出光興産と昭和シェルの合併、創業家の壁は想像以上に厚い

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 出光興産が創業家の反乱に頭を悩ましています。昭和シェル株を購入→昭和シェルとの合併を目論んでいた、出光経営陣。しかしながら、出光創業家が合併に反対。出光株の3分の1以上を保有する、と言われている出光創業家。出光の合併阻止に向け、自ら昭和シェル株を購入する等、事態は新たな展開に。

 出光と昭和シェルの合併、想像以上にハードルが高くなっています。合併が出来るかor出来ないか、ではなく、強引にでも合併をするかorしないか、という状態。出光経営陣は創業家と徹底的に闘争して昭和シェルとの合併を行うのか、それとも創業家が勝利して合併話は流れるのか、それとも第三者が現れてトンビが油揚げをさらっていくのか?今後の展開に注目です。

新たな局面を迎えた出光経営陣対出光創業家

 既に当サイトでは出光興産と昭和シェルとの合併問題について下記で記事にしています。

さてどうなることやら、と思い新聞等を見ていましたが、新しい局面を迎えています。

出光創業家が合併阻止を狙って”奇策”」(東洋経済)

 出光と昭和シェルの合併に反対している創業家・出光昭介名誉会長が自ら昭和シェルの発行済み株数の0.1%を市場を通じて取得した様子。その取得金額は約3.8億円。

 詳しい内容は上記の東洋経済を読んでいただくとして、これって出光創業家が新しい戦線を築いたことに他なりません。どーいうことかと言えば、これまでは極論すれば、株主総会の場で合併に賛成するかか反対するか、という点のみがテーマだったものが、今回の一件で、出光は昭和シェル株の取得にTOBをかけるべきか否か、というテーマが発生することになりました。

出光が昭和シェル株を取得するのにTOBは必要か?

 大前提として、出光は昭和シェルの大株主のロイヤルダッチシェル(以下、シェル)と昭和シェル株取得の売買契約を締結したものの、現段階で実際の売買は行われていません。とっとと先に取得しておけばよかったもを、と思わないでもないのですが、公正取引委員会の審査があったようなので、それはやむを得ない面があります。
 
 シェルが保有の昭和シェル株は発行済総株式数の33.24%、ギリギリ1/3を超えていません。株券の所有割合が1/3超となる場合にTOBを行うこと、と金融商品取引法にあるので、このまま淡々と時間が経過して、シェルから出光に株式の売買が行われればTOB無しで昭和シェル株の売買は行われることになります。

 その中で、創業家が放ったのが、自らの資金で昭和シェル株の0.1%を取得するという一手。このまま出光が昭和シェル株を取得すると、創業家の0.1%と出光の取得する33.24%で合計33.34%となり、金商法のTOB発動要件にひっかかってくる”可能性がある”というのが現在の状況。

 ポイントは創業家・出光昭介名誉会長が出光の特別関係者に該当するかどうか。出光創業家で出光興産株の1/3以上の株式を保有している、と言われていますが、出光昭介名誉会長本人が出光株の1/3以上の株を保有している訳ではありません。この辺りは、最後は裁判所に決めてもらうしかないのですが、ともあれ非常に微妙なゾーンにあることは間違いありません。その意味では、出光創業家は絶妙なクセ球を投げた、と言っても過言ではありません。

 尚、TOBの制度についての詳細は、下記が分かりやすくまとめてあります。

いまさら人には聞けない公開買付け(TOB)のQ&A(大和総研)

TOB強行は選択肢としてはあるが、現実的ではない

 どうしても出光経営陣が昭和シェル株を取得したい、というのであればTOBで取得するのが一番問題ありません。
 
 ただしTOBを行えば、取得価格は間違いなく高くなりますし、そもそも昭和シェルの反発が予想されます。出光と昭和シェルは対等合併、というのがその基本的な考えであり、TOB=出光による昭和シェルの子会社化、という構図になるため、昭和シェルは、分かりました、とは簡単に言えません。
 更に一番の問題は、昭和シェル株の売り手である、シェルが昭和シェル株の全株売却の実現が難しくなること。TOBの場合、売却を希望する株主は平等に扱われるため、売却実行は希望株主の株数に応じて比例配分となります。どういうことかと言えば、10,000株売ろうと思っても、最終的に9,000株しか売れなかった、という事態になる可能性が非常に高い。昭和シェル株の全株売却を望んでいるシェルとしてはそれは困ります。
 まぁ、出光が腹を括って、昭和シェル株の50%以上を取得する、としてTOBを行えば、シェルも全株売却できるのですが・・・。

 そんな訳で、対等の精神で合併、という日本的な合併を行おうとしている出光と昭和シェル、TOBで出光が昭和シェルの株を取得する、という事態は現状では極めて可能性が低いと言わざるを得ません。

出光はシェルに売却株数を減らすよう依頼するようだが

 出光側は、上記のようにTOBになりかねない面倒な事態を回避するために株の売主のシェルに、売却株数を減らすよう依頼する様子。どの程度の株数で交渉するか分かりませんが、果たしてシェルが飲むかどうか。基本的にはオールorノッシングの外資系の会社、中途半端に株を残すとは思えないのですが。。。シェル自体は、原油価格の値下がりの影響で上流部門特化で小売部門の資産は手放す方針なので、そう簡単に「分かりました株数減らしましょ」、とはならないと推察されます。

 下手にシェルに話を持っていけば、じゃあこの話はなかったことに・・・、という事態の到来も十分予想されます。出光創業家側は、それも狙った上なんでしょうけど。

 シェルの側としても、これまで各方面に昭和シェル株の売却交渉を行った上で、最後に行きついたのが出光なので簡単に、やーめた、とはならないとは思いますが、他に買い手が出てこれば、じゃあ出光さんとはご縁がなかったということで・・・、という可能性は十分にありえます。

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ロイヤルダッチシェルの株価

 折角の機会なので、昭和シェル株を売ろうとしている世界的石油大手のロイヤルダッチシェルの株価を見ておきます。ティッカーコードはRDS、ニューヨーク証券取引所に上場しています。下記がRDSの10年分の月足チャート。

16.8.5ロイヤルダッチシェル株価-月足
https://jp.tradingview.com/x/J1N1mea7/ 
※株価チャートはTradingViewを利用

 原油価格は大幅に下落していますが、シェルの株価は踏ん張っています。石油大手(以下、石油メジャー)の株価、原油価格の下落はあっても、下落の耐性が相応にある、というのが特徴ですが、その特徴が表れています。石油メジャーはこれまで何度も原油価格の波に翻弄されてきたので、原油価格が安いときは、リストラでの収益力アップや自社株買い等を積極的に行い、株価が下がり過ぎないよう手を打ってきます。昭和シェル株の売却も、まさにその流れの中で出てきたものなんです。
 また石油メジャーは高配当株として知られています。ザックリ計算するとシェルは配当利回り約7%(ただし税前)の銘柄となっています。

 さすが世界中でビジネスを行っている巨大企業。シェルを始め石油メジャー株は、欧米の株式市場のダイナミズムを実感できる銘柄群と言えます。シェル株に興味があれば、アメリカ株の取り扱いが豊富で手数料も安いマネックス証券で口座開設を行うのがオススメです。

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まとめ、まだ先が見えない出光経営陣と創業家の争い

 現在、TOBするのしないの、と言っているのは出光と昭和シェル合併のための第一ラウンドに過ぎません。この第一ラウンドの後に、本戦とも言うべき、合併を問う株主総会が待っています。

 創業家は昭和シェル株を自らの資金で購入する等、徹底抗戦の姿勢なので、本気で出光経営陣も昭和シェルとの合併を考えるのであれば、徹底的にやる、という姿勢でないと、目的=合併、は達成できない可能性が高いのでは?まぁ、徹底的にやる、となると昭和シェルと対等合併ではなく子会社化、という選択肢を取らざるを得なくなるので、昭和シェル側からの反発もありそうですが、中途半端なまま、このままズルズルと、というのはもう出来ないのではないかと。

 そもそも無理筋の合併だったのか、経営陣が出光創業家の説得をないがしろにしたのが悪かったのか、どちらかは分かりませんが、いずれにしても出光と昭和シェルの合併、出光創業家が徹底抗戦姿勢である以上、相当ハードルが高いと言わざるを得ません。今後の展開がどうなるのか、注目したいと思います。

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