ボーッと夜にWBS見ていたら、大江アナが速報です、とのこと。事件か事故か?と思いきや、日本経済新聞社がイギリスのフィナンシャル・タイムズ社(以下FT)を買収するとのこと。
FTが売却されるらしい、と言うのは実は聞いていましたが、まさか日経新聞が買うとは驚き。けど日経新聞の系列局のテレビ東京以外では、速報では流さないよなぁ、と思ったのでした。
1,600億円でのフィナンシャル・タイムズの買収は非常に高い買い物
1,600億円での買収と聞いた時、感覚的に、日経新聞は随分と高い値段でFTを買ったんだろうなぁ、と思いました。元々、FTの売却先としてブルームバーグ他の名前はありましたが、日経新聞の名前はなかったようですし。
とは言え、値段の高い安いを簡単に検証する手段はないか、と思っていたら、絶好の記事をロイターで発見。
調整後営業利益の35倍、実質価値の3倍の価格で日経新聞はFTを手に入れるようです。これは何をどう見たって高い買い物と言わねばなりません。
あ、けどFTの買収交渉先、ロイターの名前も出ていたので、当記事はひょっとしたら半分、ロイターから日経新聞に対する嫌がらせの可能性もあったりして(笑)。
身より名を取った日本経済新聞社
企業買収(M&A)の世界は、価格が安い・高いという世界だけではありません。特に事業会社がM&Aを行う場合は。よって今回の日経新聞のFT買収も金額では測れない価値があります。何せ名門金融メディアのフィナンシャル・タイムズを傘下に入れるのですから。日経新聞にとっては、非常に名誉なことではあります。
ただしメディアと言っても利益を追求する株式会社、儲からなければ意味がありません。
ロイターの記事は、そんな高い値段で買って本当に採算取れるの?、と仰られています。記事から察するに、FTの買収にはどうやら負債もセットでついてくるようなので、日経新聞は今後FTの借金の面倒も見る必要が出てきます。
ただしそれらを全て分かった上で判断していると考えられるので、
日経新聞は腹を括って、FTを買収することにした
、ということでしょう。
メディアの経営は甘くない
メディアの経営、特に紙媒体のメディアの経営はこのご時世楽ではありません。これは当事者の日経新聞自体が誰よりも分かっているハズ。タマに新聞の押し紙が問題になりますが、あれは1つの例。新聞に限らず雑誌や書籍だって、今はナカナカ商売的に厳しい時代。(今年の芥川賞、又吉さんの「火花」が受賞して、大ベストセラーになっているのは、業界にとっては願ったりかなったりだよなぁ)
紙媒体のメディアの苦戦は日本に限ったことではなく、ある意味世界的な状況。理由はネットやスマホの利用拡大等言われています。ネット会員の獲得が一つの対応策と言われていますが、それにしたって大儲けできる仕組み、と言う訳ではありません。
低収益事業と言わざるを得ない紙媒体中心のメディア事業、これを高いお金を払って買う、という判断を日経新聞はした訳ですが、これは吉と出るのか凶と出るのか?
憧れのブランドの企業を(一部門含む)を高いお金を出して買収して、結局やられてしまった例は枚挙にいとまありませんが、あの買収は価格が高すぎたのだ、と紙面で論じることもあった日経新聞、今度は自身が当事者になった訳です。
報道体質は変わらないだろうなぁ
東芝の不適切会計問題、会計の知識が多少なりともあれば「粉飾」と言わざるを得ないのですが、日経新聞始め「不適切会計」という表現で通しています。
各方面大人の事情はあるでしょうが、日経新聞がFTを買収することによって、真実を報道するとか出来事を深堀りするといった方向になっていくと、非常に面白いのですが、まぁ簡単には参りますまい。
広告費は今や新聞の命綱。広告主に不利になるようなことはそもそも新聞は書けないですし、日経新聞も背伸びしてFTを買う訳なので、その分を更に収益をもとめなければいけなくなります。
となると、新聞の売上は限界があるので、広告収益を更に求めるようになり・・・、ということが容易に想像され、これまで以上に読者が自分自身で物事を考える、という視線が必要になってくるのではないかと。
まとめ
日経新聞の勇気ある判断には、敬意を表します。折角FTを買うからには、日経新聞の紙面の充実を願うのみです。
そしてもしFTの買収が失敗という結果に終わったら、「日経ビジネス」の「敗軍の将兵を語る」のコーナーを開設して、敗因等自己分析していただきたいものです。これ以上の生きた教科書はありませんので。
腹を括って高い買い物をする日経新聞、一読者として金額に見合うだけの成果を期待しております。