HISがユニゾHDに対しTOBを表明、ユニゾが手掛けるホテル事業を狙っています。ユニゾそして広い意味でのグループを形成するみずほグループがどう出るか、注目が集まります。
ユニゾHDはPBR1倍割れであり、HISのTOBにより株価は急騰。バリュー株投資の教科書的な展開ともなっていますが、HISのユニゾHDへのTOBは、PBR1倍割れ銘柄に対し光があたる契機となる可能性もあります。
最終的にHISのユニゾへのTOBがどうなるのか、鍵を握るみずほグループの判断が注目されます。
概要
HISがユニゾHDへのTOBを発表
既に4%超える株主シェアを有し筆頭株主となっていたHIS<9603>がユニゾHD<3258>へのTOBを発表。ここ数年ユニゾのホテルを街でよく見かけるようになりましたが、ユニゾは不動産事業とホテル事業を手掛ける旧興銀系の名門企業。
HISからユニゾHDへは事前に提携等の交渉機会を模索したものの、色よい返事がなく最終的にTOBに至った様子。まぁそりゃ誇り高き旧興銀系の会社のユニゾは、HISと簡単に同じ土俵に上がってはくれません。それなら、ということでHISは一転TOBという正当な手段ながら強硬策に出た形です。
HISが欲しいのは、ユニゾのホテル事業。少子高齢化社会の中、旅行代理店事業はこれ以上の簡単な伸びは見込めない中、“へんなホテル”でホテル事業に力を入れるHISが目に付けたのがユニゾという流れです。
HISのユニゾHDに対するTOBの詳細は下記です。
・公開買い付け価格 3,100円
・取得上限 45%が上限
・買い付け代金 426億円
・買付期間 7月11日~8月23日
・公開買付代理人 HS証券
株好きで知られているHIS澤田社長は、個人会社でHS証券という証券会社も保有しています。今回のTOB、やはり公開買い付け代理人はHS証券です。
みずほグループで旧興銀系のユニゾHD、現在の社長はみずほ銀行の1兆円増資の立役者
ユニゾHDはみずほグループ内で旧興銀系の不動産会社に位置付けられます。現在の社長(小崎哲資氏)は名前見て懐かしいなぁ、と思ったのですが、かつて瀕死のみずほ銀行を救うことになった1兆円増資の立役者。
みずほグループの中で未だに独特の存在感を持つ旧興銀グループですが、グループのユニゾHDにHISは手を突っ込んだ訳で、これはもうHISのオーナーで辣腕経営者として鳴らす澤田社長でないとできない判断です。
ユニゾHDの株主構成
ユニゾHDの2019年3月期末の株主構成は下記(有価証券報告書より)。
そして所有者割合は下記。
みずほグループの企業が大きく株を持ってます、という状態ではさすがにありません。ただ2位共立、3位新日鉄興和不動産、8位興銀リースと旧興銀系の企業は大株主として存在。
ただ面白いのは、外国人等の所有が約17%、個人その他の所有が約28%で両者で45%をオーバーしています。既にHISは4.52%の株主シェアを持っているので、仮に両者の保有株を全てHISが取得すれば、ユニゾはHISの子会社化されてしまいます。
そんな訳でHISのTOB、当然成算があっての仕掛けです。HISは40%を上限に取得する、と表明していますが、TOB成立の可能性はあります。
悩ましい判断を迫られるみずほグループ
案外困っているのがみずほグループではないかと。HISにユニゾは渡せない、という旧興銀出身者の声は強そうですが、では大義名分は?まさか旧興銀グループの天下り先の確保とはいえません。
みずほFGがユニゾのホワイトナイトとして登場すれば、体力的にはHISは勝てる戦ではなくなってしまいますが、今さら銀行グループで高い金を払って不動産会社を子会社化してどうする(ついでにいえば銀行にホテルの運営ノウハウは当然ありません)、という批判が生じるのは火を見るよりも明らか。
第三者の企業を連れてきてホワイトナイトにするのがオーソドックスですが、誇り高き旧興銀勢力がホワイトナイトとはいえ、他の企業に頭下げるの簡単ではありません。ジャストアイディアでみずほグループで旧富士銀系の不動産会社のヒューリック<3003>をホワイトナイトにするという手もありますが。
旧興銀グループといわれても、既に日本興業銀行がなくなって既に19年が経過しています。7月11日の段階では敵対的TOBにまで至っていませんが、敵対的TOBとなった時、みずほグループがどのような対応をするのは非常に興味深いです。
PBR1倍割れ企業への警鐘となるのかも
投資家の村上世彰氏は、PBR1倍割れの上場会社の経営者は失格、との発言を何回かされていますが、ユニゾHDはまさにPBR1倍割れの企業。
銀行グループの企業としては、公募増資を積極的に行い活発な事業展開をしていましたがPBRは1倍を割れたままで、その公募増資による外国人や個人株主の増加をHISに突かれた形です。
PBR1倍割れの銘柄は、TOBなどのきっかけを得て本来価値が現れることで投資して利益を得られる可能性があります。実際にユニゾHDの株価はTOB発表を機に急騰しています。週足で見るとその上昇の強さが分かります。
・ユニゾHD株価チャート(週足)
「画像出典:マネックス証券/日本株取引ツール トレードステーション」
マネックス証券Tradestation
※関連記事:マネックス証券のトレードステーション発表会に行ってきました
ただし日本はTOBなどがまれで、PBR1倍割れていても放置プレイで何も起こらない銘柄が多かった訳です。よってユニゾHDに対するHISのTOBは、ある意味セオリー通りの流れです。
HISによるユニゾHDへのTOBは、PBR1倍割れ企業に対する警鐘となるのでは?
ちなみに安直にPBR1倍割れ企業に投資すると、株価の放置プレイとなる可能性が高いので、辛抱強く待てる資金でないと暇で死んでしまいそうになります。そして結局、TOBなどは発生せず、塩漬けになる、というのが王道的なパターンなので、しっかり銘柄選ばないとまず成功しません。いや銘柄を選んでも、成功するかどうかは運かも。
今回ユニゾHDにPBR1倍を踏まえて投資している投資家の方もいるようですが、素直にスゴイな、と思います。
いわゆるバリュー株投資に該当しますが、特に国内ではバリュー株投資は先の見えない暇な投資との戦いです、結果がでればよいものの結果が出ないと時間だけかかって得るものがありません(損するケースも多い)。長期で資金を動かさないことを覚悟して、しっかり銘柄を選べば“あり”ですが、バリュー株投資って世間で言われているほど簡単ではありません。業績はボチボチ悪くないのに、人気がなくてジリジリ下がる株価で含み損が膨らむのは、真綿で首を絞められる感覚です。そして最後に景気後退にともない業績悪化、となると悲惨です。。。
まとめ
HISのユニゾHDに対するTOBは、株好きで知られるHIS澤田社長(個人会社の澤田HD傘下には証券会社も存在)があってこそです。HISがユニゾHDを取ったら、日本のTOBの歴史に新しい1ページが刻まれるのではないかと。
ユニゾHDを取りに来ているHIS、最終的な決着がどうなるのか今後注目したいと思います。
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