東芝の半導体メモリー事業に税金を投入してもうまく行かないと思う理由

 東芝が分社化する半導体メモリー事業に日本勢が出資する案が浮上している様子。うーむ、日本の技術を守れ、という掛け声では如何ともしがたい半導体事業の現実を考えると、厳しいのでは?

 金食い虫の半導体メモリー事業、雨の日も風の日も投資をし続けるガッツと体力が無ければ成功はおぼつきません。中途半端に日本勢で連合組んで官民ファンド等で資金を用意しても、成功するとは思えません。形を変えた税金投入となって税金が棄損したら目も当てられませんし、過去にはエルピーダメモリという例もあります。

 ここは市場原理に任せた方がよいのではないかと。

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東芝の半導体メモリー事業に日本勢が出資を検討

官民で資金を負担する「日の丸連合」で東芝の半導体メモリー事業に出資する計画が浮上した。4月中をめどに参加企業を募り、経済産業省などと連携して入札手続きへの参加をめざす。(2017/4/8日本経済新聞)

 遂にこういう話が出てきたか、という感じ。東芝という国内企業の半導体事業を買うのに、何故国内の企業の名前が出てこないのか?、というのは素朴な疑問として誰しも持つ所。東芝の半導体メモリー事業の買収候補先として名前が挙がるのはウェスタンデジタルやアップル他の欧米勢やホンハイ等のアジア勢。そこに日本勢の姿はありません。

 日本発の技術を守れ!、という掛け声はよいのですが、誰が一体やるの、という状態。そんな中で経済産業省が音頭をとって、官民ファンドの産業革新機構がスポンサーとなり国内企業連合を立ち上げ東芝メモリーの買収に噛もうとしている状態。

 ただしそう簡単にうまく行くとは思えません。

半導体メモリー事業事業は金食い虫

 一言で言って、半導体メモリー事業は金食い虫です。どういうことかと言えば、雨が降ろうと槍が降ろうとどんな時でも設備投資をし続ける必要があります。足元では世界に誇る東芝のメモリー事業ですが、コレは東芝が歯を食いしばって投資をし続けてきたから。そして足元の市況がよいため、利益も出ています。しかしながら、市況が良くない、と言って投資を止めたら最後、逆回転が始まります。サムスングループ始めとするライバルは豊富な資本を元手に、どんな時もどんな時も設備投資をし続けます。半導体メモリー事業はそれらのライバルと同等、いやそれ以上の設備投資をし続けることで初めて競争についていくことができる、という非常に厳しい世界。

 いっちょやってみますか、とうノリでは大怪我するのが目に見えていますし、日本勢はかつて半導体事業で大やけどをして撤退してきた歴史なので、それはもう十分身に染みる程分かっています。

 キャッシュ・フローという観点で考えると分かりやすくって、

①営業キャッシュフローは市況によって大きく上下する(今は大きく上に振れている)
②投資キャッシュフローは常に赤字状態
③赤字の投資キャッシュフローを営業キャッシュフローだけではなく、財務キャッシュフローも含めて賄う必要がある

、この繰り返しとなります。

 これまでの東芝は東芝全体の資金でもって半導体メモリー事業の投資キャッシュフローを賄ってきた経緯がありますが、分社化されればもうそれは期待できません。ま、仮に分社化せずとも現在の東芝の状況では新規投資はほぼ不可能であり、いずれ競争力を失ってしまうのは必然と考えられますが。その意味では、東芝の半導体事業存続のためには、新しいスポンサー企業を募るというのは、必要不可欠となります。

 半導体メモリー事業は市況に振り回されて常に金食い虫、ということを大前提として踏まえていないと、何と東芝はもったいないことを・・・、となってしまいます。じゃあ国策で東芝のメモリー部門を買って・・・、となるとある意味永遠に税金を投入し続ける懸念があって、また流れの早い半導体業界はお役人がマネジメントできる世界ではないので、君子危うきに近寄らず、でよいのではと思う次第です。

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スピード感のある経営も必要不可欠

 半導体メモリー事業は投資の体力も必要ですが、適切なタイミングでドンと投資を行うと言う、スピード感のある経営が必要不可欠。日本連合で仮に東芝メモリーを買ったとすると、船頭多くして船山に上る、という状態が懸念されます。業界に詳しいAさんに全権を委任する、何てことにはならなさそうなので(エルピーダの時はそれが機能しましたが、残念ながら力尽きました・・・)、難しいような。エルピーダの場合は経営という観点では、坂本社長に全権を一任できたという稀有な例でしたが(前身のNECも日立も坂本社長に任せた後は口出ししなかったのは、大したものだと当時思いました)、投資の体力が続きませんでした。

 こう考えると日本の半導体の歴史にはエルピーダという前例があるので、「投資体力」と「スピード感のある経営」の2つが揃わないと半導体メモリー事業はうまくいかない、と言うことが理解できます。

中途半端にかかわると大けがするし、税金の無駄遣いの可能性もあるのでスルーすべきでは?

 事業会社が義侠心に駆られて東芝メモリー事業に1枚かむのは経済合理性があれば構わないと思いますが、上記を考えると中途半端にかかわると大けがします。

 産業革新機構という殆ど税金で支援するのは、これも既にエルピーダで役所が半導体業界をどうこうするのは無理、と分かっているのでスルーしたほうがよいのでは?、と思います。産業革新機構はジャパンディスプレイのEXITで苦労していますが、ルネサスの含み益があるから余裕しゃくしゃくのようですが、本当にルネサス株は売却できるのか?、という部分がまだグレーゾーンなので、安心するのはまだ早い。

関連記事:産業革新機構のルネサス株の売却が容易に進まない簡単な理由

 そんな訳で、中途半端にかかわるとロクな結果になりそうもない東芝の半導体メモリー事業、国益と言っても技術はスグ陳腐化してしまうので、変に義侠心や税金を投入することなく、市場原理に任せるのがよいのではと思う次第であります。


中途半端にかかわると大けがする半導体メモリー事業

まとめ、もったいないが売り時としては悪くない

 東芝の半導体メモリー事業、事業価値は2兆円だそうです。ま、東芝が通常モードで今後も投資をしつづける体力があればこのまま保持という選択肢となりますが、今後の投資が覚束ない状況なので、メモリー市況の良好な現在2兆円で売却できるのであれば売ってしまう、というのは合理的判断ではあります。

 正直もったいないと思いますが、このまま持っていても宝の持ち腐れどころか、東芝は半導体メモリー事業を抱えたまま資金不足で立ちいかなくなってしまう可能性が。そうであれば売却タイミングとしては悪くないので、売ってしまえ、という判断にならざるを得ません。
 最近PCのメモリーを増設しようと思ってメモリー価格気にして見ていますが、値段上がってますから、ホント。

 あとは下手に税金を絡ませて、気付いたら損失が国民負担だった・・・、というを避けていただけると一納税者としては嬉しい所です。けど先に半導体メモリー事業を売却していたらどうなっていたんでしょ?やはり生き残るためには売れるものはドンドン先に売っておく、というのが正しかった可能性もあります。ま、これはやってみなけりゃ分からない、の世界ですが。

 そんな訳で、当初は東芝の半導体メモリー事業にはかかわらないと断言していた産業革新機構の雲行きがどうも怪しくなっているようなので、余計なおせっかいながらこんな記事を書いてみました。半導体ビジネスはカッコいいんですけど、基本的に体力勝負なので技術力だけでは太刀打ちできません。そこの所を踏まえた議論を期待したいです。

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