東芝、富士通、VAIOの3社がパソコン事業を統合検討、と報じられています。3社のパソコン事業の統合がなされると、売上高1兆円規模の巨大企業が登場となります。元気のないパソコン業界とはいえ、社会生活に欠かせないパソコン、事業規模としては非常にデカイ会社となります。
ただ海外の巨大パソコンメーカーでも利益を出すのに苦労しているパソコン事業。3社が統合して図体が大きくなったとしても、それですべての問題解決、ということにはなりません。事業の統合の後、ちゃんと主導権争い等で消耗することなく今後の成長ストーリーを描き切れるかどうかが、最大の課題と考えられます。(2016年4月15日更新)
概要
東芝、富士通、VAIOがパソコン事業統合検討と報じられる
イヤハヤ、朝起きてネットのニュースを見て驚きました。
「パソコン3社が事業統合 東芝・富士通・VAIO交渉へ」(日経新聞2015/12/4)
「東芝・富士通、PC合弁交渉…競争力強化に向け」(読売新聞2015/12/4)
読売新聞にはVAIOの名前は有りませんが、VAIO(というより親会社のファンド)としては最初から単独の生き残りは考えていないハズなので、声を掛けられれば乗って来るでしょう、恐らく。
先日、富士通がパソコン事業の分社化を発表して、恐らくパソコン事業再編の第一歩だなぁ、と思っていましたが、まさにそんな展開になっています。詳しくは下記をどうぞ。
現段階の報道では、3社の事業統合は確定ではありません。ただこんな形で報じられているし、東芝・富士通ともにパソコン事業は切り離しOKの状態だし、VAIOはそもそも他社との提携ありきの会社なので、3社は無理でも何らかの形で事業統合はなされるのではないかと考えられます。
売上高1兆円規模のパソコンメーカーの誕生に
東芝・富士通・VAIOの3社がパソコン事業を統合すると、何と売上高1兆円規模の日の丸パソコンメーカーの誕生となります!売上高1兆円って、結構スゴイですね、さすがもはや仕事になくてはならないパソコン。
下記は、日本経済新聞(2015/12/4)に掲載されていたグラフです。
富士通のパソコン事業には携帯電話部門が入っているようなので、正確にはパソコンのみで3社合算で売上高1兆円オーバーにはならないかもですが、それでもパソコン専業で1兆円近い売上の会社が誕生となると、インパクトは非常に大きいです。
VAIOは売上73億円ですが・・・、2社の前では吹き飛んでしまうような規模ですね、正直・・・。
規模が大きくなってもパソコン事業は一筋縄ではいかない事業
売上1兆円規模の日の丸パソコンメーカーの誕生、ヨカッタヨカッタ、となればいいのですが、そうは問屋が卸してくれません。やはりパソコンの事業環境、相当厳しいです。
まずは目先、昨年のウィンドウズXPの更新需要が発生し、パソコン需要の先食いをしており、そもそも事業環境が厳しいです。昨年の特に法人向けのパソコンの更新需要、尋常ではありませんでしたから。そんな訳で、年度内はパソコン事業、特に法人向けは厳しい状態と考えられます。
では今後、これもバラ色とは言い難いです。先に規模がデッカクなったHPもパソコン事業は苦労していて、先日遂にパソコン事業とその他の事業を別会社にしています。簡単に言えば、パソコン事業は立て直し=リストラモード。
先に非上場化して身軽になったデルは、今やパソコンメーカーというよりクラウドの会社に脱皮しつつあります。もうデルはパソコンの会社ではない、と宣言していますし。
中国のレノボも、業績はパッとしません。
目先は全世界的に昨年のウィンドウズXP更新需要の先食いで、マーケット全体が縮小している影響を受けているようですが、規模がデカクなっても楽な商売はさせて貰えないという証拠になるのではないかと。
パソコン事業は大きな設備投資は必要ないので、液晶や半導体より再編しやすい
昨今の電機メーカー周辺、再編の話のオンパレードです。当サイトでもシャープや東芝を取り上げています。
そんな中で今回はパソコン事業の再編ということになりますが、実はパソコン事業の再編はシャープの絡む液晶であったり、東芝の絡む半導体に比べると、再編はしやすい分野です。
それは何故かと言えば、今後それ程多くの設備投資は必要としないから。
パソコン事業って、メーカー機能を考えると、要は部品を仕入れて工場で組み立てる訳ですが、その工場、設備も必要ですがその設備は液晶や半導体のように何千億円レベルでの設備投資は必要ありません。管理人、さすがにパソコン工場のことは分かりませんが、既存の工場があれば今後は設備投資そんなにかからず、人件費=固定費で回していけるのではないかな、とも思います(違ったらゴメンナサイ、けど管理人はパソコン自作派なのでパソコンは人手で作るモノというイメージがどうしてもあります)。
いずれにしても何千億円と投資して、それが本当に回収できるのか?、という議論が常に付きまとう液晶や半導体と比べると、少なくともパソコン事業は遥かにリスクは少ないと言えるのではないかと。まぁ、パソコン工場に付加価値があるかどうか、議論もありますが。
けど事業再編や事業再生って、キャッシュフローが見えるかどうかが最大のポイントなので、設備投資に莫大な金額のかからないパソコン事業は、事業再編としてはやりやすい部類に入ると考えられます。
IPOには次の成長戦略=エクイティストーリーが必要
恐らく3社のパソコン事業統合の暁にはIPO(株式上場)というのが目標、ということになろうかと。事業再編を行ったルネサスだって、ジャパンディスプレイだって上場会社だし。そもそもVAIOの親会社はファンド=日本産業パートナーズだし。
ただね、3社のパソコン事業を統合して利益の出る会社になりました、というだけでのIPOだと、正直インパクト弱しです。それでも親会社の都合でIPO優先、ということであれば証券会社の尻を叩けばIPOできそうではありますが、株式市場から高い評価が得られるかは微妙。
統合会社がIPOを目指すのであれば、今後どうするのか、という成長戦略=エクイティストーリーが必要になります。何せパソコン事業を統合して利益が出るようになりました以上、では夢も希望も何もありませんので。株主には手厚い配当で報います、という手も無くは無いですが。
その辺りは流石デルはうまいことやっていて、既にパソコン会社からクラウドの会社に脱皮しつつあります。結構な金額をM&Aに投じてはいますが。新会社がデルの真似をしろとまでは考えませんが、将来的に上場、ということになれば、次にどうするのよ、というのが必然的に求められます。
そんな訳で3社がパソコン事業を統合した暁には、利益を出すのは当たり前として、社内で主導権争いや気の遣い合いをすることなく、独立した日の丸パソコンメーカーとして今後の将来像を示せるかどうかが日の丸パソコンメーカーの鍵になると考えます。
IPO=株式上場を目指すなら成長戦略=エクイティストーリーが必要
まとめ
富士通がパソコン事業の分社化した際の記事に書きましたが、以前と比べると日本のパソコン市場も本当にガラッと姿を変えつつあります。基本的にデスクトップPC派の管理人、もう何年も国内メーカーのパソコンに触っていませんが、寂しい限りです。
まだ本決まりではありませんが、東芝・富士通・VAIOの3社のパソコン事業統合で生まれる日の丸パソコン会社、古くからのパソコン好きとしては応援したいですね。新会社の名前はジャパンパソコンとか?全くネーミングセンスのかけらもない名前ですが・・・。
液晶や半導体に比べると、まだ安心して見ていられるパソコンの事業再編。ただしそれでも、そう簡単に儲けられる事業ではありません。日本メーカーのパソコン事業、今後どうなっていくのか、パソコン好きの一人として今後も非常に興味深いです。
16/4/15追記:残念ながら3社の統合は破談のようです
日の丸パソコンメーカーの誕生か、と思われた東芝・富士通・VAIOのパソコン事業の統合ですが、残念ながら破談になったようです。
「パソコン統合交渉白紙 東芝・富士通・VAIO、溝埋まらず」(日本経済新聞)
3社の経営統合は白紙になったとしても、PC部門の赤字を受け入れる余裕の無い東芝は、恐らく別の会社に対してPC部門の売却を打診すると考えられます。気が付けば斜陽産業になっているPC事業、何とも寂しい状況ではありますが、今回の破談によって、今後も国内PCメーカーの再編は続くことになります。果たして今後の日本のPCメーカーの勢力図はどうなっていくのでしょうか?
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