今後タカタの倒産は困る自動車業界、ただしリコール費用は1兆円規模へ

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 一向に問題が収束する気配のないタカタのリコール問題。既にタカタは全面降伏状態ですが、アメリカ政府が5月4日にタカタに対して追加で最大4,000万台の追加リコールを命令。これによりリコール総額はこれまでの数千億円規模から1兆円規模にまで拡大する見通しに。
 かつて財務的には余裕のあったタカタですが、さすがに1兆円規模のリコールには耐えられません。しかし日本の自動車業界としては、今後タカタに倒産してもらっては困る状態。何せタカタが潰れれば、自らが米国政府と向き合う事態が予想されますので。

 タカタのリコール問題、米国政府の追加リコール命令によって、新たな局面に。
 今後タカタがどうなっていくのか何パターンか考えてみました。いずれにしても日本の自動車業界にとっては、非常に悩ましい事態をを迎えつつあります。

※17年6月16日にタカタは民事再生法適応申請と報じられました、その後に作成の記事は下記となります
エアバッグのタカタが東京地裁に民事再生法適応申請へ、過去の経緯振り返り

米国政府がタカタに追加リコールを命令、リコール総額1兆円規模へ

 これまで繰り返しタカタに対しリコール命令を出していた米国政府ですが、新たにタカタに対して5月4日追加で最大4,000万台分の追加リコールを命令。これにより、タカタのエアバックのリコール問題、リコール費用が1兆円規模となる見込みです。

リコール費用1兆円も=タカタ経営一段と厳しく(時事通信)

 リコール費用総額1兆円ですか・・・。来る所まで来たな。2000年代初頭からタカタのエアバック問題言われていましたが、十数年の時を経て、爆弾は大爆発した、との印象を個人的には有しています。

 そんな訳で、これまでのタカタのエアバック問題の歴史を下記でザックリと振り返ってみます。

タカタのエアバック問題の経緯

 
 過去の新聞や雑誌等から、ザックリと時系列にまとめてみるとタカタのエアバック問題、下記のような経緯をたどっています。

2000~2002年9月 同期間にタカタのアメリカ工場及びメキシコ工場で作られたエアバック部品(インフレーター)が、高温多湿の地域で長期間に渡り使用された場合、車が衝突してエアバッグが作動した時に、異常な破裂が生じて金属片などが飛び散り、乗員がけがをする恐れがある、と報告。
2008年11月 ホンダが米国でリコール
2009年 タカタ製のエアバッグが原因で2件の死亡事故が発生(米国)
2013年4月 トヨタなど4社でリコール
2014年6月 追加リコール
2014年7月 ホンダ車で死亡事故(マレーシア)
2014年8~11月 追加リコール
2014年11月 米国議会での公聴会
2014年12月 米国議会での公聴会
2015年6月 米国で7人目の死亡事故発生
2015年6月 タカタの謝罪会見
2015年11月 日本国内で日産の車(エクストレイル)でタカタ製エアバックによる軽傷事故発生
2015年11月 タカタが米国の制裁金支払いに同意、ホンダが新車種でのタカタ製エアバック搭載停止を決定
2016年5月 米国政府が追加で最大4,000万台のリコールを命令

タカタのエアバッグ問題、ホンダの堪忍袋の緒が切れて新局面へ」より抜粋+追加

 アメリカで最初にタカタ製エアバックのリコールが発生したのが2008年。それからここに至るまで7年以上の月日が流れています。遅々として問題解決が進まないタカタのエアバック問題に米国政府の堪忍袋の緒が切れた形となった、今回の追加リコール。遂にはリコール総額が1兆円規模となってしまいました。

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タカタ関係のリコール費用が遂に1兆円規模へ

タカタの体力で1兆円の負担は不可能

 以前2015/中間期のタカタの財務分析を行っていますが、いくら財務的な体力のあるタカタといえども1兆円規模のリコール費用を賄うのは体力的に不可能。

 リコール費用をあまり計上していない段階で、2015/9中間期の純資産約1,380億円あった訳ですが、ココに1兆円のリコールを乗せると即債務超過。これまで言われていた数千億円規模のリコール費用でも、債務超過に転落する訳ですが、数千億円ならまだ大型の増資をすれば・・・、との可能性もなきにしもあらずですが、1兆円規模となるとチョットやそっとでどうにかなる金額ではありません。

 現在スポンサー探しを開始しているタカタですが、今回の追加リコール、タカタの支援に興味を持っていたファンドなり会社が一気に手を引いてしまうキッカケとなっても不思議ではありません。

タカタに倒産されては困る日本の自動車業界

 タカタのエアバックのリコール問題、過去の経緯を辿れば、タカタが早い段階で抜本的な解決を図っていれば問題はここまで大きくならなかった可能性は高い訳で、いわば自業自得の面があります。その意味では、自分で責任取ってね、と言うのは簡単ですが、こと日本の自動車業界にとっては全くもって他人事ではありません。

 タカタが倒産=リコール不能となれば、米国政府の矢面に立つことになるのはホンダを始めとする自動車メーカー本体。下手をすれば、日本の自動車メーカーの責任追及、という事態にまで延焼しかねません。アメリカ市場を日本市場と同等、いやそれ以上に重視している日本の自動車メーカーにとってみれば、アメリカで下手を打つ訳には参りません。その意味では、タカタのリコール問題、タカタにとどめておくのが賢明な判断。

 タカタには責任取らせたいが、タカタが潰れて自らが矢面に立つ事態は避けたい。けど今回の追加リコールで手をこまねいているとタカタの破綻は免れそうもない・・・。
 日本の自動車業界にとっては、三菱自動車の燃費不正問題よりも、タカタのリコール問題のほうが、遥かに深刻度が高いと言えます。

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タカタの今後について

 今後タカタがどうなっていくのか、まだ不透明な部分も多いのですが、何パターンか考えてみました。

①タカタが破綻→リコール費用は自動車メーカー持ち
②タカタが破綻→第三者が支援(リコール費用は自動車メーカーと交渉)
③タカタが破綻→自動車業界で支援(リコール費用は自動車メーカーと交渉)
④タカタは破綻せず→第三者が支援(リコール費用は自動車メーカーと交渉)
⑤タカタは破綻せず→自動車業界が支援(リコール費用は自動車メーカーと交渉)

 通常の企業再建であれば、民事再生等を行って債権カットして身軽にして事業再生、という方向になるのですが、タカタの場合は債権者的立場の米国政府が債権カット=リコール見直し、に応じるとは思えません。よってタカタが破綻しようがしまいが、自動車業界にとってはあまり大勢に影響はありません。
 タカタを矢面に立たせる、という意味ではタカタはそのまま存続したほうが、国内自動車メーカーとすればいいような感もあります。

 じゃあ、タカタは破綻させないとしても、1兆円規模のリコール費用、タカタの体力で負担するのは不可能な訳で、誰が中心になってタカタを支援するのよ?、という話がスグに出てきます。
 やはり関係の深いホンダか?、と思わないでもありませんが、これまでの経緯でタカタに愛想をつかせているホンダ、今のところはタカタは支援せず、と明言しています。となるとトヨタ?トヨタとすれば、何でもかんでも業界の問題を当社に持ってきてもらっても困る・・・、という所ではないかと。

 けどファンドなり事業会社なりがタカタの支援を行わない、となると自動車業界全体でタカタの面倒を見る方向になる可能性が高いのでは、と考えますが、果たして?

 ただしどんな形であれ、タカタが払いきれないのであれば、リコール費用は自動車メーカーである程度は負担せざるを得ないではないか、と考えられます。

産業革新機構はスルーすると考えられる

 事業再生と言えば名前が出てくるのが産業革新機構(ホントは事業再生しない、というのが建前なのですが)。タカタは産業革新機構が支援する、となれば早い感もしますが、半政府機関の産業革新機構が乗り出せば、リコール問題が政府間問題となりかねません。産業革新機構の影の主役の経済産業省、下手に産業革新機構がタカタを支援すれば、直接米国政府とやりとりといった面倒な事態に引きこまれ兼ねません。

 経産省なり政府が自動車業界の働きかけ等で腹を括れば話は別ですが、現状では余計なリスクを背負いかねないタカタの再建に産業革新機構が関与する可能性は低いと考えられます。

まとめ

 対応を誤るとタカタという部品メーカーの話ではなく、日本車の問題となりかねないタカタのリコール問題。リコール費用が1兆円規模にまで膨らみ、既に問題はタカタ1社の話ではなくなりつつあります。

 今後、日本の自動車メーカーはどんな対応をするのか、そして1兆円規模のリコール費用の負担をどうタカタと自動車メーカーは分担していくのか。

 タカタのリコール問題今後どうなっていくのか、興味深く見守りたいと思います。

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