半導体ベンチャーのジェニュージョン(兵庫県尼崎市:GENUSION)が破産手続きを開始。リスクの高いベンチャー投資、うまく行かないことも当然あります。そしてジェニュージョンに約20億円を投資していた産業革新機構は、破産によりほぼ全額の損失が決定。
JDIの出資等で何かと話題の産業革新機構、実は現在はンチャー投資に主軸を置いていますが、再生ビジネスより見えにくいベンチャー投資、最終的に利益を残して着地させることはできるのか?
既にJDIのIPOで得た利益を食いつぶしている革新機構、今後風当たりが強くなる可能性もあります。
兵庫県の半導体ベンチャージェニュージョンが破産
産業革新機構は26日、半導体ベンチャーのGENUSION(ジェニュージョン、兵庫県尼崎市)への投資決定を撤回すると発表した。同社が裁判所から破産手続きの開始決定を受けたためで、出資済みの約20億円の回収はほぼ不可能となった。機構が投資先の破産などを理由に投資決定を撤回するのは2例目。(日本経済新聞)
この記事、産業革新機構が投資を撤回、という内容から始まっていますが、要は産業革新機構が約20億円損した、という記事です。。。
2010年に兵庫県尼崎の半導体ベンチャーのジェニュージョンに26億円の投資枠を設定して、ベンチャー投資業界をアッと言わせた産業革新機構ですが、その試みは残念ながら失敗、という結果に。
2009年に設立された産業革新機構(以下、革新機構)がこれまでのベンチャーキャピタル(VC)が出来なかったベンチャー投資を行う、と言ったノリで、投資業界をアッと言わせたのが、このジェニュージョンへの投資。金のかかる半導体ベンチャーへの投資とは言え、26億円の投資を決めてしまった革新機構に対し、さすが、という声と、本当に大丈夫か?、という期待と不安の声が入り混じていましたが、結論からすれば、後者が正しかった、と言うことになります。
日本もベンチャーキャピタルという事業自体、実はジャフコを始め30年以上の歴史がある訳で、既存VCが投資出来ない案件を、いくら資本力があって大手企業に顔が利く革新機構と言っても、そんなにうまくはいかないだろう、と管理人も当時思いましたが、残念な結果に終わりました。
いやチャレンジするのは大いに結構なんですが、革新機構のお金の殆どは税金ですから。税金使ってのベンチャー投資って、過去より死屍累々の世界なんですが、産業革新機構も片足突っ込んでないだろうか・・・。
革新機構の目利きが悪かった、という結論でしょう。当然、異論や反論はあるでしょうが、出資者=納税者の立場からすれば、失敗には違いありませんので。
けどやはり半導体ベンチャーってうまくいきませんね。日本の半導体ベンチャーも死屍累々に近い状態ではないかな。革新機構の資金力や大企業とのつながりをもってしても、半導体ベンチャーの育成はうまくいかなかった、と言えば、ジェニュージョンの破産は日本での半導体ベンチャーの終焉の象徴かもしれません。
産業革新機構も実は正念場
ジェニュージョンの破産で20億円の損失計上を余儀なくされる産業革新機構ですが、実は自身も結構な正念場にあります。JDIの支援で最近話題になったばかりですが、革新機構自体が投資ファンドとして考えると正直合格点を上げられない状態。
下記が2016/3期までの革新機構の業績推移。
14/3期はJDIのIPOの結果、大きく利益がでてヨカッタヨカッタ、となった革新機構ですが、その後が全くさえません。前期の16/3期に税前で421億円の損失を計上した結果、設立以降の累計で約100億円の赤字となってしまいました。ちなみに税引き後で計算すると約380億円の赤字です。
16/3期はJDI株の減損を入れていると思われますが、けどそれって説明としては筋が通りますが、JDIでそんなに儲からなかった、と言うことと一緒じゃないか、となります。
そして今期JDIに追加支援まで決定している革新機構、現状では税金使って赤字のファンドを運営して何やってんの?、と言う状態です、正直。。。これでJDIの追加分まで損となると、正直目も当てられません。
そしてジェニュージョンでの約20億円の損。ジェニュージョン分の損が17/3期に発生するのか、それとも既に引当済みなのかは分かりませんが、いずれにしても投資ファンドとして革新機構を見た時、正念場にあるのは間違いありません。
ルネサスの含み益がある産業革新機構
正念場にあるとは言え、一応ルネサスエレクトロニクスで革新機構は結構な含み益を持っています。革新機構はルネサス株を単価@120円で持っており、2016年12月26日時点のルネサスの株価は959円。
革新機構はルネサスに約1,300億円出資しています。取得単価120円で現在の株価約960円であり株価は約8倍になっています。ざっくり言って1,300億円の投資が約1兆円になっているので、足元の決算書では大丈夫か?、という状態ですが、含み益を考えれば全然余裕のある状態。
けど問題はルネサスの株、売るに売れない所なんですけどね・・・。革新機構の後世の評価はルネサスの株を見事EXITできるかどうかで決まってきそうな予感がします。
ルネサスの関係は下記に詳しく解説しています。
まとめ
ジェニュージョンの破綻、革新機構がデッカイ資金で大手企業に顔つなぎをしても半導体ベンチャーが失敗した、と言うことで個人的には非常にインパクトのあるニュースとなりました。ベンチャー投資に失敗はつきものですが、そうは言ってもベンチャー投資で1社で20億円損するってなかなかないケースです。バイオベンチャーも半導体ベンチャーも金のかかる事業ですが、やはり失敗した時のリスクが高いな。欧米だとリターンが10倍以上となるのでしょうが、日本だと未上場の段階で時価総額高めになるから、投資家サイドもそんなに夢は見られないので、巨額の資金を必要とする業界のベンチャー投資って、日本では合わないかも、と思わないでもありません。
革新機構はルネサスが無事にEXITできればヨカッタヨカッタ、ということで着地しそうですが、ベンチャー投資部門だけだったら、採算的にどうなんでしょ。ジェニュージョンで空けた20億円の穴、簡単にベンチャー投資部門で埋まるとは思えないのですが・・・。
いずれにしてもJDIの支援で久しぶりに名前の聞いた産業革新機構、半導体ベンチャーのジェニュージョンの破産でも名前を聞いたので記事にしてみました。
期限付きの組織である産業革新機構は2024年までと決まっています。無事に黒字で着地して、お釣りが国庫に帰ってくることを願っています
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