産業革新機構のルネサス株の売出を分析

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 東日本大震災の復興支援の一環で産業革新機構が支援のルネサス エレクトロニクスも遂に卒業の時を迎えつつあります。産業革新機構は保有のルネサス株を売出で売却することに。

 ただし機構はルネサスの約7割の株主シェアを持つ大株主であり、今回の売出だけでは株式の売却は終了せず、売出後も株主シェアは約50%を維持、今後更なる追加売却がどんな形であれ予想されます。

 今回はルネサス株の売出について、各方面から分析してみました。今回の売出で全株売却とはならない産業革新機構、今後どんな形であれ追加売却は発生するので、その点を踏まえた上での検討が大切です。

産業革新機構他がルネサス エレクトロニクス株を売出へ

 ルネサス エレクトロニクス(6723、以下ルネサス)が株式の売出を発表しました。

株式の売出しに関するお知らせ(ルネサスのサイト)

 当サイトでも過去記事にしていますが、ルネサスは産業革新機構の大口出資先。東日本大震災で被災したルネサスを支援のため機構はルネサスに出資を行い、現在株式の約7割を持つ大株主となっています。

 その後、ルネサスの再生は順調に進んでおり、昨年からルネサス株の売却が新聞・雑誌等で取り上げられることが多くなりました。

 機構はソニー他の事業会社への売却を模索したようですが、さすがに現在の日系企業に半導体の会社に簡単に突っ込む会社は無く、さりとて買収意欲を表している日本電産には取引先がいい顔をしない、との状況。そんな中で出てきたのが、今回の株式売出となります。

関連記事①:産業革新機構のルネサス株の売却が容易に進まない簡単な理由
関連記事②:日本電産がルネサスの買収を検討していた!
 
 会社の状態が如何ともし難い状態であれば、そもそも株式の売出なんてできない訳なので、ルネサスの再建も軌道に乗ったということは間違いありません。その意味では、殆ど税金で運営している産業革新機構とすれば「やれやれ・・・」という感じではありますが、売出となれば個人投資家が買うor買わないを判断する必要があります。

 そんな訳で、現在のルネサスの状況を当サイトなりにまとめてみました。

ルネサスの業績推移

 まずはルネサスの業績から。直近の業績は下記のように推移しています。

2014/3期 売上高8,330億円、経常利益586億円、当期純利益▲52億円
2015/3期 売上高7,910億円、経常利益1,053億円、当期純利益823億円
2016/3期 売上高6,932億円、経常利益1,021億円、当期純利益862億円
2016/12期(9ヶ月決算) 売上高4,710億円、経常利益499億円、当期純利益441億円

 2015/3期以降黒字が続いており、過去リストラの嵐だったルネサスもようやく黒字が定着しています。半導体の世界なので、業界環境がスグに変化してしまうリスクはありますが、以前の売上ボリュームはあっても殆ど儲かっていないルネサス、という姿からの脱却は進んでいると考えられます。

ルネサスの株価推移

 2012年以降のルネサスの株価の推移を週足で見ると下記となります。

「画像出典:マネックス証券/日本株取引ツール トレードステーション
※関連記事:マネックス証券のトレードステーション発表会に行ってきました

 2013年は300円付近をウロウロしていたルネサスの株価は、2017年5月22日の終値948円。4年で約3倍になっています。あの時買っておけば・・・、と誰しも後から振り返れば思うものですが、それが出来きたら皆が皆大金持ちになってますね。

 2016年は600円付近の株価で停滞していましたが、トランプ相場の波に乗って2017年には1,000円オーバーに。今回の売出の発表があって株価は下落しましたが、それでも株価は900円台を維持しており、トランプ相場の前と比べてもまだ十分にお釣りがくる状態です。

 ただしよく株価を見てみると、2014年から2015年にかけて株価は1,000円台に乗ってます。その後500円近くまで下落しているので、前回の高値の感覚が残っている産業革新機構とすれば、1,000円を超えたら売りのタイミング、と考えたのではないかとチャートからは推測できます。
 

ルネサスの株式売出の概要

 業績も申し分なくて、株価の状態も悪くないとくれば、充分投資検討には値します。そんな訳で今回のルネサス株の売出の概要は下記。

株価 未定(ただし直近株価付近で決まる見込み)
売出株数 403,148,000株(国内128,566,500株+海外274,581,500株)
売出人 産業革新機構、NEC(信託口分含む)、日立製作所、三菱電機

 株価は未定で6/12-6/14の間に決定されますが、基本的には直近の株価近辺で決定される見込みです。直近株価(950円)で計算すると約3,800億円の大型案件となります。(直近株価から数%のディスカウントがなされるのではないかと)

 大型案件と言うこともあり売出株は国内より海外が多めとなっています。

 あと今回、ルネサスの設立母体とも言うべきNEC、日立、三菱電機も産業革新機構と揃って株式を売出。ただ全株売却ではなく、一部売却に留まります。元々3社の半導体部門を合併させて誕生のルネサス、既に機構が親会社的存在となっていますが、今回の売出で設立母体3社から更に独立が進むこととなります。

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ルネサスの成長性

 株価はトランプ相場で再認識しましたが、夢と希望で上昇します。ではルネサスの今後に夢や希望があるかと言えば、自動運転が話題になっている昨今、ルネサスはまさに自動運転に欠かせない自動車向けの半導体を手がけているので、今後の成長の余地は十分ある、と言えます。

昨年から自動運転が株式市場の主要テーマとなっていますが、ルネサスは自動運転銘柄に位置付けることができる銘柄。再生の過程で、自動車向けの半導体にルネサスは注力しており、もはや自動車業界とは切っても切れない関係。株主にトヨタ・デンソーも存在していることから、その関係は盤石とも考えられます。

 ルネサスの手がける半導体は、手間バッカリかかって利益が出ないマイコンなのですが、そうは言っても自動運転分野は世界の自動車メーカーが投資を競っている分野であり、自動車業界の投資競争の中でその恩恵を被る可能性は充分あると考えられます。

 エクイティーストーリーとしては自動運転分野で今後成長が期待できる、というだけでも綺麗な絵が描けます。ま、実際にそうなるかどうかは別問題ですが、株価は夢と希望で上がることが多い、というのも事実ですので。

ルネサスの懸念点、今後も続く株式売却

 今回の売出だけでは産業革新機構の株式売却は終わりません。今回機構は保有の約25%の株式を売却しますが、その後でもルネサス株の約50%を握る大株主としての立場は変わりありません。

 第2次売却、第3次売却とやっていくのか、どこかの事業会社に売却するのかは分かりませんが、いずれのタイミングで再度株式の売却が行われるのは間違いありません。

 ファンド目線で見れば、若干下がったとは言え日経平均20,000円目前の状況下で株式の売出を行うというのは悪い話ではありません。ただ逆に投資家の立場からすると、既に日経平均が上がっている状況下で今後追加の売出の可能性もある銘柄をこのタイミングで購入する必要があるのか?、との疑問も当然生じます。

 株価に対する影響は分かりませんが、いずれにしても産業革新機構保有のルネサス株の売却はどんな形であれ今後も続く、と言う点は認識しておく必要があります。

産業革新機構の利益は・・・

 産業革新機構の資金は殆ど税金から出ています。今回の売出で機構はどの程度の利益を上げられるか計算してみました。仮にディスカウントもあり株価900円で売出を行うケースで考えてみました。

 (売出株価900円-取得価格120円)×売出株数317,688,800株=2477億円

 ひゃー今回の売出で産業革新機構は約2500億円のキャピタルゲインをえることになります。大したもんです。まぁ株価900円が難しくても、2000億円近いキャピタルゲインが生じることになるので、ヨクヤッタ!、と言うことになります。

 折角生じたこのゲインを、ジャパンディスプレイの再建に突っ込むようなことだけはやめて頂きたい所ではありますが。ファンドビジネスの醍醐味ですね、ここまで利益がデカイと。

 赤字続きの産業革新機構、コレで面目躍如と言えます。

関連記事:半導体ベンチャーのジェニュージョンが破産、産業革新機構が約20億円の損

まとめ

 最後は産業革新機構もやるじゃん、という締めとなりましたが、気を付けないといけないのは、個人投資家が産業革新機構の利益を出すためのお付き合いをわざわざする必要はないと言うこと。ルネサスの売出は、国内の個人投資家にもその売出株が回ってくるわけですが、アカン、と思えば別にお付き合いする必要はありません。

 ジャパンディスプレイのIPOの時にやりすぎ感があったのですが、どう考えても株価高すぎだろ、という株価でIPOして、その後の低迷。ルネサスの今後がどうなるか分かりませんが、追加の株式売却もあるので焦って手出しする必要はないかと。

 個人的には今回の売出後に産業革新機構がどのように残りの株を売却するのかが、非常に興味深い部分です。今後のルネサスの動向もフォローしていこうと思います。

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