あーでもない・こーでもない、とやっていたシャープの再建問題。どうやら最終的な着地が見えてきました。産業革新機構がシャープ本体に3,000億円超、過半数の出資で支援する様子。
これでシャープ再建を巡る騒動は、峠を越えそうです。ただし峠を越えた後、シャープは一体どんな姿になっているのか?そしてシャープから切り離される液晶部門を統合するJDI(ジャパンディスプレイ)はうまくやっていけるのか?また本当に東芝の家電部門と一緒になるのか?
シャープは再建問題が峠を越えても、まだまだ興味深い話題が盛りだくさんです。
概要
シャープの再建の具体的内容
まだ決定した状態ではありませんが、ここ数日の報道を見ているとほぼ着地した感のあるシャープの再建問題、具体的な内容をピックアップしてみます。
産業革新機構が3,000億円超をシャープ本体に出資し株主シェアの過半数を取る
シャープに対する産業革新機構の関与は随分前から噂されていましたが、液晶部門に限定するのか・シャープ本体にも関与するのかで行ったり来たりをしていました。
最終的には、シャープ本体に過半数(50%超)の出資を行う、ということで着地の様子。その額3,000億円超!
シャープの時価総額が約2,200億円なので、結構なプレミアを付けて産業革新機構はシャープの増資を引き受けることとなります。(2倍以上の見込み)
それでも対抗馬のホンハイが7,000億円での買収を提案、と報じられていましたが、あちらは合弁会社の堺のディスプレー工場込み込みの価格。タップリ債務を抱えているシャープ本体、堺の工場の価値が7,000億円でシャープ本体の価値はゼロ、何て評価の可能性だってあります。だから産業革新機構の出資案とホンハイの出資案、同じ土俵で評価はできません。
シャープの再建が一息ついた後で、堺のディスプレイ工場をホンハイに7,000億円で売れれば、シャープの既存株主にとってそちらのほうがメリット大ですから。
いずれにしても産業革新機構は腹を括って、シャープ本体に過半数を出資すると決めたようです。(逆に言えば過半数の出資を受け入れざるを得ない=シャープは全面降伏、という状況です・・・)
尚、機構の出資後もシャープ株の上場は維持される見込みです。さて株価はどうなるのでしょうか?
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銀行は3,500億円を金融支援
たっぷりと銀行からの借入金を抱えているシャープ。今回銀行側も流血を伴うことに。
①銀行の保有する2,000円の優先株を産業革新機構に無償譲渡
②1,500億円を新たにDES(デッド・エクイティ・スワップ)で優先株へ
既に昨年2,000億円の債務をDESで債務から株に切り替えた銀行ですが、要はこの優先株部分を債権放棄して、新たに1,500億円分を優先株に振り返る、というお話。
DESして1年以内に債権放棄と新たなDESという、完全に再建プランの失敗を認めることになりますが、どうやら銀行もこの案を飲む様子。
役員まで派遣していたメガバンクですが、所詮マイナー出資では、監視程度しかできない、ということですね。
新たに損失が発生する銀行側ですが、産業革新機構の支援が決まれば、シャープについては心配の種が無くなります。本業が巡航モードの銀行(メガバンク)にとって、シャープで発生する損失は吸収できるレベルなので、今後枕を高くして寝られる、と考えれば、やむを得ない判断、とも言えます。
ついでに言えば、三菱UFJはシャープに1,000億円の引当金を積んでいる様子。昨年のDESでこの引当金を戻していなければ、今回の実質的案債権放棄、目先の決算に与える影響は殆ど無し(昨年DESに応じたのは三菱UFJとみずほの2行)。引当金の範囲であれば、銀行側としても飲みやすい案、と言えます。
三菱UFJ、シャープの貸倒引当金1000億円(産経ニュース)
ただし銀行側は新たに1,500億円分のDESを迫られるので、新たに1,500億円分のリスクを取ることにはなりますが。恐らくココが銀行と産業革新機構の交渉の最もハードだった部分ではないかと。産業革新機構の下でシャープの再建が進めば、充分回収可能、と銀行側は判断したのでしょう。
シャープは液晶部門を分社化してJDI(ジャパンディスプレイ)と統合
産業革新機構がシャープ本体に50%以上出資することになるので、シャープの今後は機構のやりたいようにできます。
そんな訳で、シャープの液晶部門は分社化されて、機構の傘下にあるJDI(ジャパンディスプレイ)と統合へ。
勝敗は兵家の常ですが、一時はJDIより優位に立っていたシャープの液晶(スマホ向け)、遂にJDIの軍門に下ることになります。
シャープの液晶はJDIの軍門に下ることに
シャープと東芝の家電部門を切り出して統合の可能性も
若干流動的な面もありそうですが、同じく経営危機にある東芝。こちらも家電部門をリストラ予定で、シャープの家電部門と一緒にしてしまえ、という案があります。
普通に考えればそうなるよね・・・、というお話ですが、ここ20年家電って淘汰の歴史なので、シャープと東芝の家電部門が統合して図体がでかくなったからと言って簡単に何とかなる世界ではありません。
JDIと一緒になっても液晶部門が簡単ではないのと同様、家電部門も東芝と一緒になったからと言って、そう簡単に薔薇色の世界が待っているとは思えません。家電マニアの立場からすれば。
シャープに残るのか?複合機の会社として生き残り?
液晶部門を切り離して、更に家電部門も切り離したら、シャープにどんな事業が残るのか?まぁ、家電と一言で言っても、切り分けがあるので、全部が全部無くなる訳ではなさそうですが、いずれにしてもシャープという会社はこれまでとは全く違う会社となりそうです。
シャープと言えば太陽電池も一時有名でしたが、こちらも現在は不採算。うーむ、一体今後何で食べていくのか・・・。簡単に思いつくのは”複合機”!
実はシャープの複合機部門、隠れた優良事業です。ブレルことなく黒字を維持しています。キャノンやリコーといった大手との競争は当然ありますが、液晶と違って毎年のように莫大な設備投資は必要とされないので、複合機一本の会社になってしまう、というのも会社の存続を考えた時にはありかな、と。
以前、サムソンがシャープの複合機部門を買収に来ていたようですが、ことここに至ると売らなくて大正解だったかもしれません。
まぁ上記勝手な想像と言うか妄想です、悪しからず。ちなみに下記IR資料10ページにシャープの部門別の損益が掲載されているので、ご参考ください。
産業革新機構はJDIの儲けを吐き出さなければよいのですが・・・
シャープの液晶部門を買収するととで、立場が一気に逆転するシャープとJDI。ただしJDIだって余裕のある会社ではないので、シャープの液晶部門の買収資金等は親とも言える産業革新機構が面倒を見ることになります。
既に1度EXIT(利益確定)した会社に再度出資するという、ファンド運営からすれば禁じ手とも言うべき手を産業革新機構は使うことになります。
当然うまく行く、と考えてのことでしょうが、業界での生き残りの為には有機EL対応も含め莫大な設備投資が迫られるJDI、産業革新機構がJDIに突っ込み過ぎて、折角1度得たキャピタルゲインをすってしまうことのないように願うのみです。
何せ形としては、JDIのIPOで個人投資家で損させて機構が利益を得た形になっているので、ここで機構がトータルで負けることになると、個人投資家に損はさせるは、自身も損して税金を棄損させるわで、一体何やってるんだという、産業革新機構の存在意義にも問われかねません。
継続的に莫大な設備投資が必要となるディスプレイ事業、産業革新機構が更にJDIに資金を投入して、ドロ沼状態に陥らないことを願いたいです。
この辺り、以前も記事にしているのでご参考ください。
まとめ
上記はまだ確定事項ではありませんが、ここ数日の報道を見ていると、ほぼ上記の内容で決まりと考えられます。
あーでもない・こーでもない、とやって来たシャープの再建問題。ココに漸く一つの着地を見ることとなります。
産業革新機構によるシャープの支援、というもう随分前から見えていた着地ではありますが、これでシャープは実質的に公的管理下で再建にむけスタートすることになります。
果たしてシャープは今後どんな姿で生き残りを図ることになるのか?そしてシャープの液晶部門と統合するJDIは本当にうまくやっていけるのか?また家電部門は本当にシャープと東芝で統合するのか?
シャープの再建問題、峠は越えましたが、まだまだ興味深いテーマが存在sちえいます。シャープの再建がうまく進んでいくことを期待しつつ、今後の行方も追いかけて行こうと思います。
※その後、シャープ経営陣は産業革新機構を袖にして台湾ホンハイ傘下での再建を決定するという、驚きの事態に
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