんじゃないかなぁ、と思うケースが最近ありますので・・・。
 様々な意見を・・・、という社外取締役の趣旨は分かりますが、コンプラ系の法律家でなければ、少なくとも会計の知識が無い状態で社外取締役になるのは、実は結構なリスクではないかと管理人は考えていますが、どんなもんでしょ。

15.10.27会議-min
社外取締役も株主から責任を追及される取締役会メンバーの一人です

まとめ

 管理人がその昔、株主代表訴訟の制度を知った時はまだ商法の時代で、監査役が取締役を訴えるかor株主が訴えるか、という制度だったと記憶していますが、結構残酷な制度だよなぁ、と非常に印象に残っています。

 東芝の不適切会計問題、会計の問題は既に峠を越しており、後は粛々と物事を進める段階で、今回の提訴の後も粛々と物事は進んで行くと考えられます。

 株価には関係ありませんが、株主代表訴訟は上場会社の経営者としては恐怖とも言える存在。
 タマに提起される株主代表訴訟、管理人的にはその昔に制度を知った時に非常に印象に残った制度であり、頭の整理を兼ねて東芝を例に取り、その制度をまとめてみました。
 

参考記事:「東芝の不適切会計問題の記事まとめ」

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