シャープが鴻海(ホンハイ)による買収受け入れを決めたものの、偶発債務問題で紆余曲折ありましたが、無事に着地したようです。1年以上に渡って繰り広げられてきたシャープの再建問題、これで着地を見ることに。
シャープの再建問題を追いかけてきた当サイト、これでシャープネタも区切りとなりそうです。そんな訳で鴻海によるシャープの買収、最終的な着地についてその内容をまとめてみました。
概要
出資額は当初より1,000億円減額
産業革新機構に比べるとえらく高い金額出すなぁ、と思った鴻海ですが、最終的には当初の4,890億円から1,000億円減額の3,888億円出資で決着。当初からシャープ再建に手をあげていた産業革新機構は出資額3,000億円だったので、減額されたとは言えそれでも鴻海の再建案のほうがシャープにとっては使えるお金が増える、ということに。
以下、シャープと鴻海で合意したシャープ再建案についてピックアップしてみます。
シャープと鴻海の合意内容
・買収の契約時に鴻海は保証金1,000億円を支払い(3/31予定)
・出資額3,888億円(当初は4,890億円)
・出資比率66%(ただし株価は@118円→@88円での引受けに)
・鴻海の増資引受は6月の株主総会後、10月5日までに行われる
・有機ELパネルに2,000億円の投資
・鴻海はシャープの取締役9人のうち6人以下または総数の2/3以下を指名
・買収が破断になった場合、鴻海がシャープの液晶事業を買い取り可能
・メインバンクは新たに3,000億円の融資枠を設定
・鴻海による優先株の買い取りは3年程度延期
3月31日に買収契約が締結され鴻海はシャープに対し1,000億円の保証金を支払い。その後、6月のシャープ株主総会で増資払込の決議を行い、10月5日までに鴻海はシャープの買収を行うこととなります。
事業を普通に行える環境にはなる
ここ1年以上、シャープは再建策をあーでもない・こーでもない、とやってきています。その間、経営陣は経営再建策作成及び交渉に忙殺されており、鴻海による買収が決まったことで、漸く事業を普通に行える環境となります。
2016/3期シャープは2015/3期に続き2,000億円以上の赤字を計上する可能性も報じられていますが、2016/3期の赤字は過去のこととして、これで漸く反転攻勢が可能になります。
鴻海との着地に至るまで紆余曲折ありましたが、ともあれ通常モードで事業ができる状態は、シャープにとっては久しぶりとなります。
シャープ・鴻海連合とはいえ有機EL事業は一筋縄では行かない
鴻海はシャープで有機ELパネルを製造して、今後の反転攻勢に繋げたい、との考えを持っているようで、今回の合意でも有機ELパネル事業に2,000億円を投じることになっています。
アップルが今後のiPhoneに有機EL搭載を明言している以上、アップルを大口取引先としている鴻海にとって有機ELの取り組みは最優先課題の中、シャープがその任を担うことに。
液晶のシャープに取って有機ELは手はつけていたものの、本格的な開発はこれからの状態。また既に韓国のLGグループは有機ELに1兆円を投資する、と表明しており、ライバルも虎視眈々と有機EL市場攻略に手を打ち始めています。
ビジネスなので当然競争があります。シャープは鴻海の資金の後ろ盾を得て有機EL事業で快進撃、と短絡的に考えるのは、正直楽観的すぎるかと。
有機ELも技術的には出来上がりつつある中、いかに安く大量に作り上げるか、という生産プロセスが事業の肝になりつつあり、この辺りを鴻海・シャープ連合がどう対応していくか、関係者は固唾を呑んで見守っているのではないかと。
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2015年以降のシャープの株価
これを機会に改めて2015年のシャープの株価を振り返ってみます。下記が2015年以降のシャープの週足チャートです。
https://jp.tradingview.com/x/EELgtU6h/
※チャートはTradinViewを利用
2015年以降いいところのないシャープの株価。漸く底打ちの兆しはありますが、まだ上昇トレンド入り、とはとてもではありませんが、言える状態ではありません。
チャート的には220~250円の窓を埋めることができるかどうか、という部分がポイントとなります。
3/30(水)のシャープ終値は@135円。鴻海の増資引受け価格は@88円。6月の株主総会まで、シャープの株価がどう推移するかで、下手をすると実はもう一度波乱があったりする可能性も。さすがにここまで来るとそれはないと思いますが、相場ですから何があってもおかしくはありませんので。
『シャープ「液晶敗戦」の教訓』の教訓
直近のシャープ本としては、『シャープ崩壊』がイチオシですが、なぜシャープがこうなってしまったのか、をもう少し広い視点で捉えるとすれば、『シャープ「液晶敗戦」の教訓』。シャープ出身で現在は大学教授の著者が、シャープ敗戦の経緯を広い視点で指摘しています。
本書は、日本企業による台湾企業への技術供与は失敗だった、としていますが、立場が逆転した形で台湾企業と連合を組むこととなったシャープと鴻海。歴史は繰り返すのか、それとも両社はシャープの液晶での失敗の教訓を活かして、将来を切り開くことができるのか?今後大いに注目です。
まとめ
紆余曲折ありましたが、無事に鴻海がシャープを買収することで最終的に合意、となりました。
管理人の家電好きも相まって、サイト開設当初からシャープの再建を追ってきた当サイト、シャープ関連の記事もこれで恐らく一段落。後はシャープが鴻海傘下で見事に立ち直ることを願うのみです。
鴻海傘下という形ではありますが、シャープの復活を期待しています。
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