2度目の経営危機の真っ最中のシャープ。これまで頑なに”液晶のシャープ”の看板を下ろそうとしませんでしたが、期待していた中国で景気の予想以上の減速が明らかになりつつあり、遂に白旗を上げる方向に。
シャープは液晶事業の売却について、ジャパン・ディスプレイ(JDI)及び台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業と協議を進めるようです。
概要
当初は液晶と運命を共にするつもりだったシャープ
やはりシャープ単体で液晶事業の立て直しは難しかったのか・・・、と思ってしまいました、残念。
「シャープ、液晶事業の売却検討…JDIと交渉」(読売online)
その昔(20年くらい前)の経営学の教科書には、ポートフォリオ経営の優等生としてシャープが紹介されていました。それが気が付けばシャープは液晶一本足打法の会社に。現在の2度目の経営危機の再生計画でも、液晶事業で会社を立て直す、という計画となっていました。
客観的に見て、苦しい戦いを強いられるだろうなぁ、と思いつつも、本人達が液晶事業と運命を共にする判断をしたのか、と管理人は思っていました。
ところが再建計画スタート直後の第1四半期から赤字で、再建計画時代に黄色信号が点灯した中、8月には中国経済の予想以上の減速が明らかになり、中国向けにスマホ用液晶を売って会社を再建する、という再建計画自体に暗雲が。シャープはある意味、完全に袋小路です。
そして金融機関始め、周囲が以前から進言していた、シャープ本体の液晶事業からの撤退、をさすがにせざるを得なくなった、という状況かと。
そんなシャープの株価はこんな状態です。
・関連記事:シャープ株価の今後の見通し
液晶事業の売却についてジャパンディスプレイ(JDI)とホンハイと協議中
ある意味で進退窮まったシャープの液晶事業。その売却先として名前が挙がっているのは、ジャパンディスプレイ(JDI)と台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業。
JDIはシャープにとっては完全なるライバル企業、今回の2度目の経営危機はシャープがJDIに中国のお客さんを取られたことに端を発しており、シャープとしては、基本的には頭を下げたくない会社。
一方のホンハイは、過去提携話でスッタモンダありましたが、大型液晶事業を共同で行っており、事業パートナーとも言うべき存在。
シャープはJDIとホンハイの2社と液晶事業の売却について協議を行っているようですが、どう考えても本命はJDI。
JDIの設立当初から、経済産業省はシャープの参加を臨んでいた訳で(JDIの設立母体は経産省が設立した、産業革新機構)、既に銀行の影響力も強くなっているシャープ、各方面の圧力を排して外国企業のホンハイと提携する、というパワーは残っていないのでは?
これでホンハイに液晶事業を売却、となったら、その成否はさておき、シャープ経営陣の勇気は賞賛されるとは思いますが。
ジャパンディスプレイ(JDI)も決して楽ではない状態
順当に行けばシャープの液晶事業(中小型液晶)を買収することになりそうなJDI。
しかしながらJDIの経営も決して楽ではありません。第1四半期こそ順当な数字ではありましたが、こちらも中国との商売が多く、今後中国経済減速の影響が懸念される状態。
中国のスマホ市場の急拡大終了は、ここ数年で急成長した小米(シャオミ)の失速が象徴しています。
関連記事:中国のスマホ市場が失速、シャープやJDIは大丈夫?
JDIがシャープの液晶事業の買収の暁には、遂に液晶の日の丸連合が完成する訳ですが、果たしてそれで本当にすべてがうまく行くのか?どうしても日の丸半導体のエルピーダメモリーの記憶が蘇ってしまうのですが・・・。
中国経済の予想以上の減速→中国のスマホ市場の縮小で、JDI事態の状況もマズクなり、何とビックリ産業革新機構がEXITしたハズのJDIを再度支援するという、ファンド運営会社としてはブラックジョークとしか思えない事態だってあり得ます。
尚、ジャパンディスプレイの株価はこんな状態です。
・関連記事:ジャパンディスプレイ株価の今後の見通し
JDIはどうやって買収資金を用意するのか?
JDIがシャープを買うとして、1,000億円と言われるお金はどこから持ってくるのか?安直に考えれば産業革新機構が再度JDIに資金提供、というシナリオが考えられます。
けどファンド運営という観点ではコレは絶対避けるべきでしょう。既に一部であれ産業革新機構はJDIの投資の資金回収はできています、基本的に回収したお金は分配すべきです。そもそも論やべき論を横に置いておくとしても、折角うまく回収した会社に再度お金突っ込んで、損したらどうするの?
通常のファンドであれば、出資者から大目玉を食らいそうな内容なのですが、産業革新機構は政府系なので何でもありなんだろうなぁ、とも思います。
JDIだって売られる運命
産業革新機構が再度JDIを資金支援するかどうかはさておくとして、実はJDI自体もいずれどこかの会社に株を売られる運命。何せ筆頭株主は産業革新機構でシェア35.5%。産業革新機構も政府系とはいえ、再生ファンドであり、いずれ持っている株は処分せざるを得ません。(現物引出、出資者にお金ではなく投資先の株を返すという禁じ手もあるには、ありますが・・・)
JDIの事業の関係先に産業革新機構保有の株をはめ込んで出来上がり、ということも考えられますが、取引先が限られるJDI、それはなかなか難しそう。JDIが自己資金で株を買い取れればベストですが、そんな余裕はありません。
シャープの液晶事業、JDIが買収したら買収したで、日本の液晶事業の再編は次のステージに進みそうですね。けど完全に投資競争に入ってしまった感のある液晶事業、買う会社はあるのだろうか???どうにかうまく半導体事業をやっていて、半分政府の監視下に入った東芝が最終的にJDIを買収(JDIは東芝の液晶部門の切り出しでもあり、先祖返りになります)、というのがストーリー的には面白そうですが。
関連記事:東芝の不適切会計問題、貸借対照表(B/S)を見ると理由が分かる?
20年前の予想が現実のものに
既に20年前に中堅以下の家電メーカーは生き残りが難しい、と言われていました。ケンウッド、ビクター、パイオニア、三洋電機と、中堅以下の家電メーカーが次々に形を変えたり姿を消したりしています。そして遂にシャープの順番が回ってきた、ということでしょうか。
シャープは液晶へ入れ込み過ぎて今の事態に至っている、というのは事実ですが、株とかチャートという観点から離れて、家電好きな人間の目から見た時、シャープは液晶に入れ込まなかったらジリ貧で結局同じことになっていたのでは?、と思わないでもありません。
何せ我が家にシャープ製品は一つとしてありません・・・。携帯電話はシャープ→シャープ→東芝→シャープと来て、シャープ製は気に入っていましたが、最終的にiphoneになりましたし。
地デジバブルの際、シャープはヤマダ電機と組んで液晶テレビを売りまくってましたが、あれがなかったら逆に今頃どうなっていたのでしょうか?
液晶に続く目玉製品をシャープは出せなかった、と言うのは簡単ですが、アップルだってiPad以降コレといった目玉製品が出せていないのですから、確信的な新製品を求めるのは無い物ねだりではないかと。
いずれにしても20年前の予想が本当に現実のモノになりつつあります。家電好きとしては、寂しい限りですが。
まとめ
シャープの液晶事業の売却、まだシャープから発表があったわけではないので、ひょっとすると、そうはならない可能性もあります。
ただし中国株の暴落で、中国経済の想像以上の減速が明らかになってしまい、シャープとしても期待の中国市場がこれでは・・・、と観念せざるを得ない状況にはなりつつあります。
先日シャープのリストラのニュースが報じられ、何だかなぁ、と思ってしまいましたが(元々予定されていたこととはいえ)、今回は液晶事業の売却のニュース、寂しいものです。
まだまだシャープの今後は紆余曲折ありそうです。まだしばらく追いかけようと思っています。
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