富士フィルムHDの不正会計、富士ゼロックスは強かったという話

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 今回は富士フィルムHDで不正会計が発覚。不適切会計と言うと変な感じなので、不正会計とします。不正会計で375億円の損失が発覚しました。

 ま、東芝に比べるとかわいいもんですが、富士フィルムHDの不正会計は、これまた富士フィルム独特の問題が明らかになりました。富士フィルムHDとは言いますが、実態は富士フィルム&ゼロックスと言うのがその実態。

 富士フィルムグループで富士ゼロックスはフィルムと同程度の収益力を誇っており、子会社と言うのはデッカ過ぎる存在。海外子会社に対するガバナンスが課題、と言うのは簡単ですが、進駐軍のように富士フィルムが振舞えば、富士ゼロックスのやる気をそぐ結果=グループ全体の収益力低下にも繋がりかねず、今後富士フィルムHDは非常に難しい手綱さばきが求められます。

事業多角化の優等生富士フィルムHD

 フィルム写真は死滅する、と言われたのは20~30年前ですが、実際にフィムル写真はほぼなくなり、一部マニアのものとなりました。そしてその際に言われたのは、富士フィルムは大丈夫か?、というお話。写真フィルムで世界に名前を知られるようになった富士フィルムでしたが、フィルム写真自体が無くなってしまえば、そもそも事業の存立基盤自体が無くなってしまいます。そう考えれば、いくら優秀な社員を抱えていても生き残りは厳しいのでは?、とかつて言われたものです。実際にアメリカのフィルム大手のコダックは2012年に破産しており、富士フィルムが後を追うのでは?、というお話は一歩間違うと現実のものになっていた可能性は否定できません。

 しかし富士フィルムはコダックのようにはならず、事業多角化を行い見事生き延びます。積極的なM&Aを展開し、見事に単なる写真フィルムの会社からイメージング領域から医薬品領域まで手掛ける事業多角化の優等生として現在に至っています。

 ところが多少事業部門別の損益等を見ればスグ分かる訳ですが、確かに多角化には成功した富士フィルムですが、その屋台骨を支えていたのは複合機メーカーの富士ゼロックス。富士フィルムHDとしての上場会社でしたが、富士フィルム+富士ゼロックス+新規の医薬品事業、というのがその実態です。

富士フィルムが富士ゼロックスを子会社化したのは2001年

 富士写真フィルムと米ゼロックスの合弁会社として、50対50の資本構成で設立された富士ゼロックスですが、富士フィルムは事業再構築の過程で2001年にゼロックスの一部持ち分を買い取り富士フィルム75%・ゼロックス25%となり、富士フィルムの子会社となっています。

 1962年に設立された富士ゼロックスですが、富士フィルムの子会社化された時点で既に複合機の世界的な会社となっており、当時から富士グループ内で優良グループ会社と言われていました。歴史的に言えば、ゼロックスが富士フィルムの子会社になってまだタッタ16年しかたっていません。よって富士フィルムの子会社となったものの、アッチはアッチでコッチはコッチという雰囲気だったことは容易に想像がつきます。

 結果的に、その雰囲気が今回の不正会計問題に帰結しする訳ですが、踏まえるべきは富士フィルムと富士ゼロックスは同じ”富士”とはついていますが、全く別の会社だった、という点。更に後述しますが、富士ゼロックスは図体もでっかくで収益力もあり、親会社といえども富士フィルムは簡単に手が出せなかった、ということ。

富士フィルムHDの部門別損益状況

 富士フィルムが富士ゼロックスに簡単に手を出せなかった理由は部門別損益を見れば一発で分かります。下記が富士フィルムHDの部門別損益。

2017/3期
イメージS 売上高3,418億円、営業利益368億円
インフォメーションS 売上高8,995億円、営業利益830億円
ドキュメントS 売上高10,809億円、営業利益827億円

 
 イメージングS(ソリューション)は写真関連事業、インフォメーションSは現在注力中のメディカル事業・医薬品事業・電子材料事業等が含まれます。そしてドキュメントSが富士ゼロックス、こんな感じでザックリと切り分けることができます。

 そう言った観点で部門別の損益、特に利益を見と、ドキュメントS=富士ゼロックスは富士フィルムと同レベルの利益を出しています。富士フィルム側から見ると、富士ゼロ様々、と言った所。

 業績出しているなら特に文句も言いませんよ、となるのはどの会社でも一緒ではないかと。特に元々別会社だったから、尚更でしょう。けど上記の部門別を見ると、富士フィルムHDとは言いますが、実態は富士フィルム&ゼロックスHDというのがよく分かります。

 確かに富士フィルムは多角化に成功はしましたが、その大きな原動力は富士ゼロックスの子会社化だった訳です。ゼロからビジネスを立ちあげた訳ではありません。とは言え、フィルム写真が死滅した後、必死投資の結果インフォメーションS部門で800億円オーバーの営業利益を上げられる状態となったのは賞賛に値すべきですが。

 富士フィルムが多角化に成功した、と言っても富士ゼロックスを子会社化した影響が一番大きいよね・・・、というのは富士フィルムにとっては痛い部分なんですね、コレが。

複合機は冬の時代へ

 富士フィルムHDの不正会計問題が出て、フト気付いたのが、複合機冬の時代、という点。今回の富士ゼロックスの問題、要は複合機が売れなくなったのね・・・、という面も多大に影響しているのではないかと。

 複合機の不況と言えば、真っ先にリコーの苦境が思いつきます。複合機一本足打法のリコーが、真っ先に複合機市場の変調の影響を受けている形となっています。

 キャノンは医療事業があるのでキャノングループとして複合機部門の縮小をカバーしていますが、リコーを除くといずれの複合機メーカーも医療事業等複合機以外の事業に注力しています。そう考えると、富士ゼロックスはまさに複合機専業の会社なので、リコー同様の苦境に陥っても何ら不思議はありません。ま、簡単に言って機能の差こそあれ、同じモノを扱っている中、1社だけが好調を維持なんてありえません。
 液晶テレビ不況の際に、何故か東芝だけはテレビ事業が黒字だった訳ですが、その理由は不適切会計だった・・・、と今振り返ればずっこけてしまう状態だった訳ですが、富士ゼロックスの赤字は今出ているのは氷山の一角の可能性も無きにしも非ず。いずれにしても複合機は世界的に飽和してしまっている、という事実は変わってないので、リコーの苦境を見ると、富士ゼロックスだってこれまで通りの収益を上げられるかどうかは結構微妙ではないかと。

 その意味では、今回の不正会計問題、富士フィルムHDとしては会計問題という面もさることながら、今後の収益面においても課題が生じる可能性も否定できません。

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富士フィルムHDの株価

 では最後に富士フィルムHDの株価を見てみます。

 株価は約5,000円をピークに現在下落な中。昨年秋に4,000円割れとなりましたが、その後4,500円まで上昇し現在は再度4,000円付近に戻った所です。


「画像出典:マネックス証券/日本株取引ツール トレードステーション」

 現在の所、不正会計問題は株価に大きな影響を与えていませんが、今後もし株価が下落の場合、3,600円を明確に下回るようだと、完全に下落トレンド入りしてしまうので注意が必要となります。

まとめ

 富士フィルムHDの不正会計問題、金額は375億円と東芝に比べると規模が小さいため(現段階では)、それ程問題視されることはなさそうです。富士フィルムHDの多角化の実態、強すぎる子会社問題、複合機の市場縮小と触り始めると非常に問題は多岐に渡っています。

 とりあえず上記では、さらっと総合的に各テーマに触れてみました。けどこの先、更に損失額が拡大する可能性も無きにしも非ずなので、推移は注視したいと思います。

 さて富士フィルムHDの不正会計問題、今後どんな展開を見せるのでしょうか?注目です。

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