11月9日放送のNHK「おはよう日本」で放送された資生堂の取り組みが話題となって、資生堂ショック、と言われているようです。あの資生堂が、子育て中の社員にも、土日祝日の勤務や、遅番と呼ばれる夜8時までの勤務を要請しているという内容が放送されたようです。
世の流れに逆行するかのような資生堂の姿勢。事の賛否はさておき、資生堂の業績を見ると、資生堂の選択、やむを得ない一面が見えてきます。
業績的には完全にジリ貧状態で、中国人の爆買いで一息ついている資生堂。格下と見ていたコーセーに利益額で抜かれる事態が目前に迫っている、というのが現在の資生堂の置かれた状況。
世間の華やかなイメージと違い、資生堂の経営なかなかシンドイ状況になっています。
概要
NHK「おはよう日本」による資生堂ショック
11月9日放送の「おはよう日本」で、化粧品大手の資生堂が子育て中の社員にも、土日祝日の勤務や、遅番と呼ばれる夜8時までの勤務を要請しているという内容を放送。ネット上を中心に賛否両論があったようです。
時の安倍政権が女性の活躍できる社会を目指している中、時代に逆行する方針とも言えますが、けどこんなことするには何か理由があるハズ。
管理人、「おはよう日本」を見ていないし、当サイトは株を語るサイトだから、資生堂ショックについては特にコメントしませんが、資生堂の数字を追っていくと、これはやむを得ない一面があるよなぁ、と思わざるを得ません。
銀座パーラーを中心とする華やかなイメージのある資生堂ですが、数字を見ると、こりゃ大変だわ、という姿が浮かび上がってきます。
資生堂の5期分の決算推移
まずは資生堂の5期分の決算数字の推移を損益計算書(P/L)で見てみます。
さすが資生堂、儲かってますなぁ。けどね、注目すべきは営業利益と経常利益の数字。確かに300~400億円の利益が出ている優良企業ではありますが、11/3期から15/3期の推移を見てください。
営業利益が11/3期444億円→12/3期391億円→13/3期260億円→14/3期496億円→15/3期276億円、簡単に言うと以前400億円以上稼いでいた営業利益、今は300億円に満たない数字しか上げられていません。
14/3期は約500億円の営業利益が出ていますが、コレは消費税アップの駆け込み消費と円安効果があったればコソ。特殊要因で一時的に利益がかさ上げされています。
資生堂、つい5年前まで400~500億円稼いでいた会社でしたが、今はやっとこさ300億円を稼ぐ会社、となっています。
2015/9中間期は好調
今期から12月決算に決算期を変更している資生堂。前期と当期の4~9月の半年分の比較をしてみます。
色々と出入りのある当期純利益を横にして、半期の比較では今期は以上に順調ですね。今回もし3月決算のままであれば、増益は間違いなさそうです。
今季は業績も回復でまことに結構、こんなに儲かっているのに資生堂は何をやっているのか?資生堂もえげつない会社ですなぁ・・・。
けどチョット立ち止まって考えてみます。何で資生堂は今期儲かっているのか?それを解くカギは一言、爆買い、です!
資生堂もインバウンド銘柄=爆買い銘柄だった
東京や大阪の街にあふれる外国人観光客。その中でも特に中国人観光客に人気の品は日本の化粧品。中国人観光客の化粧品の爆買いはTVでもこれまで大きく報じられています。
そして資生堂も爆買いの影響を受け、インバウンド銘柄=爆買い銘柄として知られる存在となっています。
化粧品業界では雪肌精がバカ売れしているコーセー(東証1部4922)がインバウンド銘柄で一番有名ですが、それに及ばずとも資生堂も爆買いの恩恵を被っているのは間違いありません。
その証拠に資生堂は株価が堅調です。
資生堂株価推移(月足5年分)
(ヤフーファイナンスより)
爆買い効果が無くなったら資生堂の決算はどうなる?
勝手な試算ですが、爆買いの効果が無くなったら資生堂の決算数字はどうなるのか、考えてみます。ベースの数字として、2015/3期の数字を取り出します。
2015/3期売上高7,776億円・経常利益292億円
15/3期は多少ながら爆買いの影響が入っての数字となっています。よって爆買いの影響がなければ、数字はもっと下がっているハズ。
過去の数字と比較するとなると14/3期は消費税アップ前の駆け込み需要等の特殊要因があるので、特殊要因の無い13/3期の数字と比較してみます。
2013/3期売上高6,777億円・経常利益284億円
資生堂は爆買いの影響が無くて13/3期の経常利益は284億円。爆買いの影響があって15/3期の経常利益292億円。
爆買いの影響度をどの程度見るかの議論はありますが、284億円と292億円でその差はタッタ8億円。爆買いの影響がタッタ8億円ということはないので、資生堂の稼ぐ力は13/3期と比べて確実に落ちている、と考えられます。
ちなみに2015/3期は前期の消費税アップの駆け込み需要の反動があったはずで、その影響がない数字となっています。消費税アップの反動を爆買いの影響でもって帳消しにした、と考えると、実はとってもうすら寒い決算状況となっています。
利益でコーセーに抜かれる資生堂
雪肌精がバカ売れのコーセー。2016/3期の予想決算は下記のように公表されています。
コーセー2016/3期予想
売上高2,350億円
経常利益336億円
当期純利益192億円
売上高やブランドイメージでは、はるかに資生堂に及ばないコーセー。しかしながら雪肌精のバカ売れという特殊要因はあれど、利益額で2016/3期は化粧品の王者・資生堂と同等もしくは追い抜く数字。
資生堂が12月に決算変更するので、直接の比較とはなりませんが、経常利益336億円って、資生堂としてもハードルが高い数字であるため、コーセーの躍進は業界的に非常にインパクトのある話題では。
野村証券がネット証券に利益額で負けてしまった、みたいな。
資生堂の危機意識は相当なもの
利益がジリジリと減りつつある中、爆買いで一息ついている状態の資生堂。
しかし爆買いの効果があるとは言え、遂に利益額でコーセーに追い付かれるor追い抜かれる事態が到来しています。資生堂は今期決算変更のお陰で、その数字がストレートにコーセーと比較されることはありませんが(タイミングとして絶妙です)、資生堂の経営陣の危機感は相当なものと考えられます。
現在の資生堂の魚谷社長は、実は資生堂の生え抜きではなく、外部からの招聘。資生堂は既に外部の人材に改革を委ねるという、意識は既に危機モードに突入しています。
ジリ貧の利益、迫るコーセー、そして外部出身者の社長就任。資生堂の危機感、相当なものです。
まとめ
実はアナリスト界隈では2~3年前から既に、資生堂は今後大丈夫か?、という話がでていました。今回の資生堂ショックを機に、改めて資生堂の数字を見て見ると、資生堂が苦悩する姿が如実に表れていました。しかしコーセーが利益額で資生堂に迫っているのは驚き。時代は変わったというか、雪肌精はどんだけ売れてるでしょ。
少子高齢化+格差社会の現代日本、デパートで化粧品は売れませんわ、という一般的論、資生堂の数字を見ると、全くもってその通り、と思うのは管理人だけでしょうか。今や化粧品はドラッグストアで買う時代ですね、ホント。
とは言っても財布にまだまだ余裕がある資生堂。そんな余裕のある会社でも資生堂ショック?、それはヒドイ、という向きもあろうかと思います。資生堂ショックの議論は外部に任せますが、とりあえず、資生堂は世間のイメージと違って今は大変な状況なんですわ、とだけご指摘申し上げます。
爆買いの恩恵が無くなった時、果たして資生堂の決算はどんな姿になるのか。非常に興味深いものがあります。
転職と言う選択肢も一考
ウチの会社忙しいばかりで業績サッパリだな・・・、中にはそんな方もおられるかと。そんな時は外の世界を知ってみる、というのも選択肢です。本気で転職するかどうかはさておき、同じ業界でもふーんこんな求人あるんだ、ということを知っておいても損はありません。
今の業界や興味ある業界の求人情報を知るのは、ピタジョブ、の活用が便利です。メールアドレス、生年月日、性別、パスワードの4項目のみ約30秒で登録可能で、各業界の求人情報の閲覧ができます。ピタジョブは2万件以上の求人情報があり情報量も豊富であり、今どんな会社が求人を行っているかを知るには大変重宝するサービスとなります。
また将来的な転職はしたいけど、まだボンヤリとしか考えていない、というのであれば、Facebookを介して有名企業からスカウトが得られる「Switch.」に登録だけでもしてみては?
「Switch.」は、登録している求職者と採用したい企業のどちらか一方が、Facebookで「いいね!」を送ると相手に通知されて、「いいね!」を送り返せばマッチングとなります。
こちらから動かなくとも、プロフィールを登録しておくと、企業から「いいね!」=スカウトが来るので、まだ具体的には・・・、という段階であっても、自らの転職価値を知る良い機会を得られます。同じ会社に勤めていると、自らの外部評価って正直分かりません。自らの外部評価を知ることで、今の会社にいたほうがいい、という結論が出ることもあるので、外から自分の価値はどう見られるのか、試してみてはいかがでしょうか?
現在どんな会社が積極的に求人を行っているか、を知っておいて損はありませんし、または自らの外部評価を知っておいても損はありませんよ。両サービスともに簡単に登録できるので、ご興味あれば一度お試しあれ。