アメリカの大統領選挙は、トランプ氏が当選という大番狂わせが発生。選挙の開票日当日、丁度リアルタイムで市場が開いていた東京市場は日経平均が900円以上下がるという大暴落。しかしながら晩にトランプ氏の勝利宣言とともに、公共投資の積み増しが発表されると金融市場は一転トランプ氏の当選を好感しニューヨーク市場は上昇。そして翌日の東京市場は日経平均で1,000円も上げて、まさにジェットコースター的な相場状況となっています。
そんな中で為替市場も乱高下していますが、107円に迫る円安となっています。けどフト思った、トランプ氏が大統領になったら円高になるんじゃなかったのか???
ご祝儀相場が続いている中、相場のことは振り返っても仕方ない面もありますが、敢えてトランプ氏の大統領当選=円高説を考えてみます。キーワードはドルインデックス。ドル高に悲鳴を上げているアメリカのメーカーとドルインデックスの姿が重なれば、ドル安→円高の可能性もありますが、さてどうなりますか。
概要
悲観から一転、楽観傾向の金融市場
トランプ氏が大統領になったら株価は暴落して円高になる、と大統領選挙の前に声高に言われていました。
たしかに選挙の開票当日、リアルタイムで金融市場を見ていれば株も為替も事前の予想通りに、株安・円高、との流れで株は日経平均が900円以上下落しましたし、ドル円も4円以上円高になりました。
ところが実際にトランプ氏の当選が確実になり、トランプ氏が勝利宣言を行うと市場の雰囲気は一転し歓迎ムードのご祝儀相場へ。選挙翌日10日の日経平均は1,000円以上上げましたし、ドル円も5円以上円安に振れました。もう訳ワカメの相場状況となっています。
とりあえずはトランプ氏が勝利宣言で、公共投資を大幅に増やしますよん、と宣言して米国経済にプラスじゃないか、ということで雰囲気が一変して株が買われ、ドルも買われている(ドル>円)という状態となっています。
まぁ問題は、現在の相場モードがご祝儀モード入りしている可能性が高い点。このご祝儀モードが終わった後、実際に株価が更なる高値を更新して、円安も進めば、コレは本物です。
ただしアメリカの企業は、ドル高はもう勘弁モードなのは何も変わってない状況下で、メーカー重視のトランプ大統領となり、そのままドル高が続くか考えれば、現在の円安は素直に読めません。そんなひねくれ半分の眼で、現在のドル円市場を見てみます。
キーワードはドルインデックス。
ドルの他通貨に対する相対的な強さを表す指標ですが、この指標が高値を更新すればドル高トレンド確定、下げるようならドル安(円高)となります。ドルインデックスを中心に、トランプ大統領誕生決定後の為替を考えてみます。
ドルインデックスから見る為替市場
ドルインデックスという為替の指標があるのをご存知でしょうか?ドルインデックスというのか、簡単に言えばドルが他の通貨に対して相対的に安いか高いかを見る指標、となります。
ドルインデックスを見ると、現在ドルが買われているのか・売られているのかが一目瞭然。それ程知られていませんが、FXトレードするのであれば確認必須の指標と言えます。
そんなドルインデックス、現在の日足チャートは下記となっています。
今年(2016年)の5月から上昇を開始したドルインデックス、丁度今の時点でフィボナッチ・リトレースメント76.4~88.6%のゾーンに位置しています。フィボナッチの教科書的な見方からすると、丁度反転してもよい値位置にいることになります。
チャートの直近、米大統領選の開票日に下ヒゲが印象的ですが、実は大きな流れではドルインデックスは上昇トレンドが継続しています。ただしもう少し前を見ると、ヒラリー氏の私的メール問題でFBI再捜査開始宣言で一旦下がっていますが、結局元の位置に戻って現在を迎えている、ということが分かります。
ドルインデックスが100.5ポイント超えが確定すればドル高が確定
6月以降上昇してきたドルインデックスですが、フィボナッチを踏まえて分析では、現在の値位置は反転しやすいフィボナッチ・リトレースメント76.4~88.6%のゾーンでウロウロしている状況。それはヒラリー氏のFBI再捜査・トランプ氏の大統領選勝利があっても変わっていません。要は、ドルインデックスは方向性なくレンジ相場を形成中。
ここから先動くとすれば、レンジ相場をブレイクする必要があります。そしてももし仮に上昇=ドル高、ということであれば、現在の高値水準である100.5ポイントを確実に超えれば、トランプ大統領誕生によりドル高確定、となります。
株やドル円市場はトランプ大統領のタイミングで右往左往していますが、ドルインデックスという観点ではレンジ相場を抜けていないので、現段階でトランプ大統領誕生は殆ど影響なし、と言える状況となっています。
ハーモニックパターンを形成のドルインデックスチャート
当サイト、ハーモニックパターン、という検索ワードでお越しになる方も多いようです。ハーモニックパターンの詳細は下記をご覧ください。
関連記事:ハーモニックパターンを学んでみよう、まずは4種類から
そしてドルインデックスの日足チャートを見ると、見事なハーモニックパターンを形成中なんです。
今はフィボナッチ・リトレースメント76.4%の領域なのでガートレー・パターンですが、リトレースメント88.6%まで行ってもバット(Bat:蝙蝠)パターン。いずれにしてもキレイに三角が2つ並んでいます。このキレイさ、ハーモニックパターンの魅力です。現在地点の近辺で反転すれば、さすがハーモニック、という場面となります。
ドル高に悲鳴を上げているアメリカのメーカー
トランプ大統領誕生以前から、現在のドル高水準に既にアメリカのメーカーは悲鳴を上げています。ま、日本のメーカーが円高に悲鳴を上げるのと一緒の構図です。月足チャートでドルインデックを見ると、その状況がよく分かります。
ドルインデックスで見ると2008年から始まったドル高は2015年3月にピークを迎えます、そして現在に至るまでドルインデックスは約1年半以上ドル高水準を維持。そりゃアメリカのメーカーも国内で工場作ってモノを作るより、海外に工場作るよね、というのが円高になるとモノ作りが・・・、という光景を目にする日本にいると手に取るように分かります。
トランプ氏はアメリカに工場を呼び戻すと主張し当選
今回の大統領選挙、アメリカの白人労働者層から圧倒的な指示を受けたトランプ氏。かねてからドル高政策に批判的で、アメリカに工場を呼び戻す、と主張しています。アップル製品はアメリカでの生産を義務付ける、なんて主張もされてます。
そんな訳で、既にアメリカのメーカーはドル高で勘弁してくれモードの中、更にドル高となりアメリカのメーカーが工場の海外展開を加速すればトランプ政権としてはスタート当初から面目丸つぶれとなります。
とは言え、市場は簡単にコントロールできるものではないので、トランプ大統領の考えとは関係なくドル高が進む可能性はありますが、トランプ政権はドル高を望んでいない、と言うことは知っておいて損はないかと。
日本で言うと、小泉政権の時に円安が進んで工場の国内回帰が進んだ時期がありましたが、ひょっとしたらトランプ政権は為替的には日本の小泉政権の時に似てくるのかもしれません。
為替の大きな流れはファンダメンタル情報に基づいて動く傾向にあり
個別銘柄の株価の動きは日々の需給によって大きく左右されますが、為替の場合は、大きな流れはファンダメンタル情報に基づいて動く傾向にあります。為替は足元の状況は、トランプ大統領誕生でファンダメンタル的な部分が非常にグレーなのですが、1月の大統領就任に向け徐々にトランプ政権の経済政策も明らかになり、ファンダメンタル情報も増えてきます。
よって為替市場の先行きを読むのであれば、ファンダメンタル情報の把握は必要不可欠。FXトレードの際も、ファンダメンタル情報を押さえておくと安心してトレードができます。
為替のファンダメンタル情報を入手するのであれば、西原宏一氏のシンプルFXトレードがオススメです。月額4,200円のメルマガですが、毎日メールで足元の為替状況の解説等がなされます。アメリカの大統領選挙の開票日当日もタイムリーにメールが入っていました。
10日間のお試し期間があるので、ご興味があれば一度ご覧になってはいかがでしょうか?為替の見方のレベルアップにつながりますよ。
まとめ
トランプ氏が大統領になったら株安・円高になる、と各方面が言っていたのに、気付けば誰も言っていない・・・。ご祝儀相場で株高・円安になっているので、敢えてドル安(円がドルより買われれば、相対的に円高となります)の記事を書いてみました。
10月のアメリカの上場会社の中間期決算のコメント見ていると、そろそろドル高は勘弁して欲しい、というコメントを多く目にしてますし、上述のようにドルインデックスはハーモニックパターンを形成しているし、一筋縄でドル高ということにはならないのでは?、と思いますが、さてどんなもんでしょうか。
今後のドルインデックスの行方、そしてドル円相場の行方に注目したいと思います。
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