損保ジャパンが介護施設アミーユを運営のメッセージを買収へ

 介護事業を強化中の損保ジャパン日本興亜が介護施設アミーユを運営の業界大手のメッセージ(ジャスダック2400)のTOB(株式公開買い付け)による買収を発表。

 10月にワタミから介護事業を買収したばかりの損保ジャパン、買収攻勢は止まらずついに業界大手のメッセージを買収で一気に業界大手の地位を確立。その買収の内容などを調べてみました。

 介護士の負担の重さから慢性的な人手不足が続く介護業界、大手企業の参入で経営が安定し介護士の給与改善・地位向上につながることを期待したいものです。

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損保ジャパンがメッセージをTOBで買収し51%超の子会社に

 介護業界も激変が続くなぁ、と朝一番で思うこととなりました。

「損保JPNK、メッセージ買収を検討 18日取締役会に付議」(ロイター)
 
 10月にワタミから介護事業を買い取ったばかりの損保ジャパン、攻めますね~。そして夕方にIRから発表された損保ジャパン日本興亜(以下、損保ジャパン)によるメッセージの買収内容は下記。

・現在の3.5%の出資を51%以上に引き上げ
・公開買い付けは2段階に分けて行う
・創業者の橋本会長は全株を売却
・メッセージの上場は維持の予定(注意が必要)

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介護施設アミーユを運営するメッセージについて

 今回損保ジャパンが買収する介護施設運営会社のメッセージについては、以前記事を書いています。

 上記の記事の後、11月に同社は厚生労働省より業務改善勧告を受け、12月には創業者でもある橋本会長と佐藤社長が辞意を表明。さてどうなることやら・・・、と思っていたら、まさかの身売りと相成りました。

 単独企業としては業界最大手と言ってもいいメッセージ、まさか身売りするとは・・・。

メッセージの買収発表前までの株価や時価総額等

 
 2015年のメッセージの株価推移は週足では下記の様になっています。

15.12.18メッセージ株価-1年週足-min

 9月に大きく報じられた介護施設からの転落死等の不祥事により、4,000円代から2,000円代まで一気に下がったメッセージの株価。その後11月には3,000円代まで回復しますが、12月に入り再び2,500円を割る展開に。

 このチャートパターンだけで言えば、もう一回下値を試しにいくパターン、です。まぁ割れるかどうかは分かりませんが。いずれにしても、買収報道の前の時点としては、株価は再度下落に向かう真っ最中、とった状態です。

 そして損保ジャパンによるメッセージ買収が報じられる前日の12月17日(木)のメッセージ株価の終値等は下記の通り。

・12/17終値2,354円
・予想PER11.25倍
・PBR1.57倍
・時価総額472億円

 PERで見ると結構お買い得の感がありますが、不祥事抱えている企業なので手が出せない状態ではあります。

損保ジャパンによるメッセージの買収内容

 今回の損保ジャパンによるメッセージのTOBによる買収、2段階に分けて行われます。個人投資家を含む外部株主が関係してくるのは第2弾からとなります。

第一回公開買い付けの内容

・株価2,500円
・対象者-橋本会長及びその関係先
・既に契約書を締結済みで実質的には終了している

 今回、損保ジャパンは創業者である橋本会長及びその関係先(夫人及び資産管理会社)から第1段階として株を買い取ります。
 株価は今回の件が報じられる前日12月17日終値2,354円より少し高い2,500円。ホンの少しだけプレミアを乗せただけ、となっています。

 そして既に売買の契約を締結済み、とありますので、第一回の公開買い付けは粛々と契約に従い行われていくこととなります。

第二回公開買い付けの内容

・株価3,500円
・対象者→第一回公開買い付けの対象者以外
・期間→2016年1月29日~2月29日(20営業日)
・買い取りの金額→上限なし
・TOBごも上場は維持予定→要注意!(後述します)

 第二回公開買い付けから個人投資家等が関係してきます。気になる株価は、3,500円!何と第一回に比べて+1,000円も高くなっています。2,500円に対して、40%のプレミアがついています。12月17日の終値との比較であれば、48.6%のプレミアです。これだけプレミアがついていれば、充分なプレミア額と言ってよいかと。

 そしてTOBの開始は1月29日から。損保ジャパンのメッセージ買収の発表の後、1ヶ月以上間が空くことになります。なかなか珍しいケースです、これは。

野村証券とみずほ証券によるメッセージ株価の算定と買収規模

 今回の買収に当り、野村証券(メッセージ側)とみずほ証券(損保ジャパン側)によりメッセージの株価算定が行われています。

<みずほ証券(損保ジャパン)>
・市場株価基準法→2,352 円~3,202 円
・DCF法→3,240 円~4,269 円

<野村証券(メッセージ)>
・市場株価平均法→2,352 円~2,772 円
・DCF法→3,005 円~4,759 円

 第一回公開買い付け株価2,500円も、第二回公開買い付け株価3,500円もいずれも許容できる株価算定となっています。

 そして株価3,500円で計算すると総額700億円の買収規模。小さい会社が多い介護業界では、異色の大型買収となります。尚、損保ジャパンがワタミから介護事業を買収した際は総額約200億円でした。

メッセージの創業者・橋本会長の決意

 通常であれば1回のTOBで創業者及び個人株主等の保有株をまとめてTOBするのですが、今回はココを敢えて2度に分けて行います。

 第一回公開買い付けに応じるメッセージ創業者の橋本会長、交渉次第というか通常であれば第二回公開買い付けと同じ株価3,500円で売る所ですが、2,500円での売却に合意しています。

 そこに至る経緯は色々と想像はできますが、並々ならぬ決意でメッセージの売却を決定した、ということが見て取れます。今回の決断、簡単ではなかったと推察されます。

 ちなみに1物2価はおかしい(同じ株を同じタイミングで違う値段で売買する)ので、その整合性を付けるために第一回の公開買い付けの後、第二回の開始まで1カ月以上の間を置いてある、と考えられます。IRを見ると、金融商品取引法上も、1物2価はよろしくないようです。

16.6.17お金-min
会社の買収はお金だけの問題ではありません
 

損保ジャパンのメッセージ第二回公開買い付け(TOB)の留意点

 ただでさえ2回に分けて行うTOBが珍しい所に、今回の買収は他にも2点留意すべき点があります。

①上場維持の方針だが上場廃止の可能性がある

 今回、損保ジャパンは子会社化後もメッセージの上場維持を明言しています。しかしながら、損保ジャパンは第二回のTOBにおいて、その金額や割合に上限を設けていません。
 どういうことかと言えば、申し込みのあった株は何から何まで全部キレイさっぱり買わせていただきます
、ということ。

 仮に株主が全員株を売却してしまったら、そのまま上場廃止です、何せ売買できる株が無くなるのですから。東証の上場規則に上場会社の上場維持基準がありますが、それに抵触すると上場廃止となります。

 具体的には下記。

①株主数が事業年度の末日において 150 人未満となった場合において、1年以内に 150 人以上とならないとき
②流通株式数(上場株式数から、役員(取締役、会計参与、監査役、執行役)の持株数、発行済株式数の 10%以上を所有する株主の持株数(明らかに固定的所有ではないと認められる株式を除く。)及び自己株式数を控除した株式数)が事業年度の末日において、500 単位未満である場合において、1年以内に 500 単位以上とならないとき
③流通株式時価総額(事業年度の末日における最終価格に、事業年度の末日における流通株式数を乗じて得た額)が事業年度の末日において、2億5,000万円未満となった場合において、1年以内に2億5,000万円以上とならないとき他(損保ジャパンのIR14ページより

 さすがに皆が皆、株を売るとは思えないので上場廃止はないかな、と思いますが、いずれにしても多くの株主がTOBに賛同し株を売却すると思われます。よって第二回のTOBの後、上場が維持されたとしても、あまりに株主の比率が少ないと、その後に別の方法で上場が廃止になる可能性もあります。

 通常であればTOBに応募するかどうか、株価だけ見て決めればいいのですが、今回はTOBに応募しない場合、ひょっとしたら上場廃止になってしまうかもしれないリスクがあります。(上場廃止の際は株券の代わりに金銭が交付されますが、当然金額は現時点では分かりません)

第二回の公開買い付けまで1ヶ月以上の間、その間は株価が付かない可能性大

 損保ジャパンのメッセージ買収が発表されたのが12月18日ですが、実際に個人投資家等が関与する第二回公開買い付けが開始されるのは、1月29日から。1ヶ月以上の間があくことになります。

 その間に3,500円以下で株を購入できれば誰でも100%儲かる訳ですが皆同じことを考えるので、マズ株は株式市場で買えません。メッセージの株価3,500円まで値段が付かずに切り上がって、3,500円という株価が付いたら、その後は価格は殆ど動かないと考えられます。

 TOBが発表されると株価ってそうなりますが、TOB(第二回)まで1カ月以上あって、TOBの期間20営業日、実質2ヶ月も株価が付かない状態となるの、非常に珍しいケースとなります。

 ま、いずれにしてもTOBの価格を見越してメッセージの株を買って儲けるのは、今となっては殆ど不可能に近いです。

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介護業界の勢力図は住み分けの為に大きくは変わらない

 今回損保ジャパンのメッセージ買収により、損保ジャパンは一躍介護業界の大手企業に躍進します。ワタミ+メッセージの連合が、損保ジャパンによって形成されるとは予想してた方は殆どいなかったのでは?

 ただしこれで介護業界の勢力図が激変するかと言えば、そんな訳では無さそうです。どういうことかと言えば、介護業界は企業が運営している施設と社会福祉法人系の施設、そして病院系の施設と別れています。今回の損保ジャパンのメッセージ買収、企業系の介護施設業界としては大ニュースですが、基本的にはコップの中の嵐に近いです。また企業系も中小の事業者が多く参入しており、まだまだ寡占化、といった状態には至っていません。

 元々メッセージは病院系の介護施設からスタートして、株式会社化そしてIPO(株式上場)に至ったという非常に珍しいケースで、だからこそ注目を浴びていた面もありますが、最終的には損保ジャパンの傘下入りということになります。

介護業界の労働環境向上に期待

 介護業界の人手不足が言われて久しいですが、大手企業による介護施設運営で、規模のメリットが働けば、事業者としても介護事業がビジネスとして成り立って黒字化が見えやすくなります。

 介護や福祉、そして保育業界、給料が安いことで知られていますが、事情はさておき、慈悲の心やボランティア精神に頼るようでは、ビジネスとしての継続性は得られない、と思っています。その精神はたたえるべきものですが、人間それだけでは限界があります。

 中小の事業者が多く、経営も働く現場も負担が重い中、大手企業の参入及び規模のメリットが働くことにより、介護事業がビジネスとしての安定性が増せば、介護士の労働環境そして給与アップにもつながり、介護施設が魅力ある職場となる可能性を秘めていますし、そうなることを期待。

岡山の独立系の上場会社が1つ減ることに

 メッセージは岡山市に本社を置く上場会社。損保ジャパンの子会社化の後、上場が維持されるかどうかは分かりませんが、いずれにしても独立系の岡山本社の上場会社が1社減ることに。
 岡山本社の上場会社、有名所といえば下記会社。

・ベネッセコーポレーション(ベネッセHD9783)
・サンマルク(サンマルクHD3395)
・はるやま商事(7416)

 地元としては、損保ジャパンによるメッセージの買収は複雑な部分もありそうですね。

 ただし2016上場が噂されているアパレルのクロスカンパニーは岡山の会社。こちらの上場で岡山の独立系の上場会社は差し引きゼロですね。

 ちなみに未上場ですが英会話のイーオンも岡山本社の会社だったりします。結構意外ですが。

まとめ

 少子高齢化社会の日本で数少ない成長市場ではある介護業界。しかしながら採算面及び労働環境の厳しさは有名で、ビジネスとして考えた時、シンドイ面があるのは事実。

 今回の損保ジャパンによるメッセージ買収は、業界的に大変動という訳ではありませんが、それでも前向きな変化の一歩と捉えたいものです。介護施設で規模の経済が働くのか?、という疑問もありますが、今のままではいけない、というのは共通認識としてありますので。

 また気になるのはどれだけの株主が今回の公開買い付けに応募するのか、そして上場は今後も維持できるのか?

 今回の買収が介護業界の前向きな一歩となることを期待しつつ、損保ジャパンのメッセージの公開買い付けの状況を見守りたいと思います。

FivoCat
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