アイフォンに有機ELの採用決定、悩ましいジャパンディスプレイ(JDI)

 アップルがアイフォンに有機ELディスプレイの採用を決定。長らく日本勢が技術開発を行っていた有機ELですが、今や製品化では韓国勢のサムスン、LGが先行く存在に。
 
 スマホ用のディスプレイと言えば、日本ではシャープとジャパンディスプレイ(JDI)が2強。経営危機の真っ最中のシャープに有機EL対応の余力は無いとして、注目すべきはJDI。

 果てしない消耗戦が続くディスプレイ市場。JDIは有機EL戦線にまで手を広げるのか?それとも受注は減っても液晶のみにとどまるのか。JDIは非常に悩ましい決断を迫られそうです。

アップルが3年後のアイフォンに有機ELディスプレイを搭載と発表

 アップルが遂に有機ELディスプレイを採用するそうです。

「有機ELディスプレイ採用のiPhoneは3年後に登場−日本経済新聞(iPhone-Mania)」

 自発光と言われ、バックライトを必要とせず、ディスプレイ技術の本命と言われた有機ELディスプレイ。長らく日本勢が技術開発をリードしてきましたが、最終な製品化を果たしたのは韓国勢のサムスン電子とLGディスプレー。
 サムスンは既に自社のスマホに有機ELを搭載しており、LGは有機ELの大画面TVを発売済み。日本の家電量販店で姿を見かけた方もおられるのでは?

 歩留まりが悪く、製造コストが高い、と言われる有機ELですが、それでも遂にアップルがアイフォンに有機ELの採用を決定。今のところは完全採用という訳ではなく、一部の機種に採用、というようですが、いずれにしてもアップルに液晶を納入していた企業には影響必須。
 日本勢ではシャープとジャパンディスプレイ(JDI)に大きな影響がありそうです。

 ちなみに有機ELについては、下記の本が分かり易く解説してあります(管理人も持ってます)。

15.11.26アイフォン有機EL
遂に有機EL搭載のアイフォンの登場決定

有機ELを手がける余裕のないシャープ

 液晶のシャープが有機ELを手がけるハズはない・・・、と言うより現在シャープは経営危機の真っ最中で、また莫大な設備投資が必要となる有機ELの製造に手を出す余裕は全くありません。
 よってシャープは恐らく有機ELはスルーと考えられます。実は有機EL搭載アイフォンの登場するであろう3年後、シャープがスマホ用液晶を製造しているか=今の姿のままでいられるかも、結構微妙な所がありますが。詳しくは下記をどうぞ。

有機ELの投資はキャパオーバーのジャパンディスプレイ(JDI)

 上場後も産業革新機構が筆頭株主で、半分国策ディスプレイ会社の色も持っているジャパンディスプレイ(JDI)。まぁ、名前の通りですね、考えれば。シャープの中小型液晶部門と一緒になる可能性も取りざたされています。

 そんなJDIの業績は下記の通り。

15.11.28JDI業績2-min

 日立・東芝・ソニーの中小型液晶事業を統合して設立したJDI。利益が出始めたのは漸く2014/3期から。まぁ上場後程なく業績の下方修正を出したのはご愛嬌として(ホントは笑えない事態なんですが)、3期連続経常利益ベースでは黒字化しています。

 とは言え、中国のスマホ市場の失速もあり、JDIもウカウカとはしていられない状態です。

 そんなJDIが有機ELに参入した場合、技術開発はパナソニックとソニーの有機ELの技術資産を受け継いだ会社をJDIと産業革新機構で持っているから何とかなると仮定しても、問題は設備投資。
 アップルの方針を受けてLGが1兆円の有機ELの設備投資を行うようですが、現状の液晶でイッパイイッパイのJDIにそこまでの設備投資を行う余力はありません。

「韓国LGディスプレー、有機EL新工場に1兆円超投資へ」(ロイター2015/11/27)
 
 アイフォンが有機ELに完全移行する訳ではないため、液晶が無くなる訳ではありませんが、それでも確実にアップルからの液晶の受注は減少するでしょうし、アップルが有機ELに完全移行となると、否が応でも有機ELへの設備投資はせざるを得ません。(こうなると液晶の製造設備の減損が発生しそう)
 
 JDIにとって有機ELへの参入、その企業体力からすれば、出来れば避けたい所でしょう。足元、余裕は全くないようですし。

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ディスプレイ事業は消耗戦繰り返しの歴史

 ディスプレイ事業の歴史って、振り返ってみると実は消耗戦の繰り返しなんです。

 パソコン用モニター→TV→スマホ、と歴史は繰り返されています。

 技術的には液晶中心に進んできて、将来は有機ELと言われ続けてかれこれ15年以上近くの時間が経過しているような。ここで漸く有機ELが主役の座に躍り出る可能性が出てきています。

 ただし過去の歴史を振り返れば、恐らく有機ELの時代になっても、継続的な設備投資が必要、という状態が変わるとは思えず、となるとディスプレイ市場は有機ELという技術に変わっても、今後も消耗戦が続く市場ではないかと。

パナソニックとソニーは消耗戦から降り有機ELから撤退

 元々日本で技術開発が行われた有機EL。今は無き三洋電機がコダックと組んで有機EL実用化のトップランナーに立っていた話、結構懐かしい物語になっています。
 そしてソニーは小型ではありましたが、有機ELのTVを自前で製品化までしていました。パナソニックも有機ELの製品化に注力していた会社。

15.11.26ソニー有機ELTV-min
懐かしのソニーの有機ELテレビ

 所が三洋電機は会社自体が無くなり(途中で有機ELの開発をやめていましたが)、ソニーとパナソニックも有機ELディスプレイの製品化をやめた、と2014年に発表。

「ソニーとパナソニック、有機EL撤退へ ジャパンディスプレイに売却(産経WEST)」

 家電マニアにとっては、結構驚きの発表でしたが、実はこの発表、しょーがないな、と正直思いました。

 何故って、ディスプレイ事業ってつまるところは金食い虫。確かにディスプレイ事業は目立つし華もある部門ですが、商売として考えると、巨額の設備投資の割には儲からない典型例。パナソニックはプラズマで非常に高い勉強代を払っています。
 有機ELを事業化の場合、また巨額の設備投資は必要だけど、採算取れるとは思えないからやーめた、って至極当然の経営判断と思います、悲しいながら。

消費者は画面がキレイであれば何でもいい

 
 一消費者という視点で言えば、液晶だろうがプラズマだろうが有機ELだろうが、要はキレイな画面が見られれば、技術は何でもいいんです。
 このスマホやTV、有機ELなんだすげーだろ、と思うのは、一部のマニアで、価格が安くて画面がキレイなら、技術は何でもいいんです。コストパフォーマンスが全て。

 スマホはまだ分からない部分はありますが、少なくともTVはそうなっています。管理人、家電量販店が大好きでよく行きます。先日スターウォーズのDVDが有機ELと液晶4Kで同時に流れていましたが、画面のキレイさは殆ど一緒。
 であれば国内メーカー製であれば、安い液晶TV買いますよ。ちなみに両方ともとってもキレイでした。ブルーレイの「スターウォーズ3」でしたが、思わず見入ってしまいました。家のブルーレイで何度も見ているのに・・・。

 正直、夢の無いお話ですが、ディスプレイにしたって売れて利益が出てナンボの世界。液晶のレベルが昔に比べると泣けるくらいに向上しており、ここで大金投じて有機ELやらんでもよし、と判断したパナソニックとソニー。その判断は「あり」だと思います。

15.11.26LG有機ELTV-min
LGの有機ELTV確かにキレイなんですが値段を考えると・・・

困ってしまう産業革新機構と経済産業省

 経済産業省の別動隊的位置付けも有している産業革新機構。パナソニックとソニーの有機ELの技術資産を受け継ぎ、機構とJDIで有機ELの技術は確保してあるものの、有機ELの製造をJDIにさせるのは荷が重いのでは?

 産業革新機構がJDIに追加出資して、その資金でJDIが有機ELの設備投資、というのが一番分かり易いシナリオですが、ファンド運営という観点からすれば、既に成功して資金回収した先に、再度リスクを取って投資するのはナンセンス。国策ファンドだから、通常のファンドとは違いますから、という理屈は付けられますが、これをするとホントJDIは国営ディスプレイ会社になってしまいます。

 国が笛を吹いても、民間企業が踊らないケースは多々ありますが、これって理由は簡単で、経済合理性が無いから。経済合理性=儲かる、と分かれば言われなくとも自分でやりますって。

 何とか有機ELの技術を国内で花咲かせたいと思っている経済産業省、どんな手を打つのでしょうか。
 どうやらJDIにシャープの液晶部門を買収させて、名実ともにジャパンディスプレイを日本を代表するディスプレイ会社にする、という方向のようですが。

まとめ

 有機ELって、バックディスプレイがいらない自ら光夢のディスプレイ技術です。ソニーの有機ELに対するこだわりは相当だったのですが、最終的に撤退を決めています。
 ディスプレイ市場はもう完全に消耗戦になっており、技術は良くてもあまり関係ない非常に厳しい世界となっています。

 アップルの有機EL採用、取引先としてはビジネスチャンスではありますが、ボロ儲けはさせてもらえないアップルとの取引(まぁ外資系はえてしてそんなもんですが)、体力の乏しいJDIは果たして、もう一歩踏み込んで有機ELまで手を伸ばすのか?

 有機ELを手がけるにせよ、見送るにせよ、アップルが既に大口の顧客であるJDIは非常に悩ましい事態がやってきていると言えそうです。
 シャープとの統合問題もありますが、JDIは有機ELをどうするのか、こちらの判断も大いに注目したいと思います。

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