ジャパンディスプレイ(JDI)が倒産の危機?産業革新機構に支援要請へ

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 どうやらジャパンディスプレイ(JDI)の様子が良くないようです。8月6日(土)には、JDIが産業革新機構へ債務保証等の支援要請へ、と報じられています。更に、9月23日(金)には銀行団に対して最大500億円の融資を要請、とも報じられています。

 第1四半期に大幅な赤字の予想決算を発表したJDI。国策ディスプレイ会社の運命は今度どうなっていくのでしょうか?(2016年9月26日追記)

PS 2018年12月、中国系企業がJDIに対し600億円の出資検討と報じられています。しかし中国系企業との関係強化は、最大顧客のアップルの機嫌を損ねる可能性があり、JDIは非常に悩ましい状態に置かれています。
赤字が続くジャパンディスプレイ(JDI)は中国系企業が600億円の出資を検討もアップルとの関係が心配

ジャパンディスプレイ+倒産、で増えるアクセス

 金曜の晩に当サイトのアクセス解析を見ていると、ジャパンディスプレイ+倒産、の検索で下記記事をご覧になっている方が多数。

 ん?ジャパンディスプレイ(JDI)に何かあったのか?そしてその謎は、翌日の日経新聞を見て溶けることになりました。

「液晶不振で支援要請 ジャパンディスプレイ革新機構に」(日本経済新聞16/8/8)

 他にもネットでニュースが流れてました。

JDIへ金融支援検討=液晶販売、不振-革新機構」(時事通信)

 あまり良い話は聞こえてこなかったJDIですが、遂に親ともいうべき産業革新機構へ支援要請ですか。。。
 上記記事を読むと分かるのですが、資金繰りがキツクなっている様子。これって結構大変。まぁ、大変だからこそ産業革新機構に支援要請を行う訳なんでしょうけど。

9月23日には500億円の融資要請との報道

 そしてその後、実はあまり動きのなかったJDIですが、9月23日に銀行団に対して最大500億円の融資要請と報じられています。

JDI、銀行団に融資要請 最大5百億円、環境悪化で(中日新聞)

 いよいよ苦しくなったのか?、とも考えられるJDIによる銀行団への融資要請。メインバンクというべき存在を持たずにやって来たJDI、融資要請を受けたみずほ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行の3行も、ハイ分かりました、と貸すとも思えません。銀行に対して産業革新機構が債務保証を付ける、という報道が夏頃出ていましたが、いよいよ機構も本腰あげてJDI対応をどうすべきか考えるタイミングが来ているようです。

第1四半期は大幅赤字を発表

 JDIは8月5日(金)に第1四半期の予想決算を発表しています。あまり良い数字ではない、と既に市場関係者は予想していたようですが、円高要因があるとはいえ、経常利益で100億円を超える赤字は驚きをもって受け取られたようです。

16年6月第1四半期 売上高1,740億円、営業利益▲35億円、経常利益▲143億円、当期純利益▲118億円

100億円を超える赤字で驚き、とは言いますが、とは言えJDIの14年6月第1四半期はそれ以上の赤字を計上しているので、JDIの決算の歴史から見ると、かつて見た光景、と言えなくはありません。ちなみに14年6月第1四半期は赤字でしたが、通期の15年3月期は経常利益18億円・当期純利益▲122億円、と経常利益ベースでは黒字化を果たしています。ただし当期純利益は100億円以上の赤字を計上しています。
 下記が14年6月第1四半期の数字。

14年6月第1四半期 売上高1,251億円、営業利益▲126億円、経常利益▲169億円、当期純利益▲168億円

歴史は繰り返す、ということになれば、JDIの17/3期決算は当期純利益で100億円以上の赤字を計上することになります。

16年6月第1四半期の貸借対照表(B/S)

 1Qの赤字は分かった、じゃあB/Sはどうなっているのか?少し突っ込んで見るとします。

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JDIの16/6月1Q決算短信より

 16/3期末と比べると売掛金が+346億円、資金繰りがきつくなった大きな要因でしょう。それに対応するように、短期借入金+355億円。売掛金があれば(JDIの大きなお客さんはアップルなので、とりっぱぐれる心配はありません)銀行も短期ならお金は貸せます。目先の資金繰りはコレでよいとして、問題は中長期的な部分。売掛金は既に売上計上済みの数字であり、今後売上が上がれば問題ありませんが、その売上は1Qでは不調な訳です。よって、今後このままだと売掛金は減少して、入金は少なくなっていきます。ただし今後の売上がどうなるかは、B/Sからは分かりません。

 B/Sを見て気になるのは、固定資産の増加+292億円。建物及び構築物が+660億円なので、この数字は白山の新工場が該当していると推察されます。何かと話題の白山の新工場ですが、その建設資金の大半をアップルが負担していると言われています。足元の資金繰りがカツカツと言われるJDI、手金はそんなに出せない、ということなんですが、B/Sの負債の部を見ると「前受金」1,919億円(期末から+600億円)存在しており、ココにアップルからの資金が入っていると推察されます。

白山新工場がJDIの重い負担になっている可能性が

 既に各方面で報じられているように、JDIの白山新工場は稼働の目途が今の所は立っていません。

ジャパンディスプレイ襲うアップル依存の代償」(日経ビジネス)

 問題は白山の新工場、アップルの資金で建設したが故に、JDIが勝手にどうにかできる訳ではない、という点。かつてシャープが同じように、アップルの資金で建設した工場、自社では何も手出しできずに苦労していましたが、今やJDIで同じような光景が再び繰り広げられています。

 工場作るお金はアップルが負担しているものの、工場を維持するには目に見えないお金がかかってくる訳で、その負担はJDI持ちになります。ついでに言えば、資金繰りが厳しいJDI、まさか白山の新工場稼働前にバンザイする訳には行きませんね、当然。アップルが許してくれません。と言って、アップルが下請け的立場のJDIの面倒を見る訳もないため、JDIは有機ELの本格投資云々以前の問題として、結構悩ましい立場に置かれてしまっています。

既に資金繰りの危機が噂されていたJDI

 先日、本屋で雑誌「選択」を久しぶりに立ち読みする機会がありましたが、JDIの記事が出てました。内容的には、資金繰りが大変、という記事で、設備投資が大変なJDI、資金繰りが大変って大丈夫か?、との印象を有しました。

 そして出てきた産業革新機構への支援要請。うーむ、シャープを買収する・しない、と言っていたJDI、分かっちゃいましたがシャープを買収する所の状況ではなかったようです。これでシャープを買収していたら、どうなっていたんでしょうか・・・。

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産業革新機構はどうするよ?

 今回の事態、当事者のJDIは当然ですが、産業革新機構も非常に困った事態。いや、今さら頼られても・・・、正直な気持ちはこんな所でしょう。

 ソニー・東芝・日立の中小型ディスプレイ事業を産業革新機構が旗を振って統合してできたジャパンディスプレイ。2014年に上場して機構は一部株の売却を行ったものの、今も約35.5%の株主。実質的には親会社的存在です。

 けど通常、ファンドはIPOして株を売り切ったら、それでその会社とはおさらば。機構は政府系のファンドで(官民ファンドと言われますが、殆ど官のお金=税金です)通常のファンドとは違うものの、既に一部とはいえ利益確定した会社に更に追加で資金投入の可否を判断せざるを得なくなっています。

 どうやら最初は債務保証という形で、直接的な資金支援は避ける方向のようですが、仮にJDIが破綻したら目も当てられません。そんなことない?けど政府が支援してもダメだった例、エルピーダを思い出せば、何があるか分かりませんので・・・。

 ついでに言えば、再生ビジネスはやらない、ということになっている産業革新機構、JDIに今後更に資金をつっこむようになれば、そのお題目との整合性も問われてきます。シャープと統合が話題になっていた時は、まだJDI自体が危機的状況ではなかったので、シャープとの統合に絡めて色々な絵も描けたのでしょうが、今回はJDIのお尻に火がついている状態なので、色々理由を付けても、要はJDIの再建のための資金提供でしょ、と言われてしまいます。
 再生投資はやらない、と言っても他の案件と違って、既に実質的に機構の子会社のJDI、何も手助けしない、という訳にはいかないのでしょうが。

PS 2016年12月13日、革新機構はJDLに750億円を支援と報じられました!
関連記事:ジャパンディスプレイ(JDI)が有機EL開発のJOLEDを買収、革新機構は750億円を支援

2014/3期の産業革新機構の経常利益は586億円

 実は産業革新機構、JDIが2014年3月に上場しているので、2014/3期は大幅な黒字になっています。試みに5期分の決算を並べてみます。

12/3期売上高0億円、経常利益▲44億円、当期純利益▲44億円
13/3期売上高1億円、経常利益▲95億円、当期純利益▲97億円
14/3期売上高1,668億円、経常利益586億円、当期純利益362億円
15/3期売上高43億円、経常利益▲83億円、当期純利益▲83億円
16/3期売上高751億円、経常利益▲421億円、当期純利益▲477億円

 16/3期の赤字400億円オーバーというのは、上場株式の減損約600億円が大きいです。どこの会社か、とは書いてありませんが。。。
 5期分の決算で言えば、産業革新機構が黒字になったのはJDIのIPOのあった2014/3期のみ。その14/3期の黒字も、過去の累積の赤字で食いつぶしている状態。実はちゃんと調べるまで、機構には多少JDIのお釣りが残っているだろう、と思っていたのですが、どうやら甘かったようです。。。

 機構側としては、既にJDIの保有株の減損はしている可能性が高いですが、既にその時点で累計の損益は赤字。更に追加出資や融資となると、更なるリスクを抱えることになり、非常に頭の痛い事態になっていると想像されます。

JDIに対する目先の資金支援は、要はアップルに対する体面維持の資金となる可能性大

 アップルの資金で建設した白山の新工場の存在を考えると、産業革新機構が債務保証等で目先の資金の面倒を見ても、それはJDIがアップルに対する体面維持の資金となる可能性大。白山の新工場が稼働前にJDIがバンザイしたら、眼も当てられません。

 問題はそこから先どーするの、というお話。白山の新工場、どうにか稼働しても使うのは恐らく数年間。そこから先、更にアップルとシンドイ思いをしながらお付き合いを続けるのか、他の道を歩むのか。

 機構も分かっちゃいるけど、大株主なので簡単にはJDIを突き放すことはできません。個人的にはJDIのIPOの時に、素直に全株売却しておけばよかったのに・・・(それが可能だったかどうかは、別問題として)、と思わざるを得ません。

ジャパンディスプレイ(JDI:東証1部6740)株価推移

 では最後にJDIの株価推移を見てみます。週足チャートを表示してみました。

16.8.8JDI株価-週足
https://jp.tradingview.com/x/byMOJZhO/
※チャートはTrading Viewを利用

 ウーム、完全に下落トレンドで上昇の気配無し、というのが週足チャートの状態。まぁしかし、国策ディスプレイ会社の株価がコレでは・・・。株価は既に随分前から、警告を発していたようです。

まとめ

 JDIは、大赤字計上且つ産業革新機構に対する支援要請、ということで、非常に苦しい状態にはなっているようです。

 国策ディスプレイ会社とも言えるJDIは今後どうなってしまうのでしょうか?そして親会社とも言うべき産業革新機構はJDIをどうするのでしょうか?正直、一度EXITした会社への支援は、相当批判が生じます。更に機構の収支を見ても、JDIのキャピタルゲインは既に使い切っている状態で、新たにJDIでリスクを取るとなると、本来はゼロベースで考える必要がでてくる状態になっています。

 JDIそして産業革新機構はどんな判断をするのか?今後の展開に注目したいと思います。

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