LIXIL(リクシル)が5月に会長の取締役解任を問う臨時株主総会を開催、株主状況から可決の可能性も

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社長交代を巡り混乱が生じているLIXILグループ<5938>で、5月に会長の取締役解任を決める臨時株主総会の開催が決定。コーポレートガバナンス上の問題から欧米の機関投資家が求めている会長の取締役退任が、臨時株主総会の場で決着をつけることになります。

株主の状況からは、会長の取締役解任の可能性がありえます。旧トステムと旧イナックスという、合併会社のお家騒動にも発展している中、今後の臨時株主総会に向けどのような動きがあるのか注目されます。

社長交代の余波が続くLIXILグループ

トステムとイナックスなどが合併してできた企業グループLIXIL<5938>がお家騒動で揺れています。外部からプロ経営者として招聘した瀬戸欣也社長を、本人は辞める意思がないにもかかわらずやめさせてしまった所が全ての発端。

コーポレートガバナンスに気を遣う昨今としてはなかなかの力業で社長を解任したのですが、機関投資家がその経緯を問題視して、社長解任を主導した会長の取締役解任を求める事態となっています。

単に会社側とファンドのいざこざならタマにある話でもありますが、LIXILの会長は旧トステムの創業の2代目社長の一方、イナックス系の取締役及び株主がファンドの会長解任案に賛成。社長交代をきっかけに合併会社の泥仕合が外部株主も巻き込む形でスタートしています。

そして遂にLIXILは機関投資家の求めに応じて、潮田会長の取締役解任を巡って5月に臨時株主総会を開催することを決定しました。

取締役の解任は株主総会で過半数の賛成が必要

会社法の規定では取締役の解任は、株主総会で過半数(1/2以上)の賛成が必要です。

今回、機関投資家が求めているのは潮田会長の取締役の解任。取締役の選任は株主総会の決定事項であり、取締役会で勝手に他の取締役の解任はできません。日産でゴーン元会長が逮捕されましたが、ゴーン元会長は今も日産の取締役としての席は維持しています。自ら辞任の意思を示さない限り、取締役を解任できるのは株主総会だけとなります。

LIXILに対し機関投資家グループは敵対的買収をする訳でもないのに、臨時株主総会を招集してまで潮田会長の取締役解任を求めているあたり、社長交代の一件で怒り心頭となっている姿が想像できます。

LIXILグループの株主構成

意外に面白いのがLIXILの株主構成、会社のIRサイトから抜き出したものが下記となります。

・日本マスタートラスト信託銀行(株)信託口 4.41%
・日本トラスティ・サービス信託銀行(株)信託口 4.07%
・STATE STREET BANK CLIENT OMNIBUS OM04
(常任代理人 香港上海銀行東京支店) 3.32%
・野村信託銀行(株)信託口(潮田会長の委託) 3.09%
・第一生命保険(株)(常任代理人 資産管理サービス信託銀行(株)) 2.28%
・LIXIL従業員持株会 2.25%
・(株)三井住友銀行 1.92%
・日本トラスティ・サービス信託銀行(株)信託口5 1.91%
・公益財団法人LIXIL住生活財団 1.73%
・JPMC OPPENHEIMER JASDEC LENDING ACCOUNT 1.72%
(常任代理人(株)三菱東京UFJ銀行)

上記で26.7%の株主の状況ですが、その中で潮田会長は3.09%と個人では筆頭株主です。しかしそれでも株主シェアは3%にしか過ぎません。

一方で、所有者別分布状況は下記となっています。



・外国人39.9%
・金融機関28.5%
・個人その他16.0%
・国内法人7.7%
・自己株7.9%

LIXILは外国人株主が39.9%。次が金融機関の28.5%という株式の所有状況。そんな訳で外国人株主と金融機関が会長の取締役解任に賛成してしまうと、トステムの創業家ながら潮田会長はLIXILの取締役解任を余儀なくされます。

今回仕掛けた側の欧米の機関投資家も当然勝算があったからこそ仕掛けている訳ですが、LIXILの会長の取締役解任騒動、上場しているオーナー会社といっても株主シェアの面から言えば好き勝手にできない、ということが天下に知れ渡る事例となる可能性があります。

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金融機関の株主の動向が注目される

5月の臨時株主総会に向けて、票読みが始まりますが注目は金融機関系株主の動向。特に国内系のファンドがどういう行動を取るか注目が集まります。

瀬戸前社長の解任の経緯は第三者委員会でも明らかな通り、要は会長のやりたい放題だった訳で、ガバナンスに大きな問題が存在している状態。社外取締役も肝心な取締役会を欠席していたりとガバナンスがメロメロ。未上場のオーナー会社ならよくある話ですみますが、上場していてコーポレートガバナンスにうるさい昨今、これじゃだめでしょ、という状態は明白。

それなら外国人株主が提案している会長の取締役解任に賛成できるかと言えば、筋論はともかくそこまでやってしまっていいの???、という状態かと。

LIXILの株主になっている国内系の機関投資家は、今年のゴールデンウィークは落ち着かない休みになりそうです。

株価は1年で約1/2に

LIXILの株価を見ると、機関投資家が怒るのも無理ないよね、と思わないでもありません。


※「画像出典:マネックス証券/日本株取引ツール トレードステーション」
マネックス証券Tradestation
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2018年1月には3,000円を超えていた株価は3月現在1,500円付近をウロウロしており、約1年で株価は1/2になっています。

12月の株価下落はやむを得ないとしても、その後の戻りを見せている銘柄も多い中で、LIXILの株価は1,500円は回復したものの、沈んだままの状態です。

5月の臨時株主総会に向けLIXIL株がどのような値動きを見せるのか、注目されます。

伊藤忠のデサントへの敵対的TOB成功と合わせて日本の資本市場の新しい流れでは?

先日、伊藤忠によるデサントへの敵対的TOBが成功を収めました。伊藤忠も大人げないなぁ、と思わないでもないですが、日本で敵対的買収が成功を収めた画期的な事例となります。敵対的買収と言っても伊藤忠の場合は、完全に外部の会社を敵対的買収で傘下に収めた訳ではないので、若干通常の敵対的買収と異なる訳ですが、それでも日本の資本市場の歴史に新しい1ページが刻まれたことには違いありません。

そして5月に開催されるLIXILの会長の取締役解任を巡る臨時株主総会。最終的な結論がどうなるかは分かりませんが、もし賛成多数で会長の取締役解任が可決されると、こちらも機関投資家が取締役の解任を求めて成功するという、日本の資本市場の新しい歴史を刻むことになります(過去はさておき、少なくとも最近はないハズ)。

5月のLIXILグループの臨時株主総会に向けてどのような動きが生じるのか、そして最終的な結果はどのようになるのか、しばらく注目しようと思います。

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