東芝の倒産危機、再建の鍵は地方銀行が握る可能性も

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 原発事業で数千億円の追加損失発生の見込みの東芝。下手をすれば債務超過に転落で、倒産危機がヒタヒタと迫っている状態となっています。

 足元メインバンクを含む金融機関は東芝に対する支援姿勢を変えていませんが、東芝向けの融資はメインバンク3行の残高と地方銀行・生保等の連合軍の残高がほぼ同等に近い金額。メインバンクが支援でまとまっても、地方銀行等がポロポロと離脱する事態が続くとメインバンクのみで支えられるかどうかは結構微妙。

 東芝再建の大きな絵を描くお手伝いはメインバンクのメガバンクが行うとしても、地方銀行や生保等の説得がうまくいくかどうか、という点が案外東芝再建の重要なポイントとなりそうです。

PS 尚、東芝と地銀の最新の状況は下記でも解説しています
東芝再建策に地銀が激怒している件

東芝の16/9中間期時点の借入残高は7,987億円

 東芝クラスの大企業となると、最近の開示情報では銀行からの借り入れ情報等の記載がありません。以前の個別開示の際はどこの銀行からいくら借りてます、という開示がされていましたが、連結決算重視そしてIFRS対応という流れの中で情報開示が後退した面が正直あります。

 原発事業でまさかの数千億円レベルでの追加損失の計上が予想されている東芝ですが、どの銀行がナンボ貸しているのかな・・・、と思っていたら1月11日の日本経済新聞に記載がありました。

1/11日経新聞記載の東芝向けの銀行等の融資残高

 1月11日の日本経済新聞に記載されていた、東芝向けの銀行等の融資残高は下記。

三井住友銀 1,100億円
みずほ銀 1,100億円
三井住友信託 750億円
三菱東京UFJ銀 547億円
三菱UFJ信託 480億円
第一生命 400億円
農林中金 365億円
政投銀 240億円
りそな 210億円
その他 2,795億円(地銀や生保など)
合計 7,987億円
(注)単位億円。2016年9月末時点。取引銀行の資料を基に作成。
(2017/1/11日本経済新聞)

 東芝のメインバンクは三井住友銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行の3行。メインバンク3行は当然のことながら、東芝への継続支援を表明しています。
 ただし3行合わせての融資残高は2,950億円で融資総額のシェアは約37%であり、東芝の再建はメインバンク3行だけで決められる訳ではありません。

 注目すべきは「その他」の2,795億円。その他の中には地方銀行や生命保険会社がズラーっと名前を連ねているのだと考えられますが、「その他」の合計金額はメインバンク3行の融資残高と比べると若干少ない程度となっています。

メインバンクも資本支援は慎重姿勢

三井住友銀行など主力取引銀行は資金繰り支援を継続する方針を表明。ただ、より損失リスクの高い資本面の支援には慎重だ。(2017/1/11日本経済新聞)

 まぁコレは当たり前。いくらメインバンクとは言っても、増資の引き受けはリスク高いですし、規制もあります。何より持合いの株をドンドン売っている昨今、新たに株を引き受けたら他の取引先に示しがつきません。まぁDES(デッド・エクイティ・スワップ)で既存の融資分を株に振り返る、という奥の手は無きにしも非ず。メインバンクに対する東芝に対する資本支援は、DES+α、程度が限度ではないかと。

 東芝は足元の資金繰りに困っている訳ではなく、原発事業の損失で債務超過転落の懸念がある、という資本面での困り事で新しい資金が必要という状態ではなので、既存の融資を資本に振り返ることができる銀行のDESは可能性としては充分ありえます。当然、東芝が立ち直って株価も上昇するというストーリーが見えないと、銀行も株で丸々リスクを抱えるDESは飲みませんが。

 本格的に資本支援、となると産業革新機構にご登場願うしかないと個人的には思っていますが、今の状態であれば(半導体事業他の既存事業が順調に推移)、目先の資金はメインバンクからの融資で回して、資本の部の充実はDESなり取引先への第三者割当増資なりで対応できる状態ではあります。

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イザという時は地銀や生保のスタンスが東芝再建の鍵を握る可能性も

 東芝という会社を俯瞰した時、確かに原発事業で損失が出て債務超過転落の可能性がありますが、既存事業は半導体事業中心に好調で目先の資金に困っている訳ではなく、またメインバンクも融資で継続的に支える、と言っているので企業の存続自体に問題はありません。

 ただしもし半導体事業がコケてしまったり等すると、結構大変。資本支援は上述の通りで、メインバンクといえども資本面での支援は限界があります。本気でするなら産業革新機構他、ファンドの力を借りるしかありません。

 そして銀行からの借り入れも関係の整理が結構厄介。メインバンクと同程度の融資残を抱える、地方銀行と生命保険会社をどう説得するか。特に地方銀行の場合、地方独特の都合で、これ以上お付き合いできなくなりました・・・、と一行が引き金を引くと雪崩を打って・・・、という可能性が無きにしも非ず。メインバンクが支えることが通常ですが、メイン3行の合計額より若干少ない程度の地銀・生保の融資残、メイン3行が肩代わりするにも限度があります。

 まぁ、最悪のケースの部類ですが、基本的に東芝は半導体事業という水物事業の支えられている面があるので、ヒョットしたらヒョットすることだってありえます。

 そんな訳で、イザという時は地銀及び生命保険会社を繋ぎとめることができるのか、という部分が融資残高の維持=手元資金確保、という面では重要なポイントになると考えられます。

 けど地銀も頭が痛いでしょうね。地元の企業ならまだしも、東芝で収益を圧迫されかねない訳ですから。東京で余計なことするから・・・、と金融庁に叱られる???

まとめ

 東芝問題、追加でどの程度損が発生するか見えてこないと次の議論に進めない面があります。よって今の所、次の東芝の発表待ちではあります。ギリギリ債務超過は回避したとしても、既存ののれん代を考えれば、実質的に債務超過となる可能性が高いとは思いますが、それでも表に出てくる数字が債務超過となれば、一大事となります。

 しかし東芝の地銀と生保の融資残の多さは結構意外でした。東芝は有利子負債が多い会社ではありましたが、地銀や生保からも結構借りていたんですね。

 東芝問題、振り返ってみれば2015年の当サイト開設初期の頃から追いかけてきましたが、まさかここまで東芝が追い込められるとは予想していませんでした。やはり原発事業は民間企業が取れるリスクではなかった、ということでしょうか?
 まだ着地には程遠い東芝問題、もうしばらく追いかけてみようと思います。

PS 案の定というかやはりというか東芝は地銀を怒らせてしまっているようです・・・
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