EU離脱方針を巡り迷走するイギリスで、日産が決定していた次世代エクストレイルの生産を撤回し、現地で波紋を呼んでいます。
実は既にイギリス政府はエクストレイルの開発支援金の名目で約86億円の支援金を日産に支払っており、EU離脱騒動の中、新たな騒動の火が付いた形です。
日産はイギリスでは海外資本No1の自動車メーカーの地位にあり、イギリスの雇用に大きな影響力を持っています。その日産つなぎ止めのための支援金でしたが、今後は金返せコールが上がるのは必定。
ゴーン元会長が去った後、まだ経営に混乱も見られる日産、今後のかじ取りをうまくこなす事ができるのでしょうか?
概要
日産がイギリスで次期エクストレイル生産の生産を撤回
日産関連のニュースというと、すっかりゴーン元会長ネタばかりの感があります。そんな中で、日産がイギリスで計画していた次期エクストレイルの生産撤回を決定し、イギリスでは結構なニュースとなっています。
イギリスはEU離脱に向けて正念場を迎えているのはご存知の通り。EUと離脱案の再交渉を今後行いますが、既にEUが拒否した案を再提案する方向で、なんだか変な方向に進んでいます・・・。
関連記事:ブレグジットの日程を確認、2019年3月29日が離脱予定日
日産はイギリスで予定していた次期エクストレイルの生産撤回を決定していますが、掃除機で有名な家電メーカーのダイソンは本社のシンガポール移転を決定しています。EU離脱騒動は確実にイギリス経済に影響を与えています。
イギリスは既に日産に約86億円を支援済み
実は日産のイギリスでの次期エクストレイル生産撤回、今後大きな問題となる可能性があります。イギリス政府はエクストレイルの開発支援資金として6000万ポンド(約86億円)を支援済み。
生産撤回となれば当然、金返せ、となる訳で、今後イギリスは日産に対して、支援したお金返して、となってくるのは時間の問題かと。日産にとって軽くはありませんが払えない額ではない約86億円という金額、今後国内でも取り上げられる機会が増えるのでは?
今はイギリス政府もEU離脱問題で手いっぱいで、日産の問題も後回しにされるかもですが、落ち着いたら、金返せコールが激しくなると予想されます。
イギリスが日産にこだわる訳、日産はイギリスでは第2位の自動車メーカー
イギリスの自動車メーカーと言えば、ジャガーやランドローパー、アストンマーティンといったトガッタ自動車メーカーが知られています。ただしトヨタを始めとする、世界的にメジャーな自動車メーカーとは趣が異なる存在です。そんなイギリスで乗用車の生産上位5社は下記となっています。(※データはジェトロの「英国自動車産業の現状と課題2018年3月」より)
1位ジャガー・ランドローパー 544,401台
2位日産 507,444台
3位BMW 210,973台
4位トヨタ 180,425台
5位ホンダ 134,146台
1位は現地資本の(とは言っても親会社はインドのタタ財閥)ジャガー・ランドローパー544,401台。日本だと殆ど見ませんが、現地ではNo1メーカーです。
そして驚くことに2位は日産の507,444台。3位のBMW210,97台にダブルスコアで大差を付けての2位となっています。
日産は現地資本ではないものの、雇用吸収力の高い自動車メーカーとして既にイギリスにはなくてはならない存在です。その昔、イギリスに行った時に、日産車が多いな、という印象を持ったのですが、その謎が解けました。ちなみにマツダ車も多かったです。
イギリスで相当な雇用を生んでいる日産。新しい車種の生産を開始して雇用を更に生んでくれるなら、EU離脱で経済的なマイナスの影響が生じる中で、補助金出してもお釣りがきます。
そして実は生産の車種別で見ると日産車はイギリス第1位でもあります。乗用車生産上位5ブランドは下記。
1位日産・キャシュカイ 309,893台
2位トヨタ・オーリス 144,674台
3位日産・ジューク 109,968台
4位ランドローパー・イヴォーク 96,498台
5位ランドローパー ディスカバリースポーツ 89,004台
生産台数で見ると日産・キャシュカイはイギリスでの生産量が圧倒的な1位。キャシュカイ???管理人も初めて聞きましたが、下記のようなSUV。
ノートの顔したSUVという表現がピッタリ。イギリスでもSUV売れるんですね・・・。3位のジュークもSUVで、更に生産しようとしていたエクストレイルもSUVなので、日産にとってイギリスはSUVの一大生産拠点となっています。
そしてキャシュカイはイギリスから輸出された乗用車の第1位となっており、イギリスで生産されたキャシュカイは現地で販売されるのみならず、EU中心に輸出もされている状態です。
生産車別で1位と3位が日産車って、結構スゴイことではないかと。今や国内ではホンダの後塵を拝している日産、イギリスではトヨタを抑えて堂々の海外自動車メーカーNo1の地位を得ています。
今後問題が大きくなる可能性が
日本から見ると日産がイギリスから撤退する訳でもなし、別に新しい車種の生産を見送るくらい・・・、と思ってしまいますが、既にイギリス政府は日産にお金も支払ってます。また上述のように、イギリスにおける日産の存在感は日本人が考えている以上に高く、EU離脱で経済的な混乱も予想される中で多くの雇用をもたらしている日産は、EU離脱後のイギリスに無くてはならない存在と言えます。
そんな訳で既存の車種については撤退の話は出ていませんが(出てくるとイギリスは大騒ぎになります)、お金貰っておきながら日産がはイギリスで新しい投資をしてくれない、とイギリスでは騒動になっています。
最終的にお金を返して終わり、という着地となるかどうか分かりませんが、ゴーン元会長が去りマネジメントに混乱が生じている日産、ここに来て新たな問題を抱える形です。
日産のイギリスでの次期エクストレイル生産中止決定は、イギリスのEU離脱問題とともにお金も絡んでいるので、今後取り上げられる機会も多くなるかもしれませんね。
日産及びイギリスの関連記事
・ブレグジットの日程を確認、2019年3月29日が離脱予定日
・ブレグジット問題で2度目の国民投票の可能性が低いと考えられる簡単な理由
・日産ゴーン氏が逮捕されて会長を解任へ、ルノーと日産のバランスが崩れる?