イタリアで連立与党が推薦する首相候補を大統領が拒絶するという事態が発生。イタリアの混乱は一朝一夕で収まる見込みはありませんが、イタリアを知るには現在に至るまでのイタリア史を知る必要があります。
南北問題にEU問題が絡まり、イタリアの政治不安は当面継続することになりそうです。
概要
イタリア発の金融市場混乱
イタリアの政治が混乱しています。簡単に言えば連立与党が選んだ首相候補を大統領が拒否して、大統領が別の首相を選んでしまいさぁ大変、という状況。
本来あまり表舞台には出てこないイタリアの大統領ですが、連立与党の首相候補者が反EUとして拒否してしまいました。で、元IMFの幹部を首相に指名。
少し書いただけでも、イタリア政治が大変なことになってるなー、というのが分かります。
元IMFの幹部が首相になっても、政権基盤はなくいずれ総選挙が行われる訳で、次の政権は暫定政権にならざるを得ません。ま、足元国内政治は意外にイタリアは何か重大な問題を抱えている訳ではないので再選挙する余裕はあります。ただし、結局の所、同じような選挙結果になったらどうなるのよ、とは誰しも思うことで。それこそ今度は大統領が悪者になってしまいます。
ドイツも大統領制で、イタリアも同じようなもんだと思ったら、意外にイタリアの大統領の権限が大きかった(ドイツの大統領は国の象徴的な役割)ことが分かったのは、個人的には新鮮な驚き。
そんなこんなでイタリア発の政治混乱に、スペインで首相の不信任案提出も発生しており、南欧発の金融市場混乱が発生。イタリア国債の利回りは一気に上昇して、ダウ平均は約400ドルも下落。
ここ最近、値動きの話題不足だった金融市場に絶好のネタを提供することになってしまいました。
イタリアの根本的な問題は南北問題
イタリアは南北で文化も経済力も非常に異なるお国柄。北イタリアといえばアルプスの光景が有名ですが、南イタリアはナポリやシシリア島の地中海の海のイメージ。多少なりともイタリアの歴史を知っていれば、イタリアは北と南で全く異なる国々が存在して、それぞれが歴史を持っていることは、何と無しにでも覚えているのではないでしょうか。
歴史的に見ても北イタリアはいち早く発展した地域です。ナポレオンに滅ぼされてしまい、その後国家として復活することはありませんでしたが、ベネチアは中世より地域の大国としてその名を轟かせていましたし、現在のイタリアの前身となったのはトリノを中心とするサルディニア王国。
一方の南イタリアはどうだったかと言えば、統一イタリアになるまで長きに渡りスペインの征服下にありました。口の悪い本だと、ほぼスペインの植民地、みたいなことが書いてある本があるくらいで、経済発展を遂げた北イタリアと比べると南イタリアの経済的な遅れは歴史的な背景があります。
イタリアの映画を見ると、北イタリア人と南イタリア人がお互いの悪口を言うのが定番のシーンですが、歴史的背景に基づく南北格差は日本人が思っている以上に根深いものがあります。少なくとも東京と大阪の違いではすまされません。
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実は南イタリアまで一緒になるつもりはなかった統一イタリア
現在のイタリアはトリノを中心とするサルディニア王国が中心となり成立、1861年にイタリア王国としてイタリア半島を統一して成立しています。
1861年がどんな年かと言えば、1867年に江戸幕府が滅んでいるので、明治維新の少し前に成立したのが現在のイタリアとなります。そんな訳で、イタリア半島は明治維新の少し前まで、各地域に別の国々が存在していた、と理解すれば、現在の統一イタリアとしての歴史の短さを理解できるのでは。
そして最終的にイタリア半島全域で統一イタリアは成立する訳ですが、イタリア統一の立役者であるカヴールは、南イタリアまで一緒になるつもりはなかった・・・、なんて発言を残しています。実は当初の構想ではスペイン支配下で経済的にも遅れており、また別の国という意識が非常に強かった南イタリアは、統一イタリアと言っても、別の国になる予定と、イタリア統一の立役者までが思っていた訳です。
ここに現在にまで至るイタリアの統一感の無さが表れるのではないかなー、と思います。
ではなぜに南イタリアまで含んで統一イタリアが成立したか(してしまったか)、と言えばそこに一人の英雄の存在があります。その名は、ガリバルディ。
ガリバルディが南イタリアを占領して、サルディニア王国に献上
近代イタリア史において、非常に個性的な輝きを見せているのがガリバルディ。名前も個性的ですが、この行動も個性的な軍人です。
そのガリバルディが、義勇兵を募って南イタリアの両シチリア王国を占領してしまいます。で占領した南イタリアをサルディニア王に献上してしまいます。(相当はしょってます)
既に南イタリアを除くイタリア統一に向け歩み始めていたサルディニア王国ですが、まさかの事態にビックリ仰天。既にサルディニア王国の首相となっていたカヴールにとっても、まさかの事態で、それが最初の、南イタリアまで一緒になるとは・・・、の発言に繋がります。
ちなみにガリバルディとカヴールは世界史では一括りで扱われますが、お互いを煙たがっていた存在。合理主義者のカヴールと軍事的ロマンチストともいえるガリバルディ、文字にしただけでも関係がうまくいくとは思えません。
ただし両人の活躍があって現在のイタリアの基礎が作られたのは間違いありません。
イタリアは地域格差の問題抜きには語れない
上記の歴史のように、北イタリアと南イタリアは全くことなる歴史を有しています。そしてその全く異なる国が一つになったのが、明治維新の少し前。その事実からして、イタリアの地域間格差の問題は一朝一夕で解決しないのは分かろうかというものです。
そしてイタリアでは地域別に政党を分けることができます。よってイタリアの政治を語るには地域を知る必要があります。そしてその地域は、ほぼ南北で分けることができてしまいます。
イタリアの2018年3月の総選挙の結果(wikipediaより)
・北部と南部で見事に政党が分かれています
韓国も地域別でほぼ政党を分けることができますが、とは言っても韓国は歴史的には別の国々だった訳ではありません。その点イタリアは、元が別の国だった訳で下手すると国が完全分裂してしまうリスクがあります。
その点、EUと言う存在は、国の分裂を防ぐ防波堤になりえる訳で、イタリア大統領が一貫して親EUの立場をとっているのは、イタリア国を分裂させない、という観点では非常に分かり易い構図となります。
先の見えないイタリア政治
現在のイタリアの政治は、親EUか反EUかという路線対立の面が大きくなっています。ただしその前に地域の問題も絡んでおり、簡単に混乱をほどくことができない状態です。
とりあえずはIMF元高官のコッタレッリ氏が暫定首相とはなるものの、3月に続き2度目の総選挙の開催が予想されています。
しかし総選挙の結果が結局反EU色が強い結果となれば、結局自体は何も変化は生まれません。
その意味ではまだ当分イタリア政治発の、金融市場不安定は継続する可能性も。まずは市場を動かす話題に飢えていた市場に、イタリアの政治不安は絶好のネタを放り投げる結果となっています。
当面混乱の継続が予想されるイタリア政治、歴史的背景を知りながらその混乱を見ていると、それぞれのニュースを深みを持って眺めることができます。
ともあれ当面金融市場を揺らすことになりそうな、イタリアの政治情勢のフォローをしたいと思います。
・経済コラム的なライティング承っています(寄稿先にてヤフートピックスに4回掲載)
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