株の持ち合い解消、みずほ銀行は実行できるのか?

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ずほ銀行が持ち合い株の解消を行う、と宣言。果たしてうまくいくのか?みずほ銀行の壮大な試み、非常に興味深いです。

 日本の金融機関が事業会社と株の持ち合いをしているのは、有名なお話。以前は事業会社同士での持ち合いも多かったのですが、事業会社同士の株の持ち合いは随分と減ってきています。株式持ち合い、基本的には買った株の金額分お金を寝かす訳で(配当はもらえますが)、資金効率という観点では全く非合理的。ただし友好的な株主を増やすという観点で、日本では許容されてきたという歴史的背景があります。

 ただし事業会社は、持ち合いで使うお金があれば、事業資金に使いたいというのが筋ですし、ROA重視の経営が求められる中、余程合理的な理由がなければ株の持ち合いはしなくなりました。最近の株高で、含み益が出ていれば持ち合いは株をドンドン売ってますね、逆に。

 そんな持ち合い株の解消の流れ、ついに持ち合い株のご本尊とも言えるメガバンクにも波及か?みずほ銀行が、持ち合い株の原則廃止を表明。原理原則で言えば、拍手喝采ですが、一筋縄では進まない感が。みずほ銀行、果たして最後まで持ち合い株の解消を、進めることができるのか?

15.6.22腕まくり-min
さて、いっちょやってみますか

株式の持ち合い解消とは

株式の持ち合いとは、事業会社と、メインバンクや取引先企業が、それぞれの株式を相互に保有し合うことをいい、日本特有の資本取引慣行とされている。戦後の財閥解体時期より1980年代まで、株式の持ち合いの比率は高まり続けていた。しかし、90年代に入り、外部よりその閉鎖性や不透明性が指摘されると同時に、実際にその非効率性も露呈してきた。これに伴い、取引関係の薄い同志を中心に、株式の売却が目立つようになってきた。このことを、持ち合いの解消売りという。 (コトバンク

 最近は新しい持ち合いもあまり聞きませんが、それでも株の持ち合いを続けている事業会社や金融機関は非常に多いです。
 事業会社は持ち合いの株を売って、そのお金を本業に投入する、という流れが出来つつありますが、金融機関、特に銀行は縮小傾向にあるものの、有力取引先等とは持ち合いを今も続けています。

持ち合いのメリット、銀行にとっては有効な営業ツール

 これまで銀行にとって株式の持ち合いは、有効な営業ツールとして機能してきました。
 銀行側から株式の持ち合いを提案したこともあるでしょうし、お客さんから依頼されたことだってあります。商売はウチの会社の株を持ってから、という会社だって過去多かったんです。

 銀行だって相手の会社の株を持つことで、商売=融資が出来れば、悪い話ではないです。それに株を持っている間は、少なくとも営業なり提案なり、相手だって株主が何かしら持ってこれば、相手にしてくれます。
 事業会社の場合は、ウチの商品は他社に比べて優位性がある!、という点でお客さんを説得できますが、銀行の場合は金利や手数料を安くするくらいしか差別化手段がありません。提案力で勝負?それができれば苦労はないのですが、いずこの銀行も考えること=提案は似ている、というのが世の常。そこで威力を発揮するのが株主の立場。

 いずこの銀行も同じような提案なので、株を持ってもらっているA銀行さんにお願いするとしますか・・・。古き良き日本の銀行取引の風景?お互い持ちつ、持たれつ、ということで。

株の持ち合いを解消したらどうなる?

 株式の持ち合いを解消するということは、この持ちつ持たれつを解消する、という事を意味します。

 東京の大企業は、それでも良い提案があれば何時でも聞きますよ、というスタンスかもしれません。(ただそれを受け入れてくれるかどうかは別問題) 一方、未だに持ちつ持たれつが続く地方の企業だと、融資等の取引がないと、下手すると営業のとっかかりすら なくなりかねないです。そおそも優良企業って借金ゼロの会社も少なくないですし、銀行ってそういう会社こそ取引したいのですが、これまで切り込み隊長的に使っていた株の持ち合いが使えない(さすがに新規での持ち合いは随分減ったと思います)のは、現場レベルではそれこそ死活問題となる可能性が。
 
 みずほさんウチの株の売っちゃったでしょ、けど三井住友さんはそのままにしてくれるって、だから三井住友の方が若干手数料高いけど三井住友さんの顔を立てますわ・・・。
 こういったやりとりが、各地で行われる可能性が。いやそれでも、みずほさんの提案力は抜けてますから、御行に任せます、となればいいのですが。

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1兆円増資の奇手はもう2度と使えないことに

 みずほ銀行と言えば思い出すのは、2003年の1兆円増資。金融危機を乗り切るため、みずほ銀行は1兆円という史上空前の増資を行うことで、なんとか金融危機の荒波を飲み超えたのでした。けどもう10年以上前ですかぁ、時の流れは早いですね。
 そしてその時に頼ったのは、持ちつ持たれつでやってきた事業会社。もう大企業から中小企業まで、ありとあらゆる先に増資引き受けの依頼をみずほ銀行は行っています。
 当時は日本の株価も低迷していて、増資引き受け=株で損する可能性大、というリスクはあれど、みずほさんにそこまで言われては・・・、といってみずほ銀行の増資を受けた会社も多いのです。持ち合いしている先は、正直断れなかったと思います。合理的な説明?みずほ銀行の1兆円増資、経済合理性で受けた会社なんて殆ど無いのでは?

 株の持ち合い解消って、この持ちつ持たれつを完全に終えることを意味します。
 大企業中心にスマートな意思判断する会社も多いので、株の持ち合いなしでも新しい提案は内容次第、という会社も確かにありますが、日本の会社って今も持ちつ持たれるの部分が多いですから。少なくとも1兆円増資のような奇手はみずほ銀行、もう2度と使えないのでは。だって株の持ち合いでもしていなければ、経済合理性のないものを受ける理由がなくなってしまう訳ですから。
 その意味ではみずほ銀行は今後、本当の意味での実力勝負に出る、ということになります。

銀行の株の持ち合い解消一斉にやったら面白そうですが

 銀行の持ち合い株の解消、地方銀行含め一斉にやったら非常に面白そうです。株の受け皿の問題さておいて。

 そうなると、もう取引は提案力と営業力の問題。各銀行の優勢劣敗が、如実に表れる結果になります。外資系金融機関のような営業になってくるのか?けど国内の銀行、あまり派手な接待もできないので、いったいどんな風景になるんでしょ?

 けど持ち合い解消が進むと、ホントにビジネスライクな取引が中心にならざるを得ませんが、多少なりとも古き良き時代を知っていると、何だか不思議な気もしますし、本当にそんなことできるのか?、と思ったりもします。

 こればっかりはやってみないと分かりませんが、下手するとみずほ銀行、確かに理念は分かりますが、他の銀行の草刈り場となるリスクも取ることになります。

まとめ

 株主間の馴れ合いを生むとか、資本効率が悪いとか、基本的に悪評名高い(?)株式の持ち合いは。けどそんな中でも、長らく続いていたのには当然理由がある訳です。みずほ銀行の株式持ち合い終了宣言、あるべき姿としては素晴らしいことですが、実際本当に最後までやりきることができるのか?

 みずほ銀行の試み、これまでの金融業界の取引慣行に一石を投じる訳ですが、その試みの行方がどうなるのか、非常に興味深いです。

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