燃費不正問題で揺れる三菱自動車。かつてのリコール偽装の時から会社の体質は変わってないのね・・・、と言わざるをえない展開で、株価も急落。
現在は三菱自動車の調査待ちの面もありますが、果たして今後三菱自動車はどうなるのか?考えられるシナリオを独断と偏見で何パターンか考えてみました。
各方面への保証及び今後の販売減の影響を、6千億円以上ある自己資本でカバーできるかどうか、そして安定的に収益を上げている海外にまで今回の影響が及ぶかが、三菱自動車の今後を握る鍵。
そして三菱自動車は、既に取引のある日産自動車の傘下に入り、今後生き残りを図る方針となりそうです。(2016年5月12日追記)
概要
三菱自動車の自己資本(純資産)は2015/9中間期で6,898億円
かつてのリコール問題を思わずにはおれない三菱自動車の燃費不正問題。まだ問題は全く収まっていませんが、一方で今回の問題どれだけ三菱自動車の経営に影響があるかも分からない状態。
三菱自動車の今後を考える前に、足元の状態を見てみます。
三菱自動車は2015/9中間期で6,898億円の自己資本(純資産)を有しています。自己資本比率48.07%。メーカーで自己資本比率約50%というのは立派な数字です。シャープや東芝が追いつめられてしまったのは、詰まるところ自己資本の余裕がなかったからですが、その意味では三菱自動車はリコール隠しの不祥事から財務的には見事に復活した、と言っても過言ではありません。
2014年に復配も果たしている三菱自動車、企業再生という観点は見事な成功例となっています(あくまでも数字面のお話)。
三菱自動車の株主状況
三菱自動車の2016/9中間期時点での上位株主は下記。
三菱重工(12.63%)
三菱商事(10.06%)
三菱系のファンド1(3.92%)
三菱東京UFJ銀行(3.91%)
三菱系のファンド2(3.45%)
上位5名の株主は全て三菱系で約33.9%の株主シェアを有しています。ちなみに三菱系のファンドは2者とも所在地は三菱重工内となっており、元々三菱重工の商用車部門が分離して発足した三菱自動車、三菱重工との関係の深さを伺い知ることができます。
海外で稼ぐ三菱自動車
日本の街を歩いていると、そんなに三菱自動車の車を走っている姿は見かけません。けど三菱自動車はこれまでシッカリ利益を出していた訳ですが、その理由は簡単で、海外で稼いでいたから。
直近の第3四半期のIR資料が下記。
三菱自動車のIR資料より(6ページ)
昨年約1,000万台の車を販売した三菱自動車ですが、国内は約11万台のみ、その比率は約10%。三菱自動車はリコール問題の後、海外に活路を見出して、それが成功しています。
実は三菱自動車は、国内市場での存在感はイマヒトツでも、グローバル化に成功した日本企業の代表例だったりします。
三菱自動車の今後考えられるシナリオ
意外に分厚い自己資本を有し、更に海外で稼ぐ体制を築き、そう簡単に会社がどうにかならない体制が出来ている三菱自動車。今回の燃費不正問題、その金額的影響が最終的にどの程度になるか次第ではありますが、影響額1,000億円程度、ということであれば、何とか自前で乗り切るだけの体力は有しています。
よって燃費不正問題→三菱自動車の危機、と短絡的に繋げるのも考えもの。(その可能性は否定しませんが)
それらを踏まえて、今後の三菱自動車のシナリオを何パターンか考えてみました。
その前に、今回の燃費不正を振り返る場合は下記をどうぞ。
シナリオ1.自力で再建
今後のユーザーへの保証、国に対する税金の返済(エコカーじゃなかった訳ですから)、日産に対する迷惑料等が、何とか体力の範囲内で収まった場合です。
三菱自動車は既に、活路を海外(東南アジア)に見出しており、国内の問題を体力の範囲内でカタをつけることができれば、後は海外で稼ぎますので・・・、と出来てしまいます。
街でそんなに三菱自動車の車を見かけませんが、三菱自動車という会社自体は利益が出ている。国内では姿を見ないのに何故?、との印象を持たれる方もおられるでしょうが、その答えは海外、特に東南アジア。
富士重工の車がアメリカでバカ売れしてますが、それ程ではないにせよ、三菱自動車は東南アジアを中心に安定的に稼げる体制を築いています。
よって今回の燃費不正問題、金額的な影響が体力=自己資本の範囲内にとどまるようであれば、国内事業の見切りの必要があるかもですが、第三者の手を煩わすこと無く、再建の可能性は十分有しています。
シナリオ2.三菱グループで再建
2000年のリコール隠し→三菱グループ総力を上げての支援、の再来です。
ITバブル真っ最中の2000年当時と違い、三菱重工はMRJの開発負担があるし、三菱東京UFJ銀行はマイナス金利で体力をすり減らしているし、三菱商事は資源部門で減損が発生し赤字を計上と、三菱グループ主要3社、他人に構っている状態では正直ありません。
しかしそこは三菱グループ。グループ会社の危機となれば、一致結束して支援、という可能性は十分にあります。
けどもう2度目だよね・・・、もう付き合いきれませんわ、となる可能性も。
三菱自動車の設立母体であり、三菱自動車の相川社長の父上が実力者として君臨している三菱重工がどう判断するか、ここがポイントでは?
三菱自動車と三菱重工の関係
三菱自動車と三菱重工を混同している向きもあるようですが、現在は全くの別会社。自衛隊の戦車を作っている三菱重工から、商用車部門を分離して1970年に発足したのが三菱自動車。
三菱グループは戦車は作れても自動車はうまく作れない・・・、と昔からネタで言われていますが、両社は今は完全に別の会社になっています。
2000年のリコール隠しの際、三菱重工が三菱自動車を支援する理由が分からん、と全くプライベートで知り合ったコンサル会社の方に言われたことがあります。三菱自動車スタートの際に三菱重工から人がたくさん転籍していて、自動車には重工の元同僚・元部下・元上司がたくさん在籍しているので、心情的には支援せざるをえないんじゃないかな、と言ったら妙に納得されました。
けどあれから16年の月日が流れており、重工からの転籍組も引退しているので、今回はこのロジックは通用しないのではないかと。
シナリオ3.自動車メーカーが買収
三菱グループが三菱自動車を助けないとなると、当然他の誰かに助けを求めることになります。三菱自動車の時価総額は4/26時点で約4,300億円。ありゃま、自己資本>時価総額になってますね。
3,000~4,000億円もあればTOBで三菱自動車の過半数の株を握る事が可能。これだけブランドの失墜した日本の事業は撤退して海外のみで事業を行う、という絵を書いて三菱自動車を買収するのであれば、買い物としては”あり”のような気がします。
買うとしたら外資系の可能性が高いとも思いますが、国内を撤退する、としてしまえば国内の自動車メーカーだって可能性があります。その場合、各方面との交渉が非常にハードル高そうではありますが。
けど国内部門は、軽四自動車部門だけ日産が買収する、というのは面白いかも。今回迷惑を被った日産ですが、とは言え自前ではまだ軽四自動車は作っていません。三菱自動車の軽四自動車部門を買収できれば、問題解決だったりします、勝手な妄想ですが。(この勝手な妄想、軽自動車だけでなく三菱自動車全体として実現しそうです)
シナリオ4.産業革新機構含むファンドが買収
企業の経営危機ともなれば、出番が出てくる再生ファンド。三菱自動車はファンドの支援を受け、再び再建へ、という可能性もありえます。
その場合、産業革新機構の名前が挙がってくるかどうか。現在の産業革新機構のトップは日産でCOOまで務めた志賀氏。自動車業界はよーくご存知です。
企業再生はタッチしない、という建前のある産業革新機構ですが、三菱グループ総出で産業革新機構や関係者の外堀を埋めてしまえば、理由は十分付けられます。雇用吸収力のある自動車メーカーを潰すな、と言われて反論できる人、関係者に殆どいないと思われますので。
けどファンドに買われるということは、いずれ第三者に売却される可能性も高くなる訳で、そうなると最後はシナリオ3の”自動車メーカーが買収”という着地になる可能性もあります。
三菱自動車の倒産は無いと考えられる
三菱自動車は倒産か?、との懸念もありますが、恐らくそうなる前に各方面が手を打ちます。アベノミクスが失速している中で、三菱自動車が倒産、ともなれば政府の面子も丸潰れ。三菱自動車の場合は”自壊”、ということにはなりますが、それでも三菱自動車が倒産して、岡崎・水島・京都等の三菱自動車が関係が深い地域で失業者があふれだす、という事態は最悪のシナリオなので、そうなる前に何とかすると思われます。
三菱自動車は海外事業で手堅く稼いでおり、シャープと違って、目先稼ぐ部門がありません・・・、という状況ではないので、買収を検討する会社はあるでしょうから。
軽自動車は撤退か?
海外で稼いでいる三菱自動車。要は海外の利益で国内部門を食べさせている状態な訳で、そんな中で発生した今回の燃費不正。何らかの形で国内部門の整理・縮小は避けられないと考えるのが普通です。
そんな中、三菱自動車は軽自動車から撤退か?、と報じられています。
「三菱自救済は商事主導で軽自動車撤退へ」(ダイヤモンドオンライン)
三菱自動車の軽自動車の生産拠点と言えば、今回TVでも多く報じられいる岡山県の水島工場。三菱自動車が今回問題の発端となった軽自動車からの撤退、ということになれば、水島工場は閉鎖、という可能性も生じます。
今後どうなるのかまだ具体的な発表はありませんが、国内部門が赤字の三菱自動車だけに、今回の件でなにかしら国内事業の整理・統合は避けられないと考えられるため、三菱自動車からどんな発表があるか注目されます。
三菱自動車は今度どんな方向に進んで行くのか?
16/5/12追記:日産が三菱自動車の買収へ
今後の行方が注目されていた三菱自動車ですが、日産が三菱自動車の買収(3割強の出資)という方向になりそうです。上記で言えば「シナリオ3」。
体力の余裕がある三菱自動車ですが、今後の更に影響が広まる可能性を考えれば、他社との提携、それも既に軽自動車で取引のある日産との提携というのは、妥当な判断、と言えます。
軽自動車を生産していた三菱自動車の水島工場のラインが完全にストップしており、目下のところは水島工場をどうするのか、という点に個人的に注目していましたが、日産と提携することで水島工場は存続、という方向のようです。
自動車業界の再編に積極的な日産、昨年はフランス政府との係争の可能性もありましたが現在は一旦休戦状態。(詳しくは下記を御覧ください)
今回は三菱自動車側の事情とはいえ、自動車業界の再編、日産が主導する形で一歩前に進むことになりそうです。
日産と三菱の提携内容は下記を御覧ください。
まとめ
三菱自動車のオウンゴールとも言える、今回の燃費不正問題。その数字的影響は現段階では分かりませんが、三菱自動車は意外に分厚い自己資本を有している、という点は頭の片隅に入れておいても損はないと思います。
また基本的に海外で稼いでいる三菱自動車、今回の問題の影響は限定的、となる可能性もあります。
いくら自己資本が充実していても、今後の数字的影響次第では再び経営の危機的状況に陥る可能性も有している三菱自動車。今後事態はどんな展開を見せるのか、注目したいと思います。
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