DeNAはウェルク(Welq)が炎上、でも50億円以上投資のキュレーション事業は止められない?

Sponsored Link

 DeNAが最近力を入れているのがキュレーション事業。まぁ簡単に言えば”NEVERまとめ”の上級バージョンです。各サイトから情報を引っ張ってきて、1つのサイトにまとめて、”いかにもまとめサイト”ではないけれど、読んでみると殆ど切り貼りじゃないか、みたいな。

 そのDeNAの行っているキュレーション事業で医療情報のサイトのウェルク(WELQ)が炎上する騒ぎに。デマや信ぴょう性が低く、更に薬事法にも抵触する可能性の高い記事がアップされまくっている、というのがその背景。そりゃまずいよね・・・。

 けどDeNAの決算書を見てみると、成長企業のイメージのあるDeNAですが、足元成長している事業はキュレーション事業程度。ブログやWebライター界隈では、夏ごろから様々な形で話題になっていたDeNAのキュレーション事業ですが、DeNAとしてはこれまでの50億円を超える投資額を考えれば、炎上したからと言って、ハイそうですか、とキュレーション事業をやめる訳にはいきません。また他に具体的に成長している事業がないので、キュレーション事業に注力せざるを得ない事情も見えてきます。

 今回は決算書から、DeNAのWelqを始めとするキュレーション事業の姿を見てみようと思います。

DeNAのキュレーション事業について

 DeNAがキュレーション事業を強化している、というのは実はブロガー界隈やWebライター界隈では、今年の春から夏頃から良くも悪くも話題になっていました。

 ブロガー界隈からすれば、キュレーション=NEVERまとめ、の記憶があり、何もコンテンツがないサイトが検索上位に来て何だかなぁ、という記憶が未だ残っています。しかしながらグーグル先生がNEVERまとめを検索上位から外してヤレヤレと思っていた矢先、今度はWelqを始めとするDeNAのキュレーションサイトが上位表示されるようになり、またか・・・、という事態。オリジナルな記事の内容で勝負しているブロガーとしては、キュレーションサイトの上位表示は正直たまったもんではなく、よい印象はありません。
 まぁブロガー界隈の住人の1人としては、NEVERまとめと同じ運命をたどるんでないかい、と思っていますが(幸いにして当サイトは殆ど影響がないこともありますが)、それでもWelq等のDeNAのキュレーションサイトと分野がバッティングしているサイトの運営者はたまったものではありません、間違いなく。
 
 一方、Webライター界隈からすれば、DeNAのキュレーション事業、夏頃に鬼のようにライターを募集していたので有名。文字単価はそんなに高くありませんでしたが(1文字0.5~1円程度と記憶してます)、案件の数自体が大量にあったため、目先仕事がないライターとしては手っ取り早くお金になる案件なので、非常に助かるお仕事となっていました。
 けどキュレーション案件、時間効率考えると正直割りにあいません。管理人もWebライターとして一部活動中なので分かりますが(お仕事の相談は随時承っています)、1,000円の記事作るのに2~3時間かかります・・・。それでもお金が・・・、という方には非常に助かる案件であるのは間違いありませんが、時給換算で500円とかならまだ他にやることあるような・・・。
 ついでに言えばDeNAのキュレーション案件、何か問題があった時は全てライターの責任になってます。。。今回問題となっているWelqの記事も、責任取るのはライターの側、というのがDeNAの立場。だからDeNAのキュレーション案件、特に医療系はライターとしては結構リスクあるよ、というのはそこそこ知られていたお話しです。

 そして今回炎上しているのは、医療情報のサイトのウェルク(WELQ)でデマや信ぴょう性が低く、更に薬事法にも抵触する可能性の高い記事が非常に多くアップされている、というのがその背景。肩こりの原因には霊がかかわっている、ラクトフェリンに放射能保護効果等、「ほんまかいな」と思う記事多数。まぁ、そんなことあるめぇよ、という心の余裕がある状態で見ていれば問題ないのですが、自らや身内に病気の方がいてWelqに書いてあることを藁をもすがる思いで見ていたら・・・、と思うと、相当罪なことしています。で問題があれば、責任取るのは1文字@1円程度で書いたライター。

 プロ野球球団も持つ、立派な東証1部上場企業のDeNAがやることですか?

 株に関与する立場、ブログやライティングに関与する立場の両方から管理人も思います。ジャスダックやマザーズ上場の会社じゃないんですから、DeNAは。

16-11-28炎上
DeNAの対応が火に油を注いでいる感もあります・・・

DeNAはM&Aでキュレーション事業に参入

 意外に知られていませんが、DeNAのキュレーション事業参入はM&Aからスタートしています。2014年10月に「iemo」と「MERY」の2社を総額約50億円で買収、そこからDeNAのキュレーション事業がスタート。キュレーションの会社の時価総額が約50億円・・・、さすがDeNAはお金持ってるなぁ、と思ったもんです。

 そしてM&Aから2年、ようやくDeNAの事業としてキュレーション事業はその存在感を増しつつある中での、今回の炎上事件となっています。

 ちなみにキュレーション事業のヘッドはiemoの社長の村田マリ氏と考えられます、M&Aした場合、元の事業は元の経営者に任せるのが普通なので。現在はDeNAの執行役員です。村田氏のインタビュー記事がNewsPicksにあるので、DeNAのキュレーション事業の考え方を知るには参考になるかもしれません。

私が、DeNAに「iemo」を売った理由
今週、一番ホットな起業家が語る「次に来るメディア」
※いずれもNewsPicksより

だって、他のメディアからのパクりでも、そこそこトラフィックを張っとけば、人がたくさんそこに来るから。それで、中身が面白ければ、シェアされるし。それにこうしたメディアって、ユーザーが継続的にそこに来る常連ではないじゃないですか。~そういう場合、かえってアドセンスが儲かりやすい。同じ人ではなく、新しい人が次々にくるから。(今週、一番ホットな起業家が語る「次に来るメディア」)

 ブログ書いている立場からすれば、この発言は何だかなぁ、と思います。ブログに限らず商売の基本って、リピーターじゃないかと。当サイトもリピーターの方々に支えられています、いつも読んでいただき、ホント感謝しています。

 上場企業の場合、M&Aした事業でミソを付けてしまう会社はたくさんあるので、DeNAも今回の炎上騒動、元々の事業ではないところで炎上しているので、M&Aした会社=事業がやっちまった、と考えれば、よくあるケースだよね、とはなります。

最近のDeNAの業績推移

 どうもオピニオン系の記事を書くのは得意ではないので、Welqに関する自分の意見は以上としておきます。そしてここからが本題、最近のDeNAの業績の推移を見てみましょ。成長企業のイメージのあるDeNA、成長が鈍化した、というのは何となしでも知っている方は多いと思いますが、実際どうなのか。

16-11-28DeNA-決算書1
DeNA2015年度 決算説明会資料(2頁)より

 2014年度と2015年度で比べると、DeNAの売上はほぼ横ばい。営業利益は減少。DeNA=ゲームの会社、なので売上も利益も殆どがゲーム事業から上がっています。そして2015年に売上が横ばいだったのも、減収になってしまったのも原因は一緒でゲーム事業が伸びなかったから。
 
 ゲーム事業の営業利益が299億円→259億円と▲40億円なので(資料のように”248→198”と単位無しで表記すると、それほどインパクトのある数字に見えないのが不思議な所)、DeNAにとってはゲーム事業が完全に伸び悩んでいる、と言っても過言ではありません。だから任天堂との提携に活路を見出そうとしている訳ですが。

 そして今回話題となっているキュレーション事業は「新規事業・その他」に該当します。「新規事業・その他」は売上が31億円→57億円と約84%の増収、ただし利益はまだ投資期間なので営業利益▲41億円→▲47億円と赤字が継続しています。

 ただしDeNAの各売上セグメントで見れば、スポーツを除くと(横浜DeNAベイスターズ)伸びているのは「新規事業・その他」のみ。その「新規事業・その他」の中心を担っているのはキュレーション事業であり、DeNAとしては次の成長の種をキュレーション事業に見出しています。

 そして足元のDeNAの数字は下記。

16-11-28dena-決算書2
DeNA 2016年第2四半期決算説明会資料(3頁)

 売上収益の「新規事業・その他」の推移に御注目。昨年度の各四半期は12~20億円で推移したいたのが、今期は1Q23億円→2Q30億円と成長軌道に乗っています。一方、営業利益は▲13億円→▲9億円と1Qの赤字額が10億円を切りました。

 Webライター的視点で言えば、夏にすごい勢いで記事を増加させたので、その効果が売上的には2Qに即現れたのか、と思いますが、まぁ当たらずとも遠からずでしょう。1Q→2Qで売上が+7億円に対し、営業利益が+4億円なので、同じことをあと2四半期繰り返すと「新規事業・その他」は収支均衡が見えてきます。上位表示させたいキーワード見つけて、ライター(キュレーター)に記事を書かせまくる、という繰り返しなので、各分野で同じことをすれば、数字は伸ばすことができます。

 そしてそのドライブをかけようとした所で、Welqの炎上騒ぎになっている、というのが現在のDeNAのキュレーション事業の姿と言えます。

ゲーム事業がジリジリ後退中

 新規事業=キュレーション事業を見るのが主なのですが、折角なのでDeNAの本業のゲーム事業の数字も見てみます。営業利益は安定的にQ毎に20億円以上稼いでいますが、売上が2016/2Qは243億円とこれまでの260~270億円ベースから約10%の減少。利益額がそれまでと同等水準にとどまっているので、それ程問題視する内容ではないかもしれませんが、それでもDeNAのゲーム事業売上がジリジリと後退しています。

 任天堂との提携で具体的な成果を!、とアナリストに求められている訳ですが、ゲーム事業の売上推移を見れば、そりゃそうだよね・・・、と思う数字になっています。

Sponsored Link

DeNAのキュレーション事業への投資額は50億円以上

 炎上してしまったDeNAのキュレーション事業ですが、DeNA側も炎上したからと言って、ハイやめます、という訳にはいきません。

 これまでDeNAがキュレーション事業にいくら投資したかザックリ計算してみます。

 まずは2014年10月「iemo」と「MERY」の2社を総額約50億円。ただし総額約50億円と言われていますが、2014年度の3Qのキャッシュフロー計算書を見ると投資活動のC/F中の「子会社またはその他の事業の取得による支出」が43億円と記載されているので、DeNAの投資額としては43億円と考えられます。(手数料等考えても45億円程度ではないかと)

 そしてまだキュレーション事業が赤字なので、これまでの赤字額も考える必要があります。2015年度及び2016年度2Qの決算説明会の資料だと、新規事業の四半期毎の営業赤字が▲10~▲13億円。全部が全部キュレーション事業の赤字ではないとしても、M&Aの投資額43~45億円+これまでの赤字の累計額を考えれば、DeNAとしてはキュレーション事業に50億円以上投資していることになります。

 50億円以上投資した新規事業、そりゃそう簡単に撤退する訳にはいきません。ましてや黒字化が見え始めている状態だった訳ですから。財務内容良好なDeNAなので、仮に50億円分全部すってしまっても会社がどうにかなる金額ではありませんが・・・。

 今回の炎上騒動を受けてDeNAが今度どんな対応を取るのか、非常に興味深い所ですが、これまでの投資額を考えればキュレーション事業から”撤退”ということにはならないんじゃないかと思います。

そもそも「iemo」と「MERY」に43億円の企業価値があると思えないのですが・・・(16/11/29追記)

 記事を投稿した後、Welqのこと色々と考えていたのですが、明らかにDeNAが買った「iemo」と「MERY」の2社、高すぎませんかね。だって、足元キュレーション事業赤字な訳です。

 両社を総額43億円で買収、というのであれば、通常の感覚(M&Aの価格感)だと年間5~10億円程度の利益(EBITDA:償却前利益と言いたい所ですが、営業利益や経常利益でもとりあえずはOK)出ていてもおかしくないハズ。黒字の会社を買っていれば、キュレーション事業が赤字というのは変な話。まぁM&Aした後に赤字になっちゃいました、何て話はM&Aの世界にはゴロゴロしてますが。。。

 まさか赤字の会社2社を総額43億円でM&Aした???この辺りの事情よく分かりませんが、40億円オーバーの買い物して利益貢献ゼロっていうのも、変な話です、分析不足かもしれませんが。いずれにしても、DeNAは「iemo」と「MERY」を相当高い値段で買っている(買収している)、とは言えます。

 そしてDeNAはキュレーション事業参入のためにえらく高い買い物をして、更に高い授業料を払うことになりそうです・・・。

まとめ

 管理人もDeNAのキュレーションメディアと知らずに記事を読んで、うまく記事が書いてあるなぁ、と思ったらキュレーションだった、と思いずっこけたことがあります。このクオリティの記事書けるなら、自分で書けばいいのに・・・、とブログ運営者の端くれとしては思ったものです。そしてその記事単価を後日知るのですが、絶対に金額と合わないよなぁ、とも思ったのでした。

 キュレーションメディア、確かに何かと便利なのでそれ自体は否定しませんが、DeNAはやり過ぎてしまった、という点も問題でしょう。ブロガー界隈からDeNAのキュレーションメディアへの批判は、以前から相当なものでしたから。けどお金のある会社が人海戦術でキーワードを狙い撃ちにすると、見事にキーワードが独占できるのか、と妙に感心してしまった自分もいた訳です。その意味では、そのビジネスセンスはさすがDeNA、と言えます。

 そんなこともあるのか、実は週足ベースでみるとDeNAの株価は2016年は好調そのもので、Welq騒動の影響は殆ど見られません。DeNAの株価については、下記をご覧ください。

 総額50億円以上キュレーション事業につっこんでいるDeNA、他に成長事業も見当たらない中ではキュレーション事業から撤退、という選択肢は取りえない状況ですが、それでも特にWelqは地雷を踏み抜いている面があるので、何かしらの対応がなされると考えられます。

 さてDeNAのキュレーション事業、今後どうなっていくんでしょうか。実は最近、当サイトの記事を書く際に検索キーワードあまり気にしていないことに気付き、若干キーワードを意識もしている管理人。
 自らのブログ運営の勉強のためにも、DeNAのWelq炎上騒動の行方を見守りたいと思います。

DeNAの関連記事
Webライター始めました

DeNA株価の今後の見通し(2015年3月26日版)

DeNAによる横浜スタジアムのTOB、株を売るべきかどうか考えてみた

スポンサードリンク
スポンサードリンク

4 件のコメント

  • はじめまして、こういったサイトにコメントするのは初めてです。記事がとても参考になりました。ずっと夢みてたライターを目指してキュレーションしてます。本当に割りに合わないかも?と思いながらでも、文が書くことが好きな私にはとても嬉しい一歩でした。しかしこのような記事を色々見ていると…なんだかわからなくなってしまいますね( T_T)\(^-^ )勉強になったと同時に、夢が消え失せていくような気分です。わかりやすい解説ありがとうございました!

    • メッセージ有難うございます。

      キュレーションライターされているんですね。私も若干キュレーション案件やったことがありますが、時間コストが合うと思えず、数件やっておしまいにしました。

      夢を醒めさせるような内容かもですが、ブログ執筆者とWebライターの2つの観点から当記事を執筆しており、極力客観的に書いています。(トレーダー目線も入れると、3つの視点)

      ”わかりやすい解説”とのこと、お褒め頂きありがとうございます。全体的にマニアックな内容が多いのですが、Webライター始めてから”分かりやすく”という点も若干気にしており、成果と言えるのかもしれません。

      今後とも当サイトをよろしくお願いいたします。

      管理人FiboCat

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です