東芝が液晶テレビの「REGZA(レグザ)」から撤退へ、と報じられています。まだ東芝からの発表があった状態ではありませんが、不適切会計事件以降、完全にリストラモードの東芝。赤字と考えられるTV事業は当然リストラのターゲットと考えられ、何らかのアクションはあると考えられます。
東芝よお前もか・・・、と思うのは家電好きの管理人だけではないはず。そんな訳で近年、特に液晶テレビ発表以降の日本のテレビの歴史を振り返ってみました。テレビ事業って、華やかなイメージがある反面、その歴史は再編と撤退の歴史で、商売としては非常にシンドイ事業と言うことがよーく分かります。(2016年5月31日更新)
液晶TV発表以後の日本のTVの歴史
民生用液晶テレビが1995年にシャープから発表。考えてみれば、まだ20年orもう20年。歴史的にみればまだ20年ですが、個人の人生と重ね合わせるともう20年。知人宅にあったシャープの液晶TVを羨ましく思ったの、もう15年以上前になるのか・・・。
20年が長いか短いかはそれぞれ感想があるとして、この20年で日本の液晶TVとプラズマTVがどんな歴史をたどって来たのか、下記に記してみました。
1995年シャープが液晶TVを発売
1997年富士通及びパイオニアがプラズマTVを発売
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<薄型テレビの市場拡大期>
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2004年パイオニアがNECのプラズマTV事業を買収
2004年富士通が液晶・プラズマTV事業から撤退(液晶はシャープに、プラズマは日立に事業譲渡)
2008年日立がプラズマTVの生産から撤退
2008年ビクターが家庭用TVから撤退
2009年パイオニアがプラズマTVから撤退
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2011年地上波のテレビ放送がデジタル放送に完全移行
・ディスプレイバブルの崩壊
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2012年シャープが液晶TVの生産部門を切り離し
2014年パナソニックがプラズマTVから撤退
2016年パナソニックが国内の液晶TV生産から撤退
2016年東芝が液晶TVから撤退(?)
この年表、スゴイと思いませんか?
次々と国内メーカーがTV事業から撤退する歴史年表になっています・・・。
薄型TVという観点では、液晶TVとプラズマTVの2陣営があったのは懐かしい思い出ですが、2014年にパナソニックがプラズマをあきらめて”勝負あり”。
プラズマTV、パイオニアの「KURO」がすんごいキレイで、値段もトッテモ高かったのですが、憧れの的でした。ついでに言えば、2004年にパイオニアがプラズマTV事業をNECから買収したのは、家電好きとしてはかなりインパクト大でした。
しかし2004年から2009年までのメーカーのTV事業からの撤退ぶりはスサマジイですね。その後2011年の地デジバブルで一時潤ったTV業界ですが、地デジバブルの崩壊とともに、第2次の撤退戦が開始され、今回東芝が液晶TVから撤退、ということになりそうです。
生き残った国内テレビメーカー
東芝がTV事業から撤退すると仮定すると、現在まで生き残っている国内テレビメーカーは下記の会社となります。
・ソニー
・パナソニック
・シャープ
・三菱電機
以上4社が国内テレビメーカーとして生き残っていますが、実は三菱電機以外はいずれも紆余曲折を経て現在に至っています。
・ソニー→長年TV事業で赤字垂れ流しの批判を受け、近年漸く黒字化
・パナソニック→プラズマ業界の雄でしたが、非常に高い勉強代を払ってプラズマから撤退
・シャープ→鴻海の傘下入り
・三菱電機→地味に続けたお陰か大怪我せず
薄型テレビに関わった国内企業、三菱電機を除くと死屍累々と言っても過言ではない状況。ソニーとパナソニックは会社自体に体力があったので、何とか持ちこたえていた、というのが偽らざる状況では。
しかしこう考えると三菱電機は大したものです。三菱電機の液晶TVなかなかいいですよ。買いませんでしたが(ソニー買いました・・・)、かなり迷いましたから。
東芝のTV事業縮小は必然
東芝がTV事業から全面撤退するか、それとも生産から撤退してシャープのようになるかは分かりませんが、いずれにしても東芝のTV事業の縮小は、上記の年表から見れば必然と言えます。
TVって完全に残存者利益を狙う市場になってますね、少なくとも国内に関しては。東芝はこのチキンレースから降りざるを得ない、と言うことでしょう。日立のように早期撤退、という選択肢もあったかと思いますが、日立がプラズマTV生産から撤退した時に、東芝は逆張りを行ってます。それは経営判断、勝敗は兵家の常。
けどね、TV事業を手掛けていた会社が軒並み大赤字を出していた2~3年前に東芝は、黒字状態、とコメントしていたので変な感じ・・・、と思っていましたが、不適切会計だった、ということですか。
そして次の焦点はシャープ?シャープは大型液晶部門は既に分社化しており、台湾のホンハイが主導権を持ってやっていますが、本体が火の車のシャープ、今後何があってもおかしくありません。
シャープが液晶部門を分社化か?、ということで当サイト始め各方面で話題になっていますが、既にTV用の大型液晶は切り離し済みです。今、分社化が議論されているのはスマホ向けの中小型液晶部門。
大型液晶に中小型液晶、両方の液晶部門をシャープから切り離したら一体何が残るのだろうか・・・。
いずれにしても国内のテレビ事業、現段階で生き残りができそうなのは、パナソニックとソニー、そして三菱電機の3社と言えそうです。けど3社で残存者利益をどうを取ってください、というマーケットにはならなさそうですね。中国や韓国の海外メーカーとの価格差考えると、簡単に値上げもできなさそうですし。
パナソニックがテレビ用液晶パネル生産から撤退(16/5/31追記)
プラズマTV撤退後、液晶TVに注力していたパナソニックですが、採算的には厳しい、と言われていました。そんな中でついにパナソニックは国内でのテレビ用液晶パネル生産から撤退することを決断。国内唯一のテレビ用液晶パネルの生産拠点である姫路工場も大幅に縮小となる模様です。
パナソニックはテレビ用液晶パネルから撤退する。9月末をメドに姫路工場(兵庫県姫路市)での生産を終了し、従業員数百名を自動車用の蓄電池工場などに配置転換する方針だ。(2016/5/31日本経済新聞)
パナソニックは自社での液晶パネル生産からは撤退するものの、韓国等からパネルを外部調達して液晶TVの販売は続ける様子。パナソニックブランドのTVが家電量販店から姿を消す訳ではありません。
しかしかつてのTV市場をソニーとともに牽引したパナソニックが自社でのパネル生産をやめる、というのは歴史の流れでしょうが、寂しいものです。TV市場はコモディティ市場になって完全にビジネスモデルが変わってしまった、ということではないかと。あまり話題になりませんが、中国勢のTVパネル増産は今も続いているようですので。TVパネルも製造ラインがあれば誰でも作れる、太陽光パネルのようになってしまったよなぁ。
そして、最後の最後までTVパネルを自社生産するのは鴻海の傘下入りしたシャープ(正確に言えば鴻海とシャープの合弁会社)。もはや国内勢単独でTVパネルを作り続けることは無理、ということなのかもしれません。。。
まとめ
先日、国内のPCメーカーの歴史を振り返ってみましたが、今回のテレビの歴史も何だか寂しい結果となっています。
要はPCもテレビも部品さえあれば誰でも作ることのできる製品になってしまった、ということかと。秋葉原や大阪日本橋や名古屋大須で電子部品買ったら、設計図とハンダゴテがあれば誰でもラジオが作れる、という延長線にPCやテレビも位置している訳です。さすがにTVは個人では無理ですが、PCは管理人の自作PCもそうですが、個人で作れますからね。
テレビの技術って、華やかで夢のある分野ではありますが、商売として考えて歴史を振り返ると、ホント非常に厳しい商売になったしまったと思います。
テレビ自体は無くなることは無いでしょうけど、果たして日本のテレビメーカーで最後まで生き残るのは何社になるのでしょうか?東芝の動き、そしてシャープの危機、国内のテレビメーカーの生き残りは、どうやら最終段階に来ているのは間違いなさそうです。