ジャパンディスプレイ(JDI)が倒産回避のため2017年夏に再建案策定へ

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 3期連続の最終赤字に加えて、アップルの有機ELディスプレイ採用に揺れるジャパンディスプレイ(JDI)が、倒産を回避すべく夏に向けて抜本的な経営再建計画を策定することに。産業革新機構の資金支援で一旦は落ち着いたかに見えた資金繰りも再び悪化に向かっている様子。

 JDIはシャープのように鴻海の傘下入り、と言うことになってしまうのでしょうか?今後のJDIの行方について考えてみました。

JDIが中期経営計画を撤回し夏に抜本的な経営再建計画を策定へ

液晶パネル大手のジャパンディスプレイ(JDI)は今夏をメドに抜本的な経営再建案を策定する、事業の構造改革を進める中期経営計画を撤回し国内工場の再編に加え他社との資本提携も視野に検討する。(17/6/7日本経済新聞)

 タマに息抜きに書いているニュースサイトに軽く書いた内容ですが、改めて深堀してみます。

関連記事:JDIが再建計画を撤回、資金繰り問題が再燃へ

 JDIも再度追い詰められているのね、という正直な感想もありますが、結構な問題をはらんでいます。その部分が日経の後半部分。

中計(中期経営計画)の前提条件が大きく揺らいだために目標数字を取り下げることを決めた。有機ELのJOLED(ジョイオーレッド)の子会社化も先送りする。(17/6/7日本経済新聞)

 JDIが昨年末資金繰りが逼迫した際に、実質的な親会社の産業革新機構は有機EL開発に注力する、という大義名分のもと、有機EL開発のJOLECをJDIが子会社化することを前提に750億円の資金支援を行っています。
 今回その前提が崩れてしまうことになります。産業革新機構は、再生案件は手掛けない、というのが一応のモットーであり、JDIを助けるためにギリギリ編み出した策が既に関連会社にはなっていたJOLEDの子会社化をセットで前向きな大義名分を揃えることだったのですが、JDIが再度の苦境に陥り、資金支援の前提が崩れてしまいます。

 じゃあ金返せよ、とはならない訳で、JDIにそんな資金の余裕もないので、あーあやっちゃった、という感じで時間は流れて行くんじゃないかと。ま、産業革新機構は経済産業省なり財務省に怒られることになるんでしょうけど。

 しっかりJDIはJOLED子会社化延期(予定は未定)のお知らせのIR出してました。

株式会社 JOLED の株式の取得(子会社化)に関する日程について

JDIの業績を振り返る、年間200~300億円の資金投入が必要

 折角の機会なのでJDIの業績を改めて振り返ってみます。

15/3期 売上高769,304百万円、経常利益1,864百万円、当期純利益▲12,270百万円
16/3期 売上高989,115百万円、経常利益▲12,934百万円、当期純利益▲31,840百万円
17/3期 売上高884,440百万円、経常利益▲8,871百万円、当期純利益▲31,664百万円

 
 15/3期こそ経常利益18億円の黒字ですが、当期純利益は3期連続赤字が継続。普通の会社なら倒産寸前です、実際資金繰りが厳しくなりつつあるようなので、倒産の危機が迫っている状態にはありますが。

 損益計算書見るだけでも結構大変なJDIですが、キャッシュフロー計算書を見ると、更に苦しい部分が分かります。

15/3期 営業CF73,320百万円、投資CF▲96,346百万円、財務CF▲24,971百万円
16/3期 営業CF151,442百万円、投資CF▲181,156百万円、財務CF▲6,098百万円
17/3期 営業CF112,004百万円、投資CF▲142,592百万円、財務CF55,603百万円

 ザックリ計算すると、JDIは事業を維持するために本業で年間200~300億円の資金が流出中。産業革新機構が750億円の資金支援を前期に行っていますが、資金的には約2年分しか持ちません。ついでにいえば、JDIはアップルからの受注が減少しているので(営業CFのマイナス効果)、流出していく資金が増えている可能性もあります。

 JDIのキャッシュフロー計算書を見ると、ソニーや東芝がJDIに対し中小型液晶事業を手放した理由がよく分かります。投資しないと売上が上がらない、まさにチキンレースの世界。そして戦う相手は、世界のサムスン電子。液晶で随分高い勉強代を払った日本の家電メーカーは、さすがに学習能力はあったということかと。シャープは液晶一本足打法だったので、中小型部門のみ切り出す、という選択肢はそもそも取りえなかったんでしょうが。

 しかしJDI、アップルがiPhoneに有機ELパネルの採用を決定しているので、受注の先細りは確実であり、身の丈をスリムにする等、どうにかしないとホント倒産が現実のものになりかねません。よって資本提携を含めた抜本的な再建策を夏に策定という流れになっています。

単独再建の可能性は低いと考えられる

 JDIは目先スグどうにかならないとは思いますが、それでも中期的に見れば厳しい状況には違いありません。では単独で再建できるかと言えば、それは難しいと言わざるを得ません。なにせパネル事業は投資ができてナンボの世界、それが出来ない財務状況なので、反転攻勢の芽は限りなく低いです。

 期待の有機EL事業にしても、投資できないと意味ありません。。。更に投資で競う相手はサムスン電子とLGディスプレイ、彼らは兆円単位で設備投資を行っているので、多少資金調達ができる程度では歯が立ちません。。。

 書いているうちに、ドンドン悲観的になります・・・。家電マニア入っている管理人としても寂しいものがありますが、既にパネル事業は技術でどうこうできる世界じゃないので、仕方ありません。

 JDIはスマホ普及の追い風にのってIPOにまで至った訳ですが、もう神風は吹かないのではないかと。うーむ、神風の材料がない。。。

シャープ同様、鴻海に助けてもらうしかないのか?

 今後資本提携も模索するJDIですが、間違いなく名前が出てくるのが台湾・鴻海精密工業。シャープの親会社です。有機EL技術を関連会社のJOLEDで持っているJDIは、シャープの持っていない有機EL技術を持っています、よって鴻海は間違いなくJDIを狙っています。有機ELパネル工場立ち上げの投資体力もある鴻海、JDIも取りに行くんじゃなかろうかと。

 JDIがシャープを買収するとかしないとかで昨年春はガチャガチャと産業革新機構を交えて交渉していましたが、今度は攻守所を変えて、鴻海+シャープがJDIの買収交渉を行う光景が見られるかもしれません。

 けどJDIの状況を見ると、シャープは鴻海に買収されてよかったんじゃないかと思ってしまいます。ま、まだどちらが結果的によかったのか、判断するには早いとは思いますが。

 ただ鴻海を除くと、JDIを助ける会社が中国系企業を除くと見当たらないのではないかと。気が付けば液晶パネルの製造世界No1になっている中国勢、本気になればJDIを取りに来る可能性も大いにありますが、中国系の企業と鴻海とどっちにJDIを売るか?、となればさすがに鴻海になるような気がします。

 日本の会社がJDIを買収する可能性は・・・、どうもイメージ湧きません。ソニーを始めとする旧親会社系はまず引き取らないでしょうし、となると他の家電系?莫大な設備投資を毎年必要とするパネル事業、価格が安くてもおいそれと買収できませんね。大穴としてEIZO<6737>がJDI工場の近くに本社があってモニターの会社(本社は石川県)、ということで考えられなくはありませんが、さすがに規模が違い過ぎる。。。

 JDIは今後誰が買うのよ、という話になりそうですが、どんな名前が出てくるのか非常に興味深い所ではあります。

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産業革新機構も手仕舞いモード?

 雑誌等を見ていると、産業革新機構もJDIに対しすでに手仕舞いモードの様子。JDIの社外取締役を務め、一貫して支援してきた機構の執行役員は既に退職。ま、責任を取った形かと。機構の社長がJDIの社外取締役に就任しています。

 産業革新機構で一番JDIのことを分かっていた人が抜けてしまった訳で、ここから先はサラリーマン組織的には、どうやってJDIを着地=EXITさせるか、という議論になるのは容易に想像できます。そもそもこれ以上の資金支援は機構的にはあり得ない訳で、機構にしてもできることは限られています。

 さすがにメンツ問題もあるのでJDI倒産、と言うことだけはさせないと思いますが(経産省が支援していたエルピーダはアッサリ潰れましたが・・・)、既に前向きな手を取れる状態ではありません。

 そんな訳で、意外に早くJDIの決着はつく可能性もあります。時間かければかける程、資金が無くなる訳なので、外部に売却と言うことであれば、サクッと決めてしまうのが吉かと。当然足元見られない交渉が大前提ですが。

 けどやはり役所が経済の旗を振る時代は終わったように感じます。産業革新機構も、うるさい国が必要と認める企業の再生に関与して文句あるか?、ぐらいに腹くくって再生ビジネスやたほうがいいような気が。日本は日銀が上場会社の多くの大株主になっている国なんですから、それくらい許してもらえそうな気がします。(いいかどうかは別)

JDIの株価

 最後にJDIの株価を見てみます。週足で見ると、下落トレンドの中でもまだ最安値を更新してはいません。最安値は2016年8月の138円。今現在は200円付近、まだ距離が多少ありますが、このチャートパターン的には正直、スグにビヨーンと上昇する感じではありません。


画像出典:マネックス証券/日本株取引ツール トレードステーション
※関連記事:マネックス証券のトレードステーション発表会に行ってきました

まとめ

 JDIがシャープを買収交渉している際に、JDIにそんな余裕あるのか?、と思っていた訳ですが、約1年以上の時を経てJDIもシャープの危機と似たような状況になりつつあります。

 やはり最後は鴻海がJDIを持っていくのか?、とも思いつつ、それじゃつまらん・・・、と思わないでもありません。

 正直、JDI単独での再建はトッテモ難しいと思います。今後JDI支援先にどんな企業の名前が上がって来るのか。JDIに残された時間はそんなに多くない中、JDI支援に名乗りを上げる企業にも注目したいと思います。

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3 件のコメント

  • はじめまして。シャープの株主で、最近JDIにも興味を持った者です。

    詳しい分析とても参考になりました。
    シャープ株主としても有機EL技術が手持ちのカードとしてないのが不安なため、JDIとうまく協業するのがBESTかなと考えております。
    また、戴社長からも2016年9月以来ラブコールが出ているので、話が進めば早いかと。

    今後も記事楽しみにしております。

    • コメント有難うございます。

      有機EL技術は注目分野ですね。ただ技術開発力というより、既に投資体力の競争の面があるので日本勢にとっては辛い所です。

      今後とも当サイトをよろしくお願い致します。

      管理人FiboCat

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