あーでもない、こーでもないとやっていたエアバッグのタカタですが、最終的に民事再生法適応申請の方向になる様子。6月16日朝に各メディアが報じています。
一番最初に問題が発覚したのは2000年頃。それから15年以上の時を経て、ついにタカタは法的整理で決着がつくことになりそうです。これまでの経緯を改めて振り返ってみました。
概要
各社がタカタが民事再生法適応申請へと報じる
2017年6月17日朝、各メディアがタカタが民事再生法適応申請へと報じています。朝軽くニュースサイトで記事化しましたが、改めて本サイトの方で掘り下げてみます。
欠陥エアバッグの大規模リコール問題で経営が悪化しているタカタ(7312.T)が、早ければ来週にも民事再生法の適用を東京地裁に申請する方向で準備に入った。複数の関係筋が明らかにした。負債総額は1兆円超とみられ、タカタは事業を継続しながら裁判所の管理下で再建を図ることになる。(ロイター)
そうですか、遂にタカタは民事再生法適応申請で法的整理となりますか。リコールの費用を自動車メーカーが負担している中、創業家は最後まで創業家が関与できる形での再建を望んだようですが、最終的には債権者が裁判所に駆け込めば法的整理ができてしまうので、自動車メーカーが当初より主張していた通り民事再生法適応を申請して、裁判所の管理の下で債権債務関係をハッキリさせた上での再建、との方向になりそうです。
タカタが民事再生法適応申請に至る経緯を振り返る
そのまま以前の記事の抜き出し+追記ですが、タカタはここに至るまで下記のような経緯をたどっています。
2000~2002年9月→同期間にタカタのアメリカ工場及びメキシコ工場で作られたエアバッグ部品(インフレーター)が、高温多湿の地域で長期間に渡り使用された場合、車が衝突してエアバッグが作動した時に、異常な破裂が生じて金属片などが飛び散り、乗員がけがをする恐れがある、と報告。
2008年11月→ホンダが米国でタカタ製エアバッグの初のリコール
2009年→タカタ製のエアバッグが原因で2件の死亡事故が発生(米国)
2013年4月→トヨタなど4社でリコール
2014年6月→追加リコール
2014年7月→ホンダ車で死亡事故(マレーシア)
2014年8~11月→追加リコール
2014年11月→米国議会での公聴会
2014年12月→米国議会での公聴会
2015年6月→米国で7人目の死亡事故発生
2015年6月→タカタの謝罪会見
2015年11月→日本国内で日産の車(エクストレイル)でタカタ製エアバッグによる軽傷事故発生
2015年11月→タカタが米国の制裁金支払いに同意、ホンダが新車種でのタカタ製エアバッグ搭載停止を決定
2016年9月→支援候補企業の入札
2017年1月→タカタが罰金などの支払いで米国司法省と和解
2017年2月→外部専門家委員会がスポンサー最有力候補として中国の寧波均勝電子傘下の米自動車部品メーカー、キー・セイフティー・システムズ(KSS)を選定
2017年6月→民事再生法適応申請へ
過去の経緯を見ていると、初動の失敗・被害拡大阻止の失敗・データ隠蔽による盟友(=ホンダ)の離反・創業家関与に拘り再建策の策定難航等、突っ込みどころが満載です。「タカタ失敗の本質」何て本が書けそうな感じ。
ともあれ2000年頃からタカタのエアバッグ問題はアメリカで発生していた訳で、アメリカでの事故に対し早い段階で真摯に向き合っていたら、こんなことにはならなかっただろうなぁ、というのが管理人の率直な感想です。
自動車メーカーは立て替え分のリコール費用を再建として届け出へ
タカタは、不具合の責任の所在が特定できておらず自動車メーカーとの費用負担の割合を「合理的に見積もるのは困難」としていた。そのため、ホンダ(7267.T)など国内外の自動車メーカーがその大半を一時的に負担していたが、民事再生手続きを進める中で、自動車メーカー各社は今後、肩代わりしていたリコール費用の大半を債権として届け出る予定だ。(ロイター)
これまでのリコール費用の大半を立て替えていたのがホンダを始めとする自動車メーカー。民事再生法適応申請となれば、当然立て替えていた代金を債権として届け出ます。リコール費用は総額1兆円オーバーといわれているので、まんまタカタに請求書がまわってくれば、その時点でゲームオーバーだった訳で、自動車メーカーとしても請求書をそのまま回してタカタ倒産の引き金を引けなかったのですが、民事再生法適応申請となれば話は違ってきます。当然、何割かのディスカウントは読んでいるでしょうが、宙ぶらりんだったリコールの立て替え費用が確定できることになります、それも裁判所の関与の下で。金額もさることながら、自動車メーカーとしては金額が確定できることの方が大きいと言えます。尚、自動車メーカーは既に立て替え費用は損失計上済みであり、これ以上の損失は発生しません。債権が確定すれば、戻り益が生じます。
そして17/3期末時点での純資産(株主資本)331億円しかないタカタは債務超過転落は不可避でしょう。
スポンサーの再選定の可能性も
タカタの再建については2017年2月に中国の寧波均勝電子傘下の米自動車部品メーカー、キー・セイフティー・システムズ(KSS)がスポンサー候補として選定されています。ただし今後の再建については、そのままKSSがスポンサーとなる、と報じられています。
KSSが設立する新会社が総額約1800億円でタカタから事業を買い取り、エアバッグやシートベルトの供給を続ける。旧会社にはリコールに関する債務を残して債権者への弁済を担わせる。(2017/6/16日本経済新聞)
既に再建を協議していたKSSであれば勝手知ったる仲なので、順調に再建に向けた話し合いを行うことができます。
ただね、法的整理になって債権債務関係がキレイになってしまえば新たに、タカタのスポンサーになる!、という企業が出てこないとも限りません(ファンド勢とか)。裁判所とすれば、債権者に対する弁済額が多い方をスポンサーとして選定せざるを得ないので、これまで通りにKSSがタカタの再建スポンサーとなるかどうかは、もう少し推移を見守る必要があると思います。
タカタの株価
あーでもない・こーでもないとやっている間、タカタの株価はひたすら下げています。2014年1月には3,000円を超えていた株価は現在(2017年6月15日時点)は484円。
「画像出典:マネックス証券/日本株取引ツール トレードステーション」
ただし2017年に入って、再建に向けた思惑から株価が一度1,000円台に乗せてます。その後、元の株価に戻ってますが。民事再生法適応申請へとなると、当然上場廃止となり、タカタ株の取引もできなくなります。
まとめ
民事再生法適応申請で、裁判所の管理下で再建を図ることとなりそうなタカタですが、ここまで来るのに随分と時間がかかったように感じます。タカタは以前は財務体質良好の優良会社として知られていましたが、ここに至るまでにすでに自己資本はすり減っており、更にリコール費用を立て替えていた自動車メーカーからの請求書が回ってくると、既に実質的には債務超過。
しかしながら、そうは言ってもエアバッグメーカーとしてタカタの存在は大きすぎるため、自動車メーカーとしては潰れてもらっては困る会社となっています。自動車メーカーの立場からすると、潰れてもらっては困る会社なので、民事再生法適応申請で債権債務が確定すればKSS以上のスポンサー代金払う会社が出てきてもおかしくはないかな、とは思います。
そんな訳でタカタの再建、ここから先は第二幕がスタートとなりそうです。今回こそ粛々と再建が進んでいくのか、それともまだ名前の出ていない会社やファンドがスポンサーとして名乗りを上げるのか。今後注目したいと思います。
・話題のiDeCo(イデコ:確定拠出型年金)加入されましたか?iDeCoに加入するなら、手数料が無料でファンドの選択肢が豊富なSBI証券もしくは楽天証券がオススメです。長期にわたる加入となるiDeCoは手数料がバカになりません。手数料無料の両社が人気で、新規加入者の約3割が両社いずれかで加入しています。まずは資料請求からされてみてはいかがでしょうか?
タカタの関連記事
・今後タカタの倒産は困る自動車業界、ただしリコール費用は1兆円規模へ