日本生命による三井生命の買収(M&A)が報じられています。どうやら10月にも買収実行、という方向の様子。
バブル崩壊で深手を負った三井生命。バブル崩壊ってもう20年以上昔の話で、いつまでその影響が・・・、と思わないでもないですが、この秋のかんぽ生命の上場(IPO)によって、日本の生命保険業界も再編の時代に突入?
秋の郵政グループ3社の上場、各方面に大きな影響を与えそうです。
概要
実は三井生命は小さい生命保険会社
三井生命と言えば、ここ最近よくCMをお見かけします。
三井、の名前がついているので、生保業界ではそれなりの地位の会社だろうと思いきや、じつは業界内では最小と言ってもいいくらいの規模。2015年3月期の利益額(基礎利益)を主な生命保険会社で並べて見ると一目瞭然。
・第一生命 4,720億円
・日本生命 6,790億円
・明治安田生命 5,063億円
・住友生命 4,108億円
・T&D-HD 1,827億円
・ソニー生命 765億円
・富国生命 931億円
・三井生命 590億円
・朝日生命 276億円
横文字の生保や損保系生保ははずしてあります。約40社の生命保険会社が日本では入り乱れている状態です。
ちなみに、かんぽ生命の2015年3月期の基礎利益は5,154億円と、第一生命・日本生命を始めとする、大手生保並の水準。
かんぽ生命の上場、業界にとっては大きなインパクトがある、というのが分かります。
今回買収される三井生命、規模で言えばかなり小さい部類。規模が小さいが故に、バブルの後遺症からなかなか脱却できずにいたのだと考えられます。業界再編が進むときは、そして、規模の小さい+財務的に傷んでいる会社から進んで行くという、典型的なケースとなります。
日本生命による三井生命の買収、陰の主役は三井住友銀行
日本生命による三井生命の買収話、影の主役は間違いなく三井住友銀行。三井生命の株主一覧を見れば、これまた一目瞭然。
株式会社三井住友銀行-14.02%
大和証券SMBCプリンシパル・インベストメンツ株式会社-12.22%
三井住友信託銀行株式会社-9.03%
野村フィナンシャル・パートナーズ株式会社-8.99%
三井住友海上火災保険株式会社-7.20%
CITIBANK-7.19%
三井物産株式会社-4.06%
三井不動産株式会社-4.05%
住友生命保険相互会社-2.51%
日本製紙株式会社-1.69%
「三井生命の株主状況」
三井住友銀行は普通株で14.02%の筆頭株主だけでなく、優先株(A種、B種)の筆頭株主。ついでに言えば、普通株の第2位株主の大和証券SMBC-PIも半分は三井住友銀行の持ち分(恐らく)。
2008年のリーマンショック発生で運用損が拡大の際、いやもうその前から、三井住友銀行が陰に日に支援をしてきたのは結構有名なお話。金融支援は株主の状況見ればその歴史が分かりますが、三井住友銀行の保険の窓口販売でも三井生命の保険を積極的に取り扱う等、三井生命は三井住友銀行が必死に支えてきた、という歴史があります。
日本生命が三井生命を買収する、ということは、株主が株を売るということなので、三井住友銀行は三井生命を手放す決断をした、ということではないかと。過去には、上場する、と言って資金調達を行った経緯もある三井生命、株主としてはヤレヤレ・・・、と言ったところかもしれません。
三井生命の買収価格3,000~4,000億円、株価的に投資家は若干儲かる見込み
日本生命は三井生命を3,000~4,000億円で買収するようです。そして三井生命は非上場会社。
三井生命は2006年に1,000億円の第三者割当増資を実行。その際の三井生命の株価は@94,000円。そして増資後の時価総額は約2,600億円。
※(増資後の発行済普通株式総数2,958,072株-自己株式172,725株)×@94,000円=2,618億円
ちなみにA種、B種の優先株も多く発行されていますが、恐らく引受側は損しない内容の設計でしょうし、三井系の企業で受けており、暴利をむさぼるような無茶な発行内容ではないと考えられます。(推測ですが)
普通株を持っている投資家も、どうやら日本生命に三井生命の株を売ることで、少なくとも元本は回収できそうです。
時価総額4,000億円で買収してもらえるのであれば、それなりに利益も期待できるので(回収まで9年かかっているので、ROI=投資収益という観点ではどうか・・・、というレベルですが)、今回の買収は願ったりかなったりと言えましょう。
大和証券と三井住友銀行の提携解消から数年が経過していますが、三井生命の第2位株主は大和証券SMBC-PI。なんだか時代の流れを感じますね。
かんぽ生命の上場(IPO)が業界再編の号砲になるのか?
三井生命は株主の名前を見れば、いわゆる投資家の名前が多く、三井住友銀行の決断次第でいつでも売却できる状態だった、と言えます。
その三井住友銀行の背中を押したのはかんぽ生命の上場でしょうか?いずれにしても生命保険市場にかんぽ生命という大手がいきなり登場することになり、業界としてはこのままではいられないという状態です。そんな中、日本生命が仕掛けたのか、三井住友銀行が持ちこんだのかは分かりませんが、三井生命は日本生命に売却の方向。
国内系や外資系等約40社がひしめきあっている日本の生命保険業界、かんぽ生命の上場が業界再編の号砲になりそうな気配。少子高齢化で市場縮小の業界ですが、それなりに儲かりいい雰囲気でやってきて生保業界、今後更なる再編が進んで行くのでしょうか?
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