11月に予定されている日本郵政・ゆうちょ銀行・かんぽ生命の郵政グループ3社のIPO(株式上場)。新規上場と言えば、公募で勝って初値で売るIPO投資が注目されますが、果たして日本郵政・ゆうちょ銀行・かんぽ生命でIPO投資は通用するのか?
正直な所、上場承認が下りて、各種数字や予想株価が出てこないと、株価が安いor高い、や、儲けられそうorそうでもない、は言えません。
しかしながら、日本ではNTTを始め過去何社もの国営企業の民営化=株式上場案件があり、それらの検証は多少なりとも郵政グループのIPO投資の参考になるハズ。
そんな訳で、過去の民営化案件を振り返ってみました。
過去の民営化案件は8件あって5勝1敗2引分け、勝率62.5%。
果たして郵政3社はどうなる?
概要
過去の民営化案件はNTT以降全部で8社
過去、民営化で政府保有株が株式市場に放出されたのは全部で8社あります。
- NTT(1987年2月)
- JR東日本(1993年10月)
- JT(1994年10月)
- JR西日本(1996年10月)
- JR東海(1997年10月)
- NTTドコモ(1998年10月)
- J-POWER(2004年10月)
- 国際石油開発(2004年11月)
民営化案件のスタートは1987年2月のNTTなんですね、実は。そして最後の民営化案件は2004年11月の国際石油開発。郵政3社の民営化は、実に11年ぶりの民営化案件となります。
公募の株を初値で売るか売らないかは個人のご判断ですが、民営化案件とは言え、IPO投資の醍醐味は公募で買って初値で売る部分。初値は公募か価格を上回ることができるのか?、というのがIPOでは大きなポイントとなります。
そんな訳で、上記8社、それぞれ初値ベースの勝ち負けを調べてみました。
NTTの公募価格と初値→勝ち
NTTは1987年2月に上場。戦後初の、政府保有株の株式市場の放出となりました。
公募価格1,197,000円-初値1,600,000円
勝ち!(+403,000円、+33.7%)
JR東日本の公募価格と初値→勝ち
JR東日本は1993年10月に上場。
公募価格380,000円-初値600,000円
勝ち!(+220,000円、+57.9%)
JTの公募価格と初値→負け
JTは1994年10月に上場。
公募価格1,430,000円-初値1,190,000円
負け!(▲240,000円、▲16.8%)
JR西日本の公募価格と初値→引分け
JR西日本は1996年10月に上場。
公募価格357,000円-初値360,000円
引分け(+3,000円、+0.1%)
JR東海の公募価格と初値→引分け
JR東海は1997年10月に上場。
公募価格380,000円-初値385,000円
引分け(+5,000円、1.3%)
NTTドコモの公募価格と初値→勝ち
NTTドコモは1998年10月に上場。時は金融危機の真っ最中で、何もこんな時期に上場しなくても・・・、と言われていました。
公募価格3,90,000円-初値4,600,000円
勝ち!(+700,000円、+17.9%)
J-POWERの公募価格と初値→勝ち
J-POWERは2004年10月に上場。
公募価格2,700円-初値2,795円
勝ち!(+95円、3.5%)
国際石油開発の公募価格と初値→勝ち
国際石油開発は2004年11月に上場。上場後に帝国石油と合併しています。
公募価格465,000円-576,000円
勝ち!(111,000円、+23.9%)
過去の民営化案件を見た感想
過去の民営化による政府株の放出、全部で8社ありましたが、IPO投資という観点ではその勝敗は下記!
5勝1敗2引分け、勝率62.5%
JR西日本とJR東海は引分けにしました。JR西日本は+3,000円、JR東海は+5,000円。当時はネット証券も本格普及前であり、株の売買は証券会社の窓口が基本。証券会社の手数料等考えると、トントンです。
一番勝ったのはNTTドコモの+700,000円、上昇率+17.9%。けど公募価格3,900,000円と非常にお高い株で、いっちょ儲けてやろう的な、軽い気持ちで買える株価ではありませんね。
そして初の民営化案件となったNTTも+403,000円、上昇率+33.7%と見事な勝利を飾っています。しかしながら、あくまでも初値で手放したら、というIPO投資の観点。NTT株はその後、ジリジリと下がり、多くの投資家が損切りor塩漬けとせざるを得なかったことはお忘れなく。
ちなみにJR3兄弟。一番最初のJR東日本は+220,000円、上昇率+57.9%と大勝利でしたが、逆にJR西日本とJR東海は引分け。JR東日本で株価の設定が甘かった、と思った政府サイドが、JR西日本と東海で株価を高く設定したら引分けでした、ということでしょうか。
負けたのはJT1社のみ。▲240,000円、下落率▲16.8%。
政府の民営化案件のIPO投資、負けたのはJT1社だけという点を捉えれば、比較的負けない投資となっています。ただし、郵政3社もそもまま負けない、とはならないので、お気をつけあれ。あくまでも過去のデータですので。
郵政3社の上場時の株式市場等の環境
IPOが成功するかどうかは、その時の株式市場の環境等、各銘柄単独の要因のみでは決まりません。今回の日本郵政・ゆうちょ銀行・かんぽ生命の郵政グループ3社のIPO時の環境等を考えてみます。
<有利と考えられる点>
・郵政3社のIPOを成功させなければいけないという政府の考え
→今回の売却益は東日本大震災の復興資金に充てられます
・クジラの存在(まだ買い余力があります)
・機関投資家のリバランス要因
→同業の銘柄を売って、郵政3社の株を買いに行きます
・新規投資家の参入が期待できる(NTTの時と同じ)
・配当利回り狙いの買いへの期待
<不利と考えられる点>
・成功が必達目標であり、政府から証券会社に対して高い株価でのIPOの強いプレッシャーが予想される
・郵政3社の成長力は微妙
・過去最大規模の3社のIPO、株式市場は吸収できるのか?
<その時にならないと分からない点)
・相場環境
→中国問題がなければ、”有利点”でしたが、現在の環境下では何とも言えません
上記は「今更・・・」、という列挙ではありますが、3社同時に政府保有株を放出するという、前代未聞の試みであり、ここが”吉”と出るか”凶”と出るかが、管理人としては、一番興味のある所です。
株は長期投資が王道
株は本来、長期投資が目的。ただし、今回の郵政3社の上場は、東日本大震災の復興資金の確保等、政府の思惑もあり、目先の上場時の株価は様々な要因が絡み過ぎます。
本来の株式投資に立ち返れば、企業分析をしてその会社の成長性や配当性向を読んで・・・、というのが王道になります。
そう考えると、郵政3社は成長性はどうなのよ?、というお話になります。しかしながら、配当性向は高くする、とも報じられており、配当目的で買うのは”あり”かもしれません。
上場後はチャート屋の出番も増えますが、上場前なのでチャート屋というより、アナリストの出番ですね、本来は。
まとめ
IPO投資は企業の成長性云々というより、株式の需給要因等の外部要因に大きく左右されます。
NTTの民営化の際、初値で売って儲けた人もいた反面、その後も夢を見て株を持ち続けて、泣く泣く損切りor塩漬けになった方も多く発生しました。
トレード的な観点で言えば、途中でトレードの期間を変えるのは厳禁。IPO投資、という観点で買ったら、潔く初値で勝とうが負けようが売却。長期保有と考えているなら、目先の株価に一喜一憂しない(ただしその前の事前分析が非常に大切になります)。短期勝負と思って買ったが値が下がりうまくいかなかった・・・、と言って、そのまま損切りせずに継続保有をすると、だいたい初値の時以上にやられますので・・・。
初値ベースで見れば、勝率62.5%となっている民営化案件のIPO投資。果たして郵政3社の場合はどんな結果になるのでしょうか?
以上、IPO投資という観点での、過去の民営化案件の検証でした。
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