独立系の老舗VCグロービスが360億円もの巨額VCファンドを設立。ただしVC業界は、巨額ファンドの設立のタイミングが相場のピークというサイクルが存在します。
グロービスは過去のサイクルを克服し、巨額VCファンドの運営に成功するのでしょうか?
概要
グロービスが機関投資家の資金中心に360億円のVCファンドを設立
・グロービス・キャピタル・パートナーズ、新ファンドで過去最大360億円の一次募集を完了(MONEYZINE)
グロービスが機関投資家の資金中心に360億円のVCファンドを設立したと報じられています。VCファンドの多くが中小企業基盤整備機構から約半額の出資を受けるケースが多い中、機関投資家中心に360億円もの資金を集めてファンドが設立できたのは、グロービスの実績があればこそ。
独立系の老舗VCのグロービスは昨年メルカリのIPOで当てて、改めてその実力が機関投資家から評価された形です。近年VCファンドは事業会社中心の出資構成となっており、中小企業支援機構からの出資がなく、また機関投資家中心の出資者というのは非常に珍しいといえます。
巨額VCファンドが設立される頃はIPO市場が天井のケースが多い
巨額VCファンドを設立できるVCは、今や独立系のジャフコ以外に数えるほどしか有りませんが、巨額VCファンドが設立される頃が、IPO市場の天井となるケースが多いのも、過去からのサイクルです。
2000年頃のITバブル、2005年頃の新興バブルと当時作られた巨額VCファンドの多くは振るわなないパフォーマンスの末、ファンドのクローズを迎えています。2013年のアベノミクス相場以降、IPO市場は長期に渡る良い状態が続いています。よってアベノミクス相場以降に設立されたVCファンドは今のところ変な状態にはなっていません。(ただし後述しますが、それほど良いパフォーマンスとも思えない)
IPO市場も天井か?、と例年言われ続けて2019年まで来ており、この状態が続く可能性は否定できません。ただし、そろそろ息切れの感も見受けられます。
VCの投資先のIPO案件が少ない今日この頃
管理人はライターの仕事でIPO記事を書くケースが多いです。昨年は主に「ZUU Online」にIPO記事を寄稿していました。
長らくIPO市場を見ていますが、確かに昨年もIPOの件数は多かったのですが、VCの投資先のIPOは確実に減少しています。2000年頃のITバブル期、2005年頃の新興バブル期はIPO銘柄の多くがVC投資先、という状態だったのですが、足元2~3年程のIPO銘柄はVCの投資先が非常に少ない傾向にあります。少なくとも、ITバブルや新興バブルの頃に比べると、VCの株主は少ないです。
事業会社がVC投資を活発化させている、VC自体がリーマンショック以降淘汰されてしまった等、様々な理由はあります。ただしVCファンド出資者の観点から見ると、なんでこんなにIPO案件はあるのにVCの投資先のIPOは少ないの?、と思わざるを得ない状況ではあります。
VCファンドは7~10年モノが多いので、現在走っているVCファンドはアベノミクス相場以降の設立のファンドが大半です。VCの投資先IPOの数は少なくても、それでもIPO件数はそこそこ出ているので、各VCファンドのパフォーマンスも、そんなに悪くはないと考えられます。仮にメルカリのようなホームラン案件が出ていれば、近年にないパフォーマンスを叩き出しているファンドもあります。
ただIPOの状況を見ていると、事業会社が高い株価でVC投資をしている中、IPO実績もなかなか出ないファンドもあるので、ジワジワとVCの淘汰も始まっているのではないカモ。
グロービスの新ファンドは過去のサイクルを覆すことができるのか?
①IPO市場が盛り上がり既存のファンドのパフォーマンスが上がる
②そのパフォーマンスが注目された結果巨大ファンドが出来上がる
③巨額ファンドが出来た頃がIPO相場の天井付近で、下り坂の中での運営を余儀なくされパフォーマンスが悪化
④相場が悪い時に苦労して作られた小型のファンドが次の相場の上昇期に良好なパフォーマンスを出す
VCファンドのサイクルは概ね上記で回っています。時期的に今回のグロービスのファンドは③に該当する可能性が高いです。グロービスは老舗独立系VCとして、巨大ファンドができる頃が相場天井説を打ち破ることができるのでしょうか?
VCファンドのパフォーマンスは殆ど外部に開示されることがないので、一般の個人投資家には縁遠い存在です。ただし機関投資家の間では、VC投資=儲からない、というイメージがあり、そんな中で機関投資家中心に巨額の資金を調達したグロービスはさすがと言えます。
2019年もIPOの案件自体は順調に増えていますが、昨年同様VCの投資先IPOは少ない状態が続いています。
グロービスの巨大VCファンドが今後どんなパフォーマンスとなるのか注目されます。
・2018年は主幹事数第3位となったSMBC日興証券は、大手証券会社ながらIPO株の一部を抽選で割り振る形を取っています。三井住友銀行グループのSMBC日興証券は毎年数多くのIPO案件の取り扱いがあり、IPO投資には欠かす事のできない証券会社です。大手証券で敷居が高いと感じている方も多いようですが、通常のネット証券と同様に口座開設できるので、口座開設されてはいかがでしょうか?
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