野村証券(野村HD:8604)がVC最大手にして老舗のジャフコ(8595)の保有株式の売却を発表。既に野村グループ直系の企業としては距離を置いていたジャフコですが、野村証券が株式を売却することで、実質的に独立系VCの道を歩み始めることになります。日本独自の進化を遂げた日本のVC界。ジャフコの独立会社化は、一つの時代の終わりと始まりを象徴するのかもしれません。
概要
野村証券がジャフコの保有株を売却
野村証券(野村HD:8604)が保有のジャフコ(8595)株の売却を発表。ジャフコと言えば、ベンチャーキャピタル業界で野村系の企業として、知らぬもののいない存在。浮き沈みの激しいVC界において、一貫してVCトップの座を維持しています。金融系VCが大怪我をしたリーマンショックの際(IPO市場がクローズして、VCの売上げが上がらなくなってしまった)も、リストラはあれど見事生き残りに成功し、現在に至っています。
リーマンショックを境に日本のVC業界は、業界の姿が大きく変わってしまったのですが、ジャフコは相変わらずVC業界のトップ企業として君臨。
そんなトップVCであるジャフコの株式を、設立母体である野村証券が売却を発表しました。そして翌日、ジャフコ株はストップ高となり、まずは市場は歓迎姿勢を示しました。
野村総研もジャフコ株を売却
筆頭株主(株主シェア17.58%)の野村HDだけではなく、第2位株主(同10.25%)の野村総研もジャフコ株の売却を発表。ジャフコは自己株取得を行い、最終的には取得株式を消却する予定のようですが、ジャフコは本当に野村グループの傘を離れて独立系の道を歩むこととなります。
「画像出典:マネックス証券/日本株取引ツール トレードステーションTradestation」
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既に野村証券との関係が希薄化していたジャフコ
ジャフコと言えば野村証券系の会社、というのが通り相場なのですが、実はここ10年でジャフコと野村証券の関係は希薄化。現在のジャフコの経営陣は、社長を始めジャフコのプロパー組みがその殆どを占めています。
またベンチャー投資の原資であるファンド(投資事業有限責任組合)についても、ジャフコ自身の集金力(と言うより営業力と思います)があるため、ジャフコと野村証券との関係は既に親子関係という状態ではなくなっています。
その意味ではジャフコはほぼ親離れできていた訳で、野村HDと野村総研による株式売却で名実ともに、ジャフコは独立、と言うことになります。新規事業を行う子会社として設立された会社が、44年の時を経て独立するに至るって、結構なドラマではないかな、と思います。
変貌を遂げつつあるIPO市場
管理人、ライターの仕事の関係で、全IPO銘柄を見ているのですが、今年のIPO銘柄を見ていると、IPO市場は活況と言っても昔と変わったなぁ、と思います。
IPOの銘柄は多いのですが、以前と比べるとVCが株主になっている銘柄が随分と減りました。まぁVCの数自体、リーマンショックを境に減少しているのでやむをえないのですが、それにしても減ったな、と思います。
ジャフコの投資先IPO数も、その昔にIPO銘柄の7割に関与する、とジャフコが豪語していた頃と比べると、隔世の感があります。ここ最近だとジャフコの大口投資先は6月にIPOしたGamaWith(6552)。同社のIPOでジャフコは1Q黒字だそうで、大きく丁寧に投資して、大きく儲ける、というVCとしては理想的な回転が進んでいる可能性も。とは言えGamaWith(6552)のリードVCは独立系VCのインキュベイトキャピタルなのが面白いところですが。
日本のVC業界も欧米化し始めている可能性が
日本のVC業界は、世界的に見ても非常にユニークな歴史を経て現在に至っています。成功した企業家がVC投資を始めるケースの多かった海外VCに比べ、日本では金融機関が子会社としてVCを設立。その老舗企業が、現在のジャフコ、当時の日本合同ファイナンス。証券・銀行・生損保と各社が子会社VCを設立し、取引強化の一環としてVC投資を始めた、という経緯があります。
その中でもジャフコは早くから新卒プロパーの採用を開始し、現在の基盤を構築。当然、野村グループ独特のカルチャーは今も昔も健在なのですが、日本のVC業界創生期からトップ企業として活躍。
各金融機関系VCもその後栄枯盛衰はあったものの、遂にジャフコ化できた会社は現れず。NIF(大和証券系、現在の大和企業投資)、日本アジア投資(独立系)と言った二番手グループがリーマンショックまでは存在していましたが、リーマンショックを境に、二番手グループが実質的に消滅。銀行系や生損保系は元々親会社の別働隊的動きで無理せずやっており、リーマンショックは乗り切りましたが、気が付けば日本のVCを作ってきた金融系VCの存在感が随分と希薄なものとなっています。
独立系やネット系のVCが活躍の時代に
リーマンショックを境に存在感が低下した金融系VCとは逆に、存在感を増したのが独立系や金融系のVC。
今年のIPO銘柄の株主欄を見ていると、ネット系VCの活躍を見て取れます。元々ネットビジネスに知見がある企業が設立したVCなので、確かに業界のことよく分かってるよね、と素人目にも分かりますが、ネット系VC以外にも独立系VCの活躍が見られ始めているので、日本のVC業界も新しい時代を迎えつつあるんだろうなぁ、と思います。
その意味で野村証券が保有していたジャフコの株を売却して、ジャフコがほぼ独立系の会社となるのは、VC業界の変化の象徴的な出来事ではないかと思う次第であります。
まとめ
IPO市場は活況を呈していますが、IPO銘柄の状況から、VC業界は決して活況を呈している訳ではありません。
ただIPO市場の上下はあれども、一貫してVC業界のトップを維持しているジャフコはさすがの存在です。今回、設立母体の野村証券がその持ち株を全株売却。内部的には何も変わらないと思いますが、日本のVC業界もリーマンショックを境に大きく世界が変わっており、変わりゆく日本のVC業界を象徴する出来事のような気がしてなりません。
ジャフコを含む今後の日本のVC業界はどうなっていくのでしょうか。IPO市場とともに、今後も興味を持って見て行きたいと思います。
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