2000年にリコール隠し問題で経営危機に陥った三菱自動車。今回新たに軽四自動車の燃費不正が発覚。提携先の日産から、数字がおかしいのでは?、という指摘を受けたことを契機に不正が明らかに。
リコール隠しの影響が一段落し、配当を復活する等経営に落ち着きを取り戻しつつあった三菱自動車。今回新たに発覚した燃費不正によって、再び三菱自動車の経営は厳しい状態を迎えることになりそうです。そして株価はリコール隠し問題後の最安値660円を割ることなく維持できるのかに注目です。(2016年5月11日更新)
概要
三菱自動車の軽四で燃費不正が発覚、対象台数約62万台
昨年は排ガス不正問題でVWが大騒ぎになりましたが、今回新たに三菱自動車で燃費の不正が発覚。
4月20日に三菱自動車は、軽四自動車4車種で燃費を実際よりよく見せる不正を意図的に行っていた、と発表。対象台数は約62.5万台。下記の車種がその対象となります。(2016/4/22追記)
三菱自動車(約15.7万台)
・ekワゴン
・ekスペース
日産(約46.8万台)
・デイズ
・デイズルークス
自社で軽四自動車を開発していない日産、三菱自動車からOEM提供を受けデイズ・デイズルークスとして販売。対象車種の販売台数は、三菱自動車 約15.7万台<日産 約46.8万台、となっており実は直接的な被害は日産自動車の方が多いという状態。
そんな日産の指摘によって、今回の燃費不正が発覚しています。
日産の指摘で燃費不正が発覚
今回の三菱自動車の燃費不正、発端は日産からの指摘が全ての始まり。三菱自動車と軽四自動車の開発・生産で提携関係にある日産ですが、次期車種の開発は日産主導で行うことになり、日産側で三菱自動車が2015年秋に開発した自動車の燃費を測定したら聞いていた数字と違う値が出てビックリ→三菱自動車にどうなってんの?、と指摘したところから今回の燃費不正が発覚しています。
これって外野の目が入らなかったら、不正が分からなかったということで、かつてリコール隠し問題が発生した三菱自動車、何も変わってないな・・・、と言われてもやむを得ない状態です。
そして日産は三菱自動車との提携解消も視野に、軽四自動車の自社生産の検討を開始した様子。日産にとって、デイズ・デイズルークスは国内の看板商品となっており、単に三菱自動車1社の問題にとどまりません。
日産が「軽」自社生産を検討 三菱自不正で不信感、協業解消に発展も(Sankei Biz)
リッター当たりの燃費30km達成目標が背景か?
ここ数年自動車の燃費競争が激しく、消費者にとっては非常にありがたいのですが、やはり競争している自動車メーカーは大変。特に軽四自動車はリッター30km台の燃費になっており、リッター当たり30kmというのが消費者にとっても非常に分かりやすい指標となっています。
今回不正が発覚したeKワゴン。その燃費はガソリン1リットル当たり30.4kmと公表されています。三菱自動車の発表によると、実際の燃費は届け出値より5~10%悪くなる可能性がある、と言うことなので、1リッター当たりの燃費30km割れはほぼ確実。
今回の三菱自動車の燃費不正、何としても1リッター当たり30kmの燃費必達、というのが背景にあったのではないかなぁ、と推察しますが、どんなものでしょか。
カタログ性能と実際の燃費を比べると、カタログ性能のほうが燃費がよくなるのは、多少車の事情を知っていれば感覚的に分かりますが、今回の燃費不正は、そのカタログ性能で不正を働いていた、というものです。タイヤの抵抗や空気抵抗の数値を操作し、数字を作っていたようです。
他の車種にも飛び火する可能性が
今回、軽四自動車で燃費不正が発覚した三菱自動車。実は事が軽四自動車にとどまらない可能性が。
というのも、社内調査の結果、軽四自動車以外の多くの車種の走行抵抗の試験においても、日本国内で定められた手順ではなく、米国での手順に近い方法で行われていることが判明しています。
監督官庁の国土交通省は、早急に国内基準での試験データを提出するよう三菱自動車に求めていますが、実際日本基準で計測したらコチラも問題ありました・・・、となる可能性も。
電気自動車のi-MiEVは既に基準と異なる方法でデータ計測が行われてたようですし、RVR、アウトランダー、パジェロ、ミニキャブ・ミーブの4車種も同じ方法だった可能性が高い、と報じられています。
三菱自、戦略EV「アイ・ミーブ」でも燃費不正が判明 RVRやアウトランダーでも可能性(Sankei Biz)
三菱自動車の全体の販売台数の約6割が軽四自動車
三菱自動車の場合は販売台数の約6割が軽四自動車。全部が全部今回の燃費不正の対象車種、という訳ではありませんが、三菱自動車の軽四自動車をココで敢えて買う勇気のある消費者もいないので、今後三菱自動車の軽四自動車の販売に大きな影響があるのは必須と考えられます。
スズキ、ダイハツに加えてホンダも入り激烈な販売競争が行われている軽四市場、今回の燃費不正、三菱自動車にとってはその影響大、と言わざるを得ません。
国土交通省は他自動車メーカーに対しても調査報告を求める
今回の三菱自動車の燃費不正を受けて、国土交通省は他の自動車メーカーに対して、同様の不正がないか調べ報告するよう求めています。
他の自動車メーカーが規則通りに業務を行っているのであれば、三菱自動車の不祥事は全くもって迷惑千万な出来事となりそうです。
16/5/11追記:ほぼ全車種で違法測定が実施
残念ながら三菱自動車の車は、1991年以降に国内で販売されたほぼ全ての車種で違法な燃費データ測定がなされていたようです。
「違法測定、ほぼ全車種 燃費データ 三菱自、91年以降」(朝日新聞)
ほぼ全車種とは驚きです。これまで軽自動車のみに焦点が当たっていましたが、今後は普通車含めて三菱自動車の燃費偽装問題が追求されることになりそうです。三菱自動車にとって、燃費偽装問題どこまで影響が広がるのか分からなくなってきました。
三菱自動車株は一時ストップ安
燃費不正の発表を受け、4月20日(水)の三菱自動車株は一時ストップ安約▲17%の714円まで下げました、その後、多少値は戻し、4月20日の終値は前日比▲15%の733円で引けており、日足のローソク足は見事な大陰線となっています。
三菱自動車株価-3ヶ月日足
※株価チャートは「株羅針盤」を利用(以下同様)
三菱自動車の株価は20年で見ると660円が最安値
燃費不正を受けて急落した三菱自動車の株価。ただし株価的にはまだ下値余地があります。
過去20年の月足チャートを見ると2012年10月の安値660円が最安値。
ここを維持できれば反転の余地がありますが、660円を完全に割れてしまうと株価が引っかかる場所のない底なし沼に入ってしまいます。
三菱自動車20年月足チャート
三菱自動車4年月足チャート
三菱自動車の株価はチャート的には660円が絶対防衛ラインであり、ここを維持できるのかor完全に割れて下落してしまうのかが、株価の今後を占う大きなポイントとなります。
発表を受けた翌日4月21日の三菱自動車株価の終値は583円。見事に660円割れとなってしまいました。660円割れの状態が続き、660円割れが確定してしまうと、三菱自動車の株価は当面ひっかかる場所がなく下値を探る展開となる可能性があります。
三菱グループは再び三菱自動車を支援するのか?
前回のリコール隠しの際、三菱自動車は三菱グループの総力を上げた支援で立て直しがなされています。
そして今回新たに不正が発覚。今後の影響は現段階で見通すことは出来ませんが、激震は必須。再度経営危機、という事態となった際、再び三菱グループは支援するのか、それとも、もうあの会社は知らない・・・、となるのか?
仏の顔も3度まで、と言いますが、三菱グループと言うだけで経済合理性の無い支援も限界があり(それも2度目)、今後三菱グループがどのように三菱自動車に対応するのか、注目です。
尚、その後、今後の三菱自動車の行方について何パターンか考えてみました。
三菱自動車の相川哲郎社長の父親は三菱重工の重鎮
今回の燃費不正を受けて記者会見を行った三菱自動車・相川哲郎社長の父親は、三菱重工で社長・会長を歴任した相川賢太郎氏。
元々三菱自動車は、三菱重工の商用自動車部門が分離して発足した会社で、三菱重工にとっては、子供のような存在。(困った子供ですが・・・)
リコール隠し問題が一段落し、三菱ファミリーの相川哲郎社長が三菱自動車の社長に就任したのは2014年。
今後三菱重工が三菱自動車に対してどんな対応をとるのか、非常に興味深いです。
三菱自動車のリコール隠し問題がモチーフの「空飛ぶタイヤ」
三菱自動車のリコール隠しが発覚したのが2000年。それから16年の月日が流れています。もう忘れた出来事になりつつある三菱自動車のリコール隠しですが、振り返るには三菱自動車のリコール隠し問題がモチーフとなっている「空飛ぶタイヤ」という作品があります。
「半沢直樹」リシーズ、「下町ロケット」でお馴染みの池井戸潤氏が原作。池井戸氏が初めて本格的な経済小説を書こうと思ったのが、三菱自動車のリコール隠しだそうで、そして作品として完成したのが「空飛ぶタイヤ」。
「空飛ぶタイヤ」、実はWOWOWでドラマ化もされています。自動車会社のCMが多い地上波では、流石に放送が難しいドラマですね、コレは。
ドラマ「空飛ぶタイヤ」は、動画配信の「U-NEXT」(月額1,990円)と「Hulu」(月額933円)で視聴可能です。「U-NEXT」は1ヶ月、「Hulu」は2週間、両者ともお試し無料期間があるので、「空飛ぶタイヤ」にご興味があれば、一度お試し下さい。
まとめ
リコール隠し問題後の三菱グループ総力を上げての支援及びリストラを経ても、三菱自動車の体質はあまり変わっていない、と言われてもやむを得ない今回の事態。三つ子の魂百までも、と言いますが、企業体質も簡単には変わらない、と言うことでしょうか?
今回の燃費不正問題、三菱自動車の経営にどの程度の影響があるのか、現段階では分かりません。
そんな中、目先で注目すべきは三菱自動車の株価。660円の絶対防衛ラインを維持できるのか、それても下にぶちぬいて20年来の安値をつけにいくのか?
三菱自動車の今後の行方、三菱グループがどう動くのか、そして三菱自動車の株価の行方に注目です。
PS 最終的には三菱自動車は日産の傘下へ、詳しくは下記をどうぞ!
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