スペイン・カタルーニャ州の独立問題の理由、スペイン内戦とフランコ独裁の影

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スペインがカタルーニャ州の独立問題で揺れています。スペイン政府はカタルーニャ州の独立について一切認めない態度の一方、カタルーニャ自治州政府は一方的な独立宣言も辞さない構えで、一瞬即発の状況に。

カタルーニャ州の内部でも独立否定派が一定数存在しており、通常であれば一方的な独立の可能性は低いのですが、歴史的な背景もあり、カタルーニャ州の独立問題は一筋縄では解決しそうにありません。

ユーロの安定を脅かしかねないカタルーニャ州の独立問題、スペイン内戦及びフランコ総統の独裁の視点も踏まえて解説致します。

カタルーニャ州の独立問題がピークに

スペイン第2の都市バルセロナを抱えるカタルーニャ州で独立問題が発生しています。日本人の感覚からすると、何故大阪は独立しようとするの?、との不思議な感も抱くカタルーニャ州の独立問題ですが、スペインの歴史を知ると、日本からは想像できない複雑な歴史(にはまだなってない面も)が存在しています。

10月にカタルーニャ自治州が一方的に独立宣言してしまうのではないか、とも言われているカタルーニャ州の独立問題、世界史マニアの管理人的な視点で語ってみようと思います。

カタルーニャ州の独立問題の理由

スペインのカタルーニャ州で独立問題が生じる理由として①元は別の国だったという歴史的経緯、②カタルーニャ州のスペインにおける相対的な経済発展、③スペイン内戦の影、の3つを取り上げることができます。

①カタルーニャ州のは元は別の国

スペインと言えば、ヨーロッパの西の端の国、とのイメージがあります。ドイツやイタリアが日本で言えば明治維新のチョット前に統一したのとは対照的に、現在のスペインの原型が出来たのは1479年。

1479年以前はマドリードを中心とするカスティラ王国と、バルセロナを含むアラゴン王国が存在。スペインの歴史は、レコンキスタと言われる、イスラム教徒からイベリア半島を取り返す歴史でもありますが、カスティラ王国とアラゴン王国はそれぞれイベリア半島を徐々にイスラム教徒から回復

そして最終的に1469年にカスティラ王国のイサベル女王と、アラゴン王国のフェルネンド王子が結婚し、1479年に同君連合としてスペイン王国が成立。

ここまではまんま世界史の教科書通りです。そんな訳で、バルセロナの一帯はスペインの中でも、マドリード中心のカスティラ王国とは別地域(アラゴン王国)と言えます。よって独立心が旺盛な地域。

けどねスペイン王国が成立したの1479年。500年以上一緒にスペイン王国を形成して、無敵艦隊作って世界に覇を唱えたり、スペインを占領したナポレオンに対してゲリラ戦もやったんだから、何を今更・・・、と言う感じは遠い日本から見るとしなくもありません。

ともあれ基礎知識としてカタルーニャ州は同じスペインと言っても、1479年以前は別の国だった、というのは基礎知識として知っておいた方がよいかと。言葉も随分違いますので。

②経済的に発展しているカタルーニャ州

1992年スペインでオリンピックが開催された都市はバルセロナ。その後、首都マドリードもオリンピック開催に名乗りを上げましたが、現在に至るまで当選はなされていません。オリンピック開催が象徴していると思うのですが、バルセルナを抱えるカタルーニャ州はスペインの中でも経済的に発展している地域となっています。海沿いのバルセロナは、交通の要衝として栄えた歴史があり、いつの時代もスペインの中では発展した地域とされていました。

1931年にスペイン王政が倒れ共和制が樹立されますが、その時点において、農業や教会中心で遅れた国と言われたスペインでしたが、カタルーニャ州は既に工業化がスタートしていた地域と言われています。

そして現在、カタルーニャ州はスペイン屈指の経済発展を遂げています。ちなみに日系企業も多くカタルーニャ州に進出しており、今後もしカタルーニャ州が独立との事態になれば、現地に進出している日本企業も非常に悩ましい選択を迫られることになります。一時は日系企業がカタルーニャ州のGDPの10%分を占めていたそうで、そのプレゼンスの高さは、ヨーロッパの他の地域と比べても際立っていると言えます。

そんなカタルーニャ州から見える風景は、我々の税金は中央政府に搾取されている、と言うもの。先進地域であるカタルーニャ州民の収めた税金が、他の貧しい地域の整備に使われ、自分たちに使われていない、との慢性的な不満が存在しています。

大なり小なりどの国でも存在している地域による税金の不公平感、農業国家としてやってきたスペインでは、工業化の進んでいるカタルーニャ州の不満は大きいものがあります。

この税金の不公平感、進み過ぎるとユーゴスラビア化します。ユーゴ内戦、色々問題の発端はありましたが、先進地域と言われたスロベニアとクロアチアとセルビアを中心とする他地域の税金の不公平感も内戦の発端の1つです。

この問題、突き詰めるとイタリアだって南北に分裂しかねないので、正直触るとよい結果にはまずならない問題なので、歴史的にはソーッとしておくのがよい問題です。

③スペイン内戦の影、バルセロナは人民政府系の都市

スペインの近現代史を語る上で外すことができないのがスペイン内戦。1931年にスペイン王政が倒れ共和制が樹立されますが、その後のスペイン国内は乱れに乱れます。

そして遂には軍を率いるフランコ将軍が政府に反旗を翻し、保守派を中心とするフランコ派と共和国と言うより人民政府側で内戦が勃発。スペイン内戦はフランコ派をドイツ・イタリアが支援して、人民政府をソ連が支援するという形で継続。内戦と言うのはどの国でも悲惨な過程をたどりますが、スペインもその例に洩れません。

最終的にはフランコ派が勝利するのですが、その過程でバロセロナを中心とするカタルーニャ州は人民政府派側の拠点として活動します。またスペイン内戦の一因はカタルーニャ州の独立問題も背景に存在していました。

スペイン内戦そしてフランコ独裁体制成立の過程で多くの血が流れている訳ですが、敵対したカタルーニャ州で多くの血が流れたのは言うまでもありません。

スペイン内戦に勝利したフランコ将軍は1939年に国家元首として独裁者の地位につくのですが、何とその期間は1975年までの長きに渡ります。1975年と言えば40年以上前とはなりますが、日本で言えば就職氷河期世代・ロスジェネ世代が生まれた頃。

就職氷河期世代・ロスジェネ世代の祖父母世代がスペイン内戦、親世代がフランコ独裁体制時代を体験しており、当然その過程で身内に被害者がいてもおかしくはなく、スペインにとってスペイン内戦そしてフランコ将軍の独裁体制時代はまだ完全なる歴史となる程には時間が経過していません。

スペイン王室に対して複雑な感情を有するカタルーニャ州

1939年の国家元首就任以来、ドイツ・ヒットラーと渡り合う等して最終的には1975年に82歳で天寿を全うしたフランコ総統ですが、どこかの国とは異なり、自身の親族を跡継ぎにするようなことはせず、スペイン前国王の孫のファン・カルロスを後継者に指名して、スペインに王政復古をもたらします。(独裁者が前の王様の孫を後継者にするって、歴史的には極めてレアケースです、フランコ総統が天寿を全う出来た政治的センスが伺えます)

現在のスペイン国王のフェリペ6世は、ファン・カルロスの息子にあたり2014年に王位を継承しています。

フェリペ6世はカタルーニャ州の独立問題に際し、無責任な行為、として非難しましたが、カタルーニャ州の側から見れば、現スペイン王室はフランコ独裁政権からの流れを汲んでいるため、王室に対する感情はイギリスやオランダや日本とは全く異なる感情があります。ましてや、1931年に一度スペイン王政は崩壊しているため、スペイン王政の足元は他国の王政に比べるとその成立基盤は確かに歴史的な背景はあるものの(現在のスペイン王室はブルボン王朝の血統)、フランコ総統によりもたらされたもの、との借り物の部分があるのも事実です。

フェリペ6世の非難に対し、カタルーニャ州の住民は反発する声が多かったようですが、上記の歴史的経緯を踏まえると、充分に納得がいきます。

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現実問題としてカタルーニャ州の独立は難しいが

以上の歴史を踏まえるとカタルーニャ州の独立の可能性は、スコットランドより高い面があります。

ただし他地域に比べて高い経済発展があるとは言え、それはカタルーニャ州がスペインに所属していることから生じている恩恵であり、仮に独立宣言を行う等して混乱がもたらされれば、その経済発展の優位性は崩壊の可能性が高いと言えます。
イギリスがEU離脱を決めた後、続々とヨーロッパの拠点機能をロンドンから大陸側に移す企業が続出し不動産価格にまで影響が生じているように、企業は安定する地域を好みます。

既にスペイン国内の銀行は本店所在地をカタルーニャ州から移転する動きが生じており、独立問題が過熱すれば、更にその動きは加速の見込みです。

スコットランドは1707年にイングランドと合邦しており、まだイギリスが現在の国の形になって300年ですが、スペインは成立したのが1479年で500年以上昔。その歴史だけ考えると、経済問題もあるのでそう簡単に独立はできないでしょ、と思うのですが、スペイン内乱からフランコ総統独裁の暗い影が今も完全に歴史とはなっていない点が、スコットランド独立問題とは違っています。

スコットランド問題はまだ理性で話が出来る面がありますが、スペイン内戦以降の歴史があるため、カタルーニャ州の独立問題は感情の問題が存在します。人間は感情の生き物ですし、ましてやまだスペイン内政・フランコ独裁政権の体験者は健在。カタルーニャ州の独立問題について、スペイン内乱やフランコ独裁の話が表に出てくるようになると、イヨイヨ事態は深刻化の証ではないかな、と思います。まだその段階ではありませんが。

現在の所ユーロは平穏無事

ユーロ加盟国のスペインの混乱はユーロにも影響を与える可能性が高くなりますが、10月はユーロが上昇しており、今の所カタルーニャ州の独立問題はユーロに対して影響を及ぼしていません。

ただし今後のカタルーニャ州の独立問題の進展いかんでは、ユーロに対する影響も生じるケースが予想されるため、FXトレードを行う場合、カタルーニャ州の独立問題随時フォローの必要が生じます。


現在の所、ユーロ/ドルは堅調そのもの(ユーロ/ドル日足)

まとめ

スペインのカタルーニャ州の独立問題、10月11日朝の時点でカタルーニャ州自治政府は独立宣言を一旦保留したようです。期待のEU諸国にもそっぽを向かれた状態のカタルーニャ州自治政府であり、さすがに一方的に独立宣言を行うにはリスクが高すぎる、と判断したと思われます。仮にカタルーニャ州が独立を宣言しても、スペインが存在している限り、EU加入は現実問題として不可能です。

果たしてカタルーニャ州の独立問題、今後どのような進展を見せるのでしょうか。今後の展開にも注目したいと思います。

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