ソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング)、という言葉を最近チラホラ耳にするようになってきました。現段階では知る人ぞ知る存在のソーシャルレンディングですが、年5~10%の高利回りを提供しており、投資家にとっては非常に魅力的な金融商品に映ります。
ただし認知度も低いため、あの高利回りは怪しい・・・、と思っている方が多いのも事実。
実際ソーシャルレンディングってどんなものなのか、サービスを提供しているソーシャルレンディング運営会社をザッと眺めてみて、その上で投資の考え方を述べてみます。
高い利回りが期待できるソーシャルレンディングですが、運営会社の分散と案件及び分野の分散が必要不可欠。分散投資が、ソーシャルレンディング投資には必要不可欠と考えます。
概要
最近目にするようになってきたソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング)
日経新聞等を見ていると、最近目にするようになってきたソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング)。ソーシャルレンディングというより、クラウドファンディング、と言った方が、日本ではまだ名前が知られていますが、日本でクラウドファンディングというと、モノ作り的なプロジェクトで資金調達を行って出資者はそのプロジェクトの成果物のモノ(農業製品や映画鑑賞チケット等)をもらう、というイメージが強いです。
この辺りはミュージックセキュリティーズ社の古くからの地道な活動の結果ではありますが、今回の記事で対象にしようとしているのは、融資型クラウドファンディング。要は個人投資家がプロジェクトにお金を貸して、投資家はそこから金利を得るという、金融商品的な位置付けをされているものです。そして融資型クラウドファンディングのことを、一般的にソーシャルレンディングと言います。
ソーシャルレンディングはアメリカで一足先に市場が立ち上がって、既にレンディングクラブという上場会社も出ています。尚、レンディングクラブについては、以前記事を書いているのでそちらをご覧ください。
アメリカに比べると、信用組合・信用金庫はじめ、個人事業主の資金調達環境が優れている日本はソーシャルレンディング市場の立ち上がりが遅れていましたが、ようやく市場が立ち上がりつつあります。
ソーシャルレンディングは利回りが約5~10%と高いため、個人投資家には非常に魅力的な投資案件となります。ただし高い利回りということは、即ちリスクもある訳で、今更ですがリスクを知った上で投資するのがソーシャルレンディングにおいても鉄則となります。
日本のソーシャルレンディング市場の特徴
日本のソーシャルレンディング市場の特徴を一言で言えば、不動産関連に融資を行うことで高金利を出している、と言う点に尽きます。
確かに不動産案件以外の案件もありますが、高利回りの案件の殆どが不動産プロジェクトへの融資であったり、不動産会社への融資であったり等、不動産が絡んでいます。よって日本のソーシャルレンディング業界は不動産業界に支えられている所が大。
ソーシャルレンディングってそもそもそーいうものじゃないような・・・、という方もおられるかもしれませんが、アメリカだって要は個人向けローンに個人が金を貸しているのと同じな訳で、ソーシャルレンディングという横文字でキレイなビジネスの印象も受けますが、要は金貸し、という認識は大切。
不動産ビジネスが儲かるビジネスである点については、否定される方はあまりいないのでは?まぁそういうことです。
ただし不動産市場がそろそろ天井じゃないか?、とアメリカでは言われてますし、日本でも外資系は不動産投資は撤退モード、という記事を目にするようになっているので、現状の不動産に頼っている日本のソーシャルレンディング業界が、今の姿のままでいられるかどうかは、正直何とも言えません。
日本のソーシャルレンディング運営会社
不動産への融資を中心に、ようやく市場が立ち上がりつつあるソーシャルレンディング業界。日本には十数社のソーシャルレンディング運営会社がある、と言われていますが、主な運営会社を老舗と新興系という区別でピックアップしてみました。
老舗ソーシャルレンディング運営会社
①maneo
maneoマーケット社が運営。日本初のソーシャルレンディング運営会社であり、業界最大手。
2016年10月よりGMOクリック証券との提携により、GMOクリック証券の証券口座があれば、容易にmaneoのソーシャルレンディング案件に投資を行えるようになった。
②SBIソーシャルレンディング
ネット証券大手のSBIグループのソーシャルレンディング運営会社。SBIグループというバックグランドから、会社に対する信頼感は抜群。
ただし運営会社の安心感と引き換えに利回りが約2~5%と若干低めとなっています。
日本のソーシャルレンディング業界の老舗と言えば上記2社。maneo社は日本初のソーシャルレンディング運営会社であり、業界最大手の地位を確立しています。現段階では未上場の会社ですが、VCからの出資も仰いでおり、今後IPOの可能性も噂されています。
尚、maneoの案件は上述の通り、2016年10月よりGMOクリック証券の口座保有者は資金の移動無しにmaneoの案件に投資できるようになりました。証券口座の資金でmaneoの案件にそのまま投資できるのと、別途maneoの口座を開設して・・・、という面倒な手間を省くことができるので、maneoの案件に興味があれば、GMOクリック証券に口座開設をして、GMO経由で投資を行うのが最も手間がかかりません。
新興系のソーシャルレンディング運営会社
ソーシャルレンディング市場自体が立ち上がって数年であり、殆どの会社が新興系の会社と言えますが、下記が主な新興系のソーシャルレンディング運営会社となります。
①ラッキーバンク・インベストメント
不動産特化のソーシャルレンディング運営会社、運営しているのはラッキーバンク・インベストメント社。社長は船井財産コンサルタンツ出身(現、青山財産ネットワーク)で、不動産投資を学んだ方。
年利回り6~10%。尚、案件の募集があっても、スグに完売してしまうことが多いので有名な会社でもあります。
②OwnersBook(オーナーズブック)
こちらも不動産特化のソーシャルレンディング運営会社、運営しているのはロードスターキャピタル社。
実績利回り4.8~14.5%。不動産案件では珍しい、最低投資金額1万円から投資可能であり、投資のハードルが低いという特徴もあります。
尚、ラッキーバンクとOwnersBookの比較を下記で行っています。
③クラウドクレジット
海外案件特化のソーシャルレンディング運営会社。2016年11月から1万円から投資が可能になり、また預託口座の開設により、投資家の資金と会社の資産が分離されることで、資金を安全に預けることができます。
詳しくは下記をご覧ください。
④AQSH(アクシュ)
メリルリンチ→ゴールドマンと渡り歩いたトレーダーが設立のソーシャルレンディング運営会社。国内案件のみならず海外案件も手掛けています。
⑤みんなのクレジット
足元急速に案件を積み上げているソーシャルレンディング運営会社。キャッシュバックキャンペーンに積極的だが、顧客対応に時間がかかっている、という話も。
⑥LCレンディング
ジャスダック上場の不動産関連会社LCホールディングス(8938)の運営しているソーシャルレンディング運営会社。業界では、上場会社のグループ会社はSBIソーシャルレンディングとLCレンディングの2社のみ。
尚、maneoマーケットと業務提携を行っている。
⑦トラストレンディング
ノンバンクが運営するソーシャルレンディング、運営会社はトラストファイナンス社。
運用利回り年4.0~12.0%で、毎月分配型が殆ど。
⑧クラウドバンク
老舗のソーシャルレンディング運営会社の一角ですが、2015年に金融庁から顧客資産の分別管理を適切に行っていないとして、業務改善命令を受けている会社。業務改善命令を克服後、今後の展開が気になる1社です。
⑨スマートエクイティ
株式投資型ソーシャルレンディングに参入を表明しているソーシャルレンディング運営会社。AIP証券が運営しています。
まだ他にもmaneoがグループで運営しているソーシャルレンディング運営会社(クラウドリース、スマートレンド)等もありますが、新興系でそれなりに名前の知られているソーシャルレンディング運営会社は上記となります。
ソーシャルレンディング投資の見るべき点、案件のリスクと運営会社のリスク
上記のように様々なソーシャルレンディング運営会社が存在しており、さらにそれらの運営会社が様々な案件を募集しています。
ソーシャルレンディングに投資する際に見るべき点は、大きく分けると2つ。
①案件の内容
②ソーシャルレンディング運営会社の状況
まずは案件の内容。資金の貸付先からその内容、そして利回りと期間等、見るべきポイントはたくさんありますが、殆どの運営会社でその内容は開示されています。
色々案件を見て回ると、ホント不動産関係の案件が多いのね・・・、と言うことがよく分かります。管理人も初めは驚きました、もう慣れましたけど。
そして次に見るべきは、運営会社の状況。お金を預ける運営会社のリスクも考える必要がある点は、ソーシャルレンディング投資の独特の点と言えます。
株やFXを行う際に、証券会社やFX会社が大丈夫な会社か?、と心配される方は殆どいないと思いますが、ソーシャルレンディング運営会社はまだ小さい会社が殆どです。業界最大手のmaneoマーケットにしても、従業員数12名の中小企業です。
よってソーシャルレンディングの案件そのものをよく見る必要もありますが、その案件を募集している運営会社もその内容をよく見るべき。原則、運営会社の資産は顧客の資産は分別されていることになっていますが、金融庁が全社バッチリと目を光らせている、という訳ではありません。実際に、2015年にAIP証券が金融庁から業務改善命令を受けている訳です。
ソーシャルレンディングに投資を行う際は、単に利回り等の条件面だけでなく、運営会社の信頼性も考えた上で、その案件に投資すべきかどうかを判断すべきです。ソーシャルレンディング運営会社のリスクは、本業界独特のモノですが、若い業界で今後淘汰も進んでいくと考えられるので(その過程で問題が生じる可能性があります)、忘れてはならない部分と考えます。
会社の分散と案件の分散が大切
株と違ってソーシャルレンディングは1万円から投資可能な案件もあります。ソーシャルレンディングの投資、この少額投資のメリットを生かさない手はありません。少額投資ができる、ということは即ち分散投資が可能です。
ソーシャルレンディング投資の肝は分散投資ではないか、と管理人は考えています。50万円投資するとして、例えば株の場合は1銘柄しか投資できませんが、ソーシャルレンディングであれば各10万円なら5案件、各5万円なら10案件に投資が可能。
正直面倒くさい、という面もありますが、やはりリスクがあるのが投資。リスクが発生した際に、全損、という恐怖の事態を避けるためにも、分散投資を行うべき。
尚且つ、案件の内容も分散するべき。現状、日本のソーシャルレンディングは不動産に傾斜しており、不動産市況が悪化すれば、会社や案件の分散をしていても、軒並みやられてしまうリスクがあります。リーマンショックの再来が目先あるとは思いませんが、リーマンショック後の日本でREITバブルの崩壊を身をもって体験しており、不動産一極集中リスクはできれば避けたい所。
不動産以外となると、クラウドクレジットを始めとする海外案件が候補となります。海外案件か・・・、という面もありますが、どんな形であれ案件内容の分散も必要と考えます。
IPO投資と同様、口座数の数がモノを言う面も
会社の分散と案件の分散が必要と考えているソーシャルレンディングの投資、IPO投資と同じく持っている口座数の数がモノを言う面があります。
よって主要所のソーシャルレンディング運営会社、複数社に口座を開設しておき、良い案件があればタイミングよく入金して応募する、というのが一つの方法となります。
ただその際に気を付けたいのが出金手数料。出金手数料はで数百円取られると、それこそ金利がそのまま手数料に化けました・・・、ということになりかねないので、出金手数料のかかる運営会社は、資金は出勤せずに次のよい案件があるまでそのままにしておく、という措置も必要になります。
案外出金手数料はバカにならないので、ご注意を。
案件の内容、運営会社の状況、手数料等、事前に調べるべきことはたくさんあります
まとめ、ソーシャルレンディングの投資は少額からスタートして投資タイミングも分散を
実はソーシャルレンディングの投資、各社の資料を見ていると、1人当たりの投資金額が結構大きいようです(ex.2~3百万円)。当然、ソーシャルレンディングのリスクを分かった上で投資していれば問題ありませんが、面白そう、ということで一気に資金を投入するのは少々お待ちを。
確かに株やFXと比べると相場性のある商品ではないので、一気にやられるリスクは少ないのですが、それでも少しずつ時間を分けて投資してはいかがでしょ。最初の案件でソーシャルレンディングがどんなものか実体験で分かった上で、資金を増やすかそのままか、それとも止めるか判断する。こんなスタイルが、投資としては王道スタイルです。
確かに利回り10%のソーシャルレンディング案件もあるので、飛びつきたくなる気持ちは分かりますが、投資には当然リスクがあります。小口で分散投資ができるソーシャルレンディング、案件と運営会社の分散も大切ですが、投資タイミングの分散もできるので、投資のタイミングも分散させるようにしたい所。
別に難しく考えなくとも、月○万円ずつ、とかそんな感じで全然よいと思います。
FXとか株とか、基本的に相場が好きな管理人ではありますが、そのまま資金を寝かせた場合どんな運用方法があるか、と考えた時にソーシャルレンディングに注目しています。まだ業界自体が発展途上なので、正直一気に大金投じるのは結構リスクがあると思いますが、資産ポートフォリオの一環として、ソーシャルレンディングに分散して投資するのは”あり”かな、と思いつつあります。
ソーシャルレンディングは相場商品のように、投資した後に面白味はない訳ですが、資産運用は面白みが無くていいんです。
各方面で記事やニュースを見るようになってきたソーシャルレンディング、当サイトでも今後注目していこうと思います。
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