大阪市が、ハックベンチャーズというベンチャーキャピタル(VC)が設立・運営するベンチャーファンドに5億円を出資するそうです。
自治体がベンチャーファンド運営するケースはタマにありますが、所謂VCファンドに出資するケースって珍しいのでは?大阪市と言えば、先日大阪都構想実現に敗れた橋下市長ですが、大阪市の新しい試みは結実するのでしょうか?
ハックベンチャーズというVCが運営するファンドに大阪市が出資
大阪市とベンチャーキャピタルのハックベンチャーズ(大阪市)は28日、インターネット関連のベンチャー企業などに投資する官民ファンドを立ち上げたと発表した。出資総額は48億円。~ファンドには大阪市が5億円出資するほか、中小企業基盤整備機構、阪急電鉄や積水ハウスなどの事業会社、メガバンクなど計10者が参画する。(日本経済新聞2015年5月29日)
ハックベンチャーズというベンチャーキャピタル(VC)は、2013年設立の新興VCです。
ボストンコンサルティング等を経て、アメリカのシリコンバレーでコンサルやベンチャー投資を行っていた、校條浩氏が代表を務めています。
ピッカピカな経歴の方が運営するVCですが、本社は大阪市に所在。大阪市に本社を置くVCって非常に珍しいですね。
校條浩氏は大阪市の特別顧問だった様子
校條浩氏は大阪市の特別顧問お務めだったようです。それが縁で今回のファンド運営に繋がったのかもしれません。新聞には、ファンド運営は大阪市が公募で選んだハックベンチャーズが担当する、とあります。
ちなみに通常の民間VCだと、こーいう話、気乗り薄です。日本のVC最大手のジャフコが、殆ど自治体とのファンドで縁が無いのを見れば、一目瞭然。簡単に言えば、非常に手間がかかって尚且つ制限が加えられる中、パフォーマンス=利益を上げるという、非常に難しいかじ取りが求められるから。そりゃ税金を出資する訳ですから、出資する側=自治体等は、求めるモノが必然的に大きくなります。
そこを敢えて手を挙げた、ハックベンチャーズ、その心意気や良し、というところでは無いでしょうか?
大阪市も出資のファンドは48億円で開始、追加で資金調達し100億円を目指す
今回のファンド、ファンド規模48億円でスタートの様子。ハック社の下記サイトに出資者の記載があります。
【リリース】シリコンバレーと連携する、関西のグローバルベンチャーキャピタル「ハックベンチャーズ」が48億円を組成
中小企業基盤整備機構はプレスリリースによると、12.5億円を出資。
『中小企業成長支援ファンド「ハック大阪投資事業有限責任組合」に12.5億円の出資を行う組合契約を締結』
大阪市が5億円、そして機構が12.5億円なので、残りは30.5億円。この30.5億円を、みずほ銀行・三井住友銀行・三菱東京UFJ銀行、積水ハウス・阪急電鉄・日立造船他で出資しているようです。
そして今後も資金調達を行い、最終的には100億円の出資総額を目指す様子。ハックベンチャーズの資金調達能力が試されます。
地域振興系のファンドの出資って、非常に悩ましい
今回のファンド、大阪の発展を目的としつつ、他の地域への投資も認めています。恐らく、大阪もしくは関西以外の地域への出資は枠を設けているのでしょうけど。ただしこの種のファンドに出資を求められたら、判断が悩ましいだろうなぁ、と思います。
役所の頼みが断りきれないのであれば、お付き合い程度の出資。けどお付き合いの金額を超えるような出資を求められたら、儲かりまんの?、という世界。
パフォーマンス重視なら、大阪(関西)の制約は間違いなく足枷。そして、パフォーマンス重視で言えば、そもそもベンチャーファンドって儲かるのか?、という根源的な問題もあります。
100億円までファンド規模を拡大させるようですが、出資を頼まれるであろう、地元金融機関や上場会社は非常に頭を悩ますことになりそうです。
尚、ベンチャーファンドでパフォーマンスを上げるのは、一般的なイメージと違って、実は結構ハードルが高いようです。下記記事で、方程式を作って考えてみました。
大阪の起爆剤となることを期待
ベンチャーファンドを作っても、直ぐには育たないのがベンチャー企業。ベンチャーキャピタルが投資したら、アラ不思議、ベンチャー企業がアッと言う間に成長して上場しました、ということはマズありません。
ただし東京に比べると地盤沈下が著しい大阪、こういった取り組みが身を結んで、大阪の起爆剤となることを期待したいです。
IPO市場を見ていると、VCの仕事もなかなか難しいよなぁ、と思うことがしばしばあります。
しかしながら今回の大阪市とハックベンチャーズの取り組み、税金も使っていることですし、何とか成功して頂きたいものです。