かつて日本を代表するベンチャー企業として知られていたワークスアプリケーションズ。上場していましたが、2011年にファンドの支援を受けてMBOを行い非上場化していますが、2018年6月期に180億円の赤字の計上が官報で判明しました。
大きな訴訟を2件抱え、3期連続の最終赤字と非上場化後、ナカナカに厳しい状況に置かれていますが、100億円の資金調達に成功しており資金面の不安は目先ありません。
ワークスアプリケーションズの現在の状況を、調べてみました。
概要
ワークスアプリケーションズが180億円の赤字を計上
既に2011年にMBOにより非上場化している国内ERPソフト開発会社のワークスアプリケーションズ。そんな同社の決算書が官報に掲載されており、眼にする機会が先日ありました。
2018年6月期当期純利益▲180億円!
参考サイト:株式会社ワークスアプリケーションズ 第22期決算公告(題名のないnote)
営業利益ベースで▲99億円という時点でも驚きですが、最終利益が▲180億円って、大丈夫なのか?、と思わずにはいられない数字。
しかしながら株主資本は26億円残されており、通常の状態なら会社が存続するのに十分な状態。(他にも大きな爆弾があれば話は別)
MBOで株式の非上場化したはいいけれど、結局非上場化した意味ないやんか、という結果になる企業も正直多い訳ですが、▲180億円という巨額な最終赤字の数字を見ると、ワークスアプリも同じか・・・、と思わずにはおれません。そーいえばワールドの非上場化→再上場は手放しで成功と言える状況ではありませんでした。
関連記事:再上場の条件は主幹事や環境次第か、ワールドの非上場化後13年の苦労
3期分の決算、損益推移
同社サイトに普通に簡単な決算書が掲載されていたので、3期分の決算について損益状況を並べてみました。
参考サイト:ワークスアプリケーションズの財務状況(同社サイト)
2016年6月期
・売上高408億円、営業利益▲1.5億円、経常利益▲7.1億円、当期純利益▲22億円
2017年6月期
・売上高501億円、営業利益1.7億円、経常利益▲9.4億円、当期純利益▲29億円
2018年6月期
・売上高453億円、営業利益▲86億円、経常利益▲92億円、当期純利益▲170億円
2018年6月期は官報の数字と若干ズレがありますが、官報の数字は単体決算でサイトの数字は連結決算のため。よって開示の数字を信じることができれば(未上場会社なので、信じるか信じないかはあなた次第です)、会社の実体を表しているのはサイトの連結の数字。
2018年6月期の100億円を超える赤字額に注意が向きますが、実は2016年6月期から3期連続で最終赤字。結構シンドイ状況となっています。
赤字が18年6月期だけなら、一気に過去の膿を出したのね、との理解もできますが、どうやら慢性的にシンドイ状況が継続している様子。
しかし以前は国産業務用アプリケーション開発企業として光り輝いていた同社ですが、落ちたなぁ、というのが正直な印象。どうしちゃったんでしょ・・・。AI等々、新しいことやりすぎてしまったんですかね。
大幅赤字は訴訟2件の損失計上?
少し調べてみるとワークスアプリケーションズは大きな訴訟を2件抱えています。
1件目は2017年5月の兼松エレクトロニクス<8096>からの損害賠償請求14億円。
(訴訟の提起に関するお知らせ:兼松エレクトロニクス )
2件目はタイムリーに2018年11月の古河電工<5801>グループからの損害賠償請求50億円。
(訴訟の提起に関するお知らせ)
180億円の赤字に比べると全然まだ足りませんが、ユーザーとの訴訟関係で相当の赤字を覚悟しての2018年6月期の損失だったのではないかと推察されます。
受注はしたものの、予定通りにモノが仕上がらず顧客と揉めるという、ベンチャー系の開発会社でありがちなパターンではないかと。
2018年6月期に100億円の資金調達に成功しており資金面での不安はない
3期連続最終赤字で、2018年6月期に100億円を超える赤字を計上したワークスアプリケーションズですが、2018年6月期中に100億円の資金調達に成功しています。
参考サイト:ACAファンドより50億円の調達、1年間で累計資本調達額100億円を達成
その成功があればこその100億円を超える赤字計上な訳です。100億円のうち、50億円の増資を引き受けたのがシンガポールのファンドACA グループ。
このACAグループは増資を受ける際、同社がMBOで非上場化した際に資金支援をした投資ファンド・ポラリスグループの全株式も譲り受けており(普通に考えると損切)、よって現在のワークスアプリケーションズは、ACAググープが株の過半数を持つ筆頭株主となっています。
同社の命運はACAグループが握っている状態です。ただし逆に言えば50億円の増資を引き受ける際に、ACAグループは当然徹底してデューデリ(調査)を行っているのが通常であり、さすがにこれ以上変な爆弾が出てくる可能性は低いと考えられます(業績が伸びるかどうかは別問題ですが)。
まとめ
ワークスアプリケーションズはその昔、日本のベンチャー会を代表する企業で、華々しくIPOデビューを飾っています。国内VCからの資金調達も行って、それぞれ理想的な形でIPOした記憶があります。
その後、時が巡ってMBOで非上場化して、そして3期連続の赤字計上で、バイアウトを支援した投資会社は株を売り払って、新しいファンドが株主になるという、ファンドビジネスの入り口部分(=VC)から出口(=バイアウトファンド)までの、殆ど全てを経験するという、非常に珍しい会社となっています。
昔の姿を多少知っているだけに、現在の3期連続赤字の姿はなんだかなー、と思いますが、体力的にはまだあるため捲土重来を期待したい所。けどさすがにすぐ目先での再上場は無理だと考えられます。
時間はかかっても、復活を期待したいですが、果たして?
・ワークスアプリケーションズがIPOするかどうかは分かりませんが、IPOとなった時にSMBC日興証券は取扱い証券会社となる可能性が高いです。大手証券会社ながら、IPO株の一部を抽選で割り振る同社に口座開設しておいてはいかがでしょうか?三井住友銀行グループのSMBC日興証券は毎年数多くのIPO案件の取り扱いがあり、IPO投資には欠かす事のできない証券会社です。大手証券で敷居が高いと感じている方も多いようですが、通常のネット証券と同様に口座開設でき、IPO株の申し込みもできますよ。
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